この記事では、ヨウ素の働きや過剰摂取をするときの影響について解説します。お昼ご飯にピッタリのレシピもご紹介します。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料となり、エネルギー代謝や発育に関わる栄養素です。日本はヨウ素の摂取量が多い傾向があり、世界でも稀な国とされています。この記事では、ヨウ素の働きや1日の必要量と上限量、過不足の影響について解説します。ほかにも健康づくりにぴったりな海藻を使った簡単レシピも紹介するので、最後までチェックしてみてください。
ヨウ素の特徴
ヨウ素(元素記号:I、英語:Iodine)はミネラルの一種で、水溶性の栄養素です。ヨウ素とヨードは多くは同じ意味で使われますが、ヨードはヨウ素がイオン化したものを指す場合もあります。
ヨウ素は海水に多く含まれるため、海産物に多く含まれているのが特徴です。食品中には、有機化合物の形で存在しています。
日本は海に囲まれた国であり海産物が豊富なため、日本人はヨウ素の摂取量が多いことが知られています。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に必要であり、私たちにとって欠かせない成分です。
ヨウ素に期待される効果・効能
甲状腺ホルモンの材料
ヨウ素は体内で70〜80%が甲状腺に存在しており、甲状腺ホルモンの構成成分となっています。
甲状腺ホルモンは生殖や成長、発達などに関わり、ほかにもエネルギー代謝を亢進させる役割を担っています。
赤ちゃんの脳・体の成長に必要
甲状腺ホルモンは、妊娠中の方や乳幼児期の子どもの成長に必要な栄養素です。
甲状腺ホルモンは胎児や乳児期の脳の発達に欠かせません。また、骨格などの体の成長・発達にも重要な役割があります。
妊娠中または授乳中にヨウ素が欠乏すると、赤ちゃんの精神や神経へ影響する可能性もあり、発展途上国では問題になっています。
イソジンうがいは口内環境にも良い?
うがい薬でおなじみの「イソジン」はポビドンヨードのことで、ヨウ素を主原料として作られています。
ポビドンヨードは殺菌作用があり、うがい薬だけでなく医療現場でも使われるものです。うがい用のポビドンヨード液を使ってうがいをすることで、口内の殺菌消毒効果が期待できます。
ただし、過度に行なうと歯を溶かしたり、着色したりする上、口内の善玉菌も殺菌しすぎてしまい、口内環境をかえって悪化させてしまうおそれもあります。また、ヨウ素の過剰摂取にもつながりかねません。
うがい薬を使ったうがいは、1日3〜4回程度が目安とされているため、使用する際は製品に記載された目安の回数を守るようにしましょう。
ヨウ素の1日の摂取量の目安
ヨウ素の1日の摂取量の目安は下記の通りです。
▼ヨウ素の食事摂取基準(1日あたりの推奨量)
年齢 |
男性 |
女性 |
1~2歳 |
50 μg |
50 μg |
3~5歳 |
60 μg |
60 μg |
6~7歳 |
75 μg |
75 μg |
8~9歳 |
90 μg |
90 μg |
10~11歳 |
110 μg |
110 μg |
12~14歳 |
140 μg |
140 μg |
15~17歳 |
140 μg |
140 μg |
18~29歳 |
130 μg |
130 μg |
30~49歳 |
130 μg |
130 μg |
50~64歳 |
130 μg |
130 μg |
65~74歳 |
130 μg |
130 μg |
75歳以上 |
130 μg |
130 μg |
妊婦 (付加量)
|
ー |
+110 μg |
授乳婦 (付加量)
|
ー |
+140 μg |
出典:厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2020年版)」
日本人のヨウ素の平均的な摂取量については、国民健康・栄養調査結果での調査項目に入っていないため、はっきりとした量はわかっていません。しかし、現状の摂取量は1,000〜3,000 μgと推定されており、推奨量を大きく上回っています。
ヨウ素が不足するとどうなる?
ヨウ素が不足して欠乏状態になると、甲状腺ホルモンが十分に合成できなくなり、甲状腺腫、甲状腺機能低下などのリスクとなり得ます。
また、妊娠中では死産や流産、赤ちゃんの発育不全などの影響が知られています。
日本はヨウ素が豊富な海に囲まれているため、欠乏することはほぼありません。しかし、海外ではヨウ素の欠乏症が問題となっています。そのため、海外では塩などにヨウ素を添加されており、欠乏症を予防しています。
ヨウ素を過剰摂取するとどうなる?
