この記事では、食塩の成分でもあるナトリウムの働きと過剰摂取による影響、減塩になるヘルシーレシピを紹介しています。
ナトリウムは生きていくために欠かせない役割がある一方で、過剰摂取による健康への影響が知られている栄養素です。
この記事では、ナトリウムの働きや過剰摂取の影響について解説します。また、ナトリウムを減らすポイントや、ナトリウムの排出を促す減塩レシピも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
ナトリウムの特徴
ナトリウム(元素記号:Na、英語表記:sodium)はミネラルの一種であり、水溶性の栄養素です。
ナトリウムは主に食塩(塩化ナトリウム)として摂取しています。ほかにも、解熱鎮痛剤や胃薬などの医薬品の成分にも含まれていることがあり、身近なミネラルです。
ナトリウムは、血液やリンパ液などの細胞外液のバランスを維持するのに欠かせない役割があり、生命を維持する上で必須の栄養素です。
しかし、過剰摂取による健康への影響が問題視されています。特に日本人は摂り過ぎの傾向があるため、健康のためにも減らしていくことが大切です。
ナトリウムに期待される効果・効能
ナトリウムは体内でどのような働きをしているのでしょうか。詳しく見てみましょう。
水分バランスの調整
ナトリウムの主な役割は、体内の水分バランスの調整です。
体の60%は水分であり、その3分の1は細胞外液です。ナトリウムは細胞外液に溶け込んでおり、細胞外液の量や浸透圧を調整して、全身の水分バランスを調整しています。
神経伝達や筋肉の収縮にも関わる
ナトリウムは、神経や筋肉の細胞膜上にあるナトリウムチャネルを介して細胞内に入り込むことで、神経や筋肉を活動させる働きがあります。神経伝達や筋肉の収縮に関わり、正常な働きを保つことに関わっています。
ナトリウムの摂取は歯と口の健康に関わる?
ナトリウムは歯と口の健康を守るために、過剰摂取を控えたいミネラルです。
ナトリウムの過剰摂取が原因である高血圧になると、さまざまな影響を招きかねません。
例えば、高血圧があると、歯科治療時に使用する麻酔で血圧上昇が起きやすくなり、治療に影響することがあります。また、高血圧の人には歯周病の方の割合が多いともいわれています。
ナトリウムは食べ物以外にも、歯に良いとされているフッ素や重曹などの成分や、ホワイトニング剤に含まれていることがありますが、ナトリウムが直接的に作用しているわけではありません。
ただし、歯磨き粉の成分に含まれる塩化ナトリウムについては、歯ぐきの引き締め効果が期待されています。浸透圧の作用により歯ぐきの水分が抜け、血液循環が良くなると考えられているのです。
歯磨きと塩化ナトリウムの関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ナトリウムの1日の摂取量の目安
ナトリウムは摂り過ぎを避けたい栄養素であるため、抑えるべき目標量が定められています。
ナトリウムは主に食塩の形で摂取するため、食事摂取基準では、1日あたりの目標量がナトリウムではなく食塩相当量で示されています。
▼ナトリウム(食塩相当量)の食事摂取基準(1日あたりの目標量)
出典:厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2020年版)」
日本人の1日あたりの平均的な摂取量は、20歳以上で男性10.9 g、女性9.3 gと、過剰摂取の傾向があります。日本は世界的に見ても食塩摂取量が多く、他国と比較しても大きく上回っている状況です。
生きていく上で最低限必要なナトリウムの量は、WHOのガイドラインにおいて200〜500 mg/日(食塩相当量で0.5〜1.3 g)と推定されており、食塩相当量の目標量は5 g未満としています。
日本人の食塩摂取量は、ゆるやかに減少傾向ではありますが、まだまだ減塩が必要な状況といえます。
ナトリウムが不足するとどうなる?
ナトリウムは通常の食生活を送っていれば不足することはありません。何らかの原因で不足して低ナトリウム血症の状態になると、下記の影響が起こるおそれがあります。
重度の低ナトリウム血症では、生命に関わる事態になる場合もあります。
低ナトリウム血症は、薬の影響、抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH)や心臓・肝臓・腎臓などの病気などが原因で起こる可能性があります。
また、暑い時期やスポーツ時の発汗にも注意が必要です。汗から大量のナトリウムが失われた際に水分だけを補給すると、低ナトリウム血症となるおそれがあります。汗をたくさんかいた際は、水分とともにナトリウムやカリウムなどのミネラルの摂取が必要です。
ナトリウム(食塩)を過剰摂取するとどうなる?
