(2023年11月10日公開)
ビタミンAは脂溶性ビタミンのひとつで、皮膚や粘膜、目、口の健康を守るために欠かせない栄養素です。不足するとさまざまな影響を招きかねないため、毎日欠かさず摂取しましょう。
この記事ではビタミンAの特徴や期待される機能、豊富な食べ物、取り入れ方のコツを解説します。またビタミンAを手軽に摂れるレシピも紹介するので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
ビタミンAの特徴と期待される機能
ビタミンAは、レチノール、レチナール、レチノイン酸などの総称で、油に溶けやすい脂溶性ビタミンのひとつです。
- 肉や魚、乳製品などの動物性食品に含まれるレチノールなどの既成ビタミンA
- 果物や野菜などの植物性食品に含まれるβ-カロテンなどのプロビタミンA
プロビタミンAは体内でビタミンAに代わり、ビタミンAとして働きます。
食品に含まれるビタミンAや、1日の摂取基準などは、この2種類をあわせて「レチノール活性当量」として計算した数値が用いられます。
さらに詳しく、ビタミンAに期待される機能について見てみましょう。
肌のうるおいを保つ
ビタミンAは、皮膚の乾燥を防いで、肌を正常な状態に保ってくれる働きがあります。ビタミンAが不足して肌が乾燥した状態が続くと、シワやたるみ、くすみといった肌の老化につながる恐れがあります。
目の健康を守る
ビタミンAは、目の乾燥を守る働きや、目が光を感じ取る機能を助ける働きがあり、目の健康を守る役割があります。
免疫機能の維持
ビタミンAは免疫システムが正常に働くために必要な栄養素です。不足すると、免疫機能の低下を引き起こす恐れや、粘膜の乾燥から感染症にかかりやすくなる恐れがあることも知られています。
酸化ストレスの抑制
ビタミンAは抗酸化作用があり、酸化ストレスから私たちの体を守ってくれる働きがあります。紫外線や大気汚染、酸化物質を摂取することで「活性酸素」が過剰に発生すると、酸化ストレスが引き起こされ、老化や生活習慣病などを引き起こす原因になることが知られています。
ビタミンAなどの抗酸化作用のあるものを摂ることで、アンチエイジングや健康を守ることにつながります。
ビタミンAは歯や口の健康づくりにも役立つ
ビタミンAは粘膜のうるおいを保つ作用があるため、口の健康を守るのにも役立ってくれます。口の中が乾燥すると、むし歯や歯周病などのトラブルにつながりかねません。
またビタミンAは歯のエナメル質が作られる際にも必要です。エナメル質が丈夫でないと、歯の表面が脆くなり、むし歯になりやすくなります。歯は胎児期から作られ始めるため、お母さんは不足しないように意識して摂りたい栄養素です。ただし、後述するように過剰摂取には注意が必要です。
ビタミンAの1日の摂取量の目安
ビタミンAは先ほども伝えた通り、レチノール活性当量として目安の量が決められています。1日あたりの推奨量と、耐容上限量は下記の通りです。
▼ビタミンAの食事摂取基準(µgRAE/1日あたり)
年齢 |
男性 |
女性 |
推奨量 |
耐容上限量 |
推奨量 |
耐容上限量 |
1~2歳 |
400 |
600 |
350 |
600 |
3~5歳 |
450 |
700 |
500 |
850 |
6~7歳 |
400 |
950 |
400 |
1,200 |
8~9歳 |
500 |
1,200 |
500 |
1,500 |
10~11歳 |
600 |
1,500 |
600 |
1,900 |
12~14歳 |
800 |
2,100 |
700 |
2,500 |
15~17歳 |
900 |
2,500 |
650 |
2,800 |
18~29歳 |
850 |
2,700 |
650 |
2,700 |
30~49歳 |
900 |
2,700 |
700 |
2,700 |
50~64歳 |
900 |
2,700 |
700 |
2,700 |
65~74歳 |
850 |
2,700 |
700 |
2,700 |
75歳以上 |
800 |
2,700 |
650 |
2,700 |
妊婦後期(付加量) |
ー |
ー |
+80 |
ー |
授乳婦(付加量) |
ー |
ー |
+450 |
ー |
さらに詳しく、ビタミンAの過不足の影響について、知っておきましょう。
ビタミンAが不足するとどうなる?
