エナメル質形成不全とは?生まれつき歯が透けて見える原因と対策を解説【歯科医師監修】

エナメル質形成不全とは?生まれつき歯が透けて見える原因と対策を解説【歯科医師監修】

この記事では、エナメル質形成不全の原因や対策、放置する影響について解説します。子どものときに対策しておきたいことについても解説しています。

               
エナメル質形成不全とは、歯ができてくる過程で歯の表面のエナメル質がうまく生成されず薄くなったり、変色したり、もろくなったりする症状です。生まれつき歯が透けている、部分的に白い歯がある、変色しているなどの状態を見つけたら、それはエナメル質形成不全かもしれません。今回はエナメル質形成不全になる原因や、見つけた時の対処方法や予防方法についても解説します。

エナメル質とは?

エナメル質は、歯の一番外側を覆い、内側にある象牙質と神経を保護しています。人体で最も硬い組織であり、大部分がミネラルで構成されています。厚さは平均2~3mmと薄いですが、熱いものや冷たいもの、酸性の食品などの刺激が、刺激に弱い内部へ届かないように保護する役割があります。
エナメル質は、歯磨きが強すぎたり固いものを無理に噛んだりすることでダメージを受けますが、軽度であれば唾液に含まれるカルシウムやリン酸を利用して自然に修復されます。

エナメル質形成不全とは?

エナメル質形成不全はなぜ起きてしまうのでしょうか。エナメル質の役割が理解できたところで、エナメル質形成不全の原因について解説します。

エナメル質形成不全の症状

エナメル質形成不全の歯は、エナメル質の厚さが通常より薄かったり、部分的に欠けていたり、白濁・白斑や黄斑、褐色斑などの歯の質の異常が見られたりすることがあります。エナメル質形成不全の状態が軽度の場合、歯が透けて見えたり、一部分が白濁していたり、むし歯ではないにもかかわらず歯に茶色や黄色の変色部分があったりします。重度の場合はエナメル質の表面に環状のくぼみや不規則なクレーターが生じ、表面が凸凹になります。エナメル質形成不全を治す方法はわかっていないため、症状に応じた治療が必要です。

軽度の症状であれば、日々のケアでフッ素入りの歯磨き粉やマウスウォッシュ(フッ素洗口)を使用してカバーすることで治療は不要となることも多いです。ただし、エナメル質形成不全の歯がむし歯になって進行したり、エナメル質が薄いためもろくなった奥歯に力がかかったりして欠けている場合は、歯科医院での治療が必要です。歯科用レジンなどの詰め物を施し、前歯が欠けている場合はセラミッククラウンやラミネートベニアを使って治療します。前歯でもレジンでの修復が可能な場合があります。逆に奥歯での治療にセラミッククラウンなどを使用する場合もあります。
ラミネートべニアについて知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。

エナメル質形成不全の原因として考えられること

エナメル質形成不全の原因は生まれつきの場合が多いとされていますが、はっきりと解明されていません。ここでは、生まれつき症状がある「遺伝的要因」「全身的要因」と、生まれたあとにダメージを受けることで起きる「局所的要因」について解説します。

両親から遺伝する「遺伝的要因」

両親のどちらかにエナメル質形成不全があった場合、遺伝することがあります。ただし、遺伝性エナメル質形成不全症の原因は、変異した遺伝子が親から子へ伝わるということ以外、解明されていないのが現状です。

妊娠中の母体の状態による「全身的要因」

妊娠中の母体に全身的障害があると、歯の形成などを含む胎児の成長が一時的に阻害されるため、エナメル質形成不全が起こることがあります。全身的障害とは、栄養障害(カルシウム・リン・ビタミン不足)、病気、内分泌異常、感染、代謝異常、特定薬物の長期継続投与、ホルモン異常などにより歯の形成や成長が一時的に阻害されることです。

全身的要因によってエナメル質形成不全になる場合、1本だけではなく複数、左右対称の歯にエナメル質形成不全の症状が現れることが多いです。

乳歯にダメージを受けたことによる「局所的要因」

乳歯をぶつけダメージを受けることでエナメル質形成不全になることがあります。
他にも乳歯にできたむし歯が原因になることもあります。乳歯が化膿した状態で長期間放置すると、歯の根元に膿が溜まります。その膿が原因で、後から生える永久歯が発育不全を起こし、エナメル質形成不全になることがあるのです。

発症する箇所は1~2本の歯に限定され、左右対称に見られることは少ないとされています。

エナメル質形成不全以外に歯が透ける原因

今まで歯が透けていなかったのに、段々と歯が透けてきた場合は「酸蝕歯」のおそれがあります。「酸蝕歯」とは、柑橘系の果物や炭酸飲料など酸性の飲食物を頻繁に摂取することでエナメル質が溶けだしてしまった歯のことです。嘔吐を繰り返すなどでも起こります。(拒食症など)

エナメル質形成不全を放置することによる影響

エナメル質形成不全を放置することは、エナメル質が正常に機能しない状態を放置していることになります。そのため、歯にさまざまな悪影響があります。

むし歯になるリスクが高く進行しやすい

エナメル質が薄くなると歯を保護する役割が弱くなるため、むし歯菌が産生する酸によって歯を溶かされやすくなります。そのため、むし歯になりやすく、その症状も早く進行してしまいます。また、エナメル質が薄いと歯の神経に刺激が伝わりやすいため、歯磨きなどでも痛みが生じます。すると、歯磨きを十分行えず、磨き残しが増えてしまい、むし歯のリスクが高くなってしまいます。

