食欲の秋から始める減塩習慣 未来の健康のために今できること

食欲の秋から始める減塩習慣 未来の健康のために今できること

この記事では、食欲が増す秋から始めたい健康を守る減塩のヒントを紹介します。

               
実りの秋といわれるように、秋はおいしい旬の食材が食卓に並び、自然と食欲が増す季節です。つい食べすぎて、気づかないうちに塩分を取りすぎているかもしれません。日頃の食事で塩分を控える意識をもつことは、生活習慣病の予防だけでなく、口内トラブルの予防にもつながります。本記事では「食欲の秋」から始めたい減塩習慣について解説します。

秋こそ、食生活を見直そう

秋は「食欲の秋」と呼ばれ、夏の酷暑で減退した食欲が自然と戻り、食欲が大いにそそられる季節です。米をはじめ野菜や果物など魅力的な食材が旬を迎えることもあり、食事量が自然に増えやすくなります。

この食欲増進に伴い、塩分も過多になりがちです。汁物の摂取が増えることや、新米のおいしさを引き立てる塩分量の多いおかずが好まれることも、塩分過多の要因となります。

一方で秋は、夏の疲れが残りやすく、昼夜の寒暖差による自律神経の乱れから「秋バテ」と呼ばれる体調不良が起こりやすい時期でもあります。食べすぎや偏食は、胃腸へ負担をかけ、秋バテを助長するため注意が必要です。

厚生労働省では、国民一人ひとりが食習慣を見直し改善できるよう、毎年9月を「食生活改善普及運動月間」として、減塩や野菜摂取の大切さを広く呼びかけています。日々の食生活を振り返り、減塩や栄養バランスを意識することが、健康のために大切です。

食生活改善普及運動とは?

食生活改善普及運動は、厚生労働省が毎年9月1日から30日までの1か月間に実施している、国民の健康づくりを目的とした取り組みです。健康づくりの実践を促進する「健康増進普及月間」と連携し、一人ひとりが食習慣を見直し、日常生活の中で実践できる減塩や野菜摂取の習慣づくりを呼びかけています。

令和7年度の重点テーマは「まずは毎日、あと一皿ずつ野菜と果物をプラス」でした。減塩やバランスのよい食事の重要性を啓発し、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸を目指すことが期待されています。

参考:厚生労働省「令和7年度食生活改善普及運動の実施について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59824.html

知っておきたい減塩による健康メリット

減塩は血圧を安定させるだけでなく、心臓病や脳血管疾患、腎臓病など多くの生活習慣病の予防につながることが複数の研究で示されています。さらに胃がんや認知症リスクの低下、骨の健康維持など幅広い効果が期待されており、減塩は健康を維持するための重要な習慣といえます。

血圧の安定と改善

塩分の取りすぎは、高血圧の大きな原因の1つです。体内でナトリウム濃度が高まると、水分を溜め込もうとして血液量が増え、血圧が上がりやすくなります。減塩を心がけることで血管への負担を減らし、血圧を安定させる効果が期待できます。個人差はありますが、1日1 gの減塩で収縮期血圧が約1 mmHg、拡張期血圧が約0.5 mmHg下がるとされています。

心臓・脳血管疾患のリスク低減

高血圧が長く続くと、血管の弾力性が失われ硬くなる「動脈硬化」が進行し、血管が詰まりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な疾患を招く原因になります。減塩はこうした疾患のリスクを下げる有効な方法の1つです。

ロンドン大学クイーン・メアリー校が発表した研究結果によると、1日あたり3gの減塩で、冠動脈性心疾患(CHD)の年間新規発症件数が6万~12万件、脳卒中が3万2千~6万6千件、心筋梗塞が5万4千~9万9千件減少し、年間死亡件数が4万4千~9万2千件減少すると予測されています。

参考:Projected Effect of Dietary Salt Reductions on Future Cardiovascular Disease
Kirsten BibbinsDomingo, Ph.D., M.D., Glenn M. Chertow, M.D., M.P.H., Pamela G. Coxson, Ph.D., Andrew Moran, M.D., James M. Lightwood, Ph.D., Mark J. Pletcher, M.D., M.P.H., and Lee Goldman, M.D., M.P.H.
New England Journal of Medicine.Volume 362 • Number 7 • February 18, 2010.Pages: 590-599

