【最新情報】国民皆歯科健診は義務化される?制度の目的と私たちへの影響

【最新情報】国民皆歯科健診は義務化される?制度の目的と私たちへの影響

(2024年1月22日公開)
日本では定期的な歯科健診が十分に普及しておらず、多くの人がむし歯や歯周病を患っています。その対策として、政府は国民皆歯科健診の検討をしており、さまざまな議論が行われています。現在の検討状況やその背景、生活への影響を詳しく紹介します。

               

国民皆歯科健診とは?

2022年のニュースで、歯科健診が義務化される動きが取り上げられて話題になりました。しかし「義務化」というトピックばかりが注目され、本来の目的や詳しい内容がわかりにくくなっています。そこで本記事では、国民皆歯科健診に関する現在の検討状況、検討されている理由、考えられる影響について最新情報を詳しくまとめました。
国民皆歯科健診とは、国民全員に対して歯科健診を義務付ける制度です。現在は1歳半~3歳までの幼児と、小学生から高校生までは歯科健診を受けることが義務とされています。しかし、義務化されていない大学生・社会人以降においては、歯周病をはじめとする歯のトラブルの増加が社会問題化しています。
そこで、法改正のプロジェクトチームが立ち上がり、手薄だった年齢層への義務化も含めて法改正や制度改善が議論されるようになりました。直近では2023年10月に「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項の全部改正について」と題して、厚生労働省が基本方針の修正を行っています*1。
日本では、口腔の健康が国民の健康と質の高い生活のために重要とされ、歯科疾患の予防を推進することを法律で定めています。今回の基本方針の修正はこの法律に則ったものであり、具体的には、国民全員が口腔ケアを「日常的に」取り組むための環境整備をすることが新たに打ち出されました。法改正までには至っていませんが、国の基本方針が修正されるという大きな修正であり、政府としても国民の口腔衛生の改善に注力しようとしていることがわかります。
現時点で、大学生や社会人の国民皆歯科健診は義務化されていません。しかし、基本方針の修正内容を見ると、私たちの生活に少なからず影響することが考えられます。また、将来的に法改正が行われて義務化することも考えられます。

なぜ国民皆歯科健診が検討されているのか?

国民皆歯科健診の制度は、主に4つの背景から検討されるようになりました。ここではそれぞれについてわかりやすく解説します。

1.依然として高い罹患状況

厚生労働省によると、成人になってから歯を失う原因の多くは歯周病またはむし歯です*2。歯周病は多くの日本人が罹患しており、45歳以降では50%以上にのぼります*3。また、むし歯においても40歳以上の有病率は99.5%であり、この年代では歯周病よりも抜歯になったケースが多いです。
国際的に統計情報が整備されているむし歯(う蝕)に焦点を当てて諸外国と日本を比較します。日本における一人当たりのむし歯経験本数は18歳で8.5本、20~24歳で9.5本、30~34歳で13.7本、40~44歳で15.6本、50~54歳で16.9本です。一方で、予防歯科の文化が根付いているスウェーデンは19歳で3.5本であり、日本人と比較して一人当たりのむし歯経験本数が少ないです。また、歯科に限らず治療費が高額になるアメリカでは定期健診により予防をすることが一般的であるため、18歳で4.5本とやはり日本の方がむし歯の本数が多い傾向です。このように、日本人におけるむし歯の罹患率の高さがわかります*4。
罹患率の高さは将来的な歯の本数に関連します。日本人は、80歳になるまでに平均して12本の歯を失っています。歯の本数が少なくなると、食事や発声、顔の形などのさまざまなことに影響が生じ、生活や健康への影響も少なくありません。そのため、歯科健診によりむし歯や歯周病を早期に発見して重症化を予防することは、生涯にわたって健康で豊かな生活をしていくことにつながります。

2.定期的な歯科健診率の低さ

むし歯や歯周病を防ぐには定期的な歯科健診が欠かせません。厚生労働省の「平成28年国民健康・栄養調査」によると、20歳以上を対象とした「過去1年間に歯科検診を受けた割合」は平均で約52.9%です*5。職場などで行われている定期健康診断の受診率が61.5%でした。健康診断の受診率と比較すると、年々増加傾向ではあるものの低いといえます。
また、地域格差も問題視されています。自治体によっては歯科健診を実施していないこともあり、都道府県ごとに実施率を比べたところ、100%の市町村が実施している自治体もあれば、16.7%の市町村しか実施していない自治体もありました*6。

3.全身疾患につながる可能性

口腔衛生が肺炎の重症化防止につながるという研究結果もあります。要介護施設において、専門的な口内ケアを週1回行うグループと行わないグループに分けて、2年後に肺炎発生率を比較したところ、約40%もの抑制効果が見られたと報告されています。その結果、患者の死亡率にも差が出ました*7。また、歯周病はさまざまな疾病との関連も明らかになっています。その代表的な疾病の一つは糖尿病であり、相互に影響を及ぼすことが知られています。他にも、心臓疾患や脳血管疾患との関連性も指摘されています*8。

4.医療費抑制の必要性

むし歯や歯周病を早期に発見できれば、重症化して抜歯などに至る前に治療ができ、医療費の負担を減らすことができます。高齢化社会に突入している日本では社会保障費の膨張が大きな問題になっています。
人口一人当たりが負担している年間医療費は増え続けており、2016年に33万2,000円でしたが、2021年には35万8,800円になり、たった5年間で26,000円も上昇しています*9。2022年には、後期高齢者の医療費負担割合が1割から2割に引き上げられました。医療費の抑制は国の財政だけでなく、個人負担割合を抑えるためにも重要なテーマとなっています。
ちなみに国民医療費を疾病別に見ると、歯科医療費は3番目に高額となっています。令和3年度実績では1位が「循環器系の疾患」で6.1兆円、2位が「悪性新生物(腫瘍)」」で4.8兆円、3位が「歯科診療医療費」で3.1兆円でした*9。先に紹介した通り、口腔衛生が1位の「循環器系の疾患」に影響することも考慮すると、口腔ケアの重要性は高いといえるでしょう。

国民皆歯科健診は義務化されるのか?

