健康な歯ぐきの色・硬さは? 歯磨きのポイントや歯周病との関係【歯科医師監修】

健康な歯ぐきの色・硬さは? 歯磨きのポイントや歯周病との関係【歯科医師監修】

(2022年11月30日公開)
硬いものを食べた時などの衝撃から歯を守り、また歯と隙間なく密着することで、口内の細菌の繁殖や体内への侵入を防ぐ働きをしてくれるのが歯ぐきです。それだけに、健康な歯をいつまでも保つためには、歯だけではなく、歯ぐきのケアも大切です。この記事では、歯ぐきの色や硬さのチェックの仕方をはじめ、歯ぐきとも深い関係にある歯周病について詳しく解説します。

               

健康な歯ぐきの条件

歯ぐきが健康かどうかを確認する際は、色や硬さ、形状、歯磨き後の出血の有無などに注目しましょう。健康な歯ぐきの条件は次のとおりです。

淡いピンク色

健康な歯ぐきは淡いピンク色をしています。ただし、喫煙や紫外線などによりメラニン色素が歯ぐきに沈着している方では、黒ずんでいたり茶色がかっている場合があります。

硬さがある

健康な歯ぐきは引き締まっていて弾力があります。押すとぶにぶにと軟らかい場合は、何らかの疾患が関係していると考えられます。

歯と歯の間の歯ぐきの形がシャープな三角形

歯ぐきには、歯を正しく支える役割があります。そのため、健康な歯ぐきは歯の間に隙間がなく、また歯ぐきは全体的に引き締まっていて、先端が鋭利な三角形をしています。

スティップリングがある

健康な歯ぐきには、スティップリングと呼ばれる無数の細かいくぼみがあります。これは、歯の根を支える歯槽骨(しそうこつ)に歯ぐきの繊維が密着している証拠です。反対にこのくぼみが失われると歯周病が疑われるため、歯ぐきの健康状態を見る1つの指標となります。

歯磨き後も出血しない

歯周病によって歯ぐきに炎症が起こると、少し触れるだけでも出血します。歯ブラシやデンタルフロスを使用した後に出血する場合は、歯周病を発症している可能性があります。

不健康な歯ぐきの条件・歯周病の可能性も?

不健康な状態の歯ぐきをそのまま放置しておくと歯周病を発症するおそれがあります。不健康な歯ぐきの条件や歯周病の主な症状について詳しく見ていきましょう。

歯周病のリスクが高い不健康な歯ぐきの特徴

下の項目は、歯ぐきが健康かどうかを確認するためのチェックリストです。一つでも当てはまる場合は、歯ぐきが不健康な状態にあると言えます。

・歯ぐきが赤く腫れている
・歯ぐきを押すとぶよぶよしている
・歯を磨くと歯ぐきから出血する
・歯がグラグラする
・口臭が強くなった
・歯が長くなったように感じる
・歯ぐきが下がったように感じる
・歯が浮いているように感じる
・食べ物を噛みにくい

実は、これらの症状の多くは歯周病の場合によく見られます。歯周病は歯ぐきの健康と関係が深い疾病で、そのまま放置しておくと歯ぐきの腫れや出血などが起こり、最終的には歯を支える骨が溶けて歯が抜けてしまうこともあります。
いつまでも健康な歯ぐきを維持するためには、歯周病について理解しておくことが大切です。

歯周病とは

歯周病は、細菌の繁殖により歯ぐきに炎症が起きている状態です。細菌の塊である歯垢(プラーク)が歯に付着すると、棲息している菌が毒素を出して歯肉炎を引き起こします。さらに症状が進行して歯槽骨まで達すると、骨を溶かして歯がぐらつくようになり、やがて抜けてしまいます。特に歯ぐきがやせたり免疫力が低下する中年期以降の方では、歯周病になる確率が高くなります。症状はゆっくりと進行していくため、早期のうちに発見・治療することが大切です。

歯周病を放置するとどうなる?

