この記事では、イノシトールの働きや過不足の影響、豊富な食べ物について解説します。また、生活習慣病対策にもなる、簡単レシピも紹介します。
イノシトールは生体膜を構成する成分であり、脂質代謝や細胞内の情報伝達に関わる働きがあります。また、脂肪肝の予防や、多嚢胞性卵巣症候群による不妊治療に期待されているなど、さまざまな機能が知られている成分です。
イノシトールの特徴
イノシトールは糖アルコールの一種であり、水溶性の成分です。イノシトールは9種類あり、なかでも「ミオイノシトール」にはさまざまな働きが期待されています。
イノシトールは以前はビタミンとして報告されていましたが、体内でもグルコースから合成されることがわかり、現在は「ビタミン様物質」として扱われています。ビタミン様物質とは、ビタミンに似た働きを持つ物質で、必ずしも栄養素として摂取する必要がないものを指します。
また、イノシトールは、イノシトール・リン脂質として生体膜を構成する成分です。さらに、脂質代謝にも関わり、細胞内の情報伝達に関わる働きもあります。
イノシトールに期待される効果・効能
イノシトールには具体的にどのような働きがあるのか、詳しく見てみましょう。
脂肪肝、動脈硬化の予防
イノシトールは脂肪肝を予防する作用があるとされています。イノシトールは脂肪酸合成を抑える働きに関与し、余った糖が脂肪酸に代わり、肝臓に蓄積するのを防いでくれると考えられています。
また、動脈硬化の予防にも効果が期待できるとされ、生活習慣病対策に注目されている成分です。
抑うつ状態、不安症状の改善を期待
イノシトールは神経伝達に関わることから、抑うつ状態・不安症状の改善に役立つ可能性があるのではないかと考えられています。
ただし、うつ病に対するイノシトールの治療効果について、有意な効果が認められなかったという報告もあり、現時点ではまだ根拠が十分でありません。今後のさらなる研究に期待しましょう。
多嚢胞性卵巣症候群、不妊症治療への期待
イノシトールは多嚢胞性卵巣症候群による不妊症への治療に役立つ可能性があることが知られている成分です。
多嚢胞性卵巣症候群では、血糖値を下げるホルモンが効きづらくなる「インスリン抵抗性」が起きやすくなります。イノシトールはインスリンの作用を高めることで、排卵機能を改善するのではないかとして期待されています。
一方で、報告が不十分であるともされているため、サプリメントなどの使用を検討する際は、かかりつけの医師に相談しましょう。
口や歯の健康づくりに関連はある?
イノシトールの一種であるフィチン酸は、抗炎症作用が知られている成分です。そのため、炎症性疾患である歯周病への応用も期待され、研究が進められています。
また、フィチン酸は歯磨き粉に使用されることもあり、歯の光沢や歯を白くするために役立つと考えられています。
フィチン酸については、次で詳しく解説します。
さまざまな効能が知られる類似物質 フィチン酸
フィチン酸はイノシトールとリン酸がくっついたもので「イノシトール6リン酸」といいます。フィチン酸は植物中に存在することが知られており、米ぬか、玄米、オートミール、小麦、大豆、アーモンドなどに含まれています。
フィチン酸の注目すべき作用は、強いキレート作用です。キレート作用とは、金属と結びつく作用のことです。
フィチン酸のキレート作用により、酸化防止や食品の変色・退色防止を目的として食品添加物に使用されています。また、体内の毒素と結びついて排出することから「デトックス作用がある」ともされています。
ただし、一般的な食事の範囲を超えて摂りすぎるとカルシウムや鉄の吸収を妨げるため、注意が必要です。
イノシトールの1日の摂取量の目安
イノシトールは必須の栄養素ではないため、1日の摂取量の目安は決められていません。体内で必要量が合成されると考えられています。
ただし、先ほど紹介した効能については、1日あたり1〜4 g以上投与された場合にみられたものもあります。治療中の方でサプリメントを使用したいと考えている場合は、必ず医療機関に相談しましょう。
イノシトールが不足するとどうなる?
