(2024年3月14日公開)
ミネラルの一種であるカリウムは、健康づくりだけでなく、私たちが生きていくうえで欠かせない栄養素です。カリウムが不足すると、高血圧を招いたり、ときには重篤な症状につながったりする恐れもあるため、普段の食生活でしっかり摂取しておく必要があります。
この記事では、カリウムの特徴や効能、豊富な食べ物について解説します。また、カリウムをたっぷり摂れる、おすすめレシピも紹介します。
カリウムの特徴
カリウム(元素記号:K、英語表記:Potassium)はミネラルの一種で、水溶性の栄養素です。
体内では、そのほとんどが細胞内に存在しており、主に骨格筋、赤血球、肝臓などの細胞のなかにあります。残りの1~2%は細胞外液中に存在します。
細胞外液とは、細胞の外にある液体の総称であり、血しょう(血液の液体成分)や組織液(細胞の周囲を満たす液体)、リンパ液などがあります。
カリウムの主な働きは、体液の浸透圧の調整、筋肉の収縮、神経伝達などです。カリウムは体内で合成できないため、食べ物から補給する必要があります。
カリウムに期待される効能・効果
カリウムに期待される効能・効果について、さらに詳しく見てみましょう。
血圧の調整
カリウムは、血圧を高くするナトリウム(塩分)を排出する働きがあり、血圧を下げる効果が期待できます。
ナトリウムの摂りすぎにより血液中のナトリウム濃度が高まると、水分を取り込んで血液を薄める作用が働きます。その結果、血液の量が増えてしまい、血管の壁に圧力がかかって血圧が高くなるのです。
カリウムは、過剰になったナトリウムを水分と共に尿中に排出してくれる作用があります。
そのため、血圧低下に役立つ、というわけです。
血圧が高い状態が続くと脳卒中などのリスクになります。そのため、カリウムの摂取量を増やすことにより、脳卒中予防につながることもわかっています。
筋肉の収縮や神経伝達
カリウムは神経や筋肉の機能が正常に働くために必要な物質です。具体的には、筋肉を収縮させたり、神経を興奮させて様々なシグナルを送ったりする働きに関わっています。
血液中のカリウム濃度が高くなったり低くなったりすると、この働きがうまくいかなくなり、不整脈や心停止などを招く恐れがあります。そのため、血液中のカリウム濃度が一定になるよう、体内で常にバランスがとられています。
口や歯の健康との関わり
カリウムは、口や歯の健康を守るためにも不足することなく摂りたい栄養素です。
カリウムが不足すると、食欲不振や脱力感につながることがあります。
食欲不振は、摂取する栄養素が偏ったり、やわらかいものばかり食べたりする原因にもなり得ます。このような状況が続くと、唾液量の低下や顎の機能の低下など、口のトラブルにつながりかねません。
口や歯の健康を守るためにも、カリウムを含めたバランスのよい食事を心がけましょう。
カリウムは知覚過敏に効果がある?
カリウムは「知覚過敏に効果がある」と聞いたことはありませんか?
実は残念ながら、食べ物からカリウムを摂取しても、効果が期待できるかどうかはわかりません。
そもそもこのようにいわれているのは、知覚過敏用の歯磨き粉に「硝酸カリウム」が含まれることが理由として考えられます。歯磨き粉によって歯の神経のまわりに硝酸カリウムが多い状況を作り、神経を興奮させないようにして、知覚過敏の症状が起きないようにする、という仕組みです。
しかし、食べ物から摂ったカリウムが歯磨き粉の硝酸カリウムと同じように作用するかはわかりません。また、研究論文などを探しましたが、現時点では食事から摂取したカリウムが知覚過敏に効果を発揮するかの事例が見つけられませんでした。
カリウムによる知覚過敏への効果を期待するなら、知覚過敏対策の歯磨き粉を活用する方が良さそうです。
知覚過敏対策の歯磨き粉については、こちらの記事をご参照ください。
カリウムの1日の摂取量の目安
カリウムは1日にどのくらい摂取するとよいのでしょうか?
カリウムは高血圧などの生活習慣病予防の観点から、目標量が定められています。
▼カリウムの食事摂取基準(1日あたりの目標量)
出典:厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2020年版)」
日本人の平均的なカリウム摂取量は、15歳以上の多くの年代で不足している状況です。特に20~59歳は7~8割ほどの摂取量であり、生活習慣病予防には摂取量を増やすことが望ましいです。
続いて、カリウムの過不足の影響を見てみましょう。
カリウムが不足するとどうなる?
