この記事では、4月が旬の野菜の栄養価、効能を解説します。また、春に登場する「新物」の素材の味わいを楽しめるレシピも紹介します。
4月が旬の新玉ねぎ、新じゃがいも、新ごぼうは、新物ならではのみずみずしさや甘さが特徴の野菜です。おいしさと栄養面のどちらも魅力的な野菜について、詳しく見てみましょう。
生食で効率的に栄養補給「新玉ねぎ」
新玉ねぎは春先から初夏にかけて出回り、もっとも流通が盛んになる3〜4月が旬となります。
普通の玉ねぎは乾燥させて出荷されますが、新玉ねぎは収穫後すぐに出荷されます。新玉ねぎは、普通の玉ねぎとは品種が異なり、みずみずしく甘さを感じる味わいで、生食に向いています。
新玉ねぎは水分が多く傷みやすいため、表面がやわらかいものは避け、先端の部分が硬く、よく締まっているものを選びましょう。また、ずっしりと重みを感じるものは、おいしい証拠です。
栄養素
新玉ねぎと普通の玉ねぎの栄養成分値の大きな違いはありません。文部科学省による日本食品標準成分表には、普通の玉ねぎの栄養成分値のみが掲載されています。
新玉ねぎはカリウム(150 mg/100 g)、食物繊維(1.5 g/100 g)などの栄養素のほか、硫化アリル、ケルセチン、オリゴ糖などの成分を含みます。
新玉ねぎは生で食べられるため、水溶性栄養素であるカリウムや、熱に弱い硫化アリルを効率的に摂取できます。
期待される効能
硫化アリル・ケルセチン:血液サラサラ・動脈硬化の予防を期待
硫化アリルは玉ねぎの辛みや風味のもととなる成分です。ケルセチンは植物に多く含まれるフラボノイドの一種です。これら2つの成分は血小板の凝集を防ぐ、いわゆる「血液サラサラ作用」が期待されています。
また、ケルセチンには強い抗酸化作用があることから、動脈硬化の予防にも役立ちます。
オリゴ糖:腸内環境を整える
玉ねぎには、野菜のなかでもオリゴ糖が多く含まれています。玉ねぎに含まれるオリゴ糖は主に「フラクトオリゴ糖」であり、消化酵素によって消化されにくいのが特徴です。
オリゴ糖は腸内で善玉菌のエサとなって菌数を増やし、腸内環境の改善に役立ちます。
おすすめの調理法
熱に弱く水溶性である硫化アリルやカリウムなどを効率的に摂るなら、新玉ねぎは生で食べるのがおすすめです。辛みが少ないため水にさらさなくても食べられますが、もし水にさらす場合は水溶性の栄養素が減ってしまうためサッと行いましょう。
また、新玉ねぎに含まれるケルセチンは、油との組み合わせで吸収が良くなります。ケルセチンをムダなく摂るなら、油の入ったドレッシングを使うのがおすすめです。また、ケルセチンは熱で壊れにくいため、かき揚げにしたりするなどの調理法が良いでしょう。
皮ごと食べられて栄養豊富「新じゃがいも」
春から初夏が旬である新じゃがいもは、3〜5月頃が一般的な旬です。
はじめは九州産が出回り、その後は関西産、関東産と、収穫地が徐々に北上していきます。
また、7月頃からは北海道産の新じゃがが出回るため、比較的長く楽しめるのが特徴です。
新じゃがいもは収穫後すぐに出荷されるものを指し、普通のじゃがいもと品種が違うわけではありません。みずみずしく皮が薄いので、皮ごと食べられます。
新じゃがいもは、表面に傷がなく、つややかなものを選びましょう。持ったときに重みを感じるものは、おいしい新じゃがいもです。
栄養素
新じゃがいもと普通のじゃがいもの栄養成分値は同じです。
新じゃがいも(皮付き)には、カリウム(420 mg/100 g)、食物繊維(9.8 g/100 g)が含まれ、ビタミンC(28 mg/100 g)やレジスタントスターチも豊富に含まれています。
新じゃがいもは皮ごと食べられるため、皮に多い食物繊維を豊富に摂れるのが魅力的な点です。
期待される効能
新じゃがいもに含まれる栄養素・成分には、下記の働きが期待されています。
ビタミンC:健やかな肌を保つ
新じゃがいもに含まれるビタミンCは、コラーゲンの生成に必要であり、健やかな肌を保つのに欠かせません。また、シミの原因となるメラニン色素の生成を抑える働きがあり、紫外線が強くなる春から夏にかけて、美容面で役立ってくれる栄養素です。
通常、ビタミンCは熱に弱く、加熱により壊れてしまう性質があります。しかし、じゃがいもに含まれるビタミンCはでんぷんに守られているため、熱に強いのが特徴です。
レジスタントスターチ(難消化性でんぷん):腸内環境を整える
レジスタントスターチとは、消化吸収されづらいでんぷんで「難消化性でんぷん」とも呼ばれます。小腸で消化されずに大腸に届き、食物繊維と似た働きをして健康づくりを支える働きが、注目されている成分です。
レジスタントスターチは腸内で善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える働きがあります。
また、レジスタントスターチは、食品を一度冷ますと増える性質があります。加熱することで糊化したでんぷんが冷えて老化し、消化されづらくなることでレジスタントスターチへと変化するのです。
そのため、新じゃがいものレジスタントスターチを効率よく摂りたい場合は、加熱してから冷まして作るポテトサラダや和え物がおすすめです。または、いったん生成されたレジスタントスターチは再加熱によって減らないことがわかっているため、おかずを作り置きしておくのも良いでしょう。
