「つもり」オーラルケアになっているかも?一般の方と歯科衛生士のオーラルケアに対する認識の違いを独自調査

「つもり」オーラルケアになっているかも?一般の方と歯科衛生士のオーラルケアに対する認識の違いを独自調査

(2024年4月30日公開)
もしかしたら「つもり」オーラルケアになっているかも?歯科衛生士が一般の方のオーラルケアについてどう思うか調査したところ、多く歯科衛生士が不十分と感じていることが分かりました。そこで、この記事では、一般の方と歯科衛生士の両方にアンケートを実施した結果から、オーラルケアに対してどのような認識の差があるのか考察していきます。

               
※本記事の内容・アンケート結果につきましては、引用可能です。
※引用される際は必ず本記事のリンクを掲載してください。

アンケート調査の目的・概要

一般の方のオーラルケアについて、歯科衛生士は不十分と感じていると仮定して双方に調査を実施しました。目的は、普段のオーラルケアについて、一般の方には普段実施していること、歯科衛生士には一般の方が不足していると感じることを調査し、オーラルケアに対する認識がどのように違うのかを明らかにすることです。
本アンケート調査は、男女20歳以上の一般の方1,213名、歯科衛生士163名に回答いただきました。

口内環境で気になっていること

最初に、一般の方に口内環境で気になっていることを伺いました。もっとも多かった回答は「口臭が心配」43.3%、次に多かったのは「歯が着色している」40.6%、第3位が「歯並び」29.6%となりました。た。続いて、第4位が「むし歯になりやすい」25.6%、第5位が「歯ぐきが腫れる」23.2%でした。

自分で確認でき、対人関係にも影響するため、口臭や歯の着色、歯並びが気になる方が多い結果になったと予想できます。

それに対して、むし歯のなりやすさや歯周病の初期症状である歯ぐきの腫れについては、4位、5位という結果でした。この結果から、むし歯や歯周病は初期の症状に気づきにくいことから、口臭などに比べて低くなった要因と考えられます。

まとめ

一般の方へのアンケート調査は、自分の口内環境のうち、口臭や着色を気にする方が多い結果となりました。これは、口臭や着色が人から気付かれるものだからと考えられます。

むし歯のなりやすさや歯ぐきの腫れを気にする方は、口臭や着色、歯並びよりも少ない結果でした。むし歯や歯周病は、口臭や歯の変色、歯並びの乱れなどの原因になります。それにもかかわらず、アンケート調査でむし歯や歯周病を気にする回答が口臭などよりも少なくなったのは、その初期症状の気付きづらさにあるのかもしれません。

厚生労働省が公表した「令和4年歯科疾患実態調査結果の概要」によれば、10歳以上で歯ぐきからの出血がみられる者の割合は、44.9%にのぼります。また、永久歯に関する調査では、5歳以上でのむし歯の有病率は87.2%であり、特に45~49歳と55~59歳の有病率は99.3%です。このように、むし歯と歯周病は、どちらも高い罹患状況となっています。この状態を改善してむし歯や歯周病の予防を推進するため、国が取り組もうとしているのが、話題となっている国民皆歯科検診です。
国民皆歯科検診の目的やどのような制度なのかなど、詳しい内容は下記の記事を参考にしてください。
むし歯や歯周病の予防を心がけて口内環境を改善していけば、気になる口臭や着色の予防・改善にもつながります。

一般の方と歯科衛生士のオーラルケアに対する認識の違い

■一般の方へのアンケート
■歯科衛生士へのアンケート
一般の方に「歯磨き以外で取り組んでいるオーラルケア」について伺いました。もっとも多かったのは、「歯間ブラシ」の42.1%です。その他に「マウスウォッシュ」が33.6%、「デンタルフロス」が31.2%という結果でした。その他の回答では、口臭予防を意識しているためか「舌磨きをしている」という回答がありました。歯間ブラシかフロスのいずれかを週3回以上実施している方は54.9%であり、半数以上の方が何らかの歯間ケアに取り組んでいる結果となりました。

一方、歯科衛生士に「一般の方のオーラルケアで不足していると感じること」を伺うと、「歯間ケアが不足している」と感じる方が36.8%でもっとも多い結果でした。その他に不足しているのは歯磨きについてでした。「歯磨きの時間が少ない」が25.8%、「歯磨き回数が少ない」が13.5%という結果でした。一般の方は4割くらいの方が歯間ケアをあまりしておらず、歯科衛生士も4割弱の方が患者さんの歯間ケア不足を感じていることがわかりました。

