(2023年4月17日公開)
【歯科医師監修】
歯ぐきが腫れる主な原因とそれぞれの治療法や対処法、歯ぐきの腫れを抑える方法を解説します。さらに、自宅でもできる応急処置の種類や歯ぐきが腫れてしまわないように普段からできる予防法についてまとめました。歯肉炎が発症した際の応急処置に加えて、普段からの予防に効果がある薬や歯磨き粉も紹介します。
歯ぐきの腫れは自然に治る?
歯ぐきの腫れは、そのままにしていても自然に治ることはありません。痛みがないからといって、歯ぐきが腫れて頬もぷっくり膨れているのにそのままにしておくと、症状が悪化してしまう恐れがあります。
歯ぐきが腫れてしまった場合は、なるべく早く歯科医院を受診するようにしましょう。歯科医院で歯ぐきが腫れた原因を特定してもらい、適切な治療を受けることが重要です。
※この記事で紹介するのは、一時的に痛みを和らげたり悪化するのを防いだりするための応急処置です。応急処置だけでは根本的な原因を取り除くことができないため、歯科医院を受診しましょう。
歯ぐきの腫れをひかせる方法! 自宅でできる対処法はある?
歯ぐきの腫れが自然にひくことはありませんが、市販の薬を飲むなどの方法で応急処置をすることができます。家で簡単にできる応急処置の方法を紹介します。
体を休めて歯ぐきを冷やす
身体が疲れていて免疫が弱まっていると、歯ぐきが腫れたり痛みが生じたりしやすくなります。これは、歯ぐきに細菌が繁殖して膿がたまっているためです。
まずは身体をゆっくり休めて、体力を回復させましょう。また顎や頬の部分に水で湿らせたタオルを当てて患部の近くを冷やすことも効果的です。冷却ジェルシートを貼ったり保冷剤を当てたりすると、冷えすぎて血流が悪くなり、逆に腫れを悪化させることもあるため、注意しましょう。
歯ぐきの腫れが酷くて食事をするのも辛いようなときは、カロリーが高くて口に入れやすいゼリーなどを食べるようにしましょう。食事をとらずに体力が下がるのはよくありません。
うがい薬で消毒する
口の中が汚れた状態だと、歯ぐきの腫れが悪化してしまう恐れもあります。悪化を防いだり症状を抑えたりするためにも、口内をきれいにしておくことが大事です。
毎日の歯磨きを丁寧に行うのはもちろんのこと、応急処置としてうがい薬を使うのもおすすめできます。ただし、うがい薬の中でもアルコール成分の強いものを使用すると歯ぐきへの刺激が強く、症状が悪化してしまう恐れがあるため注意が必要です。
歯ぐきの腫れに対する応急処置としてうがい薬を使うときは、殺菌効果が高い種類を選ぶようにしましょう。たとえばイソジンであれば、成分として殺ウイルス効果があるPVPI(ポビドンヨード)を含んでいます。
参考:
イソジン公式サイト
痛むときは市販の痛み止めを使う
歯ぐきの腫れが悪化してしまうと食べ物も口にできないほどの痛みを伴う場合があります。我慢するのが辛いほどの歯ぐきの痛みには、ロキソニンなどの市販の痛み止めを使うのも有効です。痛みがひどくて食事ができないと体力低下につながるため、痛みを止めるのは症状の悪化を防ぐのにも有効です。歯ぐきが腫れた際の痛みを抑えるのに適した、市販の痛み止めをいくつか紹介します。
ロキソニンS
6種類の生薬から構成された漢方処方の乾燥エキスで、歯ぐきの腫れや出血を抑えて口内の痛みを抑えてくれます。こちらも飲みやすい錠剤で、1回4錠を1日3回服用します。
生葉漢方錠
6種類の生薬から構成された漢方処方の乾燥エキスで、歯ぐきの腫れや出血を抑えて口内の痛みを抑えてくれます。こちらも飲みやすい錠剤で、1回4錠を1日3回服用します。
デントヘルスR 10g
患部に塗るタイプのお薬です。痛いところにとどまって、口内の腫れや痛みを軽減してくれます。
これらのお薬は、ドラッグストアで薬剤師に相談することで購入できます。購入前に禁忌や服用上の注意をよく理解し、飲んでも問題ないかを必ず確認するようにしましょう。
やわらかめの歯ブラシで磨く