おすすめの調理法
新じゃがいもは皮ごと食べることで、食物繊維などの成分を効率的に摂取できます。
また、腸内環境を整えたい場合は、腸内で善玉菌として働く乳酸菌を含む、ヨーグルト、みそ、チーズなどの発酵食品と組み合わせるのがおすすめです。みそやチーズを使った調理法にしたり、食後にヨーグルトを食べたりすると良いでしょう。
皮もムダなく食べたい「新ごぼう」
新ごぼうの旬は、4〜6月の春から初夏にかけてです。
普通のごぼうの旬は秋から冬ですが、新ごぼうは成長しきっていない若いうちに収穫されます。新ごぼうは普通のごぼうに比べてアクが少なく、身がやわらかくみずみずしいのが特徴です。
おいしい新ごぼうを選ぶなら、ひげ根が多いものは避け、まっすぐなものを選びましょう。また、乾燥しておらずに表面にハリがあるものは新鮮な証拠です。
栄養素
新ごぼうと普通のごぼうの栄養成分値の違いは日本食品標準成分表に掲載されておらず、普通のごぼうと同様と考えられます。
新ごぼうには、カリウム(320 mg/100 g)、マグネシウム(54 mg/100 g)などのほか、食物繊維(5.7 g/100 g)、ポリフェノールが豊富に含まれます。特に食物繊維は、野菜のなかでトップクラスの含有量です。
新ごぼうは皮をこそぎ落とす必要がないため、皮や皮の下に豊富な食物繊維やポリフェノールなどをたっぷり摂れます。
期待される効能
新ごぼうに含まれる栄養素・成分には、どのような働きがあるのか見てみましょう。
食物繊維:整腸作用・生活習慣病の予防
新ごぼうは食物繊維の含有量が豊富なだけでなく、不溶性食物繊維(リグニン)と、水溶性食物繊維(イヌリン)を両方含むのが特徴です。
不溶性食物繊維は、便の量を増やして腸を刺激し、排便をスムーズにする働きがあります。
一方で水溶性食物繊維は、腸内で善玉菌のエサとなり菌数を増やし、腸内環境を整えるのに役立ちます。ほかにも、血糖値の急激な上昇を抑えたり、血中コレステロール値を下げたりするなど、健康への効果も期待されています。
ポリフェノール:抗酸化作用
新ごぼうにはアクの成分である、クロロゲン酸やタンニンなどのポリフェノールが含まれます。
ポリフェノールには抗酸化作用があり、体内で過剰に作られた活性酸素から体を守ってくれます。過剰な活性酸素は細胞を傷つけ、老化、動脈硬化、がん、免疫機能の低下など、さまざまな影響を与えることが知られています。
おすすめの調理法
新ごぼうは皮がやわらかいため、ぜひ皮ごと食べるようにしましょう。皮や皮の下に含まれる、食物繊維やポリフェノールをムダなく摂れます。
また、新ごぼうはアクが少ないため、アク抜き不要で調理できます。水にさらさず、アクに含まれるポリフェノールをたっぷり摂りましょう。
4月が旬の食材を使った「新玉ねぎと新ごぼうのサクサクかき揚げ」のレシピ
4月が旬の食材を使った「新玉ねぎと新ごぼうのサクサクかき揚げ」のレシピを紹介します。
シンプルな味付けのかき揚げは、甘みのある新玉ねぎと新ごぼうの素材の味わいを楽しみたいときにぴったりです。新じゃがいもやなばな(菜の花)など、ほかの春の食材にアレンジもできます。
新玉ねぎや新ごぼうは水にさらさないことで、水に溶けやすいカリウムやポリフェノールなどの水溶性の成分の流出を防ぎます。
しらす干しを入れることで味のアクセントになるほか、カルシウムを強化でき骨や歯の健康づくりにも役立ちます。
かき揚げをサクサクに揚げるには、衣の混ぜ方や水の温度、揚げ方がポイントです。最後にポイントをまとめているため、チェックしてからお試しください。
<材料>(2人分)調理時間:20分
- 新玉ねぎ:1/2個
- 新ごぼう:1/3本(約50 g)
- にんじん:1/4本
- しらす干し:20 g
- 薄力粉:大さじ5
- 塩:小さじ1/4
- 冷水:大さじ3
- サラダ油:適量
- 塩、天つゆ、レモンなど(お好みで):適量
<作り方>
- 玉ねぎは薄切りに、ごぼうはささがきに、にんじんは千切りにする。野菜の水気をキッチンペーパーでよく拭き取る。
- ボウルに1としらす干しを入れ、薄力粉、塩を加えて全体をサッと混ぜ合わせる。冷水を少しずつ加えてさっくり混ぜ合わせる。
- フライパンにサラダ油を1cm程度の深さになるように入れ、170〜180度まで加熱し、2をお玉などですくい、広げながら入れて揚げる。
- 片面が色づいたら上下を返し、色よく揚がったら油をよく切る。お好みで塩や天つゆ、レモンなどを添える。
<サクサクに仕上げるポイント>
- 衣がベチャッとしないよう、野菜の水分はしっかり拭き取るようにしましょう。特に新玉ねぎは水分が多いため、しっかり水気を取ります。
- 衣を混ぜすぎると小麦粉のグルテンが発生して、サクサクになりません。衣に水を加えて混ぜる際は、多少ダマが残っても問題ありませんので、とにかくサッと混ぜるようにしてください。
- 水は常温ではなく、冷水を使うことでグルテンが発生しづらくなり、よりサクッと仕上がります。
- 油の温度をキープしてサクッと仕上げるために、2〜3回に分けて、少しずつ揚げるようにしましょう。
4月が旬の春の食材は栄養豊富で味わい豊か
4月は新物野菜が多く出回る時期です。
甘くてみずみずしく、味わい豊かな野菜を楽しみながら、健康づくりにも活かしましょう。