まとめ

一般の方の45.1%が歯間ケアをあまり実施しておらず、36.8%の歯科衛生士が患者の歯間ケア不足を感じていることには傾向の一致を感じます。一方で、歯科衛生士へのアンケート調査では、歯磨きの回数や時間に課題を感じている方は合わせて39.3%であり、歯間ケア不足よりも割合が多くなります。このことから、歯間ケアはもちろん大事な一方で、私たちはオーラルケアの基本とも言える歯磨きへの意識をもっと高める必要があるのかもしれません。

また、歯科衛生士は普段のご診療の中で感じることについてアンケートに回答をしています。そして、歯科医院を受診する方の多くは何かしらの治療を目的とされている方です。さらに、前述の「令和4年歯科疾患実態調査結果の概要」によると、令和4年の歯科検診受診率は2,698人のの58.0%と書かれています。

そのため、歯科衛生士は、すでに状態が悪くなっている患者の診療をすることが多くなり、今回のアンケート結果にも影響をしていることが考えられます。

回答の多かった歯間ブラシの使い方を解説

歯間ブラシは、歯と歯の隙間にブラシを差し込み、ゆっくりと弱い力で前後に動かして汚れを取り除くというのが正しい使い方です。歯間ブラシによる清掃の実施頻度は、1日1回が目安です。歯間ブラシは、最小の4S(最小通過径0.6 mm)から最大のLL(最小通過径1.9 mm)までサイズが選べるので、歯と歯の隙間に合った大きすぎないサイズを選択しましょう。
引用:歯間ブラシI型 製品規格(デンタルプロ)
※メーカーや製品によって表記や規格が若干ことなることがあるので、購入する製品をご確認ください。
歯間ブラシの正しい使い方については下記の記事を参考にしてください。

一般の方と歯科衛生士の生活習慣に対する意識の違い

■一般の方へのアンケート
■歯科衛生士へのアンケート
一般の方へは「口内環境をより良くするため日頃の生活習慣のなかで取り組んでいること・意識していることはありますか?」について質問を実施しました。回答として、もっとも多かったのは「こまめに水分をとる」で34.0%でした。以下、多かった順に回答を紹介すると、「歯の定期検診を受ける」が33.9%、「毎食後に歯を磨く」が29.7%、「寝る2時間前からは何も食べない」が25.8%、「食事のときによく噛む」が21.4%、「栄養バランスを整える」が20.1%、「特にない」が19.5%、「間食をしない」が11.6%、「歯に良いガムを噛む」が9.1%、「その他」が0.4%となっています。
一方で、歯科衛生士に対しては「一般の方の生活習慣でもっとも不足している/意識が足りないと感じることを教えてください。」という質問を実施しました。回答でもっとも多かったのは「毎食後に歯を磨かない」の20.9%、2番目に多かったのは「歯の定期検診を受けていない」の19.0%です。以下、「間食が多い」「寝る2時間前以内に何か食べている」「糖質の摂取量が多い」「噛む回数が少ない」の四つが10.4%で並び、「水分摂取量が少ない」が5.5%、「フッ素の使用量が少ない」が3.1%、「キシリトールやPOS-Caをとらない」が2.5%と続きます。

以上のアンケート結果から、多くの歯科衛生士は、毎食後に歯磨きをした方が良いと感じていることがわかりました。また、一般の方で歯科検診を受けている割合は2番目に多い結果でした、前述したとおり、まだまだ歯科検診を受けない方が多いと感じているようです。

まとめ

歯科衛生士へ質問した「一般の方の生活習慣でもっとも不足している/意識が足りないと感じること」の回答で、毎食後の歯磨きがもっとも多い結果でした。また、前述した「一般の方のオーラルケアでもっとも不足していると感じることを教えてください。」という質問の結果では、一般の方が歯磨きにかける時間の短さを気にしています。また、別の質問で163名のうち61名の歯科衛生士が、ブラッシング指導が響かないと回答していることからも、歯科衛生士が一般の方の歯磨きが不足していると感じているとわかります。実は、歯科衛生士の推奨する方法と比べると、正しく歯磨きができていない方も多いかもしれません。毎食後の歯磨きと歯磨きにかける時間を意識して自分の歯磨きを見直してみましょう。
正しい歯磨きのやり方については下記の記事で解説していますので、自身の歯磨きを見直す参考にしてみてください。