腎機能の保護

腎臓は余分な塩分を体外に排出する役割を担っています。塩分の過剰摂取は腎臓に負担をかけ、慢性腎臓病などのリスクを高めます。減塩を意識することは、腎疾患のリスクを減らし、腎臓の健康を長く維持するために重要です。

胃がんのリスク低減

塩分の多い食事を続けると、胃の粘膜にダメージが蓄積し、胃がんが発生しやすい環境を作ります。日頃から減塩を心がけることは、胃の健康を守ることにもつながります。

認知機能の維持

高血圧が続くと脳血管がダメージを受けやすくなり、脳卒中や認知症のリスクが高まります。さらに近年の研究では、塩分の過剰摂取が脳の神経細胞の働きを妨げるおそれがあると報告されています。神経細胞は記憶や判断力を支える重要な存在であり、その機能低下は認知機能の衰えにつながります。減塩は脳の健康を保ち、認知症予防の観点からも大切です。

骨の維持

余分な塩分(ナトリウム)は腎臓で濾過されて尿として排出されますが、その際にカルシウムも一緒に流れ出てしまうことがあります。カルシウムは骨をつくる重要な栄養素であり、その流出が続くと骨量の減少や骨粗しょう症のリスクを高める原因となります。減塩を心がけることは、骨の健康を維持し、将来の骨折リスクを減らすためにも欠かせません。

塩分と口・歯の健康の関係にも注目しよう

塩分の取りすぎは、高血圧や心臓病など全身の健康に影響を与えるだけではありません。実は、口の中の粘膜や歯ぐき、さらには唾液分泌や味覚にも密接に関わっています。塩分過多の食生活を続けることで、むし歯や歯周病のリスクを高めるおそれもあるため、口と歯の健康という視点からも減塩を意識することが大切です。

塩分の多い食事が直接口内に与える影響

塩分の多い食事は、口内環境にさまざまな弊害をもたらします。

歯ぐきや粘膜へのダメージ

塩分の取りすぎは歯ぐきや口内粘膜を刺激します。とくに弱った歯ぐきには負担となり、すでに炎症を起こしている粘膜の症状を悪化させる原因になるため注意が必要です。

口内の乾燥とむし歯・歯周病リスク

塩分の多い食事を習慣的に取ると、口の中が乾きやすくなります。唾液の分泌が減ると細菌が繁殖しやすくなり、むし歯や歯周病のリスクが高まります。唾液は口内を洗浄し、細菌から守る重要な役割をはたしているため、乾燥は大きなデメリットです。

味覚の鈍化

しょっぱい味に慣れてしまうと、味覚が徐々に鈍くなり、濃い味付けを好むようになる傾向があります。その結果、さらに塩分摂取が増えてしまう悪循環に陥るおそれがあります。

塩分の多い食事が間接的に口の中に与える影響

塩分の過剰摂取は、高血圧や糖尿病といった生活習慣病のリスクを高める要因であり、間接的に口内環境にも悪影響を及ぼします。

腸内環境の乱れによる免疫低下

塩分を取りすぎると腸内細菌のバランスが崩れ、免疫力の低下を招くことが報告されています。免疫力が下がると、歯周病菌やむし歯菌への抵抗力も弱まり、口内トラブルを助長するおそれがあります。

生活習慣病による影響

塩分過多は高血圧や糖尿病といった生活習慣病を招く要因です。これらの病気は唾液の分泌を妨げやすく、とくに糖尿病では高血糖による体内の水分不足から唾液が減少します。その結果、むし歯や歯周病、口内炎などのリスクが高まります。

薬の副作用による口の乾燥

塩分過多によって高血圧治療薬などの服用が必要になると、一部の薬には副作用として口の乾燥を招くものがあります。薬の影響で唾液が減ると、むし歯や歯周病のリスクがさらに高まります。

塩分摂取量はどのくらい?

厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、1日の食塩摂取量の目標値は男性7.5 g未満、女性6.5 g未満とされています。この目標量は生活習慣病の予防を目的としたもので、高血圧や慢性腎臓病(CKD)などの重症化予防を目的とする場合は、男女ともに6 g未満が推奨されています。

しかし、令和5年(2023年)に厚生労働省が実施した「国民健康・栄養調査」によれば、実際の摂取量は男性10.7 g、女性9.1g、全体平均9.8 gであり、依然として推奨値を大きく上回っています。

男女別では労働強度の違いや体質的な問題から、男性のほうが摂取量は多く設定されています。しかし、一般的に男性は女性よりも高血圧の発症リスクが高く、より厳しい塩分制限が推奨されています。

令和5年の「国民健康・栄養調査」によると、20歳以上で高血圧の基準といわれる最高血圧が140mm/Hg以上の割合は、男性で27.5 %、女性では22.5 %を占めました。塩分の取りすぎは血圧上昇を招き、心臓病や脳卒中など重大な疾患のリスクを高めます。だからこそ、減塩は生活習慣病の一次予防の柱として位置づけられており、日常の食生活から意識的に取り組むことが大切です。

参考:厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」
       厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」

なぜ日本人は塩分を取りすぎる?

