秋は気温や湿度の変化が激しく、体調を崩しやすい季節です。夏の疲れが残ることで、心身の不調や感染症へのリスクも高まります。この記事では、秋特有の不調の原因や症状、予防に役立つ生活習慣、年代別の対策まで詳しく解説します。秋を元気に乗り切るためのヒントをお届けします。
秋はなぜ体調を崩しやすい?
秋は気温や湿度の変動が大きく、自律神経のバランスが乱れやすい季節です。さらに花粉やハウスダストによるアレルギー、夏の疲れの蓄積によって心身に不調が現れます。寒暖差に体がついていけずにだるさや頭痛を感じたり、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなったりすることもあります。
季節の変わり目は秋バテにも注意を
「秋バテ」とは、夏に蓄積した疲労に加えて、秋の気温差や気候変化によって自律神経が乱れることで起こる不調を指します。日本ゼオン株式会社が全国の20〜60代の男女1,008人を対象に行った調査では、夏から秋への季節の変わり目に不調を感じる方は全体の半数を超え、そのうち約3割が「秋バテ」に該当しました。しかし、秋バテを認識している方は全体の18.3%にとどまっており、多くが気づかないまま過ごしていることがわかります。「秋バテ」も「夏バテ」と同じように、だるさや疲れやすさ、食欲不振などさまざまな症状が現れます。自覚しにくいからこそ、早めのケアが大切です。
参加:日本ゼオン株式会社「秋の睡眠の質 意識調査」(2024年9月実施)
参加:日本ゼオン株式会社「秋の睡眠の質 意識調査」(2024年9月実施)
「秋バテ」と「夏バテ」の違いは?気になる方はこちらも読んでみてください。
インフルエンザの流行も早まる傾向に
インフルエンザの流行も、秋の体調不良リスクの1つです。東京都感染症情報センターによれば、例年35週(9月上旬)から翌年5月までが流行期間とされています。厚生労働省の2024年の報告では、12月23〜29日の1週間で31万7,812人に達したこともあるようです。
さらに近年は流行開始が早まる傾向にあり、2025年は10月3日に厚生労働省が全国的な流行入りを発表しました。これは過去20年で2番目に早い流行入りとなりました。免疫力が落ちやすい秋だからこそ、早めの予防接種や感染症対策が重要です。
さらに近年は流行開始が早まる傾向にあり、2025年は10月3日に厚生労働省が全国的な流行入りを発表しました。これは過去20年で2番目に早い流行入りとなりました。免疫力が落ちやすい秋だからこそ、早めの予防接種や感染症対策が重要です。
秋に増える主な体調不良の症状・原因
秋は気温差や乾燥、花粉の飛散など複数の環境要因が重なり、体調不良が増えやすい季節です。ここでは、とくに注意したい代表的な症状と原因を解説します。
アレルギー症状(花粉・ダニ・ハウスダスト)
秋にもアレルギー症状を訴える方は多く、とくにブタクサ・ヨモギ・イネ科の花粉は8月下旬から10月にかけてピークを迎えます。鼻のムズムズ、くしゃみ、目のかゆみ、咳などが典型的な症状です。また、夏に繁殖したダニが秋に一斉に死滅し、その死骸やフンがハウスダストとなり、アレルギー反応を引き起こすこともあります。室内の掃除や換気を徹底するなどの対策が必要です。
倦怠感・食欲不振・頭痛
秋は1日の中で10℃以上の気温差が生じることもあり、体はその差に対応するために自律神経を酷使します。その結果、エネルギーを消耗して「寒暖差疲労」が起こりやすくなります。こうした状態が秋バテの原因となり、倦怠感や食欲不振、頭痛など、幅広い不調を引き起こすのです。
頭痛・肩こり・むくみ
秋は気温や湿度の低下によって血流が滞りやすくなり、筋肉に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなります。その結果、疲労物質が溜まり、頭痛や肩こりなどの症状が出やすくなります。また、下半身では冷えによる血行不良がむくみや重だるさにつながることがあります。
睡眠トラブル
秋は日照時間が徐々に短くなることで体内時計がずれて、睡眠を促すメラトニンというホルモンの分泌リズムが乱れやすくなります。冬はさらに日照時間が短くなりますが、その分メラトニンの分泌時間が延び、自然と眠気を感じやすくなります。これに対して秋は移行期であり、体が環境の変化にうまく対応できず、寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝すっきり起きられないといった睡眠トラブルが出やすくなるのです。さらに、昼夜の気温差によって体が冷え、眠りに入りにくくなることも重なり、秋はとくに睡眠の乱れが起こりやすい季節といえるでしょう。
口・喉の不調
秋は気温だけでなく湿度も下がるため、空気が乾燥しやすくなります。これにより唾液の分泌が減少し、口の中が乾燥して粘膜が弱くなり、喉のイガイガや声がれ、口内炎といった不調が増える傾向にあります。また、口内が乾燥することで自浄作用が低下し、むし歯や歯周病のリスクも高まります。乾燥対策を心がけ、口と喉の健康を守ることが大切です。