ビタミンAが不足すると、皮膚や粘膜に乾燥が起こったり、目の働きが低下したりするなど、次のようなことが起こる恐れがあります。
- 肌や粘膜の乾燥
- 免疫機能の低下
- 夜盲症(暗いところで目が見えにくくなる)
- 目の角膜や粘膜の損傷(視力の低下や失明に至る場合もある)
ビタミンAは、一般的な食生活では、深刻な症状が出るほど不足する心配は少なくなっています。
一方で、食習慣が偏っていると、十分量のビタミンAが摂取できていない場合があります。
動物性食品や緑黄色野菜をほとんど摂らず、白米やパンなどの主食ばかりなどの偏った食生活では不足の心配があるため、あてはまる方は注意しましょう。
ビタミンAを過剰摂取するとどうなる?
ビタミンAは脂溶性であり、体内に蓄積されやすく、過剰摂取により健康に影響を与える恐れがあります。
急性症状では頭痛、吐き気、めまい、目のかすみ、慢性症状では皮膚の異常、脱毛、筋肉痛などが起こることがあります。また妊娠中の方は、赤ちゃんの奇形につながる可能性も知られているため、過剰摂取に注意したい栄養素です。
ただし、ビタミンAの中でも、植物性食品に含まれるプロビタミンAであるβ-カロテンは、過剰摂取しても影響を起こさないことが知られています。つまり、野菜や果物からビタミンAをたくさん摂るのは心配ないといえます。
動物性食品のビタミンAは過剰摂取に注意が必要であるため、ビタミンAの豊富なレバーやうなぎなどを毎日のように食べるのは控えたほうがよいでしょう。
また、サプリメントなどで直接ビタミンAを摂取する場合も、過剰摂取にならないように適正量を守るようにしましょう。
ビタミンAが豊富な食べ物
ビタミンAが豊富な食べ物の代表に、レバーやうなぎがあります。他にはどのような食べ物に多く含まれるのか、ジャンルごとに紹介します。
レバーなどの肉類
食べ物の中でも、レバーはビタミンAの含有量がずば抜けて優れています。レバー(肝臓)はビタミンAを貯蔵している箇所であるため、豊富なのです。
肉類ではレバー以外に鶏肉にも含まれますが、レバーに比べると少ない含有量となります。
▼100gあたりのビタミンA(レチノール活性当量)含有量
食品名 |
含有量 |
鶏レバー |
14,000 µg |
豚レバー |
13,000 µg |
牛レバー |
1,100 µg |
鶏手羽先 |
51 µg |
先ほども伝えた通り、レバーはビタミンAの過剰摂取につながりやすいため、食べすぎには注意が必要です。例えば、鶏レバー20 gほどで、ビタミンAの耐容上限量2,700 μg(18歳以上の男女)を超えてしまう量となります。
英国食品基準庁(FSA)では注意喚起がなされており、レバーやレバー製品は週に1回までとされています。
レバーばかりを毎日のように続けて食べるのは控え、他の食べ物もバランスよく取り入れるように注意しましょう。
うなぎ・ぎんだらなどの魚介類
魚介類の中では、うなぎのビタミンA含有量が特に優れています。
▼100gあたりのビタミンA(レチノール活性当量)含有量
食品名 |
含有量 |
うなぎ |
2,400 µg |
ぎんだら |
1,500 µg |
ほたるいか |
1,500 µg |
クロマグロ |
840 µg |
イクラ |
330 µg |
上記の表の食べ物以外にも、しらす干し、ししゃも、さばなどのさまざまな魚介類にもビタミンAが含まれています。魚はビタミンAのよい補給源となるため、積極的に取り入れるようにするとよいでしょう。
卵やチーズなどの卵・乳製品
卵はビタミンAが豊富ですが、卵白には含まれておらず、卵黄に含まれています。またバター、チーズにもビタミンAが豊富です。
▼100gあたりのビタミンA(レチノール活性当量)含有量
食品名 |
含有量 |
卵黄 |
690 µg |
