塩歯磨きに効果はある? 実際しても良い? 悪い?

塩歯磨きに効果はある? 実際しても良い? 悪い?

(2024年1月23日公開)
塩で歯を磨く「塩歯磨き」は、歯周病の予防や口内環境の改善に良いとされています。一方で、塩歯磨きには多くの誤解もあります。今回の記事では塩歯磨きのこと、そのメリットやデメリットについてもご紹介します。

               

塩歯磨きとは?

「塩歯磨き」について、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

これは、塩を使った歯磨きのことで、歯磨き粉の代わりに調理用の食塩を使用して歯を磨きます。
日本に仏教が伝来したと同時に伝わったとされており、塩の殺菌作用や、浸透圧による歯ぐきの引き締め効果を見込んだ歯磨き方法です。

昔は歯磨き粉の代用として使われていた

塩を歯磨き粉の代用とする歯磨き方法は、現在のような歯磨き粉の利用が一般的になるまで使われてきた方法です。

塩の粒子によって汚れが取れる、塩の刺激により唾液を分泌させて口内をキレイにする、という考えによって生み出されました。この名残から、現在でも塩を歯磨きに使っている方や、歯ぐきの引き締め効果を見込み、塩を歯磨き粉として使ったほうがいいという意見があります。

そもそも歯磨き粉の目的とは

では、そもそも歯磨き粉はどのような目的があって使っているでしょうか。

本来の歯磨き粉の目的は、歯についた歯垢(プラーク)を効果的に落とすことです。
また、歯磨き粉の薬用成分によって得られる様々な効能も歯磨き粉を利用する目的の一つです。

歯磨き粉は、日本薬事法により「化粧品」と「医薬部外品」の2種類に分類されています。基本成分だけの歯磨き粉は化粧品に分類され、ここに薬用成分が加えられたものが医薬部外品の歯磨き粉です。

基本成分は、歯の汚れやステインを落とす清掃剤(研磨剤)、歯磨き粉を泡立たせ口内に拡散させる発泡剤、爽快感や香りをつける香味剤などが該当します。

薬用成分には、むし歯や歯周病の予防、歯のホワイトニング、着色や口臭の予防、口の中の浄化など、口内にとって良い効果が期待できる様々な成分があります。主な薬用成分には、むし歯を予防するフッ化物があります。

歯についた歯垢を効果的に落とす

歯磨き粉を利用する目的は、むし歯や歯周病の原因となる、歯についた歯垢を落とすことです。このため、ブラッシングがしっかりできていて、歯垢も落としきれていれば、歯磨き粉を利用する必要がありません。

しかし、歯垢を落としきれるまで正しく丁寧に歯磨きができている方は少ないです。そこで、効果的に歯磨きをするためには、歯垢除去の成分である清掃剤や発泡剤を含んでいる歯磨き粉の利用が推奨されます。

歯磨き粉が手に入りにくい時代はこの清掃剤の代用品として塩を使用していました。

口内環境に良い成分を届ける

前述の通り、歯磨き粉に含まれる薬用成分には様々なプラス効果があります。口内環境を良くする薬用成分の代表的なものをご紹介します。

フッ化物(フッ素)

むし歯予防のはたらきがあります。フッ化物にはモノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズがあり、幼児から高齢者まで使える成分です。

殺菌・抗菌成分

塩化クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム(CPC)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)などは殺菌・抗菌効果があり、歯肉炎でお悩みの方にもおすすめです。ほかにも、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、ラウロイルサルコシン塩(LSS)などが同様の効果を持つ薬用成分としてあげられます。

抗炎症成分

トラネキサム酸、グリチルリチン酸ジカリウム、β-グリチルリチン酸、ビタミンE、塩化ナトリウム、ε-アミノカプロン酸などの薬用成分には腫れを引かせる抗炎症作用があります。歯肉の炎症を抑えるため、歯肉炎、歯周病予防に役立ちます。
塩化ナトリウムは食塩のことであり、歯磨き粉に含まれる塩には抗炎症作用が期待されています。

ホワイトニング成分

ポリリン酸ナトリウム(短鎖ポリリン酸、EXポリリン酸、分割ポリリン酸)、ポリエチレングリコール、ヒドロキシアパタイト、この3つは歯を白くする薬用成分です。着色汚れを落としたり、たばこのヤニ汚れを溶かしたり、歯の小さな傷を埋めて歯の表面を整えたりすることで、歯の表面を傷つけることなく、着色を落とします。

塩で歯を磨くのは 良い? 悪い? 効果は? 

では、塩で歯を磨くことは歯に良いのでしょうか。

先に結論を申し上げますと、塩歯磨きは必ずしも歯によい効果はありません。それどころか歯や歯ぐきに悪い影響をおよぼすことも見込まれます。
歯周病予防、むし歯予防、殺菌効果が目的なら、基本的には歯磨き粉で磨くことをおすすめします。

十分な効果が得られる確証はない

塩には、粒子が歯ぐきに適度な刺激を与えるマッサージ効果や、塩が水分を抜き取ることによる殺菌効果、歯ぐきの血管を縮める引き締め効果があります。
これまでの研究で、塩を配合した歯磨き粉による効果の報告も多くあります。

しかしながら、塩単体による歯磨きの効果がどれだけあるのかは不明確です。

塩にある程度の効果はあると認めている歯科医師もいますし、塩を薬用成分として含む歯磨き粉もあります。
塩歯磨きをするならば、塩単体を歯磨き粉として使用するよりも、塩とそのほかの薬用成分を含む歯磨き粉を使うことが推奨されています。

歯や歯ぐきに悪い影響をおよぼす

「塩で歯磨きをするとメリットもあるのでは?」と思われますが、実際は悪影響のほうが大きいです。

塩の結晶は硬くて荒く、刺激が強いです。すでに炎症が起きている歯ぐきは傷付きやすいため、塩で傷つけることで出血を引き起こします。
また、生物学的には水分を抜き取ることで殺菌作用が見込まれますが、口内には多くの水分があるため、十分な効果は期待できません。

塩を使った歯磨きの使用は、過剰な塩分を摂取することにもつながります。詳細は次のデメリットの項目で詳しく解説します。

基本的には歯磨き粉で磨くべき! 

