舌が荒れる原因は? 治し方や考えられる病気を解説

舌が荒れる原因は? 治し方や考えられる病気を解説

(2024年1月15日更新)
舌が荒れて痛かったり、舌の表面がザラザラしていたりして違和感があると、病気が気になる方も多いのではないでしょうか。舌は体の不調が表れやすい部位の一つです。本記事では、舌が荒れる主な原因や病気を紹介し、舌が荒れたときの治し方や改善策について解説します。

               

日常の中で舌が荒れる原因

舌が荒れてしまったり、痛みがあったりするなどの症状が出る原因は、乱れた生活習慣や食習慣によるもの、クセなど、さまざまな原因が考えられます。日常生活で思い当たることはないでしょうか?まずは、日常の中で舌が荒れる原因について解説します。

口内環境の不衛生

口内環境が不衛生な状態が続くと、細菌やウイルスが繁殖して舌に炎症を起こし、舌がピリピリと痛む、ザラザラする、ネバネバするなどの症状が出ることがあります。
実は、人間の口内には500種類以上の細菌が生息しています。その中には、良い菌だけでなく、カンジダ菌や黄色ブドウ球菌などの、病気の原因菌も含まれています。免疫力が低下するとこれらの菌に対する抵抗力も下がり、舌が荒れるだけでなく、さまざまな病気を引き起こすこともあります。舌の荒れや病気のリスクを回避するためにも、歯磨きやうがい、舌磨きを適切に行い、できる限り口内を清潔な状態に保ち、口内の細菌やウイルスの繁殖を防ぐことが大切です。

歯並びや矯正器具・詰め物などによる刺激

歯並びが悪く、頻繁に歯と舌が接触すると、慢性的な刺激により舌が荒れることがあります。また、歯列矯正に使用する矯正器具、入れ歯や義歯、詰め物、むし歯で欠けた箇所などが舌にあたり、舌が傷つけられて荒れたり痛んだりするケースも多いです。特に矯正器具を新調・調整した直後や歯の裏側に矯正器具をつける舌側矯正治療(裏側矯正)を行うときは、矯正器具と舌があたりやすく、舌に口内炎ができることもあります。傷ができると細菌に感染するおそれもあるので、矯正を受けている歯科医院で相談してみると良いでしょう。

口呼吸

頻繁に舌が荒れたり、舌の先や横がヒリヒリと痛んだりするなら、日ごろのクセが原因かもしれません。
口呼吸がクセになっていると舌の表面が乾燥し、舌が荒れやすくなります。常に鼻が詰まっている、唇や口の中が乾きやすい、無意識に口が開く、起きたときに喉が痛い、といった症状がある方は口呼吸がクセになっているかもしれません。

歯ぎしりや食いしばり

歯を食いしばる、歯ぎしりをする、舌を歯に強く押し付ける、舌で歯を触るなどのクセも舌を痛める原因になります。特に、気づかないうちに舌が歯の間から出ていたり、舌をかんだりする「舌癖(ぜつへき)」の場合、舌が荒れる原因となるだけでなく、歯並びや発音などにも悪影響を及ぼすため注意が必要です。

刺激の強い物の食べ過ぎ・飲みすぎ

舌は刺激に弱いため、刺激の強い食べ物や飲み物を口にすると舌の荒れを引き起こすことがあります。具体的には、唐辛子やコショウといったスパイスを過度に使った食べ物や、酸味が強い物、熱すぎる・冷たすぎる物などが挙げられます。
刺激の強い食べ物や飲み物であっても適量であれば、神経質になることはありませんが、あまりにも口に入れる頻度が高いと舌が荒れるリスクが高まります。また、すでに舌が荒れている状態で刺激物を口にすると、症状の悪化を招くため注意しましょう。
ほかにも、塩分が強く味が濃い物、糖質を多く含む甘い物、炭酸飲料なども舌の状態を悪化させるおそれがあるため、舌が荒れているときは控えましょう。

