「最近忙しくて、あまり運動していないな」と感じていませんか? 運動不足は筋力や体力の低下に加え、生活習慣病やメンタル面の不調など、心身に多くの悪影響を及ぼします。それは口の中も例外ではありません。運動不足が続くと、口内の不快な症状につながるおそれがあります。今回は、運動不足で起こりうる歯や口の中の症状とその原因、自宅で簡単にできる解消法をご紹介します。
運動不足がもたらす心身への悪影響

まずは、運動不足がもたらす一般的な心身への影響について解説します。
体力や筋肉の低下
運動不足が続くと、体力や全身の持久力が低下し、体の活動量が減少します。また、筋肉が減ると運動しにくくなり、運動しなくなるとさらに筋肉が減るという悪循環に陥りがちです。結果として、少しの運動でも息切れや疲労を感じやすくなり、仕事や家事にも影響が出かねません。また、足の筋力不足によって、ほんのわずかな段差でもつまずきやすくなるなどのリスクも生じます。
肥満
運動不足だと、食べ物から摂取したエネルギーが消費カロリーを上回るため、余剰分が体脂肪として蓄積され、肥満を招きやすくなります。特に注意したいのが、お腹の周りに脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」です。内臓脂肪が多いタイプの肥満は、よく耳にするメタボリックシンドロームと関係が深く、高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病の危険因子となります。
血行不良
人の体は、筋肉を動かすことによって血液を血管の隅々まで循環させています。体を動かさないでいると血行が悪くなり、全身に酸素や栄養が十分に行き渡りません。その上、疲労物質も排出されずに蓄積されるため、肩こりやむくみ、冷え、慢性的な疲労など、さまざまな不調につながります。
免疫力の低下
運動不足によって筋力が衰えると免疫細胞を運ぶ血液やリンパ液の巡りが悪くなるため、体温の低下が起こります。免疫力を正確に評価する指標ではありませんが、体温が低下すると、基礎代謝が低下するため体の機能が正常に働かないおそれがあります。
運動不足で起こりうる歯や口の症状とその原因

運動不足は、口の中の健康にも深刻な影響を与えます。運動不足の方は、以下のような疾患の発症リスクが高まるため注意が必要です。
歯周病
運動不足により全身の血流が滞ると、歯ぐきも同じように栄養や酸素が不足して、歯周病菌が繁殖しやすくなり、歯周病の発症リスクが高まります。2021年に筑波大学が行った研究では、メタボリックシンドローム患者の歯周病が運動で改善する可能性が示されました。
“歯周病と診断されたNAFLDの中年肥満男性49名を対象に、3か月間の運動療法を実施し、その前後で唾液を収集し、炎症に関わる物質である唾液中の免疫グロブリンA(IgA)、菌体内毒素lipopolysaccharide(LPS)、TNF-α、ラクトフェリンの測定、および、口腔内細菌叢のゲノム解析を行いました。また、中年肥満男性21名を対象に食事療法を実施し、運動療法の効果との比較を行いました。”
また、糖尿病が歯周病に及ぼす影響も見逃せません。糖尿病により高血糖が続くと免疫力が低下し、歯周病の悪化につながることが、多くの研究でわかっています。そして、糖尿病の大きな要因として運動不足が挙げられています。
引用:メタボ患者の歯周病は運動で改善する〜運動療法が口腔内環境に及ぼす効果を実証〜|医療・健康 - TSUKUBA JOURNAL -
“歯周病と診断されたNAFLDの中年肥満男性49名を対象に、3か月間の運動療法を実施し、その前後で唾液を収集し、炎症に関わる物質である唾液中の免疫グロブリンA(IgA)、菌体内毒素lipopolysaccharide(LPS)、TNF-α、ラクトフェリンの測定、および、口腔内細菌叢のゲノム解析を行いました。また、中年肥満男性21名を対象に食事療法を実施し、運動療法の効果との比較を行いました。”
また、糖尿病が歯周病に及ぼす影響も見逃せません。糖尿病により高血糖が続くと免疫力が低下し、歯周病の悪化につながることが、多くの研究でわかっています。そして、糖尿病の大きな要因として運動不足が挙げられています。
引用:メタボ患者の歯周病は運動で改善する〜運動療法が口腔内環境に及ぼす効果を実証〜|医療・健康 - TSUKUBA JOURNAL -
むし歯
運動不足は免疫力を低下させる要因の1つです。抵抗力が低下して、口の中で細菌が繁殖しやすくなるため、歯周病と同じように、むし歯にもなりやすくなります。
顎関節症
顎関節症は、顎を動かす関節や筋肉に、痛みや動きの制限が生じる疾患です。顎関節症になる原因はいくつかありますが、運動不足もその1つとして考えられます。なぜなら顎関節運動は、顎の筋肉だけでなく、首や肩の筋肉とも連動しているからです。運動不足が顎関節運動を妨げ、顎の関節や筋肉に悪影響を及ぼすことで、顎関節症につながる原因となります。
口呼吸
口呼吸を続けていると、歯並びが乱れやすく、口内の乾燥によりむし歯や歯周病のリスクも高くなります。口呼吸になる要の1つは猫背ですが、その原因で多いのが運動不足による筋力の低下です。猫背になると、体が丸まることで胸が圧迫されて、鼻呼吸が難しくなるため、口呼吸をするようになります。
実は口も運動不足になる