ヨウ素を過剰摂取しても通常であれば排泄されますが、長期間の過剰摂取により影響が出るおそれがあります。例えば、甲状腺ホルモンの合成を妨げて欠乏症と同じような症状(甲状腺腫や甲状腺機能低下症)や、甲状腺炎、甲状腺がんなどの原因になる可能性が知られています。
ヨウ素の耐容上限量は、18歳以上の男女の場合は3,000 μgです。
日本人の平均的な摂取量は1,000〜3,000 μgとされていますが、日本では通常の食生活でヨウ素の過剰症はほとんどみられていません。日本では伝統的に海藻をよく食べる習慣があることから、影響が表れにくいのではないかと考えられています。
もし、ヨウ素を含むサプリメントを摂取する際は、目安の量を守るようにしましょう。
注意したいのは、妊娠中・授乳中のヨードの上限量は、2,000 μgと低めに設定されている点です。心配しすぎる必要はないとされていますが、赤ちゃんへの影響が知られているため、昆布や昆布だしを毎日のようにたくさん食べる習慣のある方は、少し控えるようにしましょう。
ヨウ素が豊富な食べ物
ヨウ素は海藻類、魚介類に特に多く含まれています。どのような食べ物か、詳しく見てみましょう。
昆布やひじきなどの海藻類
海藻のなかでも、昆布やひじきにはヨウ素が多く含まれています。
▼100 gあたりのヨウ素含有量
食品名 |
含有量 |
刻み昆布(乾) |
230,000 μg |
真昆布(乾) |
200,000 μg |
ひじき(乾) |
45,000 μg |
昆布だし (煮出したもの)
|
11,000 μg |
カットわかめ(乾) |
10,000 μg |
青のり |
2,700 μg |
焼きのり |
2,100 μg |
めかぶ |
390 μg |
もずく |
140 μg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
もし、ヨウ素が気になり減らしたい場合は、たっぷりの水につけて海藻を戻すようにしましょう。ヨウ素は水溶性であり、水に溶け出てくれます。
実際に100gあたりのヨウ素含有量を比較してみると、乾燥した状態のひじきでは45,000 μgに対し、水で戻して茹でた場合は960 μgまで減っています。
たらやさばなどの魚介類
ヨウ素は魚介類のなかでも、下記に多く含まれています。
▼100 gあたりのヨウ素含有量
食品名 |
含有量 |
まだら |
350 μg |
さば |
69 μg |
牡蠣 |
67 μg |
あさり |
56 μg |
まぐろ |
38 μg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
魚介類に含まれるヨウ素の量は、海藻類に比べると少ない量となっています。過剰摂取するほど量を食べられないため、過剰摂取による影響を心配しすぎる必要性は低いといえるでしょう。
栄養豊富なひじきを使った「ひじきとじゃこの梅おにぎり」のレシピ
栄養豊富なひじきを使った「ひじきとじゃこの梅おにぎり」のレシピを紹介します。
ひじきなどの海藻はヨウ素以外にも、食物繊維やビタミンA、カルシウムなどの栄養素が豊富です。また、カロリーが控えめであるため、ダイエットや生活習慣病予防にも役立ちます。
ひじきのふりかけの入ったおにぎりは、噛み応えがアップして、栄養満点のおにぎりになります。
ちりめんじゃこを入れてカルシウムを強化しているので、不足しがちな栄養素の補給にぴったりで、歯と口の健康づくりをサポートしてくれます。
<材料>(2人分)調理時間:10分(ひじきを戻す時間は除く)
- ご飯(温かいもの):適量
- 芽ひじき(乾):10g
- ちりめんじゃこ:大さじ2
- ごま油:適量
- (A)しょうゆ:大さじ1
- (A)みりん:大さじ1/2
- (A)砂糖:小さじ1
- 梅干し:1個(正味約10g)
- いりごま(白):大さじ1
<作り方>
- ひじきはたっぷりの水につけて戻し、水気を切ります。梅干しは種を除き、包丁でたたきます。
- フライパンにごま油を入れ中火で熱し、ひじきを炒めます。ひじきの水分が飛んだらちりめんじゃこを入れてサッと炒めて(A)を加えます。
- 水分が飛んだら梅干し、いりごまを加えて混ぜ合わせます。
- 3を適量ご飯に混ぜて、おにぎりにします。
<ポイント>
余ったら冷蔵庫に入れ、3〜4日保存できます。朝食やお弁当にもぴったりです。
さまざまな食べ物をまんべんなく取り入れよう
ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に欠かせない栄養素ですが、海藻を多く食べる日本人では、欠乏することがないといわれています。一方で、昆布を毎日のようにたくさん食べている場合や、サプリメントを必要以上に摂取している場合では、過剰摂取のリスクもあります。
食事はひとつの食べ物に偏らずに、さまざまな食べ物をバランスよく取り入れるようにしましょう。