アルコール摂取やタバコ

アルコールの過剰摂取や喫煙は、口内の粘膜に刺激を与えるため、舌の痛みや違和感を引き起こすおそれがあります。また、過度なアルコール摂取は、アルコールの利尿作用によって唾液の分泌低下を招く可能性があります。タバコも同様に、タールやニコチンといった有害物質が喫煙によって舌の表面に付着すると唾液の分泌機能が低下します。
このような唾液の分泌が阻害された結果、口内の細菌やウイルスを洗い流しにくくなり、舌の荒れを招くことがあります。舌が荒れるだけでなく、舌にザラザラとした舌苔が発生すると、口臭の原因にもなります。

鉄分・ビタミン不足(貧血)

鉄分やビタミンなどの栄養素が不足すると、舌の表面が炎症を起こしやすくなります。特に鉄分やビタミンB12が不足すると貧血に伴って舌炎が生じます。また、ビタミンB2やビタミンB6など、皮膚や粘膜の機能維持に役立つ栄養素が不足することでも、口内炎や舌炎になることがあります。偏った食生活をしている方、貧血の方、持病がある方などは鉄分、ビタミン不足に注意しましょう。

ドライマウス

ドライマウスとは、唾液の分泌量が低下することで、口内が乾燥した状態になることを言います。ドライマウスになると口内のうるおいが不十分となり、舌の表面が乾いて荒れやすくなります。他にもドライマウスの自覚症状として、口内が乾く、口内がネバネバと粘つく、口臭が気になる、口内や舌がヒリヒリと痛む、舌が汚れやすいなどの症状が現れます。ドライマウスが原因で話しにくい、食事がしにくいなど、生活に支障をきたすこともあります。
ドライマウスの原因は、生活習慣の乱れ、精神的ストレス、疲労、口呼吸、年齢、薬の副作用など、さまざまです。また、糖尿病や腎不全、シェーグレン症候群といった病気が原因で、症状が現れることもあります。

アレルギー

特定の食材にアレルギーがある場合、それを食べることで舌や唇、喉などに痛みやかゆみ、腫れ感などの症状が現れます。ひどい場合には、腹痛や嘔吐(おうと)、じんましんなどの症状が出て、重症のケースではアナフィラキシーショックを起こして生命の危機にさらされることもあります。また、花粉症も舌が荒れる原因となることがあります。食べ物によっては、花粉と似た表面構造を持っているものがあります。花粉症を持っていると、このような食べ物を食べた場合に「 口腔内アレルギー症候群(OAS) 」を起こしやすいとされており、この症状として舌が荒れることがあります。
花粉症と口腔アレルギー症候群に関しては、下記の記事で解説していますので参考にしてみてください。
他にアレルギーによって舌が荒れる原因となるのが歯の詰め物や被せ物です。詰め物や被せ物に使われる金属素材がアレルギーの原因になることがあります。金属を使った詰め物や被せ物をした直後に舌や歯ぐきが荒れるようなら原因が金属アレルギーと特定しやすいですが、なかなか歯の詰め物や被せ物の金属が原因だと判明しにくいのが現状です。自分がアレルギーを持っているか気になる方は、皮膚科や内科、耳鼻咽喉科でアレルギー検査を受けることができるので、相談してみましょう。

舌が荒れているときに考えられる病気

もし日常生活で思い当たる舌のクセや生活習慣などがなければ、舌が荒れているのは、手足口病や口腔カンジダ症、舌がんなどの病気が原因のこともあります。場合によっては生命にかかわるおそれもあるため、該当する症状がある場合には早めに医療機関へ行くようにしましょう。

手足口病

手足口病は、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスなどのウイルス感染によって起こる感染症です。7~8月の夏季に流行する特徴があり、患者のほとんどが5歳未満の小児であるものの、大人もまれに感染することがあります。手足口病の特効薬はなく、症状に応じた治療が一般的です。
主な症状は、手のひらや足の甲、裏、口内の粘膜に水疱性の発疹が生じ、発熱を伴うこともあります。口内にできた発疹は破れやすく、そのまま口内炎になることがあります。口全体に口内炎ができると、痛みのあまり食事や飲み物がとれないことから脱水症状を引き起こすこともあるため、乳幼児の場合、注意が必要です。
手足口病によって口内に発疹や口内炎ができたときは、刺激の強い食べ物や飲み物は控えましょう。また、硬い食べ物も口内に刺激を与えるため避けた方が良いです。
手足口病に関して、大人が感染してしまった時の対策についても解説しているので参考にしてみてください。

