その気になる口のニオイはむし歯かも!むし歯が原因の口臭について徹底解説

その気になる口のニオイはむし歯かも!むし歯が原因の口臭について徹底解説

(2024年2月27日公開)
口臭を指摘されたり、マスクをして口臭が気になったりするのは、むし歯が原因かもしれません。本記事では、むし歯によって口臭が起きる仕組みと対策、歯科医院での治療が必要な理由、むし歯以外の口臭が発生する病気などについて解説します。

               

むし歯による口臭はどんなニオイ?

むし歯による口臭は、一般的に腐敗臭や硫黄臭に近いとされています。生ごみやドブ、もしくは卵が腐ったニオイと例えられることもあり、こうしたニオイが生じている場合は、むし歯による口臭を疑いましょう。

進行したむし歯の場合は、歯内部の神経や血管に細菌が感染・繁殖し歯の内部や血管に含まれるタンパク質を分解することで、硫黄のようなニオイがすることもあります。

むし歯でニオイが発生する原因を進行度ごとに説明

むし歯は、ごく初期から「軽度」「中等度」「重度」「最重度」へと症状が進行していきます。むし歯の各段階によって、口臭の原因となるものも異なります。

【軽度】歯の表面の色が変わる

ごく初期~軽度のむし歯は、歯表面のエナメル質が黒ずんでいる状態です。まだこの状態でも、食べ物の残りが詰まってニオイが発生することがあります。

【中等度】食べ物の残りがむし歯の穴に詰まる

中等度は、エナメル質の奥にある象牙質までむし歯が進んだ状態です。冷たいもの・甘いものがしみるだけでなく、ときどき痛みもあります。この段階になると、歯に穴が開くこともあります。このむし歯によって空いた穴は細菌が繁殖しやすい環境です。そこに食べカスが残ると、細菌によって分解され、その際に生ごみのようなニオイの元であるガス(揮発性硫黄化合物)が発生します。これが中等度まで進行したむし歯からする口臭の原因です。

この段階では、食べ物の残りをしっかりと除去し、口の中を清潔に保つことで、ニオイの発生を抑えられます。

【重度】歯の神経が壊死する

重度になると、歯の大部分が溶けてなくなります。歯の神経までむし歯が進行し、冷たいもの・甘いものだけでなく、熱いものもしみるようになります。何もしていなくても、ズキズキと激しい痛みが生じることもあります。

この段階では、歯の神経が壊死して腐敗するおそれがあります。その際には、卵が腐ったような強いニオイを発します。これは「病的口臭」と呼ばれ、速やかに口臭の原因になっている壊死した歯の神経を歯科医院で治療しなければいけません。

【最重度】歯根(歯の根元)に膿がたまる

歯根まで達したむし歯が、最重度のむし歯です。歯の大部分が溶けてなくなり、歯根まで細菌が入り込み、炎症を起こしている状態です。

神経が完全に壊死することで痛みはほとんど感じなくなります。ですが、歯根に膿がたまれば再び痛みが生じます。この膿は、白血球や壊れた組織、死んだ細菌などが混ざった液体で、強いニオイを発します。

ここまで進行すると、多くは抜歯が必要になります。ただし、歯や歯根が残っている場合には、根管治療によって歯を残せる場合もあります。根管治療とは、細菌に冒された神経を除去し洗浄・消毒する治療です。いずれにしても、たまった膿によるニオイは、歯科医院で適切な治療を行わなければ改善しません。歯の機能にも大きな問題が出るので、速やかに受診しましょう。

むし歯による口臭を治したいなら歯科医院での治療が必要

むし歯は口臭の原因となるだけでなく、口内から全身に細菌などが回ることでさまざまな悪影響をもたらします。早期であればあるほど治療の負担も減り、残せる歯も多くなるので、なるべく早く歯科医院を受診しましょう。

定期検診を受けて早期治療を行う

前述のとおり、むし歯は進行するにつれてニオイが強くなります。特に歯根に膿が発生する状態ともなれば、ひどい口臭だけでなく、歯がぐらぐらして食事の際に支障が出たり、顔の腫れにもつながったりします。細菌が歯から血管に入れば、敗血症や心臓疾患などの命に関わるような疾患につながるおそれもあります。そのため、定期的に歯科検診を受けることが大切です。磨き残しが出やすい場所・むし歯になりやすい箇所をふまえた歯磨きの方法などを聞いて、日々の予防に努めましょう。もし、むし歯ができていても、こまめに検診を受けていれば、早い段階で発見・治療できます。

むし歯が初期であれば、ニオイも含めてより早く改善につなげられます。それと同時に、ニオイを引き起こす細菌の繁殖場所もクリーニングしてもらいましょう。むし歯による強い口臭だけでなく、口内が不衛生な状態で起きる口臭も軽くできます。

