歯から耳の後ろにかけて痛い原因
歯から耳の後ろにかけて痛みを感じる場合に考えられる原因はいくつかあります。ここでは、その原因について紹介します。
むし歯がある
歯から耳にかけて痛みがあるときの原因のひとつは、むし歯です。むし歯では、周囲の組織が炎症を起こすことがあります。この炎症が、顔面やこめかみを通っている三叉神経(さんさしんけい)を刺激すると、歯から耳にかけて痛みが発生します。つまり、むし歯が悪化すればするほど、むし歯のある箇所やその周辺の痛みが強くなるということです。
耳の後ろが痛い場合は、奥歯や親知らずにむし歯ができていて、病状も進行しているおそれがあります。さらに、むし歯がもっと進行すると歯髄炎を発症し、歯の神経を刺激して「ズキズキ」という強い頭痛を引き起こすこともあります。むし歯を起因とした頭痛が起きている場合は、早めに歯科医院に受診しましょう。
むし歯によって起きる頭痛や脳への影響については、以下の記事で解説しています。併せて読んでみてください。
歯周病がある
歯から耳にかけて痛みがある場合、歯周病が原因になっている場合があります。歯周病では、歯ぐきが炎症を起こし、歯ぐきと歯の間の隙間が広がることで、その隙間に細菌がたまり歯槽骨が溶けてしまいます。ただし、歯から耳にかけて痛くなるのは、骨が溶けるためではありません。骨が溶けたことによって歯の噛み合わせが悪くなり、顎の関節に痛みが出るためです。また、歯根が副鼻腔に接していた場合、炎症が起きてその周囲の歯ぐきで痛みが発生します。歯周病によって歯根が露出してしまっていると、露出した部分が知覚過敏にもなり、痛みが発生します。
親知らずの炎症(智歯周囲炎)
親知らずの炎症である智歯周囲炎が原因で歯から耳にかけて痛みを生じることがあります。智歯周囲炎では、親知らず周辺の歯ぐきに炎症が起き、歯ぐきが腫れて痛みが生じます。親知らずは耳に近い位置にあるため、歯から耳にかけて痛みを生じることがあります。智歯周囲炎の症状には、歯ぐきから膿が出る、頬が腫れるなどもあります。
顎関節の異常
顎関節に異常がある場合も、歯から耳にかけて痛むことがあります。顎関節や下顎の骨と耳の周辺組織は、いわゆるエラと言われる部分で強い関係性があります。歯から耳にかけて痛みが出る場合、顎関節に異常が出る「顎関節症」に起因していることも考えられます。
顎関節症とは、関節円板という骨の位置が本来の場所からずれてしまう状態のことを指します。顎関節症では、下顎と上顎にある骨の突起が、口を開け閉めするたびに関節円板を圧迫してしまい痛みが発生します。
顎関節症についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
ストレス・緊張
ストレスや緊張も、歯から耳にかけて痛くなる原因のひとつです。ストレスがたまった状態や緊張状態が続くと、顎の筋肉が硬直して歯ぎしりや歯を噛み締めることが増えます。歯ぎしりや噛み締めが増えると、歯に痛みが出やすくなります。
また、ストレスが原因で発生するカテコールアミンという神経ホルモンの増加が、歯から耳にかけての痛みの原因となる場合もあります。カテコールアミンの増加により、奥歯周辺の血管が充血し、痛みが生じます。
中耳炎や外耳炎
中耳炎や外耳炎は、耳から歯にかけて痛みを生じる原因となります。中耳炎や外耳炎の場合、歯や顎に生じる疾患が原因ではなく耳に原因があります。
中耳炎とは、中耳腔に細菌が侵入し感染することによって起こる病気です。風邪と同時に発症することが多く、耳に痛みが発生します。感染がひどい場合、耳の奥の耳小骨が影響を受けてしまい、痛みだけでなく耳鳴りも発生することがあるのが特徴です。
一方で、外耳炎とは外耳道で起きる炎症のことです。外耳道は耳の外側半分の軟骨に当たる部分で、そこに様々な菌が常在菌として存在しています。この種類や数のバランスが崩れることで、外耳炎が発生します。外耳炎の場合、耳を引っ張ると強い痛みが生じます。耳掃除をしすぎたり、耳の中に水がたまったりなどが原因で起こる疾患です。
歯から耳の後ろにかけた痛みへの対処法
続いて、歯から耳の後ろにかけて痛みが出た場合の対処法を解説します。
軟らかい食べ物を食べる
顎関節の異常が原因で歯から耳にかけて痛みを感じるのであれば、歯に優しい軟らかい食べ物を食べるようにしましょう。顎に異常がある場合、硬い食べ物は骨を刺激してしまうからです。歯や顎への負担を減らし、痛みが発生しないようにする必要があります。
アイスパックや湿布で冷却する
アイスバックや湿布を使って冷やすことで、痛みを軽減できます。血行が良いと炎症がひどくなってしまうので、温めないようにしましょう。冷却することで炎症を和らげられるため、一時的に痛みを緩和する効果が期待できます。
