この記事では、亜鉛の働きと過不足による影響、豊富な食べ物について紹介します。
亜鉛はタンパク質やDNAの合成、細胞の増殖などに関わっています。子どもの成長や免疫機能の維持に関わる働きがあり、生きていく上で必須の栄養素です。亜鉛は牡蠣に多く含まれていますが、それ以外にはどのような食べ物があるのでしょうか。
亜鉛をたっぷり摂れる簡単レシピも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
亜鉛の特徴
亜鉛(元素記号:Zn、英語表記:zinc)はミネラルの一種であり水溶性の栄養素です。
亜鉛は体内に約2,000 mg含まれており、骨格筋、骨、皮膚、肝臓、脳、腎臓などの全身のさまざまな場所に存在します。
また、多くの酵素に含まれており、タンパク質の合成、DNAの合成、細胞増殖などに関わる働きがあります。亜鉛がないと活性化されない酵素もあり、重要な役割を担っているミネラルです。
亜鉛は健康で過ごすために欠かせない栄養素であり、不足によりさまざまな影響が知られています。
亜鉛に期待される効果・効能
亜鉛にはどのような働きがあるのでしょうか。ひとつずつ解説します。
成長に欠かせない
亜鉛はタンパク質やDNAの合成、細胞分裂に関わり、細胞の成長に欠かせない役割があります。細胞分裂が盛んな時期である妊娠中や、乳幼児から小児期、成長期にかけての子どもに必要です。
亜鉛不足により、骨の成長や身長の伸びに関わることも知られており、特に子どもは不足することなく摂りたい栄養素です。
免疫機能の維持
亜鉛は全身の細胞に含まれており、免疫細胞を活性化させる働きがあります。
免疫システムが正常に働くことにより、体内に侵入してきた細菌やウイルスから体を守ってくれています。
抗酸化作用に関わる
亜鉛は抗酸化作用に関わり、健康づくりや美容に役立っています。
抗酸化作用とは、過剰な活性酸素の働きを抑えたり、取り除いたりする働きのことです。活性酸素が増えすぎると細胞にダメージを与えて、老化、免疫機能の低下、がんなどを引き起こす一因となります。
亜鉛は自身が抗酸化作用を持つほかに、活性酸素を取り除く酵素(SOD:スーパーオキシドジスムターゼ)の働きを活性化させることでも、活性酸素によるダメージから体を守ってくれています。
味覚を正常に保つ
亜鉛は味覚を正常に保つ働きがあります。
そもそも味覚は、舌にある味蕾(みらい)細胞に存在する、味細胞によって感じられるものです。亜鉛は味細胞のターンオーバーに必要であり、正常に味を感じられるような働きをサポートしています。
亜鉛の1日の摂取量の目安
亜鉛は1日にどのくらい摂ると良いのでしょうか。1日あたりの推奨量を紹介します。
▼亜鉛の食事摂取基準(1日あたりの推奨量)
年齢 |
男性 |
女性 |
1~2歳 |
3 mg |
3 mg |
3~5歳 |
4 mg |
3 mg |
6~7歳 |
5 mg |
4 mg |
8~9歳 |
6 mg |
5 mg |
10~11歳 |
7 mg |
6 mg |
12~14歳 |
10 mg |
8 mg |
15~17歳 |
12 mg |
8 mg |
18~29歳 |
11 mg |
8 mg |
30~49歳 |
11 mg |
8 mg |
50~64歳 |
11 mg |
8 mg |
65~74歳 |
11 mg |
8 mg |
75歳以上 |
10 mg |
8 mg |
妊婦(付加量) |
ー |
+2 mg |
授乳婦(付加量) |
ー |
+4 mg |
出典:厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2020年版)」
日本人の平均的な1日あたりの亜鉛摂取量は、20歳以上では男性9.2 mg、女性7.7 mgであり、推奨量に対して不足気味です。
亜鉛の過不足の影響について、詳しく見てみましょう。
亜鉛が不足するとどうなる?