むし歯による口臭は自分だけで改善できない

むし歯による口臭は、むし歯自体を治療しないと根本的な解決にはなりません。初期の段階であれば、歯を削ることなく元の状態に戻すこともできます。それ以上進行していても、歯の神経まで及んでいないのであれば、歯を抜くことは基本ありません。プラスチックの詰め物や銀歯などの被せ物をして治療は終わります。

ただ、歯の神経まで細菌に冒されている場合は、根管治療や抜歯が行われます。いずれにせよ、痛みに配慮した治療を受けられるので、それ以上進行させないためにも、早めに歯科医院を受診しましょう。

むし歯による口臭を一時的に和らげる方法

できるだけ早く歯科医院で適切な治療を受けることが大前提です。ですが、仕事などすぐに受診できないことも多いでしょう。それまでの間、一時的に口臭を和らげるには次の方法が有効です。

こまめに水分を補給する

むし歯が初期であれば、こまめに水分を補給することで、口臭を一時的に抑えられます。口の中が乾燥すると、細菌の増殖を抑える役割がある唾液の量が減少し、口臭が強くなります。こまめに水分を補給して、唾液の量をしっかりと保つようにしましょう。

特に、朝起きたとき、長時間話したときなどは、口が乾きやすくなります。こういった場合は、意識して水分を摂るようにしてください。ただし、重度以上に進行したむし歯による口臭には効果がありません。

マウスウォッシュで口をゆすぐ

マウスウォッシュには、口臭の原因となるガスの発生を抑制する効果があります。日常的に使う場合、口臭の原因となる細菌やガスを抑制する、亜塩素酸ナトリウムや二酸化塩素、塩化亜鉛といった成分が配合された製品を選ぶようにしましょう。特にミントなどの清涼感がある香りの製品を使用すれば、口臭を一時的に覆い隠しやすくなります。ただし、これもやはりその場しのぎです。むし歯治療をしないことには、根本的な解決はできません。

むし歯によるニオイを予防する方法

むし歯によるニオイを予防するには、次の方法が有効です。

食後の歯磨きを徹底する

食後の歯磨きは徹底しましょう。むし歯の多くは、歯垢が付きやすく取り除きにくいところに発生します。具体的には、食べ物が挟まりやすい奥歯の溝、歯と歯の間、歯と歯ぐきの間に歯垢が付着しやすいとされています。そのため、このような場所をしっかりと磨くことが、むし歯と、それによる口臭の予防に有効です。

毎食後に歯磨きを行うのが理想ですが、職場や外出先など毎食後は難しいという場合、少なくとも朝と就寝前は必ず磨くようにしましょう。就寝中は唾液の分泌量が少なくなり、細菌が増殖しやすくなってしまうからです。歯磨きは歯1本につき10~20回、合計3分ほど優しくブラッシングするのがおすすめです。

デンタルフロスや歯間ブラシを使う

歯ブラシに加えて、デンタルフロスや歯間ブラシを用いると、歯の隙間の食べカスも除去できるため有効です。日本歯周病学会会誌 に掲載された論文によれば、歯ブラシだけでは歯垢を58%しか除去できませんが、デンタルフロスを併用することで85.9%、歯間ブラシと併用することで、95.2%の歯垢を除去できるとされています。

キシリトールガムを噛む

さまざまな研究結果で、キシリトールはむし歯予防の効果があると報告されています。キシリトールは唾液の分泌を促すだけでなく、むし歯の原因となる歯垢中の酸を中和し、むし歯の進行を抑える作用もあります。また、むし歯の主な原因であるミュータンス菌はキシリトールを代謝できず、酸をつくれなくなることから、キシリトールはミュータンス菌の活動を弱めことにつながります。

そこで、食後や歯磨き後に30分以上キシリトールガムを噛むことが、むし歯予防のために有効です。ただし、キシリトールガムを噛んだからといって、歯磨きをしなくて良いというわけではありません。正しく歯磨きをした上で、キシリトールガムも有効に活用しましょう。その際、むし歯の原因となる糖分が含まれていないガムを選ぶようにしてください。

キシリトールの効果やより良いキシリトールの摂取方法についてはこちらの記事でご紹介しています。

フッ素が配合された歯磨き粉やマウスウォッシュを活用する

フッ素には多面的な健康効果があり、特に口腔衛生に寄与する効果が注目されています。まず、フッ素は細菌の代謝を阻害することで、むし歯を引き起こす原因となる酸の生成を抑えます。細菌の活動が抑制されることで、むし歯のリスクが減少します。

