この記事では、クエン酸の働きや過不足の影響について解説します。また、疲れたときにぴったりの、食欲アップレシピも紹介しています。
クエン酸はエネルギー代謝に欠かせない成分であり、食べ物に含まれるほか、体内でも生成されます。疲労感の軽減や消化の促進など、体にとってうれしい働きが期待されている成分です。
クエン酸の働きと過不足の影響、豊富な食べ物、疲れたときにおすすめのレシピを紹介します。
クエン酸の特徴
クエン酸はレモンや梅干しなどに含まれる、酸味のもととなる成分です。ヒドロキシカルボン酸のひとつであるα-ヒドロキシ酸の⼀種であり、有機酸です。
クエン酸は食べ物に含まれるほかに、体内でも生成されます。エネルギーを作り出す代謝回路のひとつ「クエン酸回路」で生成されており、代謝を円滑にするために欠かせません。
また、クエン酸自体は酸性ですが、クエン酸塩(クエン酸ナトリウム・クエン酸カリウム)として摂取すると、代謝の過程で体内でアルカリとして働くようになります。体内のpHバランスを整える目的や、尿をアルカリ化して尿酸の結晶化を防ぎ、尿路結石を予防する目的で医薬品として使われることもあります。
クエン酸に期待される効果・効能
クエン酸にはどのような働きが期待されているのか、詳しく見てみましょう。
疲労回復を期待
クエン酸は疲労感の軽減が期待されている成分です。これはクエン酸の摂取により、エネルギー代謝が活発になり、疲労回復に欠かせないエネルギーをたくさん生み出せることが理由として考えられています。
最近では、クエン酸を関与成分として「疲労感を軽減する」などとした機能性表示食品が増えてきています。
消化促進・食欲増進
適度なクエン酸の摂取により、唾液や胃液などの消化液の分泌を促して、消化を助けてくれます。また、さわやかな酸味で食欲を促すため、疲れたときのエネルギー補給にも役立ってくれます。
ただし、過度な摂取はかえって胃腸の負担になるおそれがあるため、適度な摂取を心掛けましょう。
ミネラルの吸収促進
クエン酸は、カルシウムや亜鉛などのミネラルの吸収を助ける働きがあります。これはクエン酸の「キレート作用」によるものです。キレート作用により、クエン酸がミネラルと結びついて吸収されやすい形に変化し、体内にミネラルが吸収されやすくなります。
また、クエン酸は鉄を吸収されやすい形に還元し、鉄の吸収を助ける役割もあります。鉄の中でも、植物性食品に多く含まれる「非ヘム鉄」は吸収率が低いため、クエン酸のような吸収を助ける成分を含む食べ物と組み合わせることが大切です。
唾液の分泌を促す
クエン酸の摂取により、唾液分泌が促されます。唾液がしっかり分泌されることは、口の中をきれいに保ったり、感染症を防いだりするのにも重要です。
ただし、クエン酸が含まれる食べ物の多くは酸性です。口内が酸性の状態が続くと、歯のエナメル質を溶かしてしまうおそれがあります。クエン酸を含む食べ物ばかりに偏らないようにし、通常の食事の範囲内で摂取するようにしましょう。
クエン酸の1日の摂取量の目安
クエン酸は体内で作られるため必須の成分ではなく、1日の摂取量の目安や上限量は定められていません。
ただし、クエン酸を含むサプリメントや健康食品を利用する場合は、商品に記載された1日の目安量を守って摂取しましょう。
クエン酸が不足するとどうなる?
クエン酸は体内で作られるため、不足についての懸念は少ないでしょう。
「クエン酸が不足するとエネルギー代謝が滞る(エネルギー不足になる)のでは?」と思うかもしれません。
しかし、エネルギーが作られるために大切なのは、糖質・脂質などのエネルギー源となる栄養素の摂取です。ほかにも、代謝に必要なビタミン・ミネラルも欠かせません。
つまり、クエン酸だけが不足したからといって、エネルギー不足の状態になるわけではないのです。
クエン酸はあくまで補助的な役割と考え、エネルギー不足にならないために、まずはバランスの良い食事を心掛けることが大切です。
クエン酸を過剰摂取するとどうなる?