亜鉛が不足して欠乏状態になった場合、下記の影響が知られています。
- 味覚障害(味を感じにくくなる・異常な味を感じるなど)
- 食欲不振
- 成長障害
- 慢性下痢
- 皮膚炎
- 性障害
- 免疫機能障害
- 創傷治癒の遅延(傷の治りが遅くなる) など
亜鉛が不足すると、全身にさまざまな影響を与えることがわかります。また、亜鉛不足は下記の場合に起こりやすいことが知られています。
- 食事からの摂取不足
- 消化器疾患などによる亜鉛の吸収低下
- 菜食主義
- アルコールの多飲 など
先ほど紹介した日本人の平均的な摂取量は、すぐに欠乏症の症状が出るほど不足しているとはいえないのですが、偏った食事や食事量が極端に少ない場合は注意が必要です。
また、亜鉛は汗によって失われるため、激しい運動を行う方も不足のリスクがあるといえます。
亜鉛が不足しないよう、後ほど紹介する内容を参考に、さまざまな食べ物を取り入れるようにしましょう。
亜鉛不足が関わる味覚障害の原因や対策について、下記の記事で詳しく解説しています。
亜鉛を過剰摂取するとどうなる?
亜鉛は、通常の食品から過剰摂取が生じることはないとされています。
ただし、サプリメントなどの健康食品により過剰摂取につながるおそれがあるため、注意が必要です。亜鉛の過剰摂取により、下記の影響が知られています。
- 急性の中毒症状:吐き気、胃の不快感、めまい、下痢など
- 長期的な過剰摂取による影響:銅や鉄の吸収阻害、免疫機能の低下など
健康食品を利用する際は、1日の摂取目安量を守るようにしてください。
亜鉛が豊富な食べ物
亜鉛の豊富な食べ物には牡蠣が知られていますが、ほかにどのような食べ物に含まれるのでしょうか。詳しく見てみましょう。
牡蠣やあさり缶などの魚介類
牡蠣の亜鉛含有量は、ほかの食べ物に比べるとずば抜けて優れています。牡蠣は調理が大変かもしれませんが、冷凍のものや缶詰を使うと比較的手軽に取り入れられるでしょう。
ほかにも、下記の魚介類に含まれています。
▼100 gあたりの亜鉛含有量
食品名 |
含有量 |
牡蠣 |
14.0 mg |
桜えび(乾) |
4.9 mg |
あさり水煮缶 |
3.4 mg |
ちりめんじゃこ |
3.0 mg |
しじみ |
2.3 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
あさり水煮缶は手軽に使え、スープや炒め物などに活躍してくれます。
または気軽に使いやすい、桜えびやちりめんじゃこを炒め物や和え物に使うのも良いでしょう。
レバーや牛肉などの肉・卵・乳類
魚介類以外の動物性食品のなかでは、特にレバーや牛肉に亜鉛が豊富に含まれています。
▼100 gあたりの亜鉛含有量
食品名 |
含有量 |
豚レバー |
6.9 mg |
牛ひき肉 |
5.2 mg |
牛肩肉(脂身つき) |
4.5 mg |
牛レバー |
3.8 mg |
チェダーチーズ |
4.0 mg |
プロセスチーズ |
3.2 mg |
鶏卵(全卵) |
1.1 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
安価で調理しやすい牛ひき肉は、良い亜鉛の補給源となってくれます。また、チーズ、卵にも含まれるため、毎日取り入れるようにすると良いでしょう。
ごまやカシューナッツなどのナッツ類
ごまやカシューナッツなどのナッツ類にも、亜鉛が豊富に含まれています。
▼100 gあたりの亜鉛含有量
食品名 |
含有量 |
ごま |
5.9 mg |
カシューナッツ |
5.4 mg |
アーモンド |
3.7 mg |
ピーナッツ |
3.0 mg |
くるみ |
2.6 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