感染症
夏の疲れが残るこの時期は免疫力が低下しやすく、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。さらに乾燥した環境はウイルスの活動を活発化させるため、発症リスクを高める要因となります。感染症を予防するために、加湿器やマスクを活用し、こまめな水分補給と手洗い・うがいを徹底することが重要です。
月別・症状別で押さえるべき秋の具体的注意点
秋は月ごとに気候や環境の変化が大きく、それに伴って体調不良の原因や症状も変わってきます。ここでは、9月・10月・11月それぞれの時期に注意したい体調リスクと対策をご紹介します。
9月
9月は台風や秋雨前線の影響で、気圧や気温の変化が激しく、自律神経に負担がかかりやすい時期です。そのため、頭痛や全身のだるさ、気分の落ち込みといった症状が出やすくなります。また、ブタクサやヨモギなど秋の花粉が本格的に飛散し始める時期でもあり、アレルギー体質の方は鼻や喉の不調に注意が必要です。洗濯物の外干しを控える、花粉情報をこまめにチェックするといった早めの対策を取り入れましょう。
10月
10月は朝晩と日中の気温差が大きく、寒暖差によって自律神経が乱れやすくなります。その結果、寒暖差疲労や頭痛、冷えに伴う胃腸不調が起こりやすい時期です。重ね着で体温を調整し、冷えを防ぐことが大切です。さらに、自律神経を整えるために軽いストレッチやウォーキングなどの運動を日常に取り入れると、体調管理に役立ちます。
11月
11月は気温が一段と下がり、空気の乾燥が本格化するため、肌や唇の乾燥・かゆみに悩まされる方が増えます。また、喉や鼻の粘膜が弱くなり、風邪やインフルエンザなど感染症にかかりやすくなるのもこの時期の特徴です。加湿器を使った湿度管理や、こまめな水分補給、手洗い・うがいの徹底が予防につながります。
秋の体調不良を防ぐ生活習慣
季節の変わり目に体調を崩さないためには、日常生活の中での工夫が大切です。ここでは、秋に取り入れたい具体的な生活習慣をご紹介します。
生活リズムを整えて自律神経のバランスを安定させる
夏の疲れが残りやすい秋は、夜更かしや朝寝坊が続くと自律神経のバランスが乱れ、体調不良を招きやすくなります。毎日同じ時間に起床し、朝の光を浴びることで体内時計がリセットされ、心身の調子が整います。十分な睡眠は免疫力の維持にもつながり、秋バテや感染症の予防にも効果的です。
重ね着や寝具で冷えを防ぐ
朝晩と日中の寒暖差が大きい秋は、冷えが体調不良の引き金となることがあります。脱ぎ着しやすい重ね着で体温調節を行い、寝るときはパジャマや毛布で冷えを防ぎましょう。湯たんぽや電気毛布を使うのも有効です。体を温めることで血流が促され、頭痛や肩こりの予防にもつながります。
旬の食材を取り入れて栄養バランスを整える
旬の食材は、その季節に体に必要とされる栄養素を多く含んでいることが多く、健康維持に役立ちます。秋はさつまいも、きのこ、秋刀魚、梨など、おいしい旬の食材が出回ります。これらを食事に取り入れることで、ビタミンやミネラル、食物繊維を自然に摂取できます。ただし、食欲が増しやすい季節でもあるため、脂っこい料理や甘いスイーツの食べすぎには注意しましょう。
ぬるめのお湯に入浴でリラックスと体温調整を
シャワーだけで済ませず、38〜40℃程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、副交感神経が優位になりリラックスできます。血流が良くなることで冷えの改善や疲労回復にも役立ち、質の良い睡眠につながります。就寝1〜2時間前の入浴がおすすめです。入浴で一時的に上がった深部体温が、湯上がり後にゆるやかに下がることで、自然と心地よい眠気が訪れやすくなります。
こまめな水分補給で乾燥を防ぐ
気温が下がると喉の渇きを感じにくくなるため、水分補給を忘れがちです。乾燥した空気は脱水や風邪リスクを高めるため、常温水や白湯を少しずつ飲む習慣をつけましょう。加湿器や濡れタオルを活用した室内の湿度管理も、口や喉の不調を防ぐポイントです。
自律神経と秋 ― 秋バテ・自律神経失調症との関係
秋は寒暖差や気圧の変化、日照時間の短縮など、季節特有の環境変化が重なることで、自律神経のバランスが乱れやすくなります。自律神経が乱れると、体温調節や血流、内臓の働きがうまくコントロールできなくなり、倦怠感・頭痛・肩こり・食欲不振・不眠など、さまざまな全身症状が現れやすくなります。ここでは、秋に起こりやすい自律神経の乱れを整える方法をご紹介します。
朝の太陽光で体内時計をリセットする
秋は日照時間が短くなり、体内時計のリズムが乱れやすい時期です。朝の時間帯に10分以上、屋外で太陽の光を浴びることで、睡眠ホルモン・メラトニンの分泌リズムが整い、生活リズムが安定します。朝日を浴びることは、体を「活動モード」へ切り替えるスイッチにもなり、日中の集中力アップにもつながります。