イノシトールは体内で合成されるため、不足のリスクはないとされています。
ただし、実験的に欠乏状態を作り出した場合に、脱毛や発育不全などのリスクがあるといわれています。
イノシトールを過剰摂取するとどうなる?
イノシトールは水溶性の成分であるため、過剰症はみられないとされています。
しかしながら、高用量で投与された場合に吐き気、放屁、下痢などの軽度の胃腸障害がみられる可能性が知られています。
イノシトールが豊富な食べ物
イノシトールは動物性食品にはイノシトール・リン脂質として、植物性食品にはフィチン酸として含まれています。下記はイノシトールを含む食べ物の例です。
【100 gあたりのイノシトール含有量】
食品名 |
含有量 |
アーモンド |
278 mg |
ピーナッツ |
133~304 mg |
グレープフルーツ |
117~199 mg |
えんどう豆 |
116~235 mg |
じゃがいも |
97 mg |
トマト |
34~41 mg |
アスパラガス |
29~68 mg |
マグロ |
11~15 mg |
牛肉 |
9~37 mg |
出典:日本ビタミン学会「ビタミンの事典 」
これらの食べ物はイノシトール以外にも、健康づくりに役立つビタミンE、食物繊維、タンパク質などの栄養補給に役立つものばかりです。生活習慣病の予防や毎日の健康づくりに、上手に活用してみましょう。
脂肪肝や動脈硬化予防、ダイエットにもぴったりの「オートミールのトマトリゾット」のレシピ
イノシトールを含む食べ物を使った「オートミールのトマトリゾット」のレシピを紹介します。
オートミール、アスパラガスはイノシトールを含む食べ物です。オートミールはクセがあるように感じる方も多い食べ物ですが、このようなリゾットにすると、風味が気になりにくく食べやすくなります。
オートミールやアスパラガスから食物繊維をたっぷり摂れるため、脂肪肝や動脈硬化などの生活習慣病の予防や、ダイエットにもぴったりです。
カルシウムやビタミンDなど、歯の健康づくりに良い栄養素も補給できます。
<材料>(2人分)調理時間:10分
- オートミール:60g
- ツナ缶:1缶
- 玉ねぎ:1/4個
- アスパラガス:2本
- オリーブ油:適量
- トマトジュース(食塩無添加):300 ml
- コンソメスープの素(顆粒):小さじ1
- スライスチーズ:2枚
- 粗びき黒こしょう:少々
<作り方>
- ツナ缶は軽く汁気を切ります。玉ねぎは薄切り、アスパラガスは硬い部分を除いて2cm幅の斜め切りにします。
- フライパンにオリーブ油を入れ中火で熱し、玉ねぎを炒めます。玉ねぎがしんなりしたら、ツナ缶を加えてサッと炒めます。
- トマトジュース、コンソメスープの素、オートミール、アスパラガスを加えます。煮立ったら弱火にして、2〜3分煮ます。
- オートミールがやわらかくなったらスライスチーズを加え、溶けたら火を止めます。器に盛り、粗びき黒こしょうをふります。
<ポイント>
オートミールはクイックオーツ、インスタントオーツ、ロールドオーツのいずれかを使いましょう。ロールドオーツは粒感が残りやすく、オートミール初心者でも食べやすくおすすめです。パッケージに表示されているため、チェックしてみてください。
健康のためにさまざまな食べ物を取り入れよう
イノシトールは脂肪肝や動脈硬化の予防、抑うつ状態の改善や不妊症との関連など、多様な働きが注目されている成分です。ただし、健康づくりには単一の成分だけでなく、バランスの良い食事からいろいろな栄養素や成分を摂ることが大切です。さまざまな食べ物を取り入れて、健康づくりを行いましょう。