ミネラルの一種であるクロムは、あまり知られていないかもしれませんが、血糖値のコントロールに強く関わっています。
この記事では、クロムの働きや過不足の影響について解説します。また、豊富な食べ物や、簡単に作れる健康レシピも紹介します。ぜひ最後までチェックしてみてください。
クロムの特徴
クロム(元素記号:Cr、英語表記:chromium)はミネラルの一種で、水溶性の栄養素です。クロムは体内で主に肝臓、脾臓、軟組織、骨に含まれており、血液中にもタンパク質と結合して存在しています。
クロムは体内で、血糖値を下げる作用のある「インスリン」というホルモンの働きを促進したり、炭水化物、脂質、タンパク質の代謝に関わったりしています。
クロムには、3価クロムと6価クロムがあり、食べ物に含まれるクロムは3価クロムです。6価クロムは工業的に使用される形態のクロムであり、毒性が強く中毒症が発生したこともあります。
一方で、食べ物に含まれる3価クロムには6価クロムのような毒性はなく、通常摂取する分には過剰症の心配はないとされています。
クロムは必須栄養素として、1日の目安量が定められていますので、のちほど詳しく解説します。
クロムに期待される効果・効能
クロムにはどのような効果・効能が期待されるのでしょうか。詳しく見てみましょう。
高血糖の改善
クロムは血糖値を下げるインスリンの作用を促すため、血糖コントロールに欠かせない役割があります。
糖尿病の方を対象にした調査では、クロムのサプリメント投与により、血糖値の改善がみられたという報告もあります。
クロムがインスリンに作用する仕組みは、はっきりとわかっていません。しかし、クロムがオリゴペプチドと結合して作られる「クロモデュリン」が関連していると推測されています。
クロモデュリンは、インスリンによって活性化されるインスリン受容体の働きを維持することで、インスリンの作用を強めているのではないかと考えられています。
血中脂質の減少
クロムは脂質やコレステロールの正常な代謝に必要なため、体内の中性脂肪やコレステロールを減らすのに役立つのではないかとして注目されています。
ただし、現時点では研究結果はさまざまです。クロムの投与により中性脂肪値やコレステロール値が低下したという報告もあれば、変化がみられなかったという報告もあり、研究が進められている段階です。今後の研究の成果に期待しましょう。
歯周病予防に関連する
クロムは血糖コントロールに欠かせない役割があるため、口の健康を守るのにも役立ちます。血糖値が高くなる糖尿病では、歯周病のリスクが高まることが知られているためです。
歯周病は、細菌感染によって歯ぐきに炎症が起こっている状態です。高血糖の状態が続くと、細菌への抵抗力の低下や、組織の修復力の低下、口の中の乾燥が起こりやすくなり、歯周病を進行させてしまいます。
歯科治療と関係が深い? 金属クロム
クロムは、歯科治療の詰め物の素材に合金(ニッケル・クロム合金など)として使われています。
クロムには3価、6価以外にも「金属クロム」があり、これが詰め物に使われる種類です。6価クロムと違い、安全性が高いといわれています。
一方で、クロムはアレルギーの原因となる場合があります。
クロムは安価なため使用頻度が高かったのですが、金属アレルギーを起こしやすいことがわかってきました。
これは歯科金属アレルギーともいい、唾液に金属が溶けだしてしまい、体内に吸収されることが原因です。歯科金属アレルギーの症状として、口内の炎症や、全身性の湿疹やかゆみなどが知られています。
最近では、金属を使わない歯科治療の選択肢も増えています。金属アレルギーが気になる場合や症状がある場合は、このような治療を選択肢に入れると良いでしょう。
クロムの1日の摂取量の目安
クロムの1日の目安量は、下記のとおりです。
▼クロムの食事摂取基準(1日あたりの目安量)
年齢 |
男性 |
女性 |
18~29歳 |
10 µg |
10 µg |
30~49歳 |
10 µg |
10 µg |
50~64歳 |
10 µg |
10 µg |
65~74歳 |
10 µg |
10 µg |
75歳以上 |
10 µg |
10 µg |
妊婦 |
ー |
10 µg |
授乳婦 |
ー |
10 µg |
出典:厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2020年版)」
クロムの目安量は、献立に含まれるクロム含有量から日本人の平均摂取量を約10 μgと推定して決められています。18歳未満の小児や乳児については、摂取量に関する十分な報告がないため、目安量は定められていません。
また、日本人の平均的な摂取量は調査されていませんが、通常の食事では不足はないと考えられています。そのため、サプリメントなどで積極的に摂取が推奨されているわけではありません。
クロムが不足するとどうなる?
クロム不足による影響は健康な方では知られていませんが、クロムをまったく含まない完全静脈栄養、高カロリー輸液(静脈を通した高濃度の輸液)を行った際は、不足(欠乏)のリスクがあります。
クロムが欠乏した状態で起こる症状は、高血糖、体重減少、末梢神経障害などです。この場合でも、クロムを補給すると症状が改善されることが知られています。
クロムを過剰摂取するとどうなる?