クエン酸は水溶性であるため体内に蓄積されず、過剰症の心配はないとされています。
ただし、過剰摂取は体の酸とアルカリのバランスを崩したり、ミネラルと結びつくことからミネラルの吸収を妨げたりするおそれがあります。
また、クエン酸を含む清涼飲料水や、レモンやすだちなど酸味の強いものばかりをとりすぎると、口の中が酸性になり歯のエナメル質を溶かしてしまい、むし歯のリスクにつながります。
極端にクエン酸を含む食べ物や健康食品ばかりとるのは避け、普段の食事の中で適度に取り入れるようにしましょう。
クエン酸が豊富な食べ物
クエン酸は酸味のある食べ物を中心に含まれています。また、酸味料やpH調製剤などとして食品添加物としても利用されるため、加工品や清涼飲料水にも含まれています。
クエン酸の含有量について、日本食品標準成分表で測定されている食品は限られていますが、掲載されているものを紹介します。
レモンや梅干しなどの果実類
果実のなかでもレモンのクエン酸含有量がずば抜けて高く、次に梅干しが続きます。レモン1個から絞られる果汁は約30 ml(大さじ2杯分)であり、クエン酸1.95 gを摂取できる計算です。
下記の日本食品標準成分表に掲載されているもの以外にも、みかん・すだち・ゆず・ライム・かぼすなどにもクエン酸が含まれています。
▼100 gあたりのクエン酸含有量
食品名 |
含有量 |
レモン(果汁) |
6.5 g |
梅干し(塩漬) |
3.4 g |
レモン(全果) |
3.0 g |
グレープフルーツ(ルビー・ホワイト) |
1.1 g |
キウイフルーツ(グリーン) |
1.0 g |
オレンジ(ネーブル) |
0.8 g |
いちご |
0.7 g |
パイナップル |
0.6 g |
バナナ |
0.3 g |
アサイー(冷凍) |
0.2 g |
ミニトマトや大豆などの野菜・豆類
野菜や豆類については、ごく一部の食品しかクエン酸の含有量が測定されていません。その中でも、含有量が比較的多いものを紹介します。
また、下記の食品のほかトマト・きゅうり・パプリカなどにも含まれています。
▼100 gあたりのクエン酸含有量
食品名 |
含有量 |
ミニトマト |
0.6 g |
かぼちゃ |
0.2 g |
大豆(茹で) |
0.3 g |
小豆(茹で) |
0.3 g |
クエン酸たっぷりの「豚の塩レモンペッパー炒め」のレシピ
クエン酸の豊富なレモンを使った「豚の塩レモンペッパー炒め」のレシピを紹介します。
レモンの果汁・果肉の両方を使い、さわやかな酸味と風味を楽しめます。クエン酸と合わせて、にんにくがさらに食欲を増進してくれるので、疲れたときにぴったりです。
また、豚肉には糖質の代謝に欠かせないビタミンB1が含まれるため、エネルギー代謝を活発にしてくれます。
アスパラガスの歯ざわりが良くしっかり噛んで食べられ、さらにクエン酸の酸味により唾液の分泌を促して、口の中をきれいに保ってくれます。
<材料>(2人分)調理時間:15分
- 豚こま切れ肉:160 g
- アスパラガス:3~4本
- にんにく:1片
- レモン:1/8個
- (A)酒:大さじ1
- (A)片栗粉:大さじ1
- (A)塩、こしょう:少々
- ごま油:適量
- (B)レモン汁:小さじ2(レモン1/3個分程度)
- (B)酒:小さじ2
- (B)鶏がらスープの素(顆粒):小さじ1
- (B)砂糖:小さじ1/4
- (B)塩:少々
- 粗びき黒こしょう:適量
<作り方>
- 豚肉は大きければ食べやすい大きさに切り、(A)をもみ込む。アスパラガスは硬い部分を除いて斜め切りに、にんにくは薄切りに、レモンはいちょう切りにする。
- フライパンにごま油、にんにくを入れ弱めの中火で熱し、香りが立ったらにんにくをいったん取り出す。中火にして豚肉を広げながら入れ、そのまま触らずに焼き色をつける。
- 豚肉に焼き色がついたら上下を返し、アスパラガスを加えて全体に火を通す。
- 3にレモン、にんにく、(B)を加えて、水分が飛ぶまで炒め合わせる。器に盛って粗びき黒こしょうをふる。
<ポイント>
豚肉は片栗粉をつけることで、お手頃なこま切れ肉でもやわらかく仕上がります。豚肉を広げながら焼くと、カリッと焼きあがります。
お子様向けに酸味・辛味を抑えたい場合は、レモンの果肉を加える前に取り分けて、粗びき黒こしょうは振らないようにしましょう。
バランスの良い食事に合わせてクエン酸を摂取しよう
クエン酸などの成分は、バランスの良い食事を心掛けた上で摂取することで、さまざまな働きが期待できるようになります。
疲れたときにぴったりなクエン酸を上手に活用してください。