雨の日や台風の前になると、頭痛や体のだるさ、歯の痛みに悩まされるという方は少なくありません。こうした不調の背景には、気圧の変化による「気象病」や「気圧性歯痛」が関係している可能性があります。本記事では、それぞれの症状や原因、起きやすい時期、セルフチェック法、予防・対処法について詳しく解説します。
気圧が体調に与える影響とは?~気象病・天気痛の基礎知識
そもそも気象病とはどのような症状を指すのでしょうか。ここでは、気象病の基本的な仕組みや天気痛との違い、具体的な症状、なりやすい人の傾向などをわかりやすく解説します。
気象病とは? 天気痛との違い
気象病とは、気圧・温度・湿度などの変化によって起こる体調不良の総称です。天候や気圧の変化によって痛みが誘発される場合は天気痛と呼ばれ、気象病の中でもとくに「痛み」に関連する症状を指します。
どんな体調不良が起こるのか
気象病では、頭痛、めまい、眠気、倦怠感、歯痛、肩こり、関節の痛みなど、さまざまな不調が現れます。肩こりや腰痛、片頭痛など、もともと慢性的な不調を抱える方は、気温や気圧が急変する際にこうした症状が悪化しやすい傾向があり、人によっては日常生活に支障をきたすこともあります。複数の不調が重なる場合もあるため注意が必要です。
気象病の原因とメカニズム
気象病の大きな原因は、自律神経のバランスが崩れることにあります。気圧の変化を感知するセンサーは耳の奥にある内耳に存在し、急激な気圧変動によってここが刺激されると、自律神経が過敏に反応してしまいます。その結果、めまいや頭痛、耳鳴り、吐き気などの不快な症状が引き起こされるのです。
気象病になりやすい方の特徴
気象病は、男性よりも女性に多い傾向にあり、これはホルモンバランスの影響が関係していると考えられています。実際、2025年にウェザーニュースが全国の男女 23,955人を対象に行った調査(※1)によると、「天気痛を持っている」と回答した方は全体の35%にのぼり、女性に限ると約半数が該当しました。さらに、「持っている気がする」と回答した方も含めると、実に8割以上が自覚していることがわかりました。
天気痛を感じ始めた年齢については、男女ともに最も多かったのは40代で、全体の2割以上を占めました。女性は男性よりも若年層での発症が多く、過半数が30代までに経験。一方、男性では40代に次いで50代、30代の順に多くなっています。
また、片頭痛や関節リウマチなど、慢性的な痛みを抱えている方は、気圧の低下によって症状が悪化しやすいといわれています。京都大学の研究(※2)では、関節リウマチ患者の症状と気圧の関係を調べた結果、関節の腫れや痛みの程度は、とくに「3日前の気圧」と強く関連していることがわかりました。
この研究では、延べ2万件を超える関節リウマチ患者の臨床データと、気象庁が公開する気象データを統計的に突き合わせて解析。その結果、気圧が下がると関節の腫れや痛みが悪化する傾向が明確に認められたと報告されています。昔から「天気が崩れると痛みがひどくなる」「痛くなると天気が悪くなるのがわかる」といわれてきた感覚が、科学的にも裏づけられた形といえるでしょう。
※1 出典:株式会社ウェザーニュース「天気痛調査2025」(2025年5月実施)
https://weathernews.jp/news/202506/050196/
※2 出典:京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センター「関節リウマチ患者の痛みと気圧変化の関係に関する研究」(2014年1月16日発表)
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/archive/prev/news_data/h/h1/news6/2013_1/140116_2
天気痛を感じ始めた年齢については、男女ともに最も多かったのは40代で、全体の2割以上を占めました。女性は男性よりも若年層での発症が多く、過半数が30代までに経験。一方、男性では40代に次いで50代、30代の順に多くなっています。
また、片頭痛や関節リウマチなど、慢性的な痛みを抱えている方は、気圧の低下によって症状が悪化しやすいといわれています。京都大学の研究(※2)では、関節リウマチ患者の症状と気圧の関係を調べた結果、関節の腫れや痛みの程度は、とくに「3日前の気圧」と強く関連していることがわかりました。
この研究では、延べ2万件を超える関節リウマチ患者の臨床データと、気象庁が公開する気象データを統計的に突き合わせて解析。その結果、気圧が下がると関節の腫れや痛みが悪化する傾向が明確に認められたと報告されています。昔から「天気が崩れると痛みがひどくなる」「痛くなると天気が悪くなるのがわかる」といわれてきた感覚が、科学的にも裏づけられた形といえるでしょう。
※1 出典:株式会社ウェザーニュース「天気痛調査2025」(2025年5月実施)
https://weathernews.jp/news/202506/050196/
※2 出典:京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センター「関節リウマチ患者の痛みと気圧変化の関係に関する研究」(2014年1月16日発表)
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/archive/prev/news_data/h/h1/news6/2013_1/140116_2
天気と歯の痛みの深い関係~「気圧性歯痛」の正体と症状
気圧性歯痛とは?
