この記事では、ビタミンEの働きと豊富な食材を使った献立に取り入れやすい簡単レシピを紹介します。
ビタミンEは抗酸化作用や血流促進作用を持ち、健康づくりや美容に役立つ栄養素です。この記事では、ビタミンEの働きや1日の必要量、過不足の影響、豊富な食べ物について解説します。最後にはビタミンEをたっぷり摂れる簡単レシピも紹介するので、ぜひ健康づくりや美容に役立ててみてください。
ビタミンEの特徴
ビタミンEは脂溶性ビタミンの一種です。ビタミンEには、α-、β-、γ-、δ-トコフェロールと、α-、β-、γ-、δ-トコトリエノールの8種類があります。
このなかでも、人の体内で利用されるのは主にα─トコフェロールです。β-、γ-、δ-は体内ですぐに代謝される性質があるため、厚生労働省による日本人の食事摂取基準では、α─トコフェロールのみを指標として、目安量が示されています。
ビタミンEは、高い抗酸化作用を持つのが特長です。ビタミンE自身が酸化されることで、体内の脂質の酸化を防いでくれています。
そのことから、ビタミンEは酸化防止の目的で食品添加物としても使用されています。化粧品に配合されることもあり、化粧品自体の酸化防止の役割や、皮膚における酸化防止、血行促進作用などが期待されている成分です。
ビタミンEに期待される効果・効能
ビタミンEの働きについて、さらに詳しく見てみましょう。
抗酸化作用
ビタミンEの代表的な働きといえるのが、抗酸化作用です。
抗酸化作用とは、体内で過剰に発生した活性酸素を除去したり、働きを抑えたりする作用のことです。活性酸素が増えた状態では細胞を傷つけて、動脈硬化、免疫機能の低下、がん、老化など、さまざまな影響を起こすことが知られています。
ビタミンEの高い抗酸化作用は、美容面でも注目されており「若返りのビタミン」とも呼ばれています。
血流促進
ビタミンEは血管を拡張させ、血流を促す作用があります。また、血液を固まらせる血小板の凝集を防ぐ、いわゆる「血液サラサラ作用」があるとされています。
抗酸化作用とあわせて、生活習慣病への対策が期待されている栄養素です。
歯周病の予防
ビタミンEは歯周病の予防にも関わっています。これは、ビタミンEの抗酸化作用によるものです。
体内に活性酸素が増え、酸化ストレスのかかった状態では、歯ぐきが傷つきやすくなり、歯周病を悪化させやすいことが知られています。歯周病の予防や進行を食い止めるためにも、ビタミンEなどの抗酸化作用を持つビタミンの摂取が大切だと考えられています。
ビタミンEの1日の摂取量の目安
ビタミンEの1日の摂取量の目安は下記の通りです。
▼ビタミンEの食事摂取基準(1日あたりの目安量)
年齢 |
男性 |
女性 |
1~2歳 |
3.0 mg |
3.0 mg |
3~5歳 |
4.0 mg |
4.0 mg |
6~7歳 |
5.0 mg |
5.0 mg |
8~9歳 |
5.0 mg |
5.0 mg |
10~11歳 |
5.5 mg |
5.5 mg |
12~14歳 |
6.5 mg |
6.0 mg |
15~17歳 |
7.0 mg |
5.5 mg |
18~29歳 |
6.0 mg |
5.0 mg |
30~49歳 |
6.0 mg |
5.5 mg |
50~64歳 |
7.0 mg |
6.0 mg |
65~74歳 |
7.0 mg |
6.5 mg |
75歳以上 |
6.5 mg |
6.5 mg |
妊婦 |
ー |
6.5 mg |
授乳婦 |
ー |
7.0 mg |
出典:厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ビタミンEの目安量は、2016年の国民健康・栄養調査による、日本人の平均的な摂取量をもとに設定されています。これは、ビタミンEの欠乏に関してデータが十分になく、通常の食生活を送っている場合は欠乏症がみられないことが理由です。
最新の2022年の調査結果でも、ビタミンEの平均的な摂取量は20歳以上では男性7.3 mg、女性6.6 mgであり、大きく不足していないことがわかります。
ビタミンEが不足するとどうなる?
ビタミンEの欠乏症による影響は、末梢神経障害や運動失調、溶血性貧血などが知られています。ただし、ビタミンEは健康な人の場合、欠乏が起こるほど不足するのは稀とされています。
ビタミンEの欠乏症が起こりやすいのは、脂質が適切に吸収されない疾患がある場合などです。ビタミンEを吸収するには、消化管で脂質が必要とされます。
ほかにも、低体重の出生児(1,500 g未満)でも、ビタミンE不足のリスクがあることが知られています。
ビタミンEを過剰摂取するとどうなる?
