(2022年11月30日公開)
親知らずが生えかけの段階や抜歯後には、親知らず周辺の歯ぐきがパカパカとめくれることがあります。この記事では、なぜ歯ぐきがめくれるのか、めくれた状態を放置するとどうなるのかについて解説します。痛みを伴うときの対処法についても紹介しているので、歯ぐきの様子が気になる方は、ぜひ参考にしてください。
親知らずの歯ぐきがパカパカめくれる原因
親知らずは、生えかけの段階では歯ぐきを圧迫するため、その部分がめくれてしまうことがあります。通常は徐々に退縮していき最終的に歯ぐきと一体化しますが、親知らずに覆いかぶさったままの状態で残ってしまうとパカパカめくれるようになります。これは珍しいことではありませんが、隙間に食べかすや歯垢が溜まりやすくなるだけでなく、口の奥は歯磨きがしにくいこともあり、むし歯や歯周炎などを引き起こす原因になることもあります。
生えかけの親知らずが痛む場合の注意点や抜歯をするべきかについては、こちらの記事も参考にしてください。
親知らずの抜歯後に歯ぐきがめくれるケースも
歯ぐきがめくれるのは、親知らずが生える時だけとは限りません。歯ぐきの切開により親知らずを抜いた後にも見られることがあります。一般に、抜歯による傷口は1週間程度で治り、抜糸ができますが、「抜糸=完治」ではありません。歯を抜いた部分は血が溜まって血餅(新しい歯ぐきや骨が作られるために必要な血の塊)ができることでふさがっていき、完全に埋まるまでには、多くの場合3か月〜6か月、長い場合では1年ほどかかることもあります。それまでは、歯ぐきがめくれる可能性が十分にあります。
親知らずを抜歯後の注意点についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
歯ぐきに痛みがないなら放置しても大丈夫?
歯ぐきがめくれていても、特に痛みがない場合「そのままでもいいのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかしそのまま放置しておくと、別の疾患につながるおそれがあります。ここでは、放置した場合の影響について解説します。
放置すると智歯周囲炎の原因に
歯ぐきがめくれた状態では、その部分の隙間に食べかすなどが溜まりやすく、細菌感染が起こる原因にもなりかねません。場合によっては、炎症による腫れや痛みを伴う智歯周囲炎(ちししゅういえん)につながる可能性もあります。智歯周囲炎とは、親知らずの周辺で炎症が起こっている状態のことです。
智歯周囲炎の放置で痛みも出る
智歯周囲炎の症状が悪化すると、親知らず周囲の歯ぐきの腫れや痛みがさらにひどくなるほか、膿が出ることもあります。特に疲労やストレスが溜まると免疫力が低下するため、症状がより強く出る可能性が高くなるでしょう。
さらに放置したままにしておくと、炎症が顎の骨や他の組織にまで影響を及ぼし、口を開けにくくなったり顔が腫れたりするなど、日常生活に支障をきたすこともあります。また最悪の場合は、手術が必要になることもあるため、早めの対処が大切です。
歯ぐきの痛みが出る前に! 自分でできる予防法
ここでは、歯ぐきがめくれて痛みが出る前に、自分でできる予防法をご紹介します。簡単にできるのでぜひ実行してみてください。
タフトブラシを使って丁寧に歯を磨く
タフトブラシは、毛束がまとまったピンポイント用の歯ブラシです。ヘッド部分が格段に小さいため、一般的な歯ブラシでは届きにくい奥歯や歯間に溜まった汚れを落とすのに最適です。また歯並びが悪い方にも向いています。通常の歯ブラシでブラッシングした後、タフトブラシを使って気になるところを磨いてください。ただし、歯ぐきがめくれている部分に使用する際は、傷つけないようにやさしく丁寧に行うことが大切です。