気圧性歯痛とは、気圧の変化によって歯に痛みを感じる現象のことを指します。とくに、台風の接近や飛行機の離着陸時など、急激な気圧の低下が起こるタイミングで発生しやすい傾向があります。
歯の構造と気圧変動の関係
歯の中心部には「歯髄腔(しずいくう)」と呼ばれる空間があり、神経や血管が通っています。気圧が急に下がると、歯髄腔内の圧力が外気圧よりも相対的に高くなり、内部から外に向かって膨張する力がかかります。この圧力の変化により神経が圧迫され、痛みとして感じるのが気圧性歯痛です。とくに治療中の歯や神経が敏感な状態にある場合に、痛みが出やすいとされています。
気圧性歯痛と他の歯のトラブルの違い
気圧性歯痛は、むし歯や知覚過敏、親知らずの炎症などと異なり、特定の飲食や冷温刺激がなくても痛みを感じることがあります。また、天候が回復して気圧が安定すると痛みが自然に和らぐケースも多く見られます。ただし、気圧性歯痛は完全に健康な歯にはあまり起こらず、むし歯の進行や治療中の歯、詰め物や被せ物に問題がある歯などで生じやすい傾向があります。天気の変化とともに痛みが繰り返される場合は、口内に何らかの問題があるおそれがあるため、早めに歯科医院で診てもらうことが大切です。
気象病・気圧性歯痛の起きやすい時期
気象病は、とくに季節の変わり目に起こりやすいといわれています。例えば、冬から春、春から夏、夏から秋といった季節の変わり目は、気圧や気温の変化が大きく、自律神経が乱れやすくなります。その結果、頭痛やめまい、倦怠感、さらには気圧性歯痛など、さまざまな体調不良が引き起こされやすくなります。
また、こうした気象の影響は住んでいる地域によっても異なります。日本海側では冬の気圧変動が激しく、太平洋側では台風の影響を受けやすい傾向があります。北海道では春先の寒暖差が大きく、沖縄では台風シーズンに体調を崩しやすい方が多いといわれています。このように、地域の気候特性を理解したうえで、体調管理を行うことが重要です。
また、こうした気象の影響は住んでいる地域によっても異なります。日本海側では冬の気圧変動が激しく、太平洋側では台風の影響を受けやすい傾向があります。北海道では春先の寒暖差が大きく、沖縄では台風シーズンに体調を崩しやすい方が多いといわれています。このように、地域の気候特性を理解したうえで、体調管理を行うことが重要です。
春先(3月~4月)
春の始まりは、寒暖差が大きく、低気圧の通過も頻繁に見られます。そのため、自律神経が乱れやすく、頭痛やめまいなどの症状が現れやすくなります。また、この時期は花粉症の影響も加わり、体調不良をより強く感じる方も少なくありません。
梅雨時期(6月~7月)
長く続く雨や高い湿度、気圧の不安定さが重なる梅雨時期は、自律神経のバランスが乱れやすく、体調を崩しやすい季節です。その結果、頭痛やめまい、倦怠感、さらには歯の痛みなど、気象病の症状が現れやすくなります。また、片頭痛や関節リウマチなどの持病がある方は、これらの不調が悪化しやすい時期でもあります。
秋の始まり(9月~10月)
秋口は台風の接近が多く、気圧が急激に変化しやすい時期です。これにより、歯の痛みや体のだるさ、頭痛などの気象病の症状が目立ちやすくなります。夏の疲れが残るタイミングでもあるため、無理をせず体調を整えることが大切です。
気圧・天気による体調不良・歯痛のセルフチェック
「雨の日は体が重い」「季節の変わり目になると頭痛がする」といった症状は、気のせいではなく気象病のサインかもしれません。天候の変化と体調不良には意外なつながりがあり、気圧や湿度の影響を受けやすい体質の方もいます。
気象病や気圧性歯痛が気になる場合は、「いつ・どんな不調が出たのか」をスマホのメモやアプリなどで記録しておくと、自身の体調変化のパターンが見えてきます。セルフチェックを習慣化し、変化にいち早く気づけるようにしておくことで、早めの対策や受診につながり、心身の健康を保ちやすくなります。
気象病や気圧性歯痛が気になる場合は、「いつ・どんな不調が出たのか」をスマホのメモやアプリなどで記録しておくと、自身の体調変化のパターンが見えてきます。セルフチェックを習慣化し、変化にいち早く気づけるようにしておくことで、早めの対策や受診につながり、心身の健康を保ちやすくなります。
気象病のセルフチェック
- 気圧の変化がある日や雨の前日に、決まって体調が悪くなる
- 頭痛、首や肩のこり、関節痛などの痛みが天候に左右される
- 痛みとともに、めまい・吐き気・耳鳴り・倦怠感といった症状を伴うことが多い
- とくに季節の変わり目や台風接近時など、気圧の変動が激しい時期に体調が悪化しやすい
- 雨が降る前に関節が痛む、頭が重くなるなど、予兆のように症状が現れる
気圧性歯痛のセルフチェック
- 雨の日や季節の変わり目に歯がズキズキする
- 飛行機に乗った時に歯が痛くなる
- 歯の痛みが、天候回復とともに治まる