歯周病はどのように進行するのか詳しく見ていきましょう。

・健康な状態
歯ぐきは淡いピンク色をしており引き締まっています。

・軽度
歯ぐきの炎症に加え、歯を支える骨が溶けはじめるのが特徴です。この段階になると、歯周ポケット(歯と歯ぐきの間にある溝)も徐々に深くなってきます(2~4mm)。すると歯周ポケットにプラークや歯石が溜まりやすくなり、そのまま放置しておくと中等度・重度の歯周炎へと進行していきます。

・中等度
細菌が歯周組織にまで侵入して歯周炎を引き起こすと、次に歯槽骨や歯根膜(歯の根元と歯槽骨の間にある組織)の破壊が始まります。これにより歯槽骨が半分程度まで溶け、歯ぐきが下がって痩せて見えたり歯が伸びたように感じたりするほか、歯がぐらつき始めるようになります。しかし中等度まで進行しても、ほとんどの方は歯周病だと自覚できないと言われています。
・重度
この段階になると、歯を十分に支えることができなくなるため、ものを噛むのが困難になります。場合によっては、そのまま歯が抜けてしまうこともあります。また歯ぐきから血や膿が出たり、口臭も気になるようになってきます。

歯周病の治療

歯周病の治療は、進行度によって異なります。軽度の場合は、適切な歯磨きで原因となる歯垢を落とし、歯科医院で歯石(歯垢が石灰化して硬くなったもの)を除去することで改善が期待できます。中等度へ進行してしまうと、歯周ポケットの奥にまで歯垢や歯石が溜まった状態であるため、多くの場合はこれらの除去を目的とした治療が行われます。重度であっても、歯周組織の再生、歯根に付着した歯垢・歯石の除去など、可能な限り歯を残す治療法が検討されます。しかしいずれの治療法も難しいと判断した場合は、抜歯します。

歯科医院で行なう歯周病の検査や治療方法について詳しくはこちらの記事で解説しています。

健康な歯ぐきを維持する・取り戻す方法

普段からしっかりケアをしておけば、健康な歯ぐきを維持することが可能です。また歯周病であっても、早い段階で適切な処置を行うことで、改善が期待できます。

毎食後歯磨きする

むし歯や歯周病などを引き起こす主な原因は、食べかすを元に作られた歯垢です。しかし歯垢には粘り気があり、また水には溶けない性質のため、うがい程度では完全に落としきることはできません。そのため、食後は歯ブラシや歯間ブラシなどを使って、できるだけ早いタイミングで食べかすや歯垢をしっかり落とすことが重要です。歯ブラシが使用できない場合は、殺菌作用のあるマウスウォッシュなども有効です。

寝る前は特にしっかり磨く

唾液には、口内の細菌を洗い流す自浄作用があります。しかし寝ている間は唾液の分泌が低下するため、細菌が増えやすい環境になっています。寝る前の歯磨きは入念に行い、できるだけ細菌の増殖を防ぐようにしましょう。マウスウォッシュなどを併用すれば、さらに効果が高まります。

歯と歯ぐきの境目、歯周ポケットもしっかり磨く

歯と歯ぐきの境目の溝は、歯垢が溜まりやすい箇所です。特に入念に磨くようにしましょう。また、歯ぐきに炎症が起きると歯周ポケットが深くなり、そこに溜まった歯垢は簡単に落とすことができません。歯ブラシを歯面に対して45度に傾けて、毛先を歯周ポケット内に入れ込むように磨いてください。ただし歯磨きをする際は、歯や歯ぐきを傷つけないように、やさしく丁寧にブラッシングするのが基本です。

適切な歯の磨き方についてはこちらの記事も参考にしてください。

デンタルフロスや歯間ブラシを活用する

一般的な歯ブラシでは、ブラシの先が歯と歯の間に十分に届かず、汚れをしっかり落とすことが難しいとされています。デンタルフロスや歯間ブラシを利用すれば、このような問題は解決します。慣れないうちは難しいと感じることもあるので、デンタルフロスの場合はワックス付きや糸の細いタイプ、歯間ブラシなら細いタイプを選ぶといいかもしれません。

歯ぐきのマッサージをする

歯ぐきをマッサージすると、血行が改善されて歯ぐきへ酸素と栄養がしっかり供給されるようになります。その結果、歯ぐきの細胞の再生サイクルが整いやすくなり、細菌に対する抵抗力が高まります。清潔な手や、やわらかい歯ブラシで、歯ぐき全体や歯と歯ぐきの境目などを丁寧にマッサージしましょう。

