この記事では、EPAの働きと豊富な食べ物を解説します。生活習慣病の対策におすすめの簡単レシピも紹介します。
EPAは皮膚炎の予防に必要な成分で、生活習慣病対策にも注目されています。血液サラサラ作用や中性脂肪を減らす作用など、さまざまな効果が期待されている成分です。
この記事では、EPAの働きや豊富な食べ物について解説します。また、生活習慣病対策におすすめのEPAをたっぷり摂れる簡単レシピも紹介します。
EPAの特徴
EPAはオメガ3脂肪酸の一種で、脂溶性の成分です。正式名称は「エイコサペンタエン酸」であり「イコサペント酸」ともいわれます。
EPAは皮膚炎の予防に欠かせないほか、生活習慣病対策にも効果が期待されています。
同じオメガ3脂肪酸に、DHA(ドコサヘキサエン酸)があります。EPAと似た作用を示しますが、EPAはDHAより抗血小板作用(いわゆる血液サラサラ作用)や中性脂肪を減らす作用、抗炎症作用が強いといわれています。
オメガ3脂肪酸とは?
オメガ3脂肪酸は、脂肪を構成する脂肪酸の種類のひとつで、n-3系脂肪酸とも呼ばれます。EPA、DHAのほかに、α-リノレン酸が主な種類です。
そもそも脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の大きく2種類に分けられます。不飽和脂肪酸のなかでも、オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸は体内で合成できないため、必須脂肪酸と呼ばれています。
不飽和脂肪酸について、詳しくは
厚生労働省のWEBサイトをご参照ください。
EPAに期待される効果・効能
EPAにはどのような効能が期待されているのでしょうか。詳しく見てみましょう。
血液サラサラ効果(抗血小板作用)
EPAは抗血小板作用、いわゆる血液サラサラ効果が期待されています。
EPAは血液を固まりにくくして血栓を防ぎ、心血管疾患の予防や、心疾患が原因による死亡リスクを下げることが知られています。
中性脂肪の低下・動脈硬化の予防
EPAは肝臓で中性脂肪の合成を妨げ、血中の中性脂肪を減らす作用が知られています。
また、中性脂肪を減らすことと抗血小板作用を持つことから、動脈硬化の予防にもなるのではないかと考えられています。
実際に、EPAは脂質異常の改善を目的として、医薬品としても使用されています。
抗炎症作用
EPAは抗炎症作用が知られており、DHAより強い作用を持つとされています。
炎症はさまざまな病気を招きかねません。炎症を抑えることで、動脈硬化の予防、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の改善、関節リウマチの疼痛緩和など、さまざまな効果が期待されています。
歯周病の改善
EPAの抗炎症作用により、歯周病の改善にも役立つかもしれないと考えられています。歯周病は細菌の感染によって起こる炎症性疾患であるため、EPAによる効果が期待されています。
EPAを含むオメガ3脂肪酸の1日の摂取量の目安
EPAの1日の摂取量の目安は、EPA単独では示されていません。EPA、DHA、α-リノレン酸などを合わせたオメガ3脂肪酸として、1日の摂取量の目安が示されています。
▼オメガ3脂肪酸の食事摂取基準(1日あたりの目安量)
年齢 |
男性 |
女性 |
1~2歳 |
0.7 g |
0.8 g |
3~5歳 |
1.1 g |
1.0 g |
6~7歳 |
1.5 g |
1.3 g |
8~9歳 |
1.5 g |
1.3 g |
10~11歳 |
1.6 g |
1.6 g |
12~14歳 |
1.9 g |
1.6 g |
15~17歳 |
2.1 g |
1.6 g |
18~29歳 |
2.0 g |
1.6 g |
30~49歳 |
2.0 g |
1.6 g |
50~64歳 |
2.2 g |
1.9 g |
65~74歳 |
2.2 g |
2.0 g |
75歳以上 |
2.1 g |
1.8 g |
妊婦 |
ー |
1.6 g |
授乳婦 |
ー |
1.8 g |
出典:厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2020年版)」
この目安量は、皮膚炎などの欠乏症予防のために示されており、2016年に調査された日本人の平均的な摂取量の中央値を用いて算定されています。
2019年の最新の調査結果によると、オメガ3脂肪酸の摂取量は、20歳以上の男性で2.68 g、女性で2.2 gであり、不足していないことがわかります。
また、生活習慣病への効果を期待したい場合は、オメガ3脂肪酸の十分な摂取にあわせて、肉や乳製品などに含まれる飽和脂肪酸の摂取量を減らすことが大切です。
EPAが不足するとどうなる?
