(2024年2月21日公開)
水溶性ビタミンの一種であるビタミンB6は、タンパク質の代謝に関わる栄養素です。免疫機能の維持や、皮膚や粘膜の状態維持にも関わり、健康に欠かせない働きがあります。
この記事では、ビタミンB6の特徴や過不足の影響、豊富な食べ物について解説します。取り入れる際のポイントや、おすすめレシピも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
ビタミンB6の特徴
ビタミンB6は、ピリドキシンやピリドキサール、ピリドキサミンなどの化合物の総称です。摂取量や食品中の含有量には、ビタミンB6の中でもピリドキシン相当量が記載されています。
ビタミンB6の主な働きは、さまざまな酵素と結合してタンパク質の代謝に関わることです。タンパク質の分解やアミノ酸の合成などを担う、100種類以上の酵素の働きを助けています。
健康面では、皮膚や粘膜の健康維持や、神経伝達物質合成の促進、免疫機能に関わるなど、体に欠かせないさまざまな役割があります。
また、食べ物から摂取するだけでなく、一部の腸内細菌が産生することも知られている栄養素です。
ビタミンB6の働き
さらに詳しく、ビタミンB6の働きを見てみましょう。
免疫機能の維持
ビタミンB6は、免疫機能の維持に欠かせない働きがあります。これは、免疫細胞を活性化する成分の合成にビタミンB6も関わっていることが関連しています。
不足すると免疫力が低下することが知られているため、元気な毎日を過ごすためにも意識して摂りたい栄養素です。
貧血の予防
ビタミンB6は赤血球のヘモグロビンの合成に関わる働きがある栄養素です。ビタミンB6の不足によりヘモグロビンが体内に不足すると、貧血の状態になります。
ヘモグロビンは酸素と結びついて全身に酸素を運搬するため、貧血になると息切れや動悸といった症状を引き起こす恐れがあります。
PMS(月経前症候群)の軽減
ビタミンB6はPMS(月経前症候群)の軽減に有効ではないかとして、研究が進められています。これは、心の安定に関わるセロトニンという神経伝達物質の生成に、ビタミンB6が関わっていることが理由として考えられています。
ビタミンB6の摂取により、PMSの症状であるイライラや不安などが緩和されたという報告もあります。今後の研究が期待されています。
妊娠中のつわりの軽減
ビタミンB6は妊娠中のつわりの症状の軽減に役立つ可能性があるとして注目されています。
なぜつわりによいのかは不明ですが、妊娠するとビタミンB6の代謝が亢進して、ビタミンB6が不足しやすいことがわかっています。米国産婦人科学会では、つわりの治療として、医師の管理のもとでビタミンB6を補給することを推奨しているほどです。
ビタミンB6は歯や口の健康を守るためにも必要
ビタミンB6は、歯や口の健康づくりにも欠かせない栄養素です。免疫機能を維持し、粘膜保護の役割もあるため、口の中の状態を健やかに保ってくれます。
また、口角炎、舌炎などの口のトラブルを防ぐためにも必要とされています。
ビタミンB6の1日の摂取量の目安
ビタミンB6の1日に必要な量は下記のとおりです。
▼ビタミンB6の食事摂取基準(1日あたりの推奨量)
年齢 |
男性 |
女性 |
1~2歳 |
0.5 mg |
0.5 mg |
3~5歳 |
0.6 mg |
0.6 mg |
6~7歳 |
0.8 mg |
0.7 mg |
8~9歳 |
0.9 mg |
0.9 mg |
10~11歳 |
1.1 mg |
1.1 mg |
12~14歳 |
1.4 mg |
1.3 mg |
15~17歳 |
1.5 mg |
1.3 mg |
18~29歳 |
1.4 mg |
1.1 mg |
30~49歳 |
1.4 mg |
1.1 mg |
50~64歳 |
1.4 mg |
1.1 mg |
65~74歳 |
1.4 mg |
1.1 mg |
75歳以上 |
1.4 mg |
1.1 mg |
妊婦(付加量) |
ー |
+0.2 mg |
授乳婦(付加量) |
ー |
+0.3 mg |
出典:厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ビタミンB6はタンパク質の摂取量にあわせて必要量も増えます。体格や必要エネルギー量によっても必要量が変わります。
日本人の平均的なビタミンB6摂取量は大きく不足していませんが、ビタミンB6を含む食べ物の摂取量が少ない場合などに不足の心配があります。さらに詳しく、不足の影響を見てみましょう。
ビタミンB6が不足するとどうなる?
ビタミンB6が不足すると、下記の影響が起こる恐れがあります。
- かゆみを伴う湿疹
- 脂漏性皮膚炎
- 口角炎、舌炎
- 免疫機能の低下
- 貧血
- 抑うつ、錯乱
ビタミンB6が不足するのは、ビタミンB6を含む食べ物をとらない食生活を送っている場合や、アルコール摂取量の多い場合が考えられます。アルコールはビタミンの代謝を妨げてしまう上、ビタミンB6と酵素との結合も妨害するため、ビタミンB6が不足しやすい状態となります。
食生活に偏りがある方やお酒をよく飲む方は、後ほど紹介する食べ物を意識して取り入れるようにしましょう。
ビタミンB6を過剰摂取するとどうなる?