口内が汚れていると、細菌が増えて炎症も起こりやすいため、しっかりと歯磨きをすることが大切です。一方で歯磨きのときに硬い歯ブラシを使ったり強い力で歯磨きをしたりしていると歯肉を傷つけ、腫れが悪化してしまう恐れがあるので注意が必要です。歯ぐきが腫れているときは、やわらかい歯ブラシを使って優しく磨くようにしましょう。
歯ぐきが痛んでいる状態で歯磨きをすると出血することもありますが、ひどい出血でなければ気にする必要はありません。徐々に腫れや出血がおさまります。少しの出血があっても、あまり気にせず優しく丁寧に歯磨きを続けましょう。
歯ぐきが腫れる主な原因と治療法
歯ぐきが腫れてしまうのはなぜでしょうか。ここでは主な原因と治療法をみていきます。なお、歯ぐきの腫れ・出血の原因や対処法について以下の記事でより詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
歯周病
歯ぐきが腫れる原因で一番多いものとして、歯周病があげられます。歯周病は歯と歯肉の間へ歯垢(プラーク)がたまって、その中に含まれる細菌の影響で歯肉が腫れる病気です。歯ぎしりや歯の食いしばり、頬杖なども歯周病の原因になってしまうことがあります。
歯周病は痛みのないまま進行してしまうので注意しなくてはなりません。歯ぐきを指で押したときに痛みを感じる際は、歯周病である可能性が高いでしょう。放置したままにすると、痛みがひどくなったり歯がグラついたりするなど、症状が悪化してしまいます。なるべく早めに歯科医院に受診しましょう。歯周病が進行すると、歯磨きだけでは健康な状態に戻すことができなくなります。
歯科医院では、専用の機械で歯垢や歯石を取り除く治療を行うのが一般的です。進行状況によっては、抗生剤が使われたり、手術が必要となったりすることもあります。
むし歯
むし歯が進行して神経が死んでいる状況で放置すると、歯の根元あたり(根尖)に膿が溜まる「根尖病巣(こんせんびょうそう)」となり歯ぐきが腫れます。膿が溜まると根尖病巣から出口を作ろうとして、歯肉がニキビのようにぷくっと膨れ上がります。これは「フィステル」と呼ばれます。痛みはほとんどありません。
根尖病巣やフィステルになってしまった場合は、歯科医院で歯の根元部分を治療し炎症を治める根管治療を受ける必要があります。フィステルの治療では、問題の歯を一度抜歯して、口の外で処置をほどこした上で口に戻す外科的根管治療を行う場合もあります。
根尖病巣やフィステルは、そのまま放置をしていても自然に治ることはありません。放置をすると痛みを伴い始めてさらに悪化することも考えられるので、歯科医院でなるべく早めに治療することが重要です。
智歯周囲炎
親知らず(智歯)が生えると歯ぐきがめくれて、歯と歯ぐきの間にたまった歯垢によって細菌が繁殖してしまうことがあります。それが原因で炎症が起こり、歯ぐきが腫れてしまうのが智歯周囲炎です。智歯周囲炎になった場合、歯科医院では親知らずに覆いかぶさる歯ぐきを切除して歯垢がたまらないようにする治療を行います。
ただし、歯科医院で治療しても、すぐに腫れや痛みが引くわけではありません。一般的には、治療の2~3日後までは痛みや腫れが酷くなりますが、その後徐々に落ち着き、1週間程度で治ります。
ストレス
むし歯や智歯周囲炎だけでなく、ストレスも歯ぐきが腫れる原因です。ストレスによって免疫が弱まり、細菌に感染しやすくなってしまうからです。ストレスと同様に疲労や寝不足なども免疫力の低下を引き起こし、歯ぐきが腫れる原因となることもあります。
ストレスが原因で歯ぐきが腫れている場合は、十分な休息や睡眠をとるなどして、ストレスを取り除くことが必要です。また、食生活を改善することで身体の免疫力を高めることも大事です。
ストレスが原因の歯ぐきの腫れであれば、身体を休めるなどの応急処置で回復することが多いでしょう。ただし、なかなか改善しないときは他の原因が影響していることも考えられます。その場合は原因を見つけるために、歯科医院を受診しましょう。