ナッツ類は料理やお菓子づくりに使ったり、そのまま食べたりできるため、亜鉛を手軽に摂りたいときにぴったりです。
ただし、ナッツ類はカロリーが高いため、食べすぎは厳禁です。間食として1日25 g程度を目安にし、ほかの間食は控えるようにすると、安心して取り入れられるでしょう。
高野豆腐や油揚げなどの豆類
高野豆腐、きなこ、油揚げなどの大豆製品は、手軽に亜鉛を補給したいときにぴったりです。
▼100 gあたりの亜鉛含有量
食品名 |
含有量 |
高野豆腐 |
5.2 mg |
きなこ |
4.1 mg |
油揚げ |
2.5 mg |
納豆 |
1.9 mg |
厚揚げ |
1.1 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
なかでもきなこや納豆は、調理が不要で手軽に取り入れられます。きなこは牛乳やヨーグルトに混ぜたり、納豆は朝食で取り入れるようにしたりと、大豆製品を毎日摂れるよう工夫してみましょう。
のりや枝豆などの野菜・きのこ・海藻類
動物性食品や大豆製品に比べると含有量は劣りますが、野菜、きのこ、海藻類にも亜鉛が含まれています。
▼100 gあたりの亜鉛含有量
食品名 |
含有量 |
焼きのり |
3.6 mg |
カットわかめ(乾) |
2.8 mg |
枝豆(冷凍) |
1.4 mg |
とうもろこし |
1.0 mg |
生しいたけ |
0.9 mg |
ごぼう |
0.8 mg |
ブロッコリー |
0.8 mg |
舞茸 |
0.7 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
動物性食品や大豆製品とあわせて、野菜やきのこ、海藻たっぷりの食事を心がけるようにしましょう。
亜鉛たっぷりの「牛肉とたけのこのふんわり卵炒め」のレシピ
亜鉛をたっぷり摂れる「牛肉とたけのこのふんわり卵炒め」のレシピを紹介します。
亜鉛の豊富な牛肉とたけのこ、卵を使った炒め物です。ふんわりとした卵と、シャキシャキとしたたけのこの食感を楽しめ、ボリュームがありお腹も満足します。
オイスターソースでしっかりとした味付けにしているので、おかずにもおつまみにもなるレシピです。
たけのこの歯ざわりが良く、しっかりと噛んで食べられるので、唾液の分泌を促して歯と口の健康を守ってくれます。
<材料>(2人分)調理時間:15分
- 牛切り落とし肉:100 g
- たけのこ(水煮):150 g
- 卵:2個
- いんげん(冷凍):8本
- 塩:少々
- こしょう:少々
- ごま油:適量
- (A)オイスターソース:大さじ1
- (A)しょうゆ:小さじ1
- (A)砂糖:小さじ1
<作り方>
- たけのこは根元は短冊切り、穂先はくし形に切ります。卵は溶きほぐして塩、こしょうを混ぜます。いんげんは凍ったまま斜めに2〜3等分に切ります。
- フライパンにごま油を入れ中火で熱し、卵を入れます。まわりが固まりはじめたら大きくかき混ぜて炒め、半熟の状態で取り出します。
- 2のフライパンに必要に応じてごま油を足し、牛肉を炒めます。牛肉の色が変わったらたけのこ、いんげんを加えてさらに炒めます。
- 野菜に火が通ったら(A)を加えて混ぜ合わせ、2の卵を戻し入れて炒め合わせます。
<ポイント>
たけのこは大きめに切って歯ごたえが出るようにしていますが、お子さんが食べる場合は薄切りにすると食べやすくなります。
お好みで豆板醤を少々加えると、ピリ辛の大人の味わいになります。
牡蠣以外にも豊富な食べ物を取り入れて、亜鉛を補給しよう
亜鉛は健康な体づくりや元気な毎日を送るために欠かせない栄養素です。食事が偏りがちな方、成長期の子どもは特に意識して摂取したいものです。今回は牡蠣以外にもさまざまな食べ物を紹介したので、普段の食事に取り入れて、亜鉛をしっかり補給しましょう。