塩で歯を磨くと、歯周病予防などのメリットは思ったようには得られません。
反対に口内を傷つけて歯や歯ぐきに悪い影響があったり、過剰な塩分摂取などのデメリットにつながったりするため、基本的には歯磨き粉を使って歯を磨くべきです。

塩で歯を磨くことによるデメリット

塩歯磨きをすることで歯や歯ぐきに与える悪い影響は主に4つあります。
  • 歯ぐきを傷つける可能性がある
  • 歯ぐきに炎症がある場合は腫れにつながる
  • 塩の粒子により磨いている際に痛みが出る
  • 塩分の過剰摂取につながり健康にも悪影響がある
それぞれについて詳しくご紹介します。

歯や歯ぐきを傷つける可能性がある

塩の結晶はとても硬いため、塩で歯を磨くと歯ぐきを傷つけるおそれがあります。
歯ぐきが傷つくと細菌に感染しやすくなり、炎症を引き起こしてしまい、悪化をすれば歯を支える力が弱くなることも考えられます。

歯ぐきに炎症がある場合は腫れにつながる

歯ぐきに炎症があるときに塩を使って歯磨きをすると、弱っている歯ぐきを傷つけてしまいます。硬い塩の結晶によって歯ぐきから出血し、その結果、かえって歯ぐきの腫れにつながります。

また、塩歯磨きには殺菌力はないため、殺菌効果を期待してひどい炎症に塩を使うことは逆効果です。
歯ぐきの炎症は、細菌が繁殖して歯垢が蓄積したことが原因です。この改善には、歯垢の除去が必要ですが、歯ぐきの溝に入り込んだ歯垢は歯磨きでも取りきれません。
歯科医院で治療をしてもらいましょう。

塩の粒子により磨いている際に痛みが出る

食塩の粒子は、平均0.4 mm程度の大きさです。唾液で溶けるまでに硬い粒子が歯ぐきを傷つけるため、塩で歯を磨いている際に痛みが生じます。

塩分の過剰摂取につながり健康にも悪影響がある

塩を使って歯磨きをすると、多少なりとも歯ぐきから塩分を吸収してしまうため、高血圧で塩分を控えている方は注意が必要です。
歯磨きで塩分を摂取することで、高血圧の症状の悪化や、腎臓疾患の発症のおそれがあります。

おすすめは塩配合の歯磨き粉

塩を単独で使用すると、歯ぐきを傷つけて腫れや痛みが発生したり、塩分の過剰摂取につながったりするなどのデメリットがあります。
塩の引き締め効果などを生かしつつ、これらのデメリットを小さくするには塩が配合された歯磨き粉の使用がおすすめです。

塩配合の歯磨きのメリット

塩には、歯ぐきの引き締め効果や血行を促進する作用が見込まれます。
一方で、塩単体による歯周病予防の効果は不明確です。また、歯磨き粉に含まれる研磨剤と比べてホワイトニング効果も期待できません。

塩配合の歯磨き粉を使用することで、塩によるメリットに加え、ほかの薬用成分で歯周病やむし歯の予防、殺菌効果やホワイトニング効果を付加することができます。

塩配合歯磨き粉の選び方

塩が配合された歯磨き粉を選ぶポイントは、塩の効果に加えて、ほかの薬用成分にどんな効果や効能を期待するかです。

塩よる歯ぐきの引き締め効果に加えて、求める効果がむし歯予防ならフッ素配合のもの、歯周病予防なら殺菌効果のあるもの、歯を白くしたいならホワイトニング成分配合のものを選ぶとよいでしょう。

塩や歯磨き粉がない場合でも効果的な歯磨きの仕方

正しい歯の磨き方をすれば、歯磨き粉がない場合でもむし歯の予防効果が見込まれます。
歯並びにあわせて1か所20回以上磨くようにしましょう。
その際の磨き方のポイントは次のとおりです。

磨き方のポイント

  • ペンのような持ち方で力を掛けずに持つ
  • 歯に押し付けず毛先が広がらないような軽い力で磨く
  • 小刻みに歯ブラシを5~10 mmほどの幅で動かして1本か2本ずつ磨く
  • 毛先を歯と歯の間や歯と歯ぐきの境目にもあてて磨く
ポイントに加えて、磨き方の工夫もご紹介します。

磨き方の工夫

  • 背の低い奥歯:斜め横から入れて細かく歯ブラシを動かす
  • でこぼこの歯:歯ブラシを縦にして1本1本細かく上下に動かす
  • 歯ブラシの角度:歯ぐきに角度45°であてて5 mmほどの幅で動かして磨く
歯磨きの力加減についてはこちらの記事も参考にしてください。
歯科衛生士の方に、適切な歯磨き圧について検証をしてもらいました。

まとめ

塩には、一定の抗炎症効果や歯ぐきの引き締め効果があるとされています。一方で、歯周病やむし歯の予防効果については不明確です。

歯磨きの一番の目的は、むし歯や歯周病を防ぐために歯垢を落とすことです。
そのためには、塩単体で歯磨きをするよりも、塩とそのほかの薬用成分が含まれている歯磨き粉の使用をおすすめします。

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