次に、フッ素は歯の再石灰化を促進します。再石灰化により、歯は耐酸性を持ち、むし歯に対する抵抗力が高まります。

さらに、フッ素は歯のエナメル質を強化することで、物理的な保護層を形成します。この層は歯を外部の攻撃から守り、特に食事中に摂取する酸による損傷から保護します。

これらの働きはすべて、むし歯の予防に役立ちます。つまり、細菌の抑制と歯の強化は、むし歯の予防にとって重要な要素であり、フッ素がむし歯予防に有効に働く理由となります。
歯の再石灰化を助けることで、歯の表面に色の変化があるなどのごく初期であれば、酸によって溶けた歯の表面も自然に修復できます。そのため、むし歯や口臭の予防のためには、フッ素が配合された歯磨き粉を選びましょう。マウスウォッシュを使う場合も同じくフッ素入りを使うのがおすすめです。フッ素の健康への影響が心配な方もいるかもしれませんが、うっかり飲み込んでしまっても問題ない程度の量しか含まれていません。

なお、フッ素配合のマウスウォッシュなどを使うタイミングは、唾液が少なくなる就寝前が適しています。また、洗浄液を口全体にしっかりと行き渡らせることでマウスウォッシュに含まれる成分を行き渡らせることが大切です。

フッ素の機能や健康への影響についてはこちらの記事で解説しています。

むし歯以外で考えられる口臭の原因

ここまで、むし歯による口臭の対策などを解説してきました。しかし、むし歯が無い方や治療した方は、他に口臭の原因があると考えられます。それぞれ解説します。

舌苔(ぜったい)

舌苔とは、舌の表面に付く白い苔のようなもので、食べカスや細菌、剥がれた粘膜などが混ざったものです。舌の真ん中~奥にかけてが特に付きやすいところです。

舌苔に含まれるタンパク質が細菌によって分解・発酵される途中で、強いニオイが発生するため口臭の原因となります。また、長く放置すると味覚障害や歯周病などの原因ともなります。それだけではなく、舌苔中の細菌が肺に侵入することで肺炎になるおそれもあるため、こまめに取り除くようにしましょう。 

舌苔を取り除く際は、やわらかい歯ブラシや舌ブラシを使って、1日1回ほど優しく掃除することが有効です。無理に取り除こうとすると舌を傷つけてしまうため、日にちをかけて少しずつ行いましょう。

もし舌苔のように白くても取れない場合は、似た病気に口腔カンジダ症や白板病なども考えられるため注意が必要です。白い点が頬の粘膜にもできたり、掃除しても取れなかったりする場合は、歯科医院を受診してください。

舌が白くなる原因は舌苔以外にもあります。下記の記事で紹介しています。

歯周病

歯周病が口臭の原因となっていることもあります。歯周病では、歯周病菌が原因となって、歯や歯ぐきに炎症が起きます。歯垢歯周病は、歯ぐきが赤く腫れる歯肉炎と、歯を支える歯根膜や歯槽骨にも炎症が広がった歯周炎に大きく分けられます。歯周病に関連する細菌はいくつもあり、この細菌が繁殖することで、歯を支える組織が破壊されていきます。

そのときに発生する硫化水素やメチルメルカプタンといった物質が、腐った卵や腐ったタマネギのような独特なニオイの原因となります。むし歯が悪化して膿がたまった状態と同じようなニオイです。

歯周病による口臭は、歯を磨いたりガムを噛んだりしても、一時的な防臭効果しか得られません。むし歯と同じく、根本的に解決するためには治療が必要です。

ドライマウス

ドライマウスは、唾液の分泌量が減少したり、もしくは全く分泌されなくなったりする状態のことです。自律神経の乱れや口呼吸、噛む力の低下、薬の副作用などが原因とされています。唾液は前述した歯の再石灰化などの働きだけでなく、酸やアルカリを中和したり、食べカスを洗い流したりといった口の中を清潔に保つ働きもあります。そのため、唾液の量が少なくなると洗浄作用が弱まり、口の中に食べ物の残りカスや細菌がたまりやすくなってしまいます。その結果、軽度~中等度のむし歯と似た、生ごみのようなニオイが発生します。

ドライマウスによる口臭への対策としては、マウスウォッシュで食べカスと細菌を洗浄したり、シュガーレスガムを噛んで唾液の分泌を促したりすることが有効です。また、耳の前方や顎、舌の下にある唾液腺を軽くマッサージすることも試してみましょう。ただし、ドライマウスの原因はさまざまなので、原因を探った上で、適した治療を受けることが重要です。

まとめ:むし歯による口臭は治療で改善しましょう

強い口臭がする場合、むし歯や歯周病、ドライマウスや舌苔などが原因となっていることもあります。いずれの場合でも、自分で口臭の対策をするのには限界があります。毎日の歯磨きをしっかり行うと同時に、歯科医院での適切な治療を行いましょう。

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