一般の方と歯科衛生士の歯科定期検診に対する認識の違い

■一般の方へのアンケート
■歯科衛生士へのアンケート
一般の方に「歯の定期検診はどれくらいの頻度で受けていますか?」と質問したところ、もっとも多かった答えは「2年以上定期検診を受けていない」で32.6%でした。2番目に多かった答えは「3~4か月に1回」で23.1%であり、これは歯科医院で推奨される定期検診の頻度が、3~4か月に1回であることに起因していると考えられます。

定期検診の頻度が3か月~4か月を推奨されるのには理由があります。歯科診療では前回来院から3カ月以上間隔が空くと再診ではなく初診扱いとなり、初診料がかかることがあるためです。また、洗浄した口内の細菌数が元の状態に戻るまでにかかる期間の目安が約3か月とされていることも3か月~4か月を推奨する理由です。
以下、多かった順に回答を紹介すると「5~6か月に1回」が13.0%、「7~12か月に1回」が10.1%、「13か月以上2年未満に1回」が10.0%、「1~2か月に1回」が8.9%、「1か月に2回以上」が1.9%、「その他」が0.4%でした。
以上の回答結果から、4か月以内に定期検診を受けているのは33.9%、約3割であり、2年以上受けていない方も約3割いることから、両者は同じくらいの割合で存在しています。

前述したように、今回のアンケート調査で、歯科衛生士に「生活習慣でもっとも不足/意識が足りないと感じること」を尋ねた際には、「定期検診を受けないこと」と回答した方が163名中31名(約19.0%)いました。このことからも歯科衛生士は、定期検診の受診率が低いと感じていることがわかります。

まとめ

歯科医院が推奨する3か月~4か月ごとの定期検診を基準として考えます。すると、一般の方に実施したアンケート回答のうち、歯科医院が推奨する3か月~4か月以内に1回の検診を受診している方を除いた、66%の方については受診頻度が低いことになります。歯科衛生士は、このことも踏まえて、定期検診の受診が不足していると感じているかもしれません。前述したとおり、令和4年の歯科検診受診率は58.0%であり、平成28年の52.9%よりも5.1%増えており、受診率は年々増加傾向にあります。しかし、今回の調査同様に約4割の方は歯科検診を1年以上受診しておらず、まだ受診率が低い状況です。

まとめ:歯科衛生士との認識の違いをオーラルケアに活かしましょう

一般の方の多くは、むし歯や歯周病よりも、対人関係に影響を及ぼす口臭や歯の着色などを気にしていることが、アンケート調査から明らかになりました。また、一般の方が取り組んでいるオーラルケアの第1位は「歯間ブラシをする」であり、口内環境改善のために生活習慣のなかで取り組んでいることの第3位には「毎食後に歯を磨く」がランクインしています。
しかしながら、一般の方が取り組んでいるオーラルケアをチェックする立場にある歯科衛生士は、その取り組みを聞き、実際に口の中の状態を見て、さまざまな不足を感じているようです。特に今回のアンケート調査では、歯磨きの時間について一般の方と認識の差が明らかとなり、歯科衛生士が不足を感じていることがわかりました。さらに、歯科衛生士へのアンケートでは、歯磨きに関して、「毎食後、歯磨きをしない」「時間が短い」という回答が多い結果でした。「ブラッシング指導をしても響かないという回答が多く見受けられました。
歯科衛生士と自分との認識の差を縮められれば、より適切なオーラルケアを行うことができます。歯科医院で定期検診やブラッシング指導を受けることで認識の差は縮まり、日頃のオーラルケアで不足している部分を補うことができるので、口内環境を健康に保つことにつながります。
健康な口内環境を実現するために、歯磨きの仕方や生活習慣を見直してみましょう。
また、一般の方は4割くらいの方が歯間ケアをあまりしておらず、歯科衛生士も4割弱の方が患者さんの歯間ケア不足を感じていることがわかりました。歯磨きだけでは歯の汚れを落としきれないため、歯間ブラシもしくは、デンタルフロスどちらかでも行うと良いでしょう。

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