クロムは、通常の食品からの過剰摂取が起きるとは考えづらい栄養素ですが、サプリメントの不適切な使用により過剰摂取するおそれがあります。
長期に過剰摂取した場合は、おう吐、下痢、腹痛、腎臓や肝臓の障害などの影響が知られています。
クロムの耐容上限量は、18歳以上の男女で500 µgです。サプリメントを使用する場合は、必ず目安の量を守るようにしましょう。
クロムが豊富な食べ物
クロムは大豆製品や野菜、肉、魚などに含まれています。植物性食品と動物性食品に分けて、豊富な食べ物を紹介します。
大豆製品や野菜などの植物性食品
植物性食品に含まれるクロム含有量は下記のとおりです。
▼100 gあたりのクロム含有量
食品名 |
含有量 |
きなこ |
12.0 μg |
がんもどき |
8.0 μg |
油揚げ |
5.0 μg |
木綿豆腐 |
4.0 μg |
アーモンド (フライ・味付け)
|
6.0 μg |
ごま |
4.0 μg |
じゃがいも(皮なし) |
4.0 μg |
水菜 |
3.0 μg |
小松菜 |
2.0 μg |
ほうれん草 |
2.0 μg |
きくらげ(茹で) |
2.0 μg |
生しいたけ |
1.0 μg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
大豆製品、ナッツ類、色の濃い野菜、きのこなどのさまざまな食べ物にクロムが含まれています。
クロムは水溶性であるため、茹でたり水にさらしたりすると、流れ出てしまいやすくなります。ほかの水溶性ビタミンやミネラルも一緒に流れ出てしまうので、ムダなく摂りたい場合は、茹でたり水にさらしたりする時間を短時間にするか、蒸す調理法が良いでしょう。
牡蠣や豚肉などの動物性食品
動物性食品に含まれるクロム含有量は下記のとおりです。
▼100 gあたりのクロム含有量
食品名 |
含有量 |
牡蠣 |
3.0 μg |
あさり |
3.0 μg |
えび |
2.0 μg |
さば |
2.0 μg |
さんま |
2.0 μg |
豚ロース |
3.0 μg |
豚ひき肉 |
2.0 μg |
牛ひき肉 |
2.0 μg |
鶏手羽先 |
2.0 μg |
プロセスチーズ |
2.0 μg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
クロムはさまざまな動物性食品に含まれているため、さまざまな種類をまんべんなく摂ると良いでしょう。
なかでもさばやさんまなどの青魚は、生活習慣病予防に欠かせないEPA・DHAが豊富です。健康づくりに活かしたい方は、積極的に取り入れましょう。
クロムたっぷり&血糖値対策に「にらときのこのヘルシー豆腐チヂミ」のレシピ
クロムをたっぷり摂れ、さらに血糖値が気になる方にもおすすめの「にらときのこのヘルシー豆腐チヂミ」のレシピを紹介します。
クロムが豊富な豆腐は、糖質が少なく血糖コントロールにぴったりの食べ物です。チヂミに豆腐を入れることで、通常より薄力粉や片栗粉の量が少なく済み、糖質をさらにカットできます。
また、にら、しいたけから食物繊維を補給でき、血糖値の急激な上昇を防いでくれます。
にらのシャキシャキとした食感が良く、よく噛んで食べられるので、食べすぎ防止にぴったりです。さらには、唾液の分泌を促してくれ、歯と口にも良い効果をもたらしてくれます。
中はモチモチ、外はカリッとした食感を楽しめ、子どもから大人まで一緒に楽しめるメニューです。
<材料>(2人分)調理時間:15分
- 絹ごし豆腐:150 g
- にら:1/4束
- しいたけ:2枚
- 卵:1個
- 薄力粉:大さじ3
- 片栗粉:大さじ3
- 鶏がらスープの素(顆粒):小さじ1
- ごま油:適量
- ポン酢しょうゆ(お好みで):適量
<作り方>
- にらは3〜4 cm幅に切ります。しいたけは軸を除き薄切りにします。
- ボウルに豆腐を入れて泡立て器などでなめらかになるまで混ぜます。
- 2に卵を入れてよく混ぜたら、1と薄力粉、片栗粉、鶏がらスープの素を加えてさっくりと混ぜます。
- フライパンにごま油を入れ中火で熱し、3の1/2量を入れ、丸く形を整えます。
- 片面2〜3分ずつ焼き、中に火が通ったら取り出し、残りの1/2量も同様に焼きます。お好みでポン酢しょうゆを添えます。
<ポイント>
豚肉やキムチ、チーズなどを加えてアレンジできます。または、もやしやにんじんなどの野菜を加えると、ボリュームたっぷりで満足感が出やすくなります。
クロムは私たちの健康を支える栄養素
クロムというと耳慣れない栄養素かもしれませんが、私たちの健康を支えてくれる、大切な役割のある栄養素です。バランスの良い食事を心がけて栄養不足を防ぎ、元気な毎日を過ごしましょう!