知覚過敏のリスクを高める

エナメル質が薄くなると、刺激に敏感な象牙質が十分に守られなくなります。そのため、熱いものや冷たいものの刺激が直に届きやすくなり、知覚過敏になります。また、痛みがあることで歯磨きが十分できず、むし歯になるとさらに痛みを伴います。

歯が欠けやすくなる

エナメル質形成不全の歯は、エナメル質がもろくなっています。特に力がかかりやすい奥歯はエナメル質形成不全になりやすいため、歯が欠けてしまうことがあります。また、歯が欠けると欠けた部分のエナメル質が失われるため、むし歯になりやすくなります。

見た目に影響をおよぼす

エナメル質形成不全の症状が出ている歯は、透けていたり、白濁していたり、茶色く変色していたりします。特に前歯は、外から見えやすく症状が出やすいため見た目が気になることがあるでしょう。

子どものエナメル質形成不全を悪化させない対処法

もし子どもにエナメル質形成不全を見つけた場合、症状を悪化させないために適切な対処をすることが大切です。対処方法は症状やエナメル質の状態によって変わります。定期的に歯科医院の検診を受け、子どもの歯の状態によって適切な方法を相談しましょう。

軽度の場合はフッ素を塗布する

軽度のエナメル質形成不全では、歯の表面にフッ素を定期的に塗布することで、エナメル質を強化してむし歯になりにくくすることができます。毎日のセルフケアでフッ素入りの歯磨き剤を使ったり、マウスウォッシュ(フッ素洗口)を使用したりするとよいでしょう。また、歯科医院でフッ素を塗布してもらうこともできるため、定期健診の際にお願いすると良いでしょう。

歯が大きく欠けている場合はレジンでコーティングする

子どもは成長に伴って噛み合わせが変化するため、最終的な治療は噛み合わせが安定する、3歳ころからになります。それまでのつなぎ治療としてセメント、レジンといわれる詰め物などで最小限の補強を行い、歯と歯の神経を守るようにします。

欠けてしまった前歯の治療として被せ物をする

エナメル質形成不全がよく見られる前歯と奥歯のむし歯予防にはフッ素塗布があげられますが、とくに前歯は見た目の審美性を考慮して被せ物をすることがあります。

子どもの後天的なエナメル質形成不全発症の予防法

エナメル質形成不全は生まれつきによるものが多いとされていますが、先述のように「局所的要因」で起きることもあります。ここでは、局所的な要因で起きるエナメル質形成不全について予防法を紹介します。

日々の適切な歯磨き

子どもの歯磨きだけで口内の汚れを落としきるのは難しいです。歯垢(プラーク)や汚れをしっかりと落とすために親が仕上げ磨きをしてあげるようにしましょう。仕上げ磨きの際には、デンタルフロスなどの歯と歯の間をキレイにするアイテムを使うことでしっかりと汚れを除去することができます。

フッ素の定期的な塗布

フッ素は、エナメル質の修復促進、歯質強化、菌の働きを弱めるなどむし歯の発生を防ぐのに役立ちます。フッ素塗布剤やフッ素入りの歯磨き粉を日々のセルフケアに取り入れるとよいでしょう。歯質が強化されることで、エナメル質形成不全の原因の1つである「外傷」の予防にもなります。

また、歯科医院でしか扱えないフッ素塗布用の薬剤は、市販の製品よりも高濃度に作られています。そのため、自宅でのセルフケアは継続しつつ、3カ月に1回程度歯科医院でフッ素を塗布してもらうのがおすすめです。また、エナメル質形成不全の原因をつくらないためには、むし歯を長期間放置しないことも重要です。定期的に歯科医院でチェックを行ってむし歯を早期に発見し、治療しましょう。

エナメル質形成不全の歯にホワイトニングは可能か?

エナメル質形成不全の歯にホワイトニングの効果があるかは症状とその原因によります。生まれつきの黄ばみは部分的に改善できることもありますが、遺伝的要因による場合は難しいとされています。

歯に白い斑点(ホワイトスポット)ができている場合、ホワイトスポットを目立たなくできることもありますが、かえってホワイトスポットが目立ってしまう可能性もあるため注意が必要です。また重症の場合、歯の表面が凸凹の状態になっているとホワイトニングによって改善することは難しくなります。

歯科医院などで受けるホワイトニングは、18歳未満は受けられません。そのため、子どもの歯の変色が重度の場合は、歯を削ってレジンやセラミックの人工歯を装着する治療方法があります。歯の状態や年齢によって異なるため、まずは歯科医院で相談することをおすすめします。

エナメル質形成不全でも強い歯を保つために

生まれつき歯が透けている人は、エナメル質形成不全の可能性があります。しかし、エナメル質形成不全が見つかった時の対処方法や、後天的な発症を予防する方法があることがわかりました。正しい歯磨きの習慣と定期的な歯科検診で健康な歯を長く保てるようにしましょう。

監修歯科医師:吉竹啓介先生

東京都中央区京橋駅直結の「京橋 銀座みらい歯科」院長。
2010年神奈川歯科大学 卒業。2014年に医療法人社団港成会 理事に就任し、同年にせたがや歯科室を開設。2020年に京橋 銀座みらい歯科を開設し、翌年移転・名称変更。現在は京橋 銀座みらい歯科として東京スクエアガーデン2Fで診療を行っている。

京橋 銀座みらい歯科のホームページはこちら
https://www.miraishika-ginzain.tokyo/

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