親知らずは抜くべき?抜くタイミングや痛いときの対処法を解説【歯科医師監修】

親知らずは抜くべき?抜くタイミングや痛いときの対処法を解説【歯科医師監修】

(2023年5月8日更新)
【歯科医師監修】
親知らずはもっとも奥に位置する永久歯です。抜歯する方も多いですが、実は抜歯した方が良い場合と抜歯しなくても良い場合があります。この記事では、親知らずを抜歯すべきかどうかの判断基準や抜歯後の影響、親知らずが痛むときの対処法についてご紹介します。

               

親知らずとは? 特徴をおさらい

親知らずとは、最も奥に位置する永久歯を指します。親知らず以外の永久歯は12歳ごろに生えそろいますが、親知らずは20歳前後と遅いタイミングで生えることがほとんどです。また、親知らずは上顎の2本と下顎の2本で計4本ありますが、必ず生える永久歯ではなく、人によっては生涯生えてこないこともあります。
親知らずの正式な名称は第三大臼歯といい、智歯(ちし)とも呼ばれます。歯並びの最も奥に位置する親知らずは、ブラッシングがしにくく、むし歯や歯周病を招くリスクがあります。また、親知らずは正しく生えてこない場合が多いです。そのため、横を向いて生えてきてしまうと、すでに生えている永久歯に負荷をかけるおそれもあり注意が必要です。

こういう親知らずは抜歯した方が良い!

親知らずが生えてきたからといって、必ずしも抜歯しなくてはいけないわけではありません。抜歯するか悩んでいる場合は、以下のケースを参考に歯科医師と相談してみましょう。

むし歯や歯周病のリスクがあるとき

親知らずは、むし歯や歯周病を招くおそれがあります。親知らずが斜めや横向きに生えてしまうとブラッシングできない領域ができてしまいます。そうすると、ブラッシングで適切に汚れが除去できず、むし歯や歯周病のリスクを高めます。
このような状態で放置しておくと、親知らずだけではなく健康な手前の歯にも悪影響を及ぼすため、抜歯について歯科医師に相談してみましょう。

歯並びや噛み合わせに悪影響が出ているとき

親知らずが生えたことで、歯並びに悪影響が出ている場合は、抜歯を検討しましょう。たとえば、親知らずが横向きに生えていると、隣の歯を押してしまい歯並びが悪くなってしまうことがあります。
また、親知らずが生えたことで噛み合わせのバランスが悪くなった場合も抜歯を検討した方がよいかもしれません。親知らずは、生えてこない歯や斜めに生えてくる歯など、正しく生えてくることが少ないです。その結果、噛み合わせのバランスが悪くなってしまいます。噛み合わせが悪くなることで負担がかかり、歯ぐきに痛みを生じるケースがあります。
食事のたびに歯ぐきが痛んだり出血したりする場合には、歯並びや噛み合わせに悪影響を及ぼしている恐れがあるため、歯科医師へ相談しましょう。

頬の粘膜を傷つけているとき

親知らずが真っすぐに生えていない場合、頬の粘膜を傷つけてしまうことがあります。親知らずが頬の粘膜を傷つけると、そこから細菌が入り炎症や化膿を引き起こすこともあります。また、親知らずの影響で噛み合わせが悪くなり、頬の粘膜を頻繁に噛んでしまう状態も炎症を起こすことがあるため注意が必要です。

こういう親知らずは抜かなくても良い!

親知らずの周りの歯に悪影響がないのであれば、抜歯をしないこともあります。ただ、自己判断はせず歯科医師に相談しましょう。

親知らずがきれいに生えている

親知らずが真っすぐきれいに生えており、問題なくブラッシングができている状態であれば抜歯しなくても問題ありません。このような親知らずであれば、丁寧にブラッシングをすることで、歯垢を除去できるためむし歯や歯周病のリスクも少ないです。
真っすぐきれいに生えていても、噛み合わせに問題がある場合や頬の粘膜を噛んでしまう場合は、抜歯を検討しましょう。
きれいに生えている親知らずであれば、基本的に抜く必要はないことが多いです。ですが、自身では問題がないと思っていても、実際はブラッシングできていなかったり、まわりの歯に余計な力が掛かっていたりすることもあります。抜歯すべきかどうかは歯科医師と相談して決めましょう。