長期的にカリウムが不足した状態が続くと、高血圧のリスクになります。高血圧予防には、カリウムの摂取や減塩が大切であるため、将来の健康を守るためにも取り組みを行いましょう。
もしカリウムが極端に不足した場合は、低カリウム血症の状態となり、脱力感や食欲不振、呼吸困難感、筋力低下、不整脈などの症状が見られることがあります。
健康であり、通常の食生活を送っていれば心配はないのですが、極端に偏った食事をしている場合は注意しましょう。
カリウムを過剰摂取するとどうなる?
食べ物からカリウムを過剰摂取しても、健康であれば体内のカリウム濃度は一定に保たれるため、過剰摂取になるリスクは低くなっています。
ただし、サプリメントを過剰摂取した場合や、病気などにより腎臓の働きが低下してカリウムの排泄がうまくできていない場合は注意が必要です。カリウムが過剰な状態である高カリウム血症の状態になると、筋力低下、不整脈、ときには心停止につながることもあります。
サプリメントなどの健康食品を使用する場合は、1日の摂取量の目安を守り、過剰摂取にならないように注意しましょう。
カリウムにむくみ予防・解消効果はある?
カリウムは、むくみの原因のひとつであるナトリウム(塩分)を排出してくれるため、むくみ予防や解消の効果が期待できます。
体内にナトリウムが過剰になると、水分をため込んでしまい、むくみの原因となります。塩分を摂りすぎた際にカリウムを意識して取り入れると、むくみをスッキリさせてくれるでしょう。
なお、むくみは運動不足やお酒の飲みすぎでも起こります。カリウムの摂取では解決が難しいため、原因にあわせて対処するようにしましょう。
「カリウム塩(塩化カリウム)」はどんな効果がある?
カリウム塩(塩化カリウム)とは、食塩(塩化ナトリウム)の一部をカリウムに置き換えたものです。少し独特な苦味がありますが、塩気があるため食塩の代わりとして使えます。
カリウム塩は高血圧やむくみの原因となるナトリウムの含有量が少ないため、高血圧やむくみ予防に役立ってくれます。おいしく塩分を減らしたいときに、活用してみるのもよいでしょう。
カリウムが豊富な食べ物
カリウムは動植物の細胞内に含まれるため、さまざまな食べ物に含まれています。カリウムをたっぷり摂りたいときは、カロリーの低い野菜や芋類、果物などを増やすとよいでしょう。
どのような食べ物に含まれるのか、詳しく紹介します。
ほうれん草やにらなどの野菜
ほうれん草やにらなど、色の濃い野菜にはカリウムが豊富に含まれています。
▼100 gあたりのカリウム含有量
食品名 |
含有量 |
ほうれん草 |
690 mg |
枝豆(冷凍) |
650 mg |
にら |
510 mg |
小松菜 |
500 mg |
リーフレタス |
490 mg |
水菜 |
480 mg |
ブロッコリー |
460 mg |
かぼちゃ |
430 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
カリウムは水溶性であるため、茹でると流出してしまいます。効率的に摂りたい場合は、なるべくカリウムを減らさないよう下記の工夫をしてみましょう。
- サッと茹でる
- 電子レンジや蒸し器などを活用する
- 煮汁ごと食べられるスープや煮物にする
- 水にさらす際は短時間(5分程度)にする
また、そのまま食べられる野菜は、加熱調理をせずに生のまま食べるのもよいでしょう。
里芋やさつまいもなどの芋類
芋類にもカリウムが豊富なため、カリウムを増やしたいときはぜひ取り入れてみましょう。
▼100 gあたりのカリウム含有量
食品名 |
含有量 |
里芋 |
640 mg |
さつまいも |
480 mg |
長芋 |
430 mg |
じゃがいも |
410 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
中でも、生のまま食べられる長芋は、カリウムをムダなく摂取したいときにぴったりです。サラダやとろろなどのメニューにするとよいでしょう。
アボカドやバナナなどの果物
加熱調理せずに食べられる果物は、カリウムをムダなく摂れる食べ物です。
▼100 gあたりのカリウム含有量
食品名 |
含有量 |
アボカド |
590 mg |
バナナ |
360 mg |
メロン |