歯ぐきのマッサージについて詳しくは、こちらの記事で解説しています。

定期的に歯科医院でクリーニングを受ける

定期的に歯科医院で歯ぐきや歯のクリーニングを受けることで、歯周病やむし歯の予防効果が高まります。普段の歯磨きでは落としきれない汚れや、歯石などを徹底的に除去してもらえます。

クリーニングと併せて、歯や歯ぐきの状態もチェックしてもらえるため、口内トラブルの早期発見に繋がることもメリットです。

口呼吸をしないよう意識する

口呼吸をすると、口の中が乾燥して唾液の分泌が低下します。唾液には細菌の増殖を抑えたり汚れを取り除いたりする作用があるため、減少するとむし歯や歯周病のリスクが高まります。普段から鼻呼吸を意識するとともに、鼻炎やいびきなどのような口呼吸を促す要因のある方は、早めに治療や改善をするようにしてください。

よく噛む、よく喋る

よく噛む、よく喋ることで唾液の分泌が促され、口の中の自浄効果がアップします。ちょっとした心がけ次第で改善できる方法なので、日常生活の中に取り入れるようにしてください。

タバコを吸わない

タバコには、歯や歯ぐきに悪影響を与える成分が含まれています。

例えば、一酸化炭素は血液中の赤血球と結合しやすい性質を持っているため、歯ぐきに十分な酸素が行き渡らなくなります。またニコチンは、血管収縮作用により歯ぐきへの酸素や栄養の供給を妨げるだけでなく、免疫機能にも悪影響を及ぼします。そのため、口内の細菌に対する抵抗力が低下するおそれもあります。

そのほか、歯にヤニが付着することで表面がざらつき、そこに歯垢が付着しやすくなることも、細菌が増える原因になります。
近年は、加熱式タバコや電子タバコが登場していますが、これらは歯周病に影響がないのでは?と思う方が多いのではないでしょうか。紙巻タバコよりも有害物質は少ないとされていますが、多くの加熱式タバコにはニコチンが含まれています。そのため、歯や歯ぐきの健康に影響がないとは言えないでしょう。

また、電子タバコはニコチンを含まないものが一般的ですが、米国での調査および厚生労働省の見解によると、電子タバコが健康被害を起こすおそれを否定できないとしています。

出典:電子たばこの注意喚起について|厚生労働省

歯に力をかけやすい人はマウスピースを使用する

日常生活で歯ぎしりの習慣のある方、スポーツなどで歯を食いしばる機会の多い方は、歯ぐきに大きな負担がかかっています。これにより歯のすり減りやぐらつきだけでなく、歯肉や歯槽骨に炎症が起きた場合は歯周病にもつながるおそれがあります。このような方では、マウスピースを使用して歯と歯ぐきへの負担を減らすことが大切です。

健康を意識し免疫力低下に注意する

免疫は、本来体に備わっている防御システムで、体内に侵入する細菌やウイルスなどの外敵に抵抗し、排除する働きをしてくれます。そのため、この力を高めることは、結果的に口の中の細菌にも対抗し、むし歯や歯周病はもちろん、細菌に由来する数々の疾病から歯や歯ぐきを守ってくれます。睡眠不足や栄養不足、ストレスなどは、免疫力の低下を招くため、生活習慣を整えて心身の健康を保つことが大切です。

まとめ

健康な歯ぐきを維持するためには、毎食後の歯磨きや、歯科医院での定期的なチェックやクリーニングを受けることが大切です。また生活習慣を見直して免疫を高めることも、さまざまな細菌トラブルから歯ぐきを守るのに有効な方法です。いつまでも自身の歯を残すためにも、少しでも異常を感じたら、すぐに歯科医院で診察を受けるようにしましょう。

監修歯科医師:重永基樹先生

東京都新宿区西落合の哲学堂デンタルクリニック院長。1999年に愛知大学院大学卒業。2002年に現在のクリニックを開業。「なるべく削らない・抜かない・神経をとらない」方針で治療を行っている。

哲学堂デンタルクリニックのホームページはこちら
http://tetsugakudo.com/

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