口腔カンジダ症

常在菌であるカンジダ菌が引き起こす感染症の一種で、口腔粘膜に生じた物を口腔カンジダ症と呼びます。口腔カンジダ症の代表的な症状は、舌や頬の内側がただれる、舌や粘膜に白い苔状の斑点が現れる、舌が荒れる、舌がピリピリと痛む、味覚障害などが挙げられます。
口腔カンジダ症は、身体の免疫力が低下し体内の常在菌バランスが崩れることで発症します。免疫力が低下する要因としては、疲れや睡眠不足、栄養不良、過度なストレス、がんや糖尿病、腎臓病などの全身の病気、抗生物質やステロイド薬などの使用が挙げられます。また、免疫力が低下している高齢者や体力のない乳幼児も発症しやすい傾向があります。
口腔カンジタ症に関して下記の記事で詳しく解説しています。治療法やよく似た病気についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

舌がん

舌がんとは舌にできるがんのことで、口腔がんのひとつです。舌の荒れが慢性化している、口内炎が2週間以上たっても治らないなど、改善の兆候が見られない場合には、舌がんのおそれがあります。舌がんの主な症状は、舌の荒れや口内炎以外に、舌の側面の腫れやしこり、痛み、舌に赤や白の斑点ができるなどです。舌がんは舌の側面に生じることが多いとされています。もし舌に異常が続いている場合には早めに医療機関を受診しましょう。

舌が荒れたときの治し方

舌が荒れたときは、荒れた原因に合わせて最適な治療や対策をすることが大切です。主な治し方としては、口内環境を清潔に保つ、矯正器具の調整、生活習慣の改善、病院での治療などが挙げられます。ここでは治し方とともに改善策について解説します。

口の中を清潔にする

口内を清潔に保ち、細菌やウイルスの繁殖を防ぐことは舌の荒れの改善につながります。また、口腔カンジダ症を引き起こすカンジダ菌は義歯や入れ歯に付着しやすいため、口内および義歯、入れ歯を清潔に保つことは口腔カンジダ症予防にも役立ちます。
口内を衛生的に保つためは、食後や就寝前の歯磨きやうがいが大切です。歯ブラシを用いたブラッシングだけでは、歯のすき間に入り込んだ食べかすを除去しきれないため、デンタルフロスや歯間ブラシも併用しましょう。
出先などで食後すぐに歯磨きができないときはうがいが効果的です。うがいをこまめに行うことで、口腔乾燥を防ぎ、口内炎や口臭予防につながります。また、半年に1回程度を目安に歯科医院で健診と口内クリーニングを受けましょう。口内を清潔に保つだけでなく、自分では気づけない口内トラブルの発見にもつながります。

歯並びの矯正や義歯の調整

自分の歯や義歯、入れ歯が舌に接触しているなら、歯科医院で義歯や入れ歯の調整をしてもらいましょう。また、歯並びに問題がある場合には歯科矯正を検討するのもよいでしょう。歯列矯正の代表的な手法としては、ワイヤー矯正、マウスピース矯正、舌側矯正の3つがあります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、歯科医師の説明を聞いたうえで検討をしてみましょう。
ほかにも、むし歯で歯が欠けている、詰め物や被せ物がずれているなどで、舌を痛めているケースもあります。このようなケースは自分では原因に気づきにくいです。歯の定期検診を受けるようにして、異常があっても早期発見と治療をできるようにするとよいでしょう。

悪いクセを改める

舌が荒れているときは、口呼吸や歯を食いしばる、歯ぎしりをする、舌を歯に強く押し付ける、舌で歯を触るなどのクセを意識的にやめましょう。意識して気をつけることで治りも早くなります。
たとえば、口呼吸なら鼻呼吸を心がけてみましょう。日ごろから鼻呼吸を意識することで改善でき、口内の乾燥を防ぐことができます。就寝中など、意識して治しにくい場合は、市販のマウステープなども効果的です。歯ぎしりをする、舌を歯に強く押し付ける、舌で歯を触るなどのクセの場合には、歯並びや噛み合わせを治療したり、専門のトレーニングを行ったり、矯正器具を使うことで改善が期待できます。
歯の矯正については下記の記事で、矯正の種類やチェックポイントなどを解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

