生理前は歯ぐきが腫れたり痛んだりするのはなぜ?関係性や対策について解説

生理前は歯ぐきが腫れたり痛んだりするのはなぜ?関係性や対策について解説

(2024年1月18日更新)
毎月、生理前になると歯ぐきが、「腫れる」「痛む」「ムズムズする」「出血する」という悩みはないでしょうか。実は生理と歯ぐきの腫れや痛みなど症状には、女性ホルモンを介して大きく関係があります。この記事では、生理に関係して歯ぐきが腫れたり痛んだりする原因や対策をご紹介します。

               

なぜ生理前に体調が変化するのか

女性の体は、成長や妊娠の準備のために女性ホルモンを分泌します。女性ホルモンには、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という2つの種類があり、生理周期とともに分泌量が変化します。
女性ホルモンの量が大きく変化すると、それに合わせて心や体の不調となって表れることがあります。このような症状のことをPMS(月経前症候群)と呼びます。PMSは、生理の3~10日前から症状がはじまります。症状は人によって異なり、腹痛やむくみ、頭痛などさまざまで、なかには歯ぐきの腫れや痛み、出血などの症状がある方もいます。

生理になると歯ぐきの腫れが起きるワケ

生理前になると歯ぐきが腫れたり痛んだりする症状は、女性ホルモンと関係があることが明らかになっています。ここでは、歯ぐきの症状と女性ホルモンのかかわりについて解説します。

女性ホルモンは歯周病菌の栄養源になる

歯周病とは、歯ぐきの出血や腫れなどの症状を引き起こす病気です。歯周病の症状は、口の中にいる歯周病菌によって引き起こされます。口内に存在する歯周病菌の種類は400~700種いると言われており、その中には女性ホルモンの1つであるエストロゲンを栄養源として増殖する歯周病菌がいます。
エストロゲンは、8~9歳ごろから分泌されはじめ、主に妊娠の準備や女性らしい体づくりのために働くホルモンです。エストロゲンの量が増えることで、それを栄養源として歯周病菌が活性化するため、歯ぐきの腫れなどの歯周病の症状がでる原因となります。

生理前は歯ぐきを腫れさせる成分が増える

女性ホルモンの1つであるプロゲステロンは、歯ぐきなどの毛細血管を広げる働きがあります。また、痛みや腫れなどの炎症の元になる「プロスタグランジン」という成分を増やす作用があります。そのため、プロゲステロンの分泌量が増えると、歯ぐきの毛細血管を刺激し、歯ぐきの腫れや痛みを引き起こすおそれがあります。

免疫力が落ちる

生理が歯ぐきの腫れを引き起こすもうひとつの原因は、免疫力の低下です。女性ホルモンは自律神経の調整にも関わります。そのため、ホルモンバランスが変わることで、イライラ、憂うつ、頭痛、腰痛、食欲不振などの症状が現れます。さらに、これらが原因によるストレスや睡眠不足も影響して、生理のときは免疫力が低下しやすくなります。免疫力が落ちていると歯周病菌が繁殖しやすくなり、通常ならば免疫の働きで抑えることができるような歯周病の症状が、現れやすくなります。

体温が上昇する

生理のおよそ2週間前は一般的に体温が0.3~0.6℃ほど上昇します。歯周病菌は37 ℃前後を好みます。生理の頃は歯周病菌が繁殖しやすくなるため、歯周病菌が増えることで歯ぐきも腫れやすくなります。

女性ホルモンの影響で歯周病の症状がでやすいタイミング

女性ホルモンの影響によって、女性は歯周病の症状が出やすいとされています。女性の生涯では特に歯周病菌が活性化しやすいタイミングが何度か訪れます。女性のライフステージ別に歯周病のリスクを見ていきましょう。

思春期

生理が始まる思春期は、女性ホルモンの影響で歯周病のリスクが高まる最初のライフステージです。
生理が始まるのに伴い、女性ホルモンのバランスが大きく変化するため、生理に合わせて歯ぐきの腫れや痛みが起きやすくなります。また、ライフスタイルも大きく変化する時期です。例えば、受験期と重なって夜型生活になったり、人間関係や勉強によるストレスを抱えやすくなったりもするため、免疫力が低下して歯周病の症状が現れやすくなる時期でもあります。歯ぐきの腫れや出血、口臭などが気になる場合は、歯周病の一種である思春期性歯肉炎を発症しているケースもあるため、早めにケアしましょう。

生理前・生理中

思春期を過ぎて女性ホルモンのバランスが安定したあとも、生理周期にともなう女性ホルモンの分泌量の変化によって歯周病のリスクが高まる場合があります。微妙な体温の変化や免疫力の低下にも、口の中は影響を受けます。
また、生理前になると甘いものを食べたくなったり、食事の量が増えたりしてしまう方も注意が必要です。生理中は食欲にも影響が出やすいものですが、糖質の摂取量や摂取頻度が多いほど、口内は細菌が繁殖しやすい環境となります。

妊娠期・出産期

妊娠期・出産期は女性ホルモンが大量に分泌されます。そのため、歯周病菌が繁殖しやすくなったり歯ぐきが炎症を起こしやすくなったりします。また、つわりが原因で気分が悪くなりやすいためオーラルケアが困難になり、歯周病のリスクが高まります。つわりによって吐いてしまうと、胃酸によって口内環境が酸性化してしまい、歯や歯ぐきにもダメージを与えてしまいます。