350 mg |
キウイフルーツ(緑・黄) |
300 mg |
ぶどう(皮つき) |
220 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
毎日取り入れやすい、バナナやキウイを意識して取り入れてみるとよいでしょう。
大豆製品やあずきなどの豆類
大豆製品やあずきなどの豆類にも、カリウムが豊富に含まれています。
▼100 gあたりのカリウム含有量
食品名 |
含有量 |
きなこ |
2,000 mg |
大豆(蒸し) |
810 mg |
納豆 |
690 mg |
大豆(茹で) |
530 mg |
あずき(茹で) |
430 mg |
絹ごし豆腐 |
150 mg |
豆乳 |
190 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
きなこの1食あたり(大さじ1杯・7 g)のカリウム含有量は、140 mgほどです。牛乳やヨーグルトなどに混ぜるようにすると、毎日無理なく取り入れられるでしょう。
また、大豆は茹でるより蒸すほうが、水にカリウムが溶けださないので効率的に摂取できます。市販のパックの大豆を購入するときは、蒸し大豆を選ぶとカリウムをたっぷり摂れるでしょう。
ヒレ肉やたいなどの肉類・魚類
肉類や魚類の中でも、脂質の少ないヒレ肉やたいなどの白身魚にカリウムが多く含まれています。
▼100 gあたりのカリウム含有量
食品名 |
含有量 |
豚ヒレ肉 |
430 mg |
鶏ささみ |
410 mg |
牛ヒレ肉 |
380 mg |
たい |
490 mg |
さわら |
490 mg |
まぐろ |
440 mg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
カリウムを増やすために、肉類や魚類を増やすのはカロリーオーバーの心配があるためおすすめできません。
適量を心がけて、バランスよく取り入れるようにしましょう。
フライパンで作る!「鶏と蒸し野菜のごろごろサラダ」のレシピ
カリウムをたっぷり摂りたいときにおすすめの「鶏と蒸し野菜のごろごろサラダ」のレシピを紹介します。
食材を蒸すようにするとカリウムを効率的に摂れますが、蒸し器を用意するのは大変ですよね。このレシピはフライパンで簡単に作れるので、手軽においしくカリウムを補給できます。
材料は、カリウムが特に豊富なかぼちゃとブロッコリーを使い、にんじん、新玉ねぎを使って味や彩りのアクセントにしています。鶏もも肉も一緒に蒸すので、おかずにもなるレシピです。
また、野菜をよく噛んで食べられるので、歯や口の健康づくりにもおすすめです
<材料>(2人分)調理時間:15分
- 鶏もも肉:180 g
- 新玉ねぎ(または普通の玉ねぎ):1/2個
- かぼちゃ:60 g
- にんじん:1/3本
- ブロッコリー:1/3房
- 塩:少々
- こしょう:少々
- 水:50 ml
【ごま味噌だれ】※市販のポン酢やドレッシングで代用可
- みそ:小さじ2
- みりん:小さじ2
- 砂糖:小さじ1/3
- すりごま(白):小さじ2
<作り方>
- 鶏もも肉は一口大に切り、塩、こしょうをふります。新玉ねぎはくし形に切り、かぼちゃは7 mm幅の一口大に切り、にんじんは5 mm幅の輪切りにします。ブロッコリーは小房に分けます。
- フライパンにブロッコリー以外の材料を並べ、分量の水を入れてふたをし、中火にかけます。蒸気が上がったら弱めの中火にし、約6分蒸します。
- 2のフライパンにブロッコリーを入れ、再びふたを閉めて約2~3分蒸します。
- 耐熱容器にごま味噌だれの材料を入れてよく混ぜます。電子レンジ(600 W)で約20~30秒加熱し、3に添えます。
<ポイント>
お好きな野菜でアレンジOKです。れんこんやごぼうなどのシャキシャキとした野菜や、じゃがいもやさつまいもなどを入れてもよいでしょう。
蒸している途中に水分がなくなってしまった場合は、様子を見ながら水を足してください。
カリウムをたっぷり摂って、健康的できれいな毎日を!
カリウムは全身だけでなく、歯や口の健康づくりや、美容にも役立ちます。野菜や果物などが不足しがちな方は、ぜひ増やしたい栄養素です。たっぷりの野菜やバランスのよい食事を心がけ、カリウムをしっかり摂取しましょう。