この記事では、DHAの特徴や期待される働き、1日の目安量、豊富な食べ物について解説します。
皮膚炎の予防に欠かせない働きのほか、脳の発育や生活習慣病の予防など、多様な効果が期待されているDHAについて解説します。また、DHAをたっぷり摂れて健康づくりにもおすすめできる、簡単レシピも紹介しますので、ぜひ献立に取り入れてみてください。
DHAの特徴
DHAはオメガ3脂肪酸の一種です。正式名称は「ドコサヘキサエン酸」といい、脂溶性の成分です。体内で十分に合成できない脂肪酸のため、必須脂肪酸といわれています。
DHAは、同じオメガ3脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)などとあわせて、皮膚炎を予防する働きや、抗血栓作用、抗炎症作用などがあるとされています。
EPAと異なるのは、DHAが脳の神経組織や目の網膜に多く含まれている点です。DHAは脳の情報の伝達をスムーズにしたり、脳の発育や視力の維持に関わったりしていることが知られています。
EPAについて、詳しくは下記の記事をご参照ください。
DHAに期待される効果・効能
DHAにはどのような働きがあるのか、さらに詳しく解説します。
脳の発育に必要・認知症予防
DHAは脳の神経組織の発育に必要とされる成分です。特に、脳の発育が盛んになる、妊娠中や乳幼児期に必要と考えられています。
また、脳の働きをサポートすることから、学習機能の維持や認知症予防にも効果が期待できるのではないかとして、注目されています。
心血管疾患の予防
DHAはEPAと合わせて、心血管疾患の予防に効果が期待できると考えられています。
これはDHAやEPAに、血液を固まりにくくして血栓を防いだり、血中の中性脂肪を減らしたり、動脈硬化を防いだりする作用が期待されていることが理由です。
生活習慣病の対策として、DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸の摂取が勧められています。
抗炎症作用
DHAから代謝される物質には、炎症を抑える強い作用を持つことが知られています。
炎症を抑えることで、皮膚炎の予防をはじめ、関節リウマチの症状を緩和したり、動脈硬化を防いだりするなどの予防効果が期待されています。
歯と口の健康を守る
DHAを含めたオメガ3脂肪酸は、抗炎症作用を持つことから、炎症性疾患である歯周病との関連が知られています。
実際に、オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)の摂取量が少ない場合に、歯周病の発生や進行のリスクが高くなるという研究報告もあります。
DHAで頭は良くなる?
DHAは脳の発育に欠かせないことから「頭が良くなる」といわれることもありますが、本当なのでしょうか?
確かにDHAは摂取不足により、認知機能や学習機能を低下させる報告があるため、勉強や仕事などをスムーズにする上で大切な成分といえます。しかし、DHAを摂れば摂るほど学習能力が上がるというわけではありません。
学習能力の向上には、さまざまな食べ物をまんべんなくとったり、規則正しい生活や十分な睡眠をとったりするなど、日々の生活の土台を整えることが大切です。DHAだけに期待しすぎず、バランスの良い食事を心掛けるようにしましょう。
DHAを含むオメガ3脂肪酸の1日の摂取量の目安
DHAの1日の摂取量の目安は、単独では示されていません。EPAやα-リノレン酸などと合わせたオメガ3脂肪酸としての目安量が示されています。
▼オメガ3脂肪酸の食事摂取基準(1日あたりの目安量)
年齢 |
男性 |
女性 |
1~2歳 |
0.7 g |
0.8 g |
3~5歳 |
1.1 g |
1.0 g |
6~7歳 |
1.5 g |
1.3 g |
8~9歳 |
1.5 g |
1.3 g |
10~11歳 |
1.6 g |
1.6 g |
12~14歳 |
1.9 g |
1.6 g |
15~17歳 |
2.1 g |
1.6 g |
18~29歳 |
2.0 g |
1.6 g |
30~49歳 |
2.0 g |
1.6 g |
50~64歳 |
2.2 g |
1.9 g |
65~74歳 |
2.2 g |
2.0 g |
75歳以上 |
2.1 g |
1.8 g |
妊婦 |
ー |
1.6 g |
授乳婦 |
ー |
1.8 g |
出典:厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2020年版)」
1日の目安量は、皮膚炎などの予防を目的として示されている量です。2016年に調査された日本人の平均的な摂取量の中央値から算定されています。
最新の2022年の調査によるオメガ3脂肪酸の平均的な摂取量は、20歳以上では男性2.57 g、女性2.12 gであり、大きく不足していないことがわかります。
DHAが不足するとどうなる?