アルコールや喫煙を控える

アルコールや喫煙は、口内の粘膜を刺激して舌の荒れを悪化させるおそれがあります。舌がんの原因にもなるため、どちらもできる限り控えることが大切です。
アルコールであれば厚生労働省が「節度ある適度な飲酒」として公表している、「1日平均純アルコールで約20g」を守るようにしましょう。これは缶ビールなら500ml缶1本、日本酒なら1合程度のアルコール量です。
タバコに関しては1本吸っただけでも健康リスクが高まると言われているため、舌の荒れ以外にも体の健康を考えると禁煙が理想的です。

病院を受診する

病気は早めの治療が大切です。口腔カンジダ症や舌がんは自力で治せないため、継続的な舌の痛みや違和感があるのなら早めに医療機関を受診しましょう。受診先は歯科や耳鼻咽喉科のほか、手足口病の症状があるときには5歳以下であれば小児科、大人であれば内科や皮膚科が望ましいです。

舌が荒れやすい人は食生活を改善しましょう。

舌が荒れやすい理由に、ビタミン不足や貧血などが関係していることがあります。積極的に摂取したいビタミンと鉄分について紹介します。

ビタミンB群を摂取しましょう。

舌が荒れる原因のひとつとして、ビタミン不足が挙げられます。特に、ビタミンB2やビタミンB6が不足すると、舌の粘膜が薄くなり、傷つきやすくなります。そのため、舌が荒れた場合は、ビタミンB2やビタミンB6を積極的に摂取することが大切です。また、貧血を伴う場合は、正常な血液を作る働きのあるビタミンB9(葉酸)やビタミンB12を摂取しましょう。
舌の健康を維持するには、ビタミンをバランスよく摂取することが重要です。ビタミンB群は、単体で摂取するよりも、複数のビタミンB群をできるだけ同時に、バランスよく摂取することが大切です。食事だけで摂取が難しい場合には、マルチビタミンなどのサプリメントを活用し、質のよい食生活を心がけましょう。
ビタミンBを含む食品を紹介します。

ビタミンB2を多く含む食品

牛・豚・鶏のレバー、うなぎ、海藻、サバなどの青魚、卵、納豆、唐辛子などに豊富に含まれています。

ビタミンB6を多く含む食品

赤身肉、マグロ、バナナ、ビタミンなどに豊富に含まれています。

ビタミンB9(葉酸)を多く含む食品

レバー、枝豆、モロヘイヤ、ほうれん草、ブロッコリーといった緑黄色野菜、いちごなどに豊富に含まれています。

ビタミンB12を多く含む食品

動物性食品に含まれています。 特に牡蠣やあさり、しじみの魚介類やレバーなどに豊富に含まれています。

鉄分を摂取しましょう

貧血や栄養不足が原因で舌が荒れていることもあります。鉄分は、豚や鶏のレバー、マグロやカツオの赤身、納豆や厚揚げなどの大豆食品、小松菜やほうれん草などの青菜に豊富に含まれています。ビタミンと一緒にこれらを食事にとり入れることで、正常な血液を作るのに役立ちます。

刺激物を控えましょう

舌が荒れているときは、硬い物、辛い物、酸っぱい物など、刺激のある食べ物や飲み物は控え、できるだけ柔らかく舌を刺激しない物を選びましょう。

まとめ 舌のトラブルは早めに解決しよう

舌が荒れる原因は、口内の不衛生や矯正器具による刺激、アルコール摂取やタバコ、食習慣の乱れ、舌や口のクセなどさまざまです。口内を清潔に保ち、生活習慣を見直し改善することが大切です。しかし、症状によっては、感染症や舌がんなどのリスクもあるため、舌の不調が続く場合には早めに医療機関を受診しましょう。

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