ナトリウム(食塩)の過剰摂取が続くと、高血圧の原因となります。日本人の高血圧の主な原因は、食塩の摂り過ぎだといわれています。
高血圧の状態が続くと、血管が硬くもろくなる動脈硬化の状態となり、狭心症、心筋梗塞、心不全、脳梗塞、脳出血、認知症などのさまざまな影響を及ぼしかねません。
食塩の過剰摂取による影響はほかにも、胃がん、骨粗しょう症のリスクも知られています。
日本人は、食塩の多くをしょうゆ、みそ、塩などの調味料から摂取しています。また、漬物、ハムやかまぼこなどの加工品、ラーメンやうどんなどの麺類といった、食塩の多い食品も摂り過ぎの原因です。将来の健康を守るためにも、食塩を減らす取り組みが大切です。
摂り過ぎになりがちな調味料・減塩に役立つ調味料
先ほども伝えたしょうゆ、みそなどは、食塩の摂り過ぎになりがちな調味料です。下記の調味料は、適量であれば問題ありませんが、たくさん使うのは注意しましょう。小さじ1杯、大さじ1杯あたりの食塩相当量を紹介します。
▼摂り過ぎに気をつけたい調味料の食塩相当量
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
一方で、下記の調味料は食塩の量が比較的少なく、上手に活用すると減塩に役立ちます。
▼減塩に役立つ調味料の食塩相当量
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
最近では減塩タイプの調味料の種類が増えてきており、おいしさをキープして食塩の量を減らせるのが魅力です。ほかにも、ケチャップ、マヨネーズ、バターなどはうまみやコクで料理のおいしさを引き立ててくれます。上手に活用しましょう。
減塩に役立つ食べ物やポイント
食塩を控える「減塩」には、まずは調味料、麺類、加工食品などの食塩の多い食べ物を減らす必要があります。食べる機会が多い方は、量や頻度を見直して少しずつ減らしていきましょう。
その上で、薄味を心がけることも大切です。単に薄味にするだけでなく、薄味でもおいしく食べられる食べ物を活用すると、食事の満足感を高めてくれ、減塩を続けやすくなります。
どのような食べ物を取り入れると良いのか、詳しく見てみましょう。
薬味やスパイス
しょうが、にんにく、わさび、カレー粉などの薬味やスパイスは、料理の良いアクセントになります。調味料を減らしてもおいしく食べられるため、物足りなさをカバーしてくれます。
調理する際に使うのはもちろん、食卓で「ちょい足し」調味料として活用するのも良いでしょう。
酸味のあるもの
レモン、すだち、酢などの酸味のある食べ物を積極的に取り入れてみましょう。食塩が少なくても、酸味が味を引き立ててくれるので、薄味でもおいしく食べられます。
焼いた肉や魚にレモンやすだちをギュッと絞ったり、酢を使った和え物や炒め物を取り入れたりしてみましょう。
うまみのあるもの
うまみのある食べ物は、料理にコクや深みを与えてくれるため、減塩に役立ちます。
うまみの元となる物質はいくつか種類があり、掛け合わせると「うまみの相乗効果」により、さらにおいしさが引き立ちます。
▼代表的なうまみ成分と食材
料理にだし、トマト、チーズなどを上手に活用すると、薄味でも満足感のある仕上がりになるでしょう。
コクのあるもの
ごま油、オリーブ油などの植物油や、牛乳やバターなどの乳製品は、香りやコクがあってうまみを感じやすいため、おいしく減塩したいときに役立ちます。
このような油脂は控えるべきとされていますが、少量を上手に活用すると、減塩の強い味方となってくれます。
例えば、薄味の味噌汁にごま油を少したらしたり、煮物や汁物に牛乳やバターを少量加えたりすると良いでしょう。
カリウム摂取をあわせて行おう
健康づくりには、食塩を控えるとともにカリウムの摂取も大切です。カリウムは、ナトリウムが過剰になった場合に体外に排出してくれるため、血圧を下げる働きがあります。
日本人は平均的なカリウム摂取量も不足しがちなため、意識して取り入れるようにしましょう。
カリウムの働きや豊富な食べ物について、詳しくは下記の記事で解説しています。
減塩・ナトリウム排出におすすめ「さつまいもと大豆のスパイシーサラダ」のレシピ
減塩ができ、さらにナトリウム排出を促すカリウムをたっぷり摂れる「さつまいもと大豆のスパイシーサラダ」のレシピを紹介します。
カリウムの豊富なさつまいもとミックスビーンズを使用し、減塩に役立つマヨネーズ、カレー粉を使って味付けをしています。ヨーグルトを少し加えることでマヨネーズの使用量を減らし、カロリーを抑えました。
ビタミンCや食物繊維をたっぷり摂れ、歯と口の健康づくりにもぴったりのレシピです。
<材料>(2人分)調理時間:15分
- さつまいも:1/2本(約120 g)
- ミックスビーンズ:1/2缶(約50 g)
- (A)マヨネーズ:大さじ1と1/2
- (A)プレーンヨーグルト:大さじ1/2
- (A)カレー粉:小さじ1/2
- 塩:少々
- 粗びき黒こしょう:少々
- パセリ(乾燥・あれば):少々
<作り方>
- さつまいもは皮付きのまま1 cmの角切りにし、水に2〜3分さらして水気を切ります。
- 耐熱ボウルにさつまいもを入れ、ラップをして電子レンジ(600W)で約2分加熱し、粗熱を取ります。
- 2とミックスビーンズ、(A)を混ぜ合わせます。塩、黒こしょうで味をととのえ、器に盛り、あればパセリを散らします。
<ポイント>
お子さんが食べる場合は、カレー粉と粗びき黒こしょうを控えめに調味しておくのがおすすめです。大人の分は、取り分けた後から追加で加えるようにしましょう。
ナトリウムの摂り過ぎを減らして、将来の健康を守ろう
ナトリウム(食塩)の過剰摂取による影響は、長年の積み重ねによって起こります。濃い味付けや食塩の多い食品を好む方は、長年の習慣を変えるのは難しいかもしれません。しかし、できる取り組みをスタートさせることが、将来の健康を守るためにも大切です。今回紹介したポイントのなかから、取り組みやすいものを見つけて実践してみましょう。