- 治療中の歯や治療済みの歯に違和感を覚える
気象病が起きた時の対策と予防策
自分でできる不調緩和ケア
気象病による頭痛やめまい、肩こりなどの不調には、日常的に取り入れやすいセルフケアが効果的です。例えば、耳のまわりをマッサージすることで、内耳の血流が促され、気圧の変化に敏感な神経の興奮を抑える効果が期待できます。また、首や肩のストレッチ、深呼吸を取り入れたリラクゼーションも、自律神経のバランスを整えるうえで役立ちます。
薬での対処も1つの手段
つらい頭痛や関節の痛みがある場合、市販の鎮痛薬を使用するのも1つの方法です。酔い止め薬に含まれる成分には内耳の神経を安定させる作用があり、気象病に有効とされています。使用する前に添付文書をよく読んで、用法・用量を守りましょう。
医療機関を受診すべきタイミング
セルフケアや市販薬で改善がみられない場合や、強い頭痛・吐き気・抑うつ気分などが続くときは、早めに医療機関を受診しましょう。例えば、頭痛なら頭痛外来や神経内科、めまいなら耳鼻咽喉科、関節痛なら整形外科が選択肢になります。
予防のためにできること
以下のような生活習慣を意識することで、気象病の予防につながります。
・ストレスをため込まない
ストレスは自律神経を乱し、気象病の悪化につながります。毎日の中でリラックスできる時間を意識的に取り入れましょう。
・温度・湿度のコントロール
急激な気圧や気温の変化に備え、エアコンや加湿器などを活用して室内環境を一定に保つことが重要です。とくに湿度は60%前後が快適とされています。
・軽い運動を習慣化する
ウォーキングやストレッチなどの適度な運動は、血流を促進し、自律神経の安定に役立ちます。毎日15~30分程度を目安に継続するのが理想です。
・生活リズムを整える
日々の生活リズムを意識することは、体調管理の第一歩です。朝日を浴びる、朝食をしっかり摂る、湯船につかるといった行動は、自律神経の安定につながります。
・ストレスをため込まない
ストレスは自律神経を乱し、気象病の悪化につながります。毎日の中でリラックスできる時間を意識的に取り入れましょう。
・温度・湿度のコントロール
急激な気圧や気温の変化に備え、エアコンや加湿器などを活用して室内環境を一定に保つことが重要です。とくに湿度は60%前後が快適とされています。
・軽い運動を習慣化する
ウォーキングやストレッチなどの適度な運動は、血流を促進し、自律神経の安定に役立ちます。毎日15~30分程度を目安に継続するのが理想です。
・生活リズムを整える
日々の生活リズムを意識することは、体調管理の第一歩です。朝日を浴びる、朝食をしっかり摂る、湯船につかるといった行動は、自律神経の安定につながります。
気圧で歯が痛む時の対処法と予防法
市販薬や冷却で一時的に和らげる
気圧の変化によって歯が痛むときは、市販の鎮痛薬を使うことで痛みを一時的に抑えることができます。さらに、痛みのある部分をタオルで包んだ氷嚢などで外側から軽く冷やすことで、血流が落ち着き、痛みが和らぐこともあります。ただし、冷やしすぎると血行が悪くなり、逆に症状が悪化する場合もあるため注意が必要です。15分〜20分を目安に冷やし、その後10分程度の休憩を挟みましょう。
歯科医院を受診する目安
気圧性歯痛は、むし歯や歯周病などの口内トラブルが背景にあることもあります。同じ場所に痛みが繰り返し起こる、数日以上痛みが続くといった症状が見られる場合には、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。
予防のためにできること
気圧性歯痛を予防するためには、まず口内の健康を保つことが基本となります。むし歯や歯周病などの疾患があると、気圧の変化によって神経が刺激されることで、痛みが出やすくなります。毎日の丁寧な歯磨きとデンタルフロスの使用を習慣にして、口内を清潔に保ちましょう。定期的に歯科医院で検診を受け、異常の早期発見と治療につなげることも大切です。
あわせて、自律神経のバランスを整える生活習慣を意識することも、気圧の変化による歯痛の予防につながります。普段から規則正しい食生活や適度な運動、十分な睡眠を心がけることに加え、過度なストレスを避け、リラックスする時間を意識的に持つようにしましょう。
あわせて、自律神経のバランスを整える生活習慣を意識することも、気圧の変化による歯痛の予防につながります。普段から規則正しい食生活や適度な運動、十分な睡眠を心がけることに加え、過度なストレスを避け、リラックスする時間を意識的に持つようにしましょう。
「気圧×体調」の変化と上手に付き合うために
気象病や気圧性歯痛は、誰にでも起こりうる身近な不調です。天候の変化によって体が敏感に反応することを理解し、セルフチェックや日々のケアを取り入れることで、気圧変動による不調とも上手に付き合えるようになります。季節の移り変わりを健やかに過ごすために、自分の体のサインに耳を傾けていきましょう。