ホルモンバランスの変化
女性ホルモンには特定の歯周病菌を増殖させたり、歯周病の炎症を悪化させる作用が存在するため、年齢によってホルモンバランスが大きく変わる時期の女性は、より口内環境のケアに注意しましょう。思春期における女性ホルモンの増加に伴い歯周病菌の活動が活発化し発症にいたる場合があります。また、女性は妊娠する時期においても女性ホルモンが大量に分泌されることから歯ぐきが腫れてしまうことも少なくありません。
妊娠中はつわりなどの影響で歯磨きがおろそかになったり、食生活が変化して分泌される唾液の量が少なくなり、自浄作用が弱まったりします。ホルモンバランスの変化に加えて、妊娠中はこれらも歯ぐきが腫れやすくなる原因です。
また更年期にはホルモンが低下し、ストレスが溜まりやすくなるほか、唾液の分泌が減ってむし歯になりやすくなります。唾液の分泌が減ることで口が乾きやすくなると「ドライマウス」となってしまいます。これも、歯周病にかかりやすくなる原因なので、注意が必要です。
さらに更年期は、ホルモンに含まれるエストロゲンも少なくなります。エストロゲンは骨密度の低下を防ぐ他に炎症を抑制する役割があるので、減少をすることにより炎症を抑えることができず、歯ぐきが腫れやすくなります。
このように、女性は男性に比べて歯ぐきが腫れやすくなることから、普段から口内を清潔に保つなどのケアが重要です。 歯ぐきの腫れが気になるときは、歯科医院で歯石除去などのケアをしてもらうようにしましょう。
歯ぐきの腫れを予防する方法
歯ぐきの腫れを予防するには、日頃から口内を清潔に保つ必要があります。そのために重要となるのが歯磨きです。以下のような点に注意して、歯磨きを続けるようにしましょう。
- 毎日毎食後に歯を磨く
- 歯の表面だけでなく歯と歯ぐきの境目まで磨く
- ゆっくり時間をかけてずみずみまで丁寧に磨く
- 歯ブラシの毛先がきちんと歯と歯の間にあたっている鏡を見て確認しながら磨く
歯ブラシと一緒にデンタルフロスも使う
歯磨きとあわせて、デンタルフロス(歯間ブラシ)を使うのもおすすめです。歯磨きの前にデンタルフロスを使うことで、歯磨きではきれいにしづらい歯と歯の間の歯垢を取り除きやすくなります。歯垢は2~3日で石灰化がはじまるため、1日1回を目途に行うと効果的です
歯周病予防の歯磨き粉を使う
歯周病予防に効果がある歯磨き粉を選ぶのも有効です。歯周病予防の歯磨き粉には、歯ぐきの炎症を抑える成分や、殺菌作用のある成分が含まれています。たとえば「サンスター 薬用G・U・Mデンタルペースト」にはCPCという成分が含まれており、歯周病菌の増殖を促す菌に対しても作用するため、歯周病発症の予防に繋がります。
それでも歯ぐきが腫れてしまった場合は、なるべく早めに歯科医院やクリニックへ相談し、治療を受けるようにしましょう。下部から、近隣のクリニックを簡単に検索できます。
まとめ 症状が悪化する前に歯科医院に受診を
歯ぐきの腫れは歯周病などの病気や、ストレス、ホルモンバランスの変化によって生じます。歯ぐきが腫れて痛いときはうがい薬で消毒したり、痛み止めで痛みを和らげたりする応急処置が有効です。その上で症状を悪化させないためにも、なるべく早く歯科医院を受診するようにしましょう。
監修歯科医師:横山知芳先生
神奈川県横浜市にある横山歯科医院 院長。鶴見大学歯学部卒業。学生時代はラグビー部に所属しチームプレーを学んだことから、チーム医療での患者様のサポートをモットーとしている。歯科の最新の技術にアンテナを張り、勉強やトレーニングにも積極的に力を注いでいる。第87期JIADSペリオコース修了。皆川アカデミーインプラントコース修了。国際インプラント学会認定医(DGZI)。
横山歯科医院のホームページはこちら
http://www.yokoyamashikaiin.jp/