日本人の食文化には、しょうゆやみそ、漬物などの発酵食品や発酵調味料が多く使われています。これらは栄養価も高く健康的な面もありますが、塩分を多く含むため、知らないうちに摂取量が増えやすいのも事実です。

煮物や汁物の味付けも濃くなりがちで、麺類のスープを飲み干すなど、気づかぬうちに塩分を取りすぎていることがあります。

例えば、うどん1杯で約5 g前後の食塩が含まれることもあり、これだけで厚生労働省が定める1日の食塩摂取目標量(男性7.5 g未満、女性6.5 g未満)の半分以上を摂取することになります。みそ汁や漬物などを加えると、あっという間に基準を超えてしまいます。

日々の食卓では、調味料の使い方を工夫し、「汁は残す」といった小さな意識をもつことが、減塩への第一歩になるといえるでしょう。

「食欲の秋」こそ塩分の取りすぎに注意

秋は「食欲の秋」と呼ばれるように、旬のおいしい食材が豊富に出回り、つい食べすぎてしまう季節です。夏の疲れで落ちていた食欲が戻ることに加え、気温の低下により基礎代謝が上がってエネルギー要求量が増えるため、過食に陥りやすくなります。

さらに、秋刀魚や牡蠣といった旬の魚介類、きのこや栗などを使った季節限定メニューが多く登場し、外食の機会が増える傾向も見られます。ぐるなびが20~60代の男女1,000名に実施した調査でも、47.2 %が「秋が一番楽しみな食の季節」と答え、3割弱が「外食が増える」と回答しました。

外食は、家庭での食事と比べると、全体的に量が多めで味付けも濃く、エネルギー量や脂質・塩分が高くなりがちです。一方、家庭では自分で食事の量を調整できるため、外食より減塩しやすいといえます。


秋は過食になりやすい季節だからこそ、食べる量や頻度だけでなく、一つ一つの食事の栄養バランスや味付けを見直すことが大切です。丼ものやラーメンなどの単品メニューは控えて定食を選ぶ、汁物は飲み干さないといった工夫が、無理なく続けられる減塩習慣につながります。

参加:ぐるなび「2023年10月 秋に食べたい食に関する調査」

日本人がよく食べる塩分が多い食品・料理TOP5

私たちが日常的に食べることの多い料理や食品の中には、塩分を多く含むものがあります。複数の公開資料を調査した結果、代表的なものとして次の5つが挙げられます。
  • ラーメン(1杯) 6.0 g前後
  • かけうどん(1杯) 約5.0 g
  • 梅干し(1個) 約1.0 g〜2.0 g
  • みそ汁(1杯) 約1.2g
  • 焼き魚(さけ、さば等) 1.0 g前後

意外と塩分が多い食品TOP5

主菜や汁物だけでなく、一見塩分が少なそうに見える食品にも塩分が多く含まれています。複数の公開資料を参照し、注意したい食品をまとめました。
  • 寿司10貫 しょうゆあり 約3.0 g〜5.0 g
  • ちくわ1本・さつま揚げ(1枚約25 g) 約0.6 g
  • 食パン(1枚) 約0.6 g
  • プロセスチーズ(20g) 約0.4~0.5 g
  • ハム・ベーコン(1枚) 約0.5 g

減塩がうまくいかない理由と対策

減塩のハードルは高く、実践しにくいのが現状です。減塩の大切さは理解していても、「味が物足りない」「計算や工夫が面倒」と感じて挫折してしまう人も少なくありません。

最近の調査でも、減塩の必要性を認識している人は多い一方で、習慣化できている人は3割程度にとどまっていることが明らかになっています。ここでは、減塩が続かない理由とその解決のヒントをまとめました。