更年期

女性ホルモンの分泌が減少する更年期も、歯ぐきに影響が起きやすい時期です。
女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌が低下すると、骨密度が低下しやすくなります。すると、歯を支えている顎の骨が弱くなり、「歯がぐらつく」「歯ぐきが急激に痩せると」いった症状が出ることがあります。
また、エストロゲンの減少により唾液の分泌量も減少します。唾液が減少して口の中が乾きやすくなると、唾液による抗菌作用や自浄作用が働きづらくなり、歯周病菌が活発化するおそれもあります。

生理以外に考えられる歯ぐきの腫れの原因

歯ぐきが腫れる原因は、生理にともなうホルモンバランスの変化だけではありません。ここからは生理以外に考えられる主な原因を解説します。知らないうちに症状が悪化することのないように、さまざまな原因を理解して対処しましょう。

歯周病

歯ぐきが腫れる原因で特に多いものとして、歯周病があげられます。歯周病は、歯と歯ぐきの間へ歯垢(プラーク)がたまることが主な原因です。歯垢の中に含まれる歯周病菌の影響で歯ぐきが炎症を起こし、歯ぐきの腫れや出血などを引き起こす病気です。

むし歯

歯ぐきが腫れる原因の1つにむし歯があります。むし歯が進行して歯の神経に達すると、歯根が炎症を起こし歯ぐきまで影響を及ぼします。また、むし歯が進行していなくても、歯に付いた歯石や歯垢(プラーク)なども歯ぐきが腫れる原因になります。セルフケアだけでは歯石や歯垢は落とせないため、歯科医院で定期的に除去してもらいましょう。

親知らず

口の奥の見えにくい場所に生えてくる親知らずも歯ぐきが腫れる原因のひとつです。見えにくく歯ブラシも届きにくいためブラッシングがしづらいです。そのため、歯垢が溜まってしまい腫れなどの炎症を起こしやすいです。また、親知らずが斜めに生えていたり、一部しか見えない生え方だったり、不規則な生え方をしていることも多く、さらにブラッシングがしづらかったり、周りの歯や歯ぐきが押されたりして、炎症が起きるおそれがあります。
特に腫れや痛みなどがある時は、歯科医院で抜歯を相談してみましょう。

生理前に歯ぐきが腫れることへの対策

ここからは、歯ぐきが腫れた際の対策をご紹介します。できることからぜひ実行してみてください。

丁寧なオーラルケア

歯ぐきの腫れ予防に最も大切なことは、自宅での丁寧なオーラルケアです。生理前後の時期は特に、食後の歯磨きやうがいを欠かさず行いましょう。歯周病菌や汚れをできるだけ洗い流して、口の中を清潔な状態に保つよう心掛けてください。歯ブラシだけでは、歯の隙間まで磨くことはできないため、デンタルフロスや歯間ブラシを使ったセルフケアも合わせて行なうことがおすすめです。

ストレスを抱えない

歯ぐきが腫れないようにするには、ストレスを抱えないことも大切です。
生理のときは女性ホルモンの分泌が増えて口の中の歯周病菌が活性化します。そのため、ストレス・疲労・睡眠不足によって免疫力が低下すると、歯ぐきの炎症が強く現れるおそれがあります。適度な休息など、できるだけストレスや疲れを溜めないようにしましょう。

暴飲暴食を避けて体を休ませる

生理前になると食欲が増す方や、甘いものを大量に食べたくなる方も多いのではないでしょうか。歯周病のリスクが高まっているときに暴飲暴食など不規則な生活をすると、体にも負担になるため免疫力の低下につながります。生理前はいつも以上に、健康的な食習慣を意識しましょう。長い時間食べていることも歯周病のリスクが高くなります。できるだけ間食は抑えて、栄養の偏りがないように野菜や肉・魚などをバランスよく食べ、糖分の摂取や飲酒はほどほどにしましょう。しかし、エネルギー不足になるため、糖分を過度に控えることもおすすめできません。

セルフケアで症状が治らない方は歯科医院相談する

自宅で丁寧にオーラルケアを行ったり、生理前に体調を整えたりしていても、歯ぐきの腫れがおさまらない場合があります。歯周病やむし歯が進行しているおそれもあるため、そのときは歯科医院へ相談しましょう。歯科医院では、歯ぐき状態を観察した上で適切な処置を受けることができます。歯垢や歯石を除去し、むし歯があれば治療をします。自分に合わせた歯磨き指導を受けることも重要です。
また、歯科医院で定期検診を受けることで、より口の中を健康な状態に保てるため、生理前の口内トラブルが起きにくくなるでしょう。

生理による歯ぐきの腫れの原因・対策を知ろう

今回は、生理前と歯ぐきの腫れの関係や原因、対策についてお伝えしました。女性はホルモンバランスの影響で、男性よりも歯周病のリスクが高い傾向にあります。生理前と歯周病の関係や、ライフステージごとに異なる歯周病のリスクをよく理解し、口の中をケアしていきましょう。

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