全卵 |
210 µg |
バター |
520 µg |
マスカルポーネ |
390 µg |
チェダー |
330 µg |
モッツァレラ |
280 µg |
プロセスチーズ |
250 µg |
卵はビタミンA以外にもさまざまな栄養素を含む「完全栄養食品」ともいわれる食べ物のため、ぜひ毎日取り入れるようにしましょう。チーズはほとんどの種類にビタミンAが豊富に含まれます。お好みのものを取り入れるようにするとよいでしょう。
にんじんやほうれん草などの野菜
野菜の中でも、にんじんやほうれん草などの色の濃い野菜にはビタミンAが豊富に含まれます。
▼100gあたりのビタミンA(レチノール活性当量)含有量
食品名 |
含有量 |
にんじん |
630 µg |
ほうれん草 |
350 µg |
にら |
290 µg |
小松菜 |
260 µg |
豆苗 |
250 µg |
もやしや白菜などの色が淡い野菜にはあまり含まれないため、ビタミンAを補給したい場合は色の濃い野菜を選ぶようにしましょう。
料理を作り置きしておいたり、冷凍野菜を上手に活用したりすると、手軽にビタミンAを補給できます。
ビタミンAを効果的に摂るポイント
ビタミンAは脂溶性ビタミンであり、油(脂質)と一緒に摂ることで吸収率が高まります。
レバー、魚介類、卵、チーズなどは食べ物自体に脂質が含まれますが、野菜には脂質があまり含まれません。野菜のビタミンAを効率的に摂りたい場合は、意識して油と組み合わせるようにしてみましょう。
例えば、にんじんやほうれん草をバターで炒めたり、にらや小松菜の入ったスープにごま油を入れたりするなどの工夫があります。または、脂質を含む肉や魚と一緒に食べるようにする方法でもOKです。
ビタミンAたっぷりの「簡単キャロットラペ」のレシピ
ビタミンAを手軽においしく食べられる「簡単キャロットラペ」のレシピを紹介します。
ビタミンAが豊富なにんじんをぺろりと1本食べられます。オリーブオイルを合わせることで、ビタミンAの吸収率もアップ。シャキシャキとした歯ざわりも楽しめ、よく噛むことで唾液の分泌も促してくれるため、口の健康も守ってくれます。
ビタミンAの他にも、美肌づくりに役立つビタミンC、むくみ対策となるカリウムを補給でき、美容にもうれしいレシピです。
作り置きしておけば、朝食やお弁当、夕食などさまざまなシーンで活躍してくれます。ぜひお試しください。
<材料>(2人分)
- にんじん:1本(150 g)
- (A)オリーブオイル:大さじ1.5
- (A)レモン汁(または酢):大さじ1
- (A)砂糖:小さじ1
- (A)塩:小さじ1/4弱
- (A)こしょう:少々
- 乾燥パセリ(あれば):適量
<作り方>
- にんじんは斜め薄切りにしてから細めの千切りにします。(スライサーがある場合は使ってもよいです。)
- ボウルににんじんを入れ(A)を加えて混ぜ、15分ほど味をなじませます。器に盛り、あれば乾燥パセリを振ります。
<ポイント>
にんじんは斜めに切ってから千切りにすることで、繊維を断って切れるので味のなじみがよくなります。マスタードや粗びき黒こしょうをお好みで少々加えると、よいアクセントになっておすすめです。
作り置きする場合は、清潔な保存容器に入れて、冷蔵庫で保存してください。3日以内を目安に食べ切るようにしましょう。
美容や健康づくりに役立つビタミンAをたっぷり補給しよう
ビタミンAは酸化ストレスから私たちを守ってくれたり、皮膚や粘膜の乾燥を防いでくれたりと、美肌や健康づくりに欠かせない栄養素です。また免疫機能の維持や、歯や口の健康を守るなど、全身の健康づくりにも役立ちます。
さまざまな食べ物をバランスよく取り入れることを心がけ、ビタミンAの不足を防ぎ、元気な毎日を過ごしましょう。