国民皆歯科健診のあり方については、現在も議論が続いています。
現時点では法律の改正までには至っておらず、義務化されてはいません。また、具体的にどのような形で義務としていくのかも確定していない状況です。
しかし、2022年の閣議決定では「生涯を通じた歯科健診について具体的に検討する」ことを明記しており、引き続き健康との関連性など、科学的根拠を確認しながら検討が進められます。また、自治体が実施している定期健診の受診率改善にも議論が及んでいくと考えられます。

国民皆歯科健診はどのように行われるのか

前述の通り、国民皆歯科健診の実施方法については、まだ議論がされている中であり、明確に定まっていません。ここでは、現状で考えられる可能性について紹介していきます。

実施主体は誰になるのか

もし義務化された場合は、まず企業が従業員に対して行う毎年の健康診断に歯科健診が組み込まれる可能性が高いといわれています。また個人事業主や高齢者など、職場で健診を受けられない人が定期健診を受けやすくするために、地域の自治体と歯科医師とが情報を共有し連携するための体制整備が行われると予想されます。実際に、先に紹介した「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項の全部改正」では「地域格差の縮小」や「社会環境の整備」などが明記されました*1。

定期的に歯科健診を受けられる環境整備が進められていく

令和6年度に厚生労働省が歯科関係で獲得した予算は、昨年度に比べて6.9%増加し、歯科保健事業の予算においては10.4%の増加になりました。このことから、今後さまざまな環境整備が進められていくと考えられます。
今回の制度に追加された内容の1つとして、対象年齢の拡大があります。これまで自治体が行う定期健診の対象年齢は40代以上でした。しかし、19歳までのむし歯保有者が44.9%であるのに対し、20~24歳になると71.2%、25~~34歳では89.4%と急増しており、ライフサイクルで切れ目のないケアの重要性が指摘されていました。さらに、歯周疾患も若年層から有病率が高いです。そのため、予防対策の充実は不可欠であると、日本歯科医師会から厚生労働省に向けて要望書が提出されていました*10。このような背景もあり、令和6年度の予算措置で20代・30代も加えられました。
さらに、予防歯科の文化を根付かせる事業として期待されているのが「歯周病等スクリーニングツール開発支援事業」です。歯周病等のリスクを簡単に評価ができるツールを活用することで、国民一人ひとりが自分の口腔衛生に自分事として向き合えるようになります*11。

私たちにはどんな影響があるのか?

国民皆歯科健診の方向性について説明してきました。ここからは、「国民皆歯科健診の導入でどんな影響があるのか」と「2023年10月の基本方針改正でどう変わってくるのか」について紹介します。

健康診断機会の充実

職場においては健康診断の項目に歯科健診が加わったり、受診者が健診メニューを選べるようになったりすることが考えられます。また、就労していない人でも健診を受けられるよう、地域全体で体制整備が進められると考えられます。
具体的には、2023年10月の基本的事項の改正で「学校・保育園・職域等を含めた社会全体における連携の確立」や「定期的な歯科健診の機会の拡充等の歯科健診の実施に係る体制整備」が明記されており*1、公共の場を活用した健診の場が設けられるかもしれません。

デジタル技術による新たなサービスが開始

デジタル技術を活用したサービスも利用できるようになり、新たなサービスも開発されていくと考えられます。2023年10月の方針改正では「デジタルトランスフォーメーションの加速」と「PHR(Personal Health Record)を含めたデータヘルスのさらなる活用」が明記されました*1。PHRとは、個人の健康・医療に関する情報のことです。各個人が自分の健康状態を自分自身で計測・データ管理して、改善に取り組めるようになると考えられます。

国民皆歯科健診の費用は自己負担?

現時点で費用負担については決まっていません。個人負担になった場合、私たちの負担は大きくなりますが、長期的に見れば予防歯科による医療費抑制が期待できます。事業者、つまり雇用主が従業員の費用を負担する場合や、事業者と従業員それぞれが負担を分け合う形式もあり得ます。検討チームの中には国が負担する意見も出ているようですが、今後の議論によって形になっていくでしょう。

口内環境の見える化からはじめよう

歯科健診が義務化される、されないにかかわらず、大切なのは自分の口内環境について知り、良い状態に保つ意識です。健康的な口内環境を維持することの重要性は、調査の結果からも明らかになっています。定期的に健診を受けながら正しい知識を身に付け、生活習慣の改善を重ねることで、結果的に歯科医療にかかる治療費の負担を抑えることができます。
まずは第一歩として、口内環境の見える化からはじめましょう。口内トラブルが起きるたびに歯科医院に行くのではなく、日頃からチェックする習慣が大切です。口内環境の改善が見える形で表れてくれば、習慣化の後押しになり、ひいては長い人生の中で健康的で彩りのある生活が送れるようになるはずです。

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