減塩が続かない理由とよくある失敗パターン

カゴメ株式会社が、血圧に関心のある20〜69歳の男女4,700名を対象に実施した調査よると、「現在、減塩に取り組めていない人」は全体の約45%にのぼります。一方で、減塩の必要性を感じている人は約67%となっており、重要性は理解しつつも、実際に継続できている人は約30 %と少数にとどまっています。

さらに「取り組んだ経験はあるが、現在はやめてしまった」「やろうと思ったが実際には始められていない」といった、いわば減塩の“苦戦層”も全体の約45%に達しており、減塩の継続には大きな課題があることがわかります。

減塩を実践していない理由としては、「味が物足りない」「塩分の計算が面倒」「食事制限でストレスがたまる」「味付けやレシピを考えるのが大変」などが挙げられます。これらの背景には、食習慣の変化に対する心理的なハードルや、減塩による満足感の低下といった問題があると考えられます。

参考:カゴメ株式会社「全国一斉ナトカリ意識調査」(2025年6月発表)

減塩を続けるための具体的対策

減塩=味気ないというイメージをなくし、無理なく習慣にする工夫が大切です。ここでは、継続するための具体的な方法を紹介します。

香味野菜やスパイスを活用する

にんにくや生姜、胡椒、山椒などのスパイスや、レモン・酢といった酸味を加えると、塩分を控えても満足感のある味わいに仕上がります。香りや刺激をプラスすることで「味が物足りない」という不満を解消できます。

減塩調味料や便利アイテムを取り入れる

市販の減塩しょうゆやだしパック、減塩みそなどを活用すると、家庭での料理の負担を減らせます。塩分カットの商品を上手に取り入れることで、無理なく減塩生活を続けられます。

食品表示をチェックする習慣をつける

加工品や調味料を購入する際は、食品表示ラベルの「ナトリウム量」「食塩相当量」を確認しましょう。習慣化することで、自然と塩分量を意識でき、無理のない減塩につながります。

小さな達成感を積み重ねる

「今週はみそ汁を1日おきにした」「外食の回数を1回減らせた」など、小さな目標をクリアすることが継続のコツです。完璧を目指さず、できる範囲で達成感を積み重ねることで、減塩が習慣として定着しやすくなります。

控えすぎもよくない? 塩分の過剰制限

減塩は健康のために重要ですが、「控えれば控えるほどよい」というわけではありません。極端に塩分を減らすと、体に思わぬ不調を招くことがあります。

塩分を過剰に控えると体内のミネラルバランスが崩れ、食欲不振や体調不良につながることがあります。ナトリウムは体内の水分バランスを保つために欠かせない成分であり、極端に不足すると倦怠感や脱力感が生じることもあります。

注意したいのは、味付けを一気に大きく変えてしまうことです。急に塩味を減らすと食事が物足りなく感じられ、結局続けられない原因にもなります。まずは現在の摂取量を把握し、無理のない目標設定から始めましょう。

自己管理に便利な塩分チェック方法

減塩を続けるには「どれくらい取っているのか」を可視化することが大切です。最近はテクノロジーの進化によって、日々の食事から塩分量を把握しやすくなっています。感覚だけに頼るのではなく、客観的な数値で確認することで、無理なく減塩を習慣化できます。

例えば、スマートフォンの食事記録アプリ「あすけん」や「カロミル」は、入力したメニューから塩分量を自動で計算し、カロリーや栄養バランスとあわせてチェックできます。ゲーム感覚で続けやすく、減塩のモチベーション維持にも役立ちます。

また、最近では調理家電やウェアラブルデバイスでも塩分摂取量を管理できるようになってきました。しょうゆや食塩の使用量を自動で計測する機能を備えた製品や、健康管理アプリと連携して日々の記録を蓄積できるものも登場しています。これらは減塩生活をサポートしてくれる力強い味方になってくれるでしょう。

まとめ|健康的な秋の習慣は今日のちょっとした工夫から

秋は「食欲の秋」といわれ、つい食べすぎたり、味付けが濃くなったりして塩分を取りすぎやすい季節です。しかし、急に減塩しようとしてもうまくいかず、「味が物足りない」「手間がかかる」と感じて挫折してしまう人も少なくありません。

大切なのは、無理に控えすぎるのではなく、まずは小さな工夫から始めることです。例えば、調味料を少し減らす、外食で汁物を残す、ラベルを確認して塩分量を意識するなど、日常の中でできる取り組みはたくさんあります。

今日のひと工夫が未来の健康を守る第一歩になります。日々の食生活を振り返り、減塩を生活習慣として取り入れていきましょう。

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