実は、現代人は口の周りの筋肉を使う機会が減り、「口の運動不足」に陥っている人が多いです。長時間のスマホの利用や、やわらかい食べ物に偏った食生活、リモートワークの普及に伴う気軽な会話や雑談の減少などにより、現代人は昔と比べると口の筋肉を動かす機会が減少しました。
運動不足により口周りの筋肉が衰えると、口を閉じにくくなるため、唾液が蒸発して口の中が乾燥し、口臭やむし歯などのトラブルにつながりやすくなります。また、口の運動不足は、滑舌が悪くなる、口角が下がる、頬がたるむ、ほうれい線ができるなどにも影響を及ぼすおそれがあります。口の健康を維持するためには、筋肉を意識的に動かして衰えないようにすることで、口の運動不足を解消しましょう。
運動不足により口周りの筋肉が衰えると、口を閉じにくくなるため、唾液が蒸発して口の中が乾燥し、口臭やむし歯などのトラブルにつながりやすくなります。また、口の運動不足は、滑舌が悪くなる、口角が下がる、頬がたるむ、ほうれい線ができるなどにも影響を及ぼすおそれがあります。口の健康を維持するためには、筋肉を意識的に動かして衰えないようにすることで、口の運動不足を解消しましょう。
運動不足の解消におすすめの方法

運動不足を解消するためには、ウォーキングやジョギングのような有酸素運動と、無酸素運動の筋トレを組み合わせるのがおすすめです。自宅で簡単にできる方法をご紹介します。
1. ウォーキング
ウォーキングは有酸素運動の代表です。特別な器具や施設を使う必要がなく、運動不足を手軽に解消できます。会話をしながら歩き続けられる速さで、息がやや弾み、少し汗ばむ程度のペースがおすすめです。初めは、週に2~3日、1回30分間のウォーキングから始めて、慣れてきたら週4~5日を目安に続けるようにしましょう。
2. エア自転車漕ぎ
エア自転車漕ぎは、仰向けになって両足を上げ、空中で自転車を漕ぐような動作を行う有酸素運動です。下半身の筋肉を鍛えるトレーニングにもなり、脂肪を燃焼するだけでなく、筋力アップの効果も得られます。
●エア自転車漕ぎのやり方
●エア自転車漕ぎのやり方
- 仰向けになって、お尻から背中まで床につける
- 足を90度に曲げ、両手は頭の後ろに置いて首を支える
- 両足を上げて、自転車のペダルを漕ぐように空中で動かす
- 漕ぐ動作30秒×3セット行う
3. 薪割りスクワット
スクワットも場所を選ばず、幅広い年齢で取り組みやすい筋力トレーニングです。気軽に運動不足を解消できる上、筋肉量を増やして基礎代謝量を上げることもできます。今回ご紹介する「薪割りスクワット」は、通常のスクワットに薪割りのような動作を加えたものです。腕を大きく動かすことで上半身の筋肉も鍛えられ、肩こりなどの予防にも役立ちます。
●薪割りスクワットのやり方
●薪割りスクワットのやり方
- 両足を肩幅に開いてまっすぐ立ち、前方で手を組む
- 息を吐きながら、4秒かけてゆっくり腰を下ろす
- 腰を下ろしたまま、薪割りをするようなイメージで腕を上下にゆっくり5回振る
- 3秒かけてゆっくり腰を戻す
- 2〜4を3〜5回繰り返す
腰を下ろすときに、つま先がひざよりも前に出ないように注意しましょう。
口元の運動不足解消に!自宅でできる簡単エクササイズ
口の運動不足を解消できる、簡単なストレッチ法をご紹介します。
1.あいうべ体操
あいうべ体操は文字どおり「あー・いー・うー・べー」と大きく口と舌を動かして行う体操です。口元の筋肉を鍛えることで、自然に口が閉じ、鼻呼吸が促されます。
●あいうべ体操のやり方
●あいうべ体操のやり方

- 「あー」大きく口を開ける
- 「いー」首に筋が張るくらい、口を大きく横に広げる
- 「うー」タコのように唇をすぼめて、前に強く突き出す
- 「ベー」あごの先を目指して、舌をしっかり下に伸ばす
- 1から4までを1セットとして、毎食後10セット、1日30セットを目安に行う
2. ぶくぶく体操
ぶくぶくうがいは、唇をしっかり閉じ、上下左右を順番にふくらませるエクササイズです。口をしっかり閉じるための筋肉や、頬の筋肉などが鍛えられます。
●ぶくぶく体操のやり方
●ぶくぶく体操のやり方
- 唇をしっかり閉じる
- 頬の右側に空気を入れて、3〜4回「ぶくぶく」と動かす
- 頬の左側に空気を入れて、3〜4回「ぶくぶく」と動かす
- 上の歯ぐきと上唇の間に空気を入れて、3〜4回「ぶくぶく」と動かす
- 下の歯ぐきと下唇の間に空気を入れて、3〜4回「ぶくぶく」と動かす
- 1〜5を毎食前に2セット行う
運動で得られる副次的な効果
運動で得られる副次的な効果として、以下のようなものが挙げられます。
太りにくくなる
運動によって筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、脂肪が燃焼しやすくなるため、太りにくい体になります。
姿勢が良くなる
運動をして、体幹部分を支えるインナーマッスルを鍛えることで、体のバランスも良くなり、姿勢改善に役立ちます。
メンタル面が安定する
ストレスを解消するために注目されているのが「幸せホルモン」です。運動不足を解消することで、セロトニンとドーパミンの分泌を促し、精神の安定や安心感をもたらします。ドーパミンは達成感を感じられるような運動、セロトニンはウォーキングなど一定のリズムで行うような運動が分泌を促すのに効果があります。
運動不足を解消して口の中の健康を守ろう
運動不足は肥満や生活習慣病につながるだけでなく、歯周病やむし歯といった口の中の疾患にも深い関わりがあります。運動不足を解消して、口の健康はもちろんのこと、全身の健康を保ちましょう。