果物を食べたら口がかゆい...実は花粉症が原因かも?口腔アレルギー症候群について徹底解説

果物を食べたら口がかゆい...実は花粉症が原因かも?口腔アレルギー症候群について徹底解説

(2024年2月26日更新)
毎年、多くの方が悩んでいる花粉症。くしゃみ、鼻水、鼻づまりや目のかゆみなどの症状が現れると辛いですよね。ところで、果物や生野菜を食べると口の中や口の周りにかゆみやしびれを感じることはありませんか?その症状はもしかしたら花粉症がきっかけかもしれません。この記事では、花粉症と口のかゆみ・しびれなどの症状との関連性や、花粉症に関連してこれらの症状が起こる仕組みと対処法についてご紹介します。花粉症と関連して反応しやすい食べ物についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

               

花粉症について

花粉症とは、植物の花粉が原因で生じる季節性アレルギー性疾患の総称です。花粉症の患者数は年々増加しており、花粉症を発症している日本人の多くスギ花粉によるアレルギー反応だといわれています。ここでは、花粉症の症状や、花粉症のメカニズムなどについて解説します。

花粉症の症状

花粉症を発症すると、主な症状としてくしゃみ鼻水鼻づまり目のかゆみ充血のどの痛みが現れます。また、果物や生野菜を食べた後口の中かゆみしびれむくみなどの症状が現れる人もいます。この症状は、口腔アレルギー症候群(OAS:oral allergy syndrome)と呼ばれており、花粉症の合併症として発症することの多いアレルギー症候群です。口腔アレルギー症候群が起こる確率は、シラカバの花粉症患者で、35~60%、オオバヤシャブシの花粉症患者で約25%、スギ花粉症患者で約7~15%といわれています。

花粉症のメカニズム

目や鼻、口から花粉が侵入してくると、その異物を受け入れていいかどうかを体内で判断します。排除する必要があると判断した場合、体は異物に反応する物質(抗体)を作り出します。この物質を「IgE抗体」と呼びます。この抗体ができた後に再び花粉が体内に入ると、鼻や目の粘膜にあるIgE抗体と結びつきます。それらが結合すると、アレルギー反応の原因である化学物質(ヒスタミン、ロイコトリエンなど)が分泌されて、花粉を体の外に排出しようとします。その結果、花粉を体内に入れないように、くしゃみで吹き飛ばす、鼻水・涙で洗い流す、鼻がつまる、などの症状が現れます

口腔アレルギー症候群について

口腔アレルギー症候群は、果物や生野菜に含まれるアレルギーを起こす原因物質(アレルゲン)が、口の中の粘膜に触れて起こるアレルギー反応です。普段は食べられる果物や生野菜でも、急にかゆみやしびれを感じる場合は、この症状かもしれません。ここでは、口腔アレルギー症候群について解説します。

口腔アレルギー症候群の症状

果物や生野菜を食べた後、数分以内に症状があらわれます。主な症状は、唇や舌など口の中や喉にかゆみやしびれ、むくみなどがあります。症状の多くは、発症後しばらく時間が経過すると自然と軽快します。しかし、アナフィラキシーショックと呼ばれるショック症状を起こすこともあります。ショック症状により血圧の低下や意識障害などを引き起こす危険性もあるため、症状を感じたらすぐに食べるのをやめましょう。
口腔アレルギー症候群以外にも唇がかゆくなる原因があります。
原因別の対処法や予防法は、こちらの記事でご紹介しています。

口腔アレルギー症候群が起こる仕組み

口腔アレルギー症候群の原因となる食べ物は、花粉に含まれる原因物質と似た構造をもつタンパク質を含んでいます。花粉に反応するIgE抗体が、タンパク質の構造が似た食べ物を花粉と同じ異物と判断してしまい、アレルギー反応が起こります。そのため、花粉症を発症している方は口腔アレルギー症候群を合併して引き起こすことが多いとされています。そのほか、気管支喘息の既往がある方薬剤アレルギーがある方ラテックスアレルギー(天然ゴムによるアレルギー)がある方は、花粉症と同様に口腔アレルギー症候群を 合併して発症することがあるため、注意しましょう。

口腔アレルギー症候群を引き起こしやすい食材

口腔アレルギー症候群は花粉症と関連して発症することが多く、反応する花粉によって症状を引き起こす食材も異なります。アレルギー症状を引き起こす花粉の種類と、花粉症と合併して口腔アレルギー症候群が引き起こされる恐れのある食材を一覧にまとめました。

花粉の飛散時期と食材の関係について

口腔アレルギー症候群は花粉症と関連して発症することが多く、反応する花粉によって症状を引き起こす食材も異なります。アレルギー症状を引き起こす花粉の種類と飛散時期をまとめました。また、合わせて各花粉に起因して口腔アレルギー症候群を引き起こすおそれのある食材も紹介します。花粉の飛散量が多くなる時期は特に、関連する食材にも注意が必要です。

主な花粉と交差反応を起こしやすい食材

     
  • シラカンバ花粉
    飛散時期のピークは4-6月です。主にリンゴ、モモ、サクランボに注意が必要です。
  • スギ花粉
    飛散時期のピークは2-4月です。主にトマトに注意が必要です。
春頃になると飛散するスギ花粉は、スギ雄花の着花量(花粉生産量)に大きく依存するため、環境省で花粉症の調査としてスギ雄花の着花量の調査が行われています。2023年12月に実施された調査では、2023年11月~12月にかけて、スギ雄花の着花量は、全国的な傾向として、過去10年平均値と比べ、同程度もしくは、やや少なくっているという結果報告でした。過去10年の平均値と比較して、150%以上を記録した地域は、岩手県、愛知県、島根県、50%以下は山形県、茨城県、徳島県、高知県という報告です。
また、前年の同時期と比較しても一部地域を除いて、ほとんどの地域で少なくなっています。