ただし、むし歯や歯周病が原因だった場合、冷やした方が良いからといって、氷を口に入れて直接患部を冷やすのはやめましょう。刺激が強すぎて知覚過敏の症状が発生し、さらに痛みが生じてしまうおそれがあります。
痛み止めを使用する
歯から耳にかけての痛みが強すぎる場合、鎮痛剤や解熱剤などの薬を服用しましょう。用法用量を守って使用することで、痛みを軽減できます。ただし、これまでの対策と同様に、痛み止めの使用は一時的に痛みを緩和するだけです。根本的な解決法ではないため、できるだけ早期に医療機関で受診することをおすすめします。
まずは歯科医院で相談してみる
歯から耳にかけての痛みがあるなら、まずは歯科医院を受診しましょう。相談することで、対処法や治し方を教えてもらえます。もし痛みの原因がむし歯や歯周病であれば、歯科医院で治療することができます。
むし歯や歯周病が原因ではないのであれば、歯科医院のアドバイスを参考に、他の医療機関を受診しましょう。中耳炎など耳が原因の痛みなら耳鼻科・耳鼻咽喉科、顎関節の異常が原因なら口腔外科を受診するのが良いでしょう。
むし歯による耳の痛みを予防する方法
むし歯が原因で生じている耳の痛みを予防するためには、そもそもむし歯にならないことが大切です。ここからは、むし歯予防に効果的な方法を中心に解説します。
歯磨き・うがいを徹底する
むし歯は、食べ物の残りカスが口内に残り、それを餌にむし歯菌が産生する酸が原因でできてしまうものです。歯磨きによる磨き残しが原因なので、歯磨きやうがいを徹底して行いましょう。
可能な限り毎食後に歯磨きとうがいを行うと良いです。とくに親知らず周辺や奥歯は磨きにくく汚れが残りやすいので、入念なケアが必要です。昼食時、職場で歯磨きができない場合は、うがいだけでも行いましょう。
歯磨きのとき、長時間力を入れて磨きすぎると歯が傷ついてしまい、知覚過敏が発症してしまうこともあります。毎回3分くらいの時間で丁寧に磨くようにこころがけましょう。歯ブラシで磨くだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを使うことで、歯ブラシでは届かない歯の間の汚れを取り除けます。
自分の歯磨きの仕方に不安がある場合は、歯科医院へ受診し、歯磨きの方法を教えてもらうのもおすすめです。
自分の歯磨きの仕方に不安がある場合は、歯科医院へ受診し、歯磨きの方法を教えてもらうのもおすすめです。
唾液の分泌を促進する
むし歯予防のためには、唾液の分泌を促すことも重要です。唾液には歯を保護してくれる役割があります。水分を十分に摂取したり、咀嚼回数を増やしたりすることで唾液の分泌を促進することができます。咀嚼回数が増えると唾液腺が刺激されるため、唾液量が増えます。手軽な方法としては、ガムを噛むのがおすすめです。また、緊張した状態が続いて口の中がカラカラになった経験はないでしょうか。唾液は、ストレスがたまっていると減少する傾向にあります。
唾液の分泌が減るとむし歯だけでなく口臭も発生してしまうので、喉の渇きを潤したり、よく噛んだりすることでむし歯や歯周病、口臭の発生を防ぎましょう。
フッ素を利用する
むし歯を予防するために、フッ素を利用するのもおすすめです。フッ素の持つ2つの予防効果について紹介します。
フッ素の効果① 酸産生の抑制
フッ素はむし歯菌の酸産生を抑制し、口内をむし歯に強い環境へと整えます。フッ素は細菌に取り込まれる作用があります。その際に細菌の代謝系酵素の働きを抑制するとともに酸産生を抑える効果があります。
フッ素の効果② 歯の再石灰化
唾液などに含まれるリンやカルシウムがエナメル質になる現象を「再石灰化」といいます。むし歯菌が作り出した酸は、歯の表面にあるエナメル質を溶かします。フッ素には、むし歯菌に溶かされたエナメル質を修復する効果があります。また、再石灰化の時に歯の表面にフッ素が取り込まれると、通常よりも硬いエナメル質の結晶が形成されます。
市販の歯磨き粉やマウスウォッシュの多くにはフッ素が含まれています。ドラックストアなどで手に入るマウスウォッシュの例としては、エフコート®メディカルクール香味やクリニカ フッ素メディカルコートがあります。また、歯科医院でフッ素塗布をしてもらうと、より効果的です。
まとめ 痛みが続く場合は医師に相談しよう
歯から耳にかけて痛みが生じる原因は、歯や顎に何らかの疾患がある場合が多いです。歯が原因の場合はむし歯や歯周病、顎が原因の場合は顎関節症が原因となっているおそれがあります。また、歯や顎以外にも耳の異常や炎症、ストレスが原因となることもあります。痛みが酷い場合や長く続いている場合は、放置せずに歯科医院で相談してみましょう。