ビタミンB6を過剰摂取した場合、神経障害、悪心、胸焼けなどの症状を引き起こすおそれがあります。
ただし、食べ物によるビタミンB6の過剰摂取についての健康被害の報告はありません。そのため、通常の食生活では心配ありません。
サプリメントや医薬品によりビタミンB6を補給する場合は過剰摂取のリスクがあるため、適正量を守るようにしましょう。
ビタミンB6が豊富な食べ物
ビタミンB6が豊富な食べ物について、動物性食品と植物性食品に分けて紹介します。
まぐろや鶏むね肉などの動物性食品
ビタミンB6は魚や肉などの動物性食品に多く含まれる傾向があります。特にタンパク質が豊富な赤身の魚や、赤身の肉に多く含まれています。
▼100 gあたりのビタミンB6含有量
食品名 |
含有量 |
まぐろ |
0.76 mg |
かつお |
0.76 mg |
鮭 |
0.64 mg |
まさば |
0.59 mg |
ツナ缶(かつお油漬) |
0.40 mg |
牛レバー |
0.89 mg |
鶏レバー |
0.65 mg |
鶏むね肉(皮なし) |
0.64 mg |
鶏ささみ |
0.62 mg |
豚レバー |
0.57 mg |
豚ひれ肉 |
0.54 mg |
卵黄 |
0.31 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
ビタミンB6はタンパク質の摂取量が増えると必要量が増えますが、肉や魚にはタンパク質とビタミンB6が豊富に含まれるため、効率的に摂取できます。
毎食、肉や魚、卵などをバランスよく取り入れるようにするとよいでしょう。
ナッツやパプリカなどの植物性食品
ビタミンB6は植物性食品にも含まれますが、動物性食品に比べると含有量が少ない傾向があります。その中でも、ナッツ類や色の濃い野菜に含まれています。
▼100 gあたりのビタミンB6含有量
食品名 |
含有量 |
ピスタチオ |
1.22 mg |
ごま |
0.64 mg |
くるみ |
0.49 mg |
パプリカ(赤) |
0.37 mg |
ブロッコリー |
0.30 mg |
アボカド |
0.29 mg |
さつまいも(皮なし) |
0.26 mg |
パプリカ(黄) |
0.26 mg |
納豆 |
0.24 mg |
かぼちゃ |
0.23 mg |
玄米(めし) |
0.21 mg |
じゃがいも(皮なし) |
0.20 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
大豆製品はタンパク質のよい補給源になりますが、肉や魚に比べるとビタミンB6の量が少なくなっています。肉や魚より大豆製品の摂取が多い方は、上記のような食べ物を意識して取り入れるとよいでしょう。
ビタミンB6を摂取する際に知っておきたいポイント
ビタミンB6はタンパク質の摂取量が多いと必要量が増えますが、肉や魚、卵にはタンパク質とビタミンB6がセットで含まれていることが多いため、不足を心配しすぎる必要はありません。
全身の健康維持や、歯と口の健康を守るためには、ビタミンB6だけでなく、さまざまな食べ物をバランスよく取り入れることが大切です。主食、主菜、副菜の揃ったバランスのよい食事を心がけるようにしましょう。
ビタミンB6たっぷりの「ツナとパプリカの甘辛炒め」のレシピ
ビタミンB6をたっぷり摂れる、ツナとパプリカの甘辛炒めのレシピを紹介します。
手軽に使えるツナ缶は、まぐろよりかつおで作られたもののほうがビタミンB6が豊富です。ビタミンB6をより摂取したい場合は、ツナ缶の原材料がかつおであるかどうか、チェックしてみてください。
また、野菜の中でもビタミンB6が豊富なパプリカもたっぷり使っています。
さらに、ビタミンB6だけでなく、パプリカのビタミンCもたっぷり摂れるため、口や歯の健康、美容にもうれしいメリットが期待できます。
甘辛く炒めた和風の味付けで、ご飯のおかずにも、お弁当にも、作り置きにもぴったりです。
<材料>(作りやすい分量)
- ツナ缶(かつお):1缶
- パプリカ(赤):1個
- パプリカ(黄):1個
- オリーブ油:大さじ1
- めんつゆ(3倍濃縮):大さじ1
- すりごま(白):大さじ1
- ツナ缶は汁気を切ります。パプリカは細切りにします。
- フライパンにオリーブ油を入れ中火で熱し、パプリカを入れて炒めます。
- 2のパプリカがしんなりとしてきたら、ツナを加えてサッと炒め、めんつゆを回し入れ、すりごまを加えて炒め合わせます。
<ポイント>
小さいお子さんが食べる場合は、パプリカがクタっとするまで炒めるようにすると、やわらかくなり食べやすくなります。
作り置きとして保存する場合は、保存容器に入れ、粗熱が取れたら冷蔵庫で保存します。3日を目安に食べ切るようにしましょう。
健康づくりに欠かせないビタミンB6をたっぷり補給しよう!
ビタミンB6は皮膚や粘膜を正常に保ったり、免疫機能を維持したりするなど、全身の健康づくりだけでなく、歯や口の健康にもよい働きをしています。
ぜひビタミンB6を含めたバランスのよい食事を心がけ、元気な毎日を過ごしましょう。