EPAを含むオメガ3脂肪酸が不足し欠乏状態になると、鱗状皮膚炎、出血性皮膚炎、結節性皮膚炎などの皮膚炎を起こすことが知られています。
ただし、通常の食生活を送っている場合、オメガ3脂肪酸の不足のリスクは少ないとされています。これは、オメガ3脂肪酸が青魚だけでなく、植物油などの幅広い食べ物に含まれているからです。
ただし、生活習慣病対策を期待するなら、オメガ3脂肪酸のなかでもEPAやDHAを含む魚を食べる機会を増やすことが大切です。魚をあまり食べない人に比べて、多く食べる人は、虚血性心疾患のリスクや、心疾患が原因で死亡するリスクが低くなる可能性があることがわかっています。
EPAを過剰摂取するとどうなる?
日本では、EPAを含むオメガ3脂肪酸の耐容上限量は定められていません。
しかし、サプリメントからの過剰摂取には注意が必要です。海外の報告では、EPAとDHAの過剰摂取により、げっぷや胸焼け、吐き気、軟便といった症状や、出血しやすくなったり、免疫機能の低下を招いたりする可能性が知られています。
海外では、EPAとDHAの1日あたりの耐容上限量が示されており、欧州食品安全機関では5g以下、米国食品医薬品局では3g以下とされています。
EPAが豊富な食べ物
EPAは肉類、海藻類、卵類、乳類などの幅広い食べ物に含まれていますが、やはり魚介類に豊富に含まれています。EPAが豊富な魚介類は下記の通りです。
▼100 gあたりのEPA含有量
食品名 |
含有量 |
ノルウェーサバ |
1,800 mg |
いわし蒲焼き缶 |
1,800 mg |
ミナミマグロ(脂身) |
1,600 mg |
さんま |
1,500 mg |
クロマグロ(脂身) |
1,400 mg |
さば味噌煮・味付け缶 |
1,110 mg |
さんま味付け缶 |
1,000 mg |
ぶり |
940 mg |
さば水煮缶 |
930 mg |
まいわし |
780 mg |
まさば |
690 mg |
うなぎ |
580 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
EPAは、青魚や脂身の多い魚に多く含まれています。いわし、さんま、さばは、缶詰にもEPAが豊富に含まれるため、活用すると良いでしょう。
また、EPAをよりムダなく摂るなら、生で食べるのがおすすめです。加熱すると脂が落ちやすく、さらに酸化しやすくなってしまいます。生で食べられる魚は、新鮮なものを刺身で食べると良いでしょう。
EPAたっぷりの「ぶりときのこのガーリックぺッパー焼き」のレシピ
EPAが豊富なぶりを使った「ぶりときのこのガーリックぺッパー焼き」のレシピを紹介します。
ぶりのうまみと脂を閉じ込められるよう、薄力粉をまぶしてカリッと焼き上げました。EPAを摂れるだけでなく、健康づくりに大切な食物繊維をきのこと長ねぎがプラスしてくれます。
きのこの歯ざわりがよく、しっかり噛んで食べられるため、唾液の分泌を促して口の状態を健やかに保ってくれます。さらに、ぶりとエリンギから、歯の健康づくりに欠かせないビタミンDを補給できるのもうれしいポイントです。
<材料>(2人分)調理時間:15分
- ぶり:2切れ
- エリンギ:1パック
- 白ねぎ:1本
- 塩:少々
- こしょう:少々
- 薄力粉:適量
- オリーブ油:適量
- (A)しょうゆ:大さじ1
- (A)みりん:大さじ1
- (A)おろしにんにく:小さじ1/2
- 粗びき黒こしょう:少々
- 大葉:2枚
<作り方>
- ぶりは一口大のそぎ切りにします。塩、こしょうをふり、薄力粉をまぶします。
- エリンギは乱切り、白ねぎは3〜4cm幅に切ります。
- フライパンにオリーブ油を入れ中火で熱し、1を並べて2〜3分焼き、焼き色がついたら上下を返します。
- 3に2を加えて焼き色をつけながら3〜4分炒め、火が通ったら(A)を入れて煮絡めます。
- 器に盛って粗びき黒こしょうをふり、大葉を添えます。
<ポイント>
お子さんが食べる場合は、粗びき黒こしょうを控えめにするか、ふらないようにしましょう。
きのこはしいたけやしめじなど、お好みのものでOKです。
EPAを含む青魚の摂取で健康づくりを
EPAは健康維持はもちろん、生活習慣病対策に欠かせない成分です。特に肉を食べる機会の多い方は、魚を食べる回数を増やせるよう、工夫してみましょう。
また、生活習慣病対策には、野菜やきのこなどに含まれる食物繊維の摂取や、バランスの良い食事も大切です。さまざまな食べ物をまんべんなく取り入れて、健康づくりを行いましょう。