DHAを含むオメガ3脂肪酸が不足して欠乏した状態になると、鱗状皮膚炎、出血性皮膚炎、結節性皮膚炎などの皮膚炎や、成長障害を起こすおそれがあります。
しかし、通常の食生活を送っている場合には、欠乏症が見られるほどの不足するリスクは少なくなっています。これは、オメガ3脂肪酸は青魚以外にも、植物油などのさまざまな食べ物に含まれているからです。
DHA単体での不足の影響は、記憶力や学習能力が低下する可能性が知られています。
DHAを過剰摂取するとどうなる?
DHAを含むオメガ3脂肪酸について、日本では耐容上限量は定められていません。
しかし海外の報告によると、サプリメントなどからEPAとDHAを過剰摂取した場合、げっぷや胸焼けなどの症状や、出血しやすくなったり、免疫機能の低下を招いたりする可能性が知られています。
海外でのEPA・DHAの耐容上限量は、欧州食品安全機関では5g以下、米国食品医薬品局では3g以下とされています。
DHAが豊富な食べ物
DHAは肉や卵にも含まれますが、特に魚介類に豊富に含まれています。魚介類のなかでも、下記のような脂の多い魚に豊富です。
▼100 gあたりのDHA含有量
食品名 |
含有量 |
クロマグロ ・本マグロ(脂身)
|
3,200 mg |
ノルウェーサバ |
2,600 mg |
さんま |
2,200 mg |
イクラ |
2,000 mg |
ぶり |
1,700 mg |
いわし蒲焼き缶 |
1,400 mg |
さば水煮缶 |
1,300 mg |
さんま蒲焼き缶 |
1,200 mg |
うなぎ |
1,100 mg |
さわら |
1,100 mg |
まさば |
970 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
よりムダなくDHAを摂りたい場合は、生で食べられる魚は刺身で食べるのが良いでしょう。加熱によりDHAが流れ出たり、酸化したりするため、生のほうが効率的に摂取できます。
または手軽な缶詰を利用すると、手間をかけずに魚の頻度を増やせるでしょう。
DHAたっぷりの「さばときのこのトマト煮込み」のレシピ
DHAが豊富なさばを使った「さばときのこのトマト煮込み」のレシピを紹介します。
トマト味でさばの臭みが気になりにくく、子どもから大人まで食べやすい味付けです。
さばはDHAはもちろん、EPAも豊富に含むため、オメガ3脂肪酸の補給におすすめできる魚です。今回はさばを煮込んでいるため、流れ出たDHAやEPAもムダなく摂れます。
合わせて野菜やきのこもたっぷりとれ、食物繊維やビタミン、ミネラルなどさまざまな栄養素を補給できます。
さばにはカルシウムの吸収を助けるビタミンDも含まれるため、歯と口の健康づくりにもぴったりです。
<材料>(2人分)調理時間:20分
- さば(半身):1枚
- 玉ねぎ:1/2個
- しめじ:1パック
- トマト缶(カット):1/2缶
- 塩:少々
- こしょう:少々
- 薄力粉:適量
- オリーブ油:適量
- (A)水:100 ml
- (A)酒:大さじ1
- (A)しょうゆ:大さじ1/2
- (A)コンソメスープの素:小さじ1
- (A)砂糖:小さじ1/2
- (A)おろしにんにく:小さじ1/4
- パセリ(乾):適量
<作り方>
- さばは一口大のそぎ切りにします。塩、こしょうを振り、薄力粉をまぶします。
- 玉ねぎはくし切り、しめじは硬い部分を除いてほぐします。
- フライパンにオリーブ油を入れ中火で熱し、1の皮目を下にして並べます。2〜3分焼いて焼き色がついたら上下を返し、空いたところに2を加えてサッと炒めます。
- 3にトマト缶と(A)を加えます。煮立ったら弱火にしてふたをし、ときどきかき混ぜながら約10分煮ます。塩、こしょうで味をととのえ、器に盛ってパセリを振ります。
<ポイント>
トマト缶は、ホールを使用しても問題ありません。トマト缶の酸味が気になる場合は砂糖を少々増やして調節してください。
きのこはエリンギやしいたけなど、お好みのものでOKです。
DHAを含む青魚を増やして、健康づくりを行おう
DHAは脳の働きを維持したり、生活習慣病を防いだりと、健康づくりにさまざまな効果が期待されています。DHAを多く含む魚には、ほかにもEPAや良質なタンパク質、ビタミンDなども含まれており、積極的に取り入れたいものです。
さらに野菜やきのこ、大豆製品なども合わせて取り入れ、バランスの良い食事を心掛けながら、健康づくりを行いましょう。