通常の食品では、ビタミンEの過剰症は起こらないとされています。
ただし、サプリメントなどの健康食品からの過剰摂取は注意が必要です。ビタミンEの過剰症としては、出血傾向になりやすいことが知られており、ケガの際に血が止まりにくくなったり、脳内で出血が起きたりするリスクがあります。
ビタミンEの耐容上限量は、18歳以上の男性で750〜900 mg、女性で650〜700 mgです。サプリメントを使用する際は、目安の使用量を守るようにしましょう。
ビタミンEが豊富な食べ物
ビタミンEは、特に油脂類やナッツ類に多く含まれています。どのような食べ物に豊富に含まれているのか、詳しく見てみましょう。
なたね油やオリーブ油などの油脂類
ビタミンEは油脂のなかでも、特にひまわり油、なたね油、オリーブ油に豊富に含まれています。
▼100 gあたりのビタミンE含有量
食品名 |
含有量 |
ひまわり油 (サンフラワー油)
|
39.0 mg |
なたね油 |
15.0 mg |
オリーブ油 |
7.4 mg |
えごま油 |
2.4 mg |
バター |
1.4 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
スーパーで見かけることの多いキャノーラ油は、なたね油の一種であり、取り入れやすいのではないでしょうか。また、サラダ油の原料にも、なたね油が使われることがあります。
ほかにも、健康に良いとして注目されているオリーブ油も、ビタミンEの補給に役立ってくれるでしょう。
アーモンドやピーナッツなどのナッツ類
ナッツ類のなかでは、特にアーモンドにビタミンEが豊富に含まれています。
▼100 gあたりのビタミンE含有量
食品名 |
含有量 |
アーモンド |
29.0 mg |
ヘーゼルナッツ |
18.0 mg |
ピーナッツ |
10.0 mg |
くるみ |
1.2 mg |
カシューナッツ |
0.6 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
手軽に取り入れられるナッツは、健康づくりや美容の強い味方になってくれます。ただし、カロリーが高めな点には注意が必要です。
ナッツを取り入れる際は、1日あたりの間食の目安である150〜200 kcal以内におさまるよう、20〜25 g程度を目安にすると良いでしょう。
パプリカやかぼちゃなどの野菜・芋類
ビタミンEは色の濃い野菜に多く含まれるのが特徴です。
▼100 gあたりのビタミンE含有量
食品名 |
含有量 |
パプリカ(赤) |
4.3 mg |
かぼちゃ |
3.9 mg |
ブロッコリー |
3.0 mg |
にら |
2.5 mg |
パプリカ(黄) |
2.4 mg |
ほうれん草 |
2.1 mg |
さつまいも |
1.5 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
ビタミンEは脂溶性であるため、油と一緒に摂ると吸収を助けてくれます。野菜や芋類には脂質があまり含まれないため、意識して組み合わせてみましょう。
アボカドやキウイフルーツなどの果物類
ビタミンEは果物にも含まれており、特にアボカドやキウイフルーツに豊富です。
▼100 gあたりのビタミンE含有量
食品名 |
含有量 |
アボカド |
3.3 mg |
キウイフルーツ(黄) |
2.5 mg |
ブルーベリー |
1.7 mg |
キウイフルーツ(緑) |
1.3 mg |
バナナ |
0.5 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
皮を剥くだけで手軽に食べられる果物は、ビタミンEの良い補給源となります。ほかにも、食物繊維やビタミンC、ポリフェノールなど、健康づくりや美容にうれしい栄養素や成分も補給できます。
ツナやうなぎなどの魚介類
魚介類のなかでは、ツナ缶やうなぎ、ぶりなどに豊富に含まれています。
▼100 gあたりのビタミンE含有量
食品名 |
含有量 |
ツナ缶(油漬) |
8.3 mg |
うなぎ |
7.4 mg |
ぶり |
5.5 mg |
銀だら |
4.6 mg |
めかじき |
4.4 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
魚はビタミンE以外にも、DHAやEPAなどの健康づくりに良い成分も含まれるため、積極的に取り入れましょう。
豆乳やチーズなどの豆・乳・卵類
豆乳、鶏卵、チーズなどにもビタミンEが豊富です。
▼100 gあたりのビタミンE含有量
食品名 |
含有量 |
豆乳(調製) |
2.2 mg |
きなこ |
1.7 mg |
大豆(茹で) |
1.6 mg |
鶏卵 |
1.3 mg |
クリームチーズ |
1.2 mg |
プロセスチーズ |
1.1 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
上記の食べ物は、調理の手間が比較的簡単なため、日常的に取り入れやすいでしょう。
ビタミンEたっぷりの「かぼちゃとナッツのサラダ」のレシピ
ビタミンEを豊富に含むかぼちゃとナッツを使った「かぼちゃとナッツのサラダ」のレシピを紹介します。
かぼちゃはビタミンEはもちろん、ビタミンAとビタミンCも豊富です。これらのビタミンは抗酸化作用を持つため「ビタミンACE(エース)」とも呼ばれ、美容効果に注目されています。
マヨネーズと一緒にヨーグルトを使い、ヘルシーに仕上げました。
ナッツの食感が良く、しっかり噛んで食べられるため、歯と口の健康づくりにもぴったりです。
<材料>(2人分)調理時間:15分
- かぼちゃ:1/8個
- 玉ねぎ:1/6個
- ミックスナッツ:20 g
- コンソメスープの素(顆粒):小さじ1/2
- マヨネーズ:大さじ1
- ヨーグルト(無糖):大さじ1
- 塩、こしょう:少々
<作り方>
- かぼちゃは一口大に切ります。玉ねぎは薄切りにします。ミックスナッツは粗く刻みます。
- 耐熱容器にかぼちゃを入れて、水大さじ1(分量外)を加えます。ラップをして電子レンジ(600W)で約2分、やわらかくなるまで加熱します。熱いうちに皮ごとつぶし、コンソメスープの素を加えてよく混ぜ、粗熱を取ります。
- 2、玉ねぎ、ミックスナッツ、マヨネーズ、ヨーグルトを混ぜ合わせ、塩、こしょうで味をととのえます。
<ポイント>
かぼちゃは皮ごと使うことで、栄養素をムダなく摂れます。レーズンやチーズを入れてアレンジするのもおすすめです。
高い抗酸化作用を持つビタミンEを積極的に取り入れよう
ビタミンEの抗酸化作用により、動脈硬化やがんの予防、さらには認知症の予防にも役立つ可能性もあり、研究が進められています。また、若返りのビタミンとして、美容効果にも注目されています。
特に、ビタミンEの豊富な色の濃い野菜はビタミンAやビタミンC、カルシウムなどの栄養素も豊富です。積極的に取り入れて、健康づくりに活用しましょう。