この記事では、オルニチンの働きやお酒との関係、お酒を飲んだ後に食べたい簡単レシピも紹介します。
オルニチンはしじみに多く含まれている成分です。オルニチンは肝臓の働きを助けるため、お酒を飲む際に良いといわれています。実際に効果はあるのか、また、しじみ以外の豊富な食べ物についても知っておきましょう。
オルニチンの特徴
オルニチン(L-オルニチン)は遊離アミノ酸の一種であり、水溶性の成分です。「アミノ酸」と名前はついていますが、タンパク質を構成しているアミノ酸とは別のものです。
オルニチンは食べ物から摂取できることに加え、体内のアルギニンからも作り出される成分のため、必須の栄養素ではありません。
しかし、オルニチンは肝臓の解毒機能に欠かせないことから、肝機能をサポートする働きがあるとして、さまざまな機能が注目されています。
オルニチンに期待される効果・効能
オルニチンはどのような働きがあるのでしょうか。詳しく解説します。
肝臓の働きをサポート
オルニチンは肝臓でアンモニアを解毒する際に欠かせない成分であり、肝機能をサポートする働きがあります。
アンモニアはタンパク質が代謝される際などに作られ、人にとって有毒な物質です。アンモニアは血液を通して肝臓に運ばれ、無害な尿素に変換されています。アンモニアを解毒する回路は「オルニチン回路」と呼ばれ、オルニチンの働きが欠かせません。
肝臓の正常な働きに欠かせないオルニチンは、肝機能の改善にも役立つのではないかと考えられています。
成長ホルモン分泌促進を期待
オルニチンは成長ホルモンの分泌を促す作用が期待されています。
成長ホルモンは睡眠中に分泌され、子どもでは成長の促進、大人では筋肉を強くしたり、肌のターンオーバーを促したりする働きに関わるホルモンです。そのことから、オルニチンが筋肉増強や肌への効果があるのではないかとして、研究が進められています。
筋肉増強については、オルニチンとアルギニンを併せて摂取して筋力トレーニングを行った際に、体脂肪と体重が減少したという報告があります。肌質の改善については、まだ研究が進んでいる段階のようです。今後の研究に期待しましょう。
疲労回復・睡眠の質の改善を期待
オルニチンはアンモニアの解毒を促すことで、エネルギー代謝を活発にすると考えられています。そのことから疲労回復に役立つとして、近年注目が集まっています。
また、オルニチンはストレス反応を抑える作用があることも明らかになってきました。これにより、睡眠の質を改善させるのではないかと考えられてきています。実際にオルニチンは「睡眠の質を高める」として、サプリメントなどの機能性表示食品が販売されています。
歯と口の健康づくりに関係がある?
オルニチンと歯と口の健康づくりに関して、直接的な関係は知られていません。
ただし、オルニチンは疲労回復や睡眠との関連も知られていることから、元気に毎日を過ごすことをサポートしてくれる成分といえます。
栄養バランスの良い食事を心がけた上で、全身の健康づくりにオルニチンを取り入れるのも良いのではないでしょうか。
オルニチンは本当にお酒に良い?
「お酒にはオルニチンが良い」と聞いたことがあるかもしれません。なかでもオルニチンの豊富なしじみは「二日酔いに良い」と耳にすることがあります。
これはオルニチンに肝臓の働きをサポートする作用があるゆえに、イメージされているようです。しかし、オルニチンやしじみが「二日酔いに良い」という信ぴょう性のある情報を見つけることはできませんでした。
ただし、お酒を飲んだ翌朝の疲労感の改善にオルニチンが良いのでは、と最近では考えられてきています。これは先ほども説明した通り、オルニチンの疲労回復効果によるものです。
具体的には、お酒を飲んだ後にオルニチン400 mgを摂取した際に効果がみられたという報告がありますが、実際にどの程度効果が期待できるのか、まだはっきりとわかっていません。
現時点では、二日酔い対策には「飲みすぎない」「おつまみと一緒に飲む」といった、基本的な対策が効果的でしょう。
オルニチンの1日の摂取量の目安はある?