深呼吸・軽い運動で副交感神経を優位にする
秋は気温差によって交感神経が優位になりがちです。交感神経の緊張状態が続くと、体が常にアクセル全開でブレーキが利かない状態となり、心身のさまざまな不調につながります。
副交感神経を優位にして「休息モード」に切り替えるには、深呼吸やウォーキング、ストレッチなどの軽い運動が効果的です。とくに就寝前にゆっくりとした深い呼吸をくり返すことで、体がリラックスし、眠りにつきやすくなるといわれています。
副交感神経を優位にして「休息モード」に切り替えるには、深呼吸やウォーキング、ストレッチなどの軽い運動が効果的です。とくに就寝前にゆっくりとした深い呼吸をくり返すことで、体がリラックスし、眠りにつきやすくなるといわれています。
カフェイン・アルコールの摂取に注意
秋は気温が下がり、温かい飲み物を選ぶ機会が増えます。しかし、コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどのカフェイン飲料を過剰に摂取すると、交感神経が刺激されすぎて睡眠の質を下げてしまいます。また、夜のアルコール摂取は一時的にリラックスできても、その効果は長続きせず、眠りを浅くして自律神経のバランスを乱す要因となります。夜はノンカフェインのお茶や白湯を選ぶことで、体を穏やかに休息モードへ導くことができるでしょう。
年代・属性別の体調不良対策〜子ども・働き盛り・高齢者
子ども
子どもの体は新陳代謝が活発で平熱が高めですが、体温調節機能が未発達なため、冷えや汗の影響を受けやすいのが特徴です。過度な活動を控え、十分な睡眠と栄養バランスの整った食事を意識しましょう。さらに、手洗いやうがいを習慣化することで、風邪やインフルエンザなどの感染症予防にも役立ちます。
働き盛り
多忙な働き盛り世代は、仕事や家庭での責任が重なり、ストレスや睡眠不足から自律神経の乱れを起こしやすくなります。長時間のデスクワークや運動不足も、肩こりや倦怠感の原因となります。バランスの良い食事や軽い運動を日常に取り入れ、意識的に休養を確保することが体調維持に不可欠です。
高齢者
高齢者は基礎代謝や体温調節機能が低下しやすく、脱水や低体温のリスクが高まります。さらに持病の悪化にもつながるため、こまめな水分補給と室温・湿度の管理が重要です。無理のない範囲で散歩などの軽い運動を続けることが、血流改善や体力維持に役立ちます。体調に変化を感じた際には、早めにかかりつけ医へ相談しましょう。
秋の体調不良予防に役立つチェックリスト
季節の変わり目に体調を崩さないためには、不調のサインを見逃さないことに加え、日頃の生活習慣を整えることが大切です。ここでは、生活習慣のチェックリストと症状のチェックリストの2つを用意しました。秋の体調不良予防に、ぜひ役立ててください。
<生活習慣チェック>
<生活習慣チェック>
- 毎日の睡眠・食事・入浴を、ほぼ同じ時間に行えていますか?
- 外出時のマスク着用、帰宅後の手洗い・うがいを習慣にしていますか?
- 喉が渇いていなくても、1日に6〜8回、コップ1杯程度の水分をとれていますか?
- 衣服や寝具を、気温差に合わせて調整していますか?
- 栄養バランスを意識し、旬の食材を取り入れていますか?
- 深呼吸やリラックスできる時間を意識的にとっていますか?
- こまめな掃除を心がけ、ほこりをためないようにしていますか?
- 就寝前にスマホやカフェイン摂取を控えていますか?
<症状チェック>
- 最近、体のだるさや頭痛、胃腸の不調を感じていませんか?
- 風邪やインフルエンザなど、家族や周囲で感染症が流行していませんか?
- 口や喉の乾燥、声がれなどが気になりませんか?
- めまいや肩こり、むくみなどの不調はありませんか?
- 睡眠が浅い、夜中に目覚めるなどのトラブルが続いていませんか?
まとめ|秋を元気に過ごすために
秋は気温や湿度の変化が大きく、自律神経のバランスが崩れやすい季節です。さらに、夏の疲れが残っていると体調を崩しやすく、さまざまな不調の引き金となります。加えて、秋は感染症やアレルギーによる呼吸器系のトラブルも増えるため、注意が必要です。
しかし、こうした不調は生活習慣を整え、早めに変化に気づくことで未然に防ぐことができます。日頃から規則正しい生活や予防策を意識し、体をいたわることが健康維持の第一歩です。もし気になる症状が続く場合には、無理せず早めに医療機関を受診し、安心して秋を過ごせるよう心がけましょう。
しかし、こうした不調は生活習慣を整え、早めに変化に気づくことで未然に防ぐことができます。日頃から規則正しい生活や予防策を意識し、体をいたわることが健康維持の第一歩です。もし気になる症状が続く場合には、無理せず早めに医療機関を受診し、安心して秋を過ごせるよう心がけましょう。