引用:環境省_令和5年度スギ雄花花芽調査の結果について
     
  • イネ花粉
    飛散時期のピークは5-6月です。主にトマト、スイカ、メロンなどに注意が必要です。また、小麦などのアレルギーを発症しやすくなる場合もあります。  
  • ヨモギ花粉
    飛散時期のピークは8-10月です。ヨモギとブタクサは主にメロン、スイカ、セロリなどに注意が必要です。
  • ブタクサ花粉
    飛散時期のピークは8-10月です。スギ、ヒノキに続いて花粉症の原因とされています。

口腔アレルギー症候群の診断

もしも、かゆみやしびれなど口腔アレルギー症候群と思われる症状が出たら、早めにかかりつけの医院に相談することをおすすめします。ここでは、疑わしい症状が出たときに受診する診療科と検査方法について紹介します。

受診する診療科

まずは、花粉症で受診しているかかりつけの医院に相談することをおすすめします。花粉症の診断が出てない場合は、アレルギー科耳鼻咽喉科眼科を受診しましょう。 他に内科でも受診が可能です。

口腔アレルギー症候群の検査

口腔アレルギー症候群を発症しているかどうかは、血液検査で調べることができます。また、鼻水の成分を顕微鏡で分析して診断することもあります。アレルギーの原因物質を特定する際には、“抗体測定”を実施します。そのほか、原因として疑われる花粉物質でアレルギー反応が誘発されるかどうかを検査することもあります。具体的には、鼻の反応をみる“鼻粘膜誘発テスト”や皮膚の反応をみる“プリックテスト”などです。
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口腔アレルギー症候群の治療

口腔アレルギー症候群の発症を抑えるには原因物質を摂らないことが大事です。また、一度発症した口腔アレルギー症候群は花粉症の治療を行なうことで改善できる場合があります。

原因となる食べ物を避ける

治療として最も有効なのは、原因となる食べ物を避けることです。症状が出た後も原因の食物を摂取し続けると、重症化する恐れがあります。果物や生野菜で引き起こされている場合には、加熱や加工をすることによりタンパク質の構造が 壊れて、摂取が可能になることもあります。しかし、全てのものに当てはまるわけではないので、気を付けましょう。特に豆乳(ダイズ)とナッツ類は調理をしてもタンパク質の構造が壊れないため、完全に避けることをおすすめします。

花粉症を治療する

口腔アレルギー症候群は、合併する花粉アレルギーの症状を治療することで軽快することがあります。そのため、花粉症の治療を行うことも大切です。花粉症を発症した場合の治療法は、主に薬物療法アレルゲン免疫療法の2つがあります。

薬物療法

花粉症は、花粉の飛散開始前、または症状が軽い時期から薬を予防的に服用して、症状の発現を遅らせたり、症状を軽くしたりすることが有効です。花粉症の症状を薬による対症療法だけで完全におさえることは難しく、花粉を避けるセルフケア(口腔アレルギー症候群の発症を抑えるには の章で解説)と薬物を用いるメディカルケアを同時に行うことが大切です。主な治療薬は、くしゃみや鼻汁が原因の場合は、抗ヒスタミン薬、鼻づまりの場合には抗ロイコトリエン薬や噴霧用の局所ステロイド薬が処方されます。

アレルゲン免疫療法

アレルゲン免疫療法は、原因物質の抽出液で作った薬を、少しずつ体に入れて花粉に対する反応を弱めていき、原因物質に対して防御する免疫を獲得させるという治療法です。アレルゲン免疫療法には、原因物質を皮下に注射する「皮下免疫療法」と、原因物質を含む薬を舌下(ぜっか)に投与する「舌下免疫療法」の2種類があります。この治療を受けて、ごくまれにアナフィラキシーショックを引き起こすことがあります。アレルゲン免疫療法は、基本的には安全性の高い治療法ですが、治療を受ける際には、医師から副作用についても説明してもらいましょう。

口腔アレルギー症候群の発症を抑えるには

口腔アレルギー症候群を単独で発症することはまれです。そのため、花粉症に掛かっていない方は、花粉を避けて花粉症の発症を予防することが有効です。天気予報で案内される、花粉の飛散予測情報を聞いておくと避けやすくなります。花粉は昼前後と夕方に多く飛散します。外出時の服装は花粉が付着しにくいものを選び、マスクメガネなどで花粉を防ぎ、帰宅時には花粉を払うなどして家の中に花粉を持ちこまないようにしてみてください。こちらの予防法は、花粉症を発症した後でも有効な方法ですので、参考にしてみてくださいね。

まとめ

口腔アレルギー症候群は、花粉症と合併して起こることが多いアレルギー症候群です。果物や生野菜を食べて、口の中にかゆみやしびれを感じたら、口腔アレルギー症候群を発症している可能性があります。発症したら、まずは原因の食物を摂取することを避けて、花粉症に関するかかりつけ医院を受診するか、皮膚科やアレルギー科を受診してください。また、花粉症の治療が口腔アレルギー症候群の症状軽減につながるため、花粉症の治療を行ってくださいね。

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