うがい薬で口の中を消毒する
歯ぐきがめくれて歯が磨きにくい・痛みを感じる場合は、うがい薬や洗口液(マウスウォッシュ)で口内を洗浄・殺菌消毒するのも有効な方法です。液体なので、口の中をまんべんなくケアできるのがポイントです。
しかし洗口液は、ゆすいだ後に歯磨きが必要なタイプであるデンタルリンスなど、製品によって使用方法が異なります。またアルコールが入っている場合は刺激を感じたり、アレルギーの原因になったりすることもあります。そのため、自分に合ったタイプを選ぶようにしてください。
歯ぐきがめくれて痛みがでたときの対処法
歯ぐきがめくれて痛みを伴う場合、できるだけ歯科医院を受診するべきですが、すぐには行けないこともあります。そのようなときは、自分でできる対処法で痛みを一時的に抑え、できるだけ早く受診するようにしてください。ここでは、具体的な対処法を2つご紹介します。
痛い部分を冷やす
炎症が原因で歯ぐきに痛みがある場合、患部を冷やすことで軽減できることがあります。ただし、直接冷やすとかえって痛みが強くなるおそれがあるので、保冷剤を包んだタオルなどを頬の上から当てるようにしましょう。
市販薬を服用する
歯ぐきの痛みが強い場合、市販の鎮痛剤で抑えるのも対処法の1つです。ただし、他の薬を服用している方や妊婦、妊娠の可能性がある方は、事前に医師や薬剤師と相談してください。また、何度も服用していると効果が弱まることもあるので、定められた用法・用量は必ず守ってください。鎮痛剤で痛みが治まったとしても、あくまでも一時的にすぎません。痛みが治まっているうちに、早めに歯科医院を受診してください。
親知らずの歯ぐきがめくれたあとは自然に治る? 受診すべき?
ここでは、親知らずの歯ぐきがめくれたときに、自然に治る可能性について解説します。歯科医院を受診するか迷っている方はぜひ参考にしてください。
自然治癒する可能性は低い
めくれた部分の傷が浅く、痛みを感じないのであれば、自然に治る可能性があります。ただし、基本的には自然治癒する確率は低いと考えておきましょう。自己判断による対処は、症状をさらに悪化させるおそれもあります。そうなる前に、一度歯科医院で診察してもらうのが確実です。
痛みや腫れ・膿があるときは急いで受診
歯ぐきがめくれて痛む、痛みがどんどん強くなっている、腫れや膿を伴うなどの場合は、智歯周囲炎などを発症していることも考えられます。そのまま放置すると、炎症が周囲の組織や顎などに広がる可能性があり、手術が必要なケースも出てきます。できるだけ早めに歯科医院を受診してください。
歯科医院で行われる治療
診察結果を踏まえて、症状に合わせた治療を行います。軽度であれば、親知らず周辺の洗浄や消毒、鎮痛剤や抗生物質の処方程度で済むことがあります。しかし腫れや出血、膿が出るなどの症状が見られる場合は、手術やレーザー治療なども治療法として検討されます。いずれにしても、早期であるほど治療も簡単なので、症状が進行する前に歯科医院で診察してもらうようにしましょう。
まとめ
今回は、親知らずの歯ぐきがめくれる原因、めくれたらどうなるかについて解説しました。
めくれた部分は自然治癒する可能性が低く、またそのままにしておくと食べかすや歯垢が溜まって炎症を起こし、智歯周囲炎を発症することもあります。そのため、歯ぐきがめくれてパカパカしているようであれば、早めに歯科医院を受診し、対処することが大切です。
監修歯科医師:飯田智代先生
さくら歯科医院、飯田歯科医院勤務。2002年3月 東京歯科大学卒業。大平歯科医院、ひろ歯科医院、カテリーナデンタルオフィス分院長を経て、2011年4月にさくら歯科医院の院長に就任。2022年8月からは飯田歯科医院の理事長に就任し、現在はさくら歯科医院、飯田歯科医院へ非常勤で勤務している。