オルニチンは必須の栄養素ではないため、1日の摂取量の目安は決められていません。
機能性表示食品に含まれるオルニチンは、1日摂取量の目安が400〜800 mgのものが多くなっています。健康食品を利用する場合は、パッケージを確認して、1日の摂取量目安を守るようにしましょう。
オルニチンが不足するとどうなる?
オルニチンが欠乏状態になると、アンモニアが解毒されづらい状況になることが知られています。しかし、オルニチンは体内で生成できる成分のため、不足について心配しすぎる必要はありません。
バランスの良い食事を心がけて、さまざまな栄養素や成分が不足しないようにすると良いでしょう。
オルニチンを過剰摂取するとどうなる?
オルニチンは食べ物にはさほど含まれていないため、通常の食生活で過剰摂取の心配はありません。
ただし、オルニチンを含むしじみエキス含有のサプリメントの過剰摂取により、肝障害を起こした例が報告されています。ほかにも、オルニチンを添加すると、口臭や歯周病の原因となる菌を増やすという報告もあります。
先ほども伝えた通り、健康食品は目安量を守って使用しましょう。
オルニチンが豊富な食べ物
オルニチンといえば、しじみをイメージするかもしれませんが、実はきのこ類にも豊富に含まれています。
▼100 gあたりのオルニチン含有量
食品名 |
含有量 |
ぶなしめじ |
140 mg |
エリンギ |
30 mg |
しじみ |
20 mg |
舞茸 |
10 mg |
出典:ホクト株式会社「
きのこらぼ」
ぶなしめじのオルニチン含有量は、しじみの7倍にもなります。オルニチンをたくさん摂りたいときは、ぶなしめじやエリンギなどのきのこを取り入れてみると良いでしょう。
また、しじみは冷凍すると、オルニチンの量が増加することがわかっています。しじみエキスを-4度で冷凍した場合、オルニチンの量が8倍以上に増加したという報告があるほどです。
冷凍のしじみを利用したり、生のしじみを冷凍保存したりすると、よりオルニチンを摂れるでしょう。
オルニチンたっぷりの「しじみとしめじの旨だしキャベツスープ」のレシピ
オルニチンをたっぷり摂れる「しじみとしめじの旨だしキャベツスープ」のレシピを紹介します。
お酒を飲んだ後に食べたくなる、ホッとする味わいです。しじみ、しめじからオルニチンをたっぷり補給できます。また、アルコールの代謝時に消費されるビタミンCと、胃腸にやさしいビタミンU(キャベジン)をキャベツから摂取できます。またお酒を飲む前に食べてもOKです。
さらに、歯と口の健康に良いビタミンCをたっぷり摂れるのもうれしいポイントです。
<材料>(2人分)調理時間:10分
- しじみ(冷凍):200 g ※生のしじみを使う場合は砂抜きしたもの
- キャベツ:60 g
- しめじ:1/2パック
- 水:400 ml
- 酒:大さじ1
- 白だし:大さじ1
- 塩:少々
- ごま油:少々
<作り方>
- しじみは凍ったままサッと水洗いをします。キャベツはざく切りにし、しめじは石づきを除いてほぐします。
- 鍋に凍ったままのしじみ、キャベツ、しめじ、水、酒、白だしを入れて火にかけ、沸騰したらアクを取ります。
- キャベツがやわらかくなるまで約2〜3分煮て、塩で味をととのえ、ごま油を回し入れます。
<ポイント>
しじみは冷凍された状態で販売されているものもありますが、生のものを買ってきて冷凍保存してもOKです。
冷凍保存する場合は、砂抜きをして水気を取ったしじみを冷凍用保存袋に入れて冷凍します。解凍する際は、凍ったまま鍋やフライパンに入れて加熱してください。3週間程度を目安に使い切りましょう。
お酒はほどほどに!オルニチンは補助的に活用しよう
オルニチンのお酒への効果ははっきりとわかっておらず、補助的に活用しましょう。お酒を飲みすぎないこと、おつまみやほかの水分と一緒に飲むことなど、基本の対策を忘れずに行ってくださいね。
また、疲労回復や睡眠への効果を期待する際も、バランスの良い食事や規則正しい生活を心がけましょう。
【参考】
内沢秀光,シジミの冷凍処理によるエキス成分の変化ー高付加価値化に向けた公設試の試みー,日本食品科学工学会誌, 66(12),443-450, 2019