完全に親知らずが歯ぐきに埋まっている

親知らずが、歯ぐきの中へ完全に埋まっている場合は抜歯をしないことが多いです。歯として生えてきていないため、歯垢が溜まるといった心配もないです。また、抜歯する場合に歯ぐきを切開する必要があり、ただ抜歯するよりも施術が難しくなります。そのため、悪影響が無い場合は抜歯しないことが多いです。ただし、親知らずが歯ぐきの中に埋まった状態でも、隣の歯を圧迫している場合は放置せずに抜歯を考えましょう。
嚢胞(のうほう)が見られるようなケースでも処置が必要です。嚢胞とは、膿の溜まった袋状のものを指します。初期症状では、痛みは無く無症状なことが多いですが、感染することで痛みや腫れが生じることがあります。また、良性な場合が多いですが、腫瘍であるおそれも考慮し検査が必要なこともありますので、歯科医師に相談しましょう。

親知らずを抜かずに温存しておくと治療で活用できる

親知らずを残しておくことで、将来歯を失ったときの移植に活用できます。たとえば、親知らずの周辺にある奥歯をむし歯などで失ったとき、抜かずに残しておいた健康な親知らずを失った部分へ移植することができます。
ブリッジや入れ歯の支台歯としての活用もできます。ブリッジを装着するときは、周辺の健康な歯を削って支台として使います。親知らずを抜かずに残しておけば、ブリッジを装着するときに健康な歯を削らず、親知らずを支台歯として活用することができます。
このように、温存しておいた親知らずを将来的に活用できるケースがあります。ただ、すでに悪影響を及ぼしている親知らずを放置するのはおすすめできません。親知らずの抜歯についてメリットとデメリットを考慮して、歯科医師を相談しましょう。

親知らずを抜歯した場合のリスクはある?

親知らずを抜歯するリスクについて不安に感じる方もいるでしょう。ここでは、親知らずを抜歯する際に考えられるリスクについて解説します。

抜歯により痛み・腫れが生じる

抜歯後に痛みや腫れが生じることは多いです。斜めや横向きに生えている場合、歯ぐきの切開や骨の切削を行うことが多く、ただ抜くだけよりも炎症が起こりやすいです。施術中には、麻酔が効いているため痛みはほとんど感じませんが、麻酔が切れると強い痛みを感じます。
抜歯によって生じる痛みや腫れには個人差がありますが、施術後3日目までがピークといわれています。人によっては痛みが長引くこともあります。
親知らずを抜くと、歯科医院から痛み止めと感染防止のための抗生物質を処方されます。歯科医師または薬剤師の指導を守り、服用しましょう。

上顎から鼻の穴まで空洞がつながってしまう場合がある

上顎から生えた親知らずを抜くことで、上顎から鼻の穴まで空洞でつながってしまう場合があります。
鼻の周りには、副鼻腔と呼ばれる左右の鼻の穴に繋がっている空洞が四つあり、頬の内側部分を上顎洞(じょうがくどう)と呼びます。親知らずの根が上顎洞まで伸びているケースでは、歯を抜くことで穴があいてしまい、鼻腔まで接続してしまうことがあります。
こうなると、液体を口に含んだとき、歯を抜いたあとの穴から液体が鼻腔を通り、鼻から出てしまうことがあります。上顎洞炎や鼻血などを生じるおそれもあるため注意が必要です。基本は、歯科医院でレントゲンを撮影してから行うため、抜歯前に自身の状態について説明を受けます。穴は自然にふさがることが多いですが、膿が出ているなど炎症が起きている場合は早めに再受診する必要があります。

下顎の神経を傷つけるおそれがある

下顎の親知らずを抜歯する際に、下歯槽神経(かしそうしんけい)を傷つけてしまうと唇や舌に麻痺の症状を引き起こすケースがあります。痺れだけでなく痛みや会話がしづらくなる、といった症状が出ることもあります。しかし、多くの場合は損傷した神経はゆっくりと回復します。
2本以上抜歯する場合や、親知らずを削る施術が必要なケースでは、神経を傷つけるリスクが高くなります。神経が傷つき麻痺症状が出ると、神経の活動を抑え血流を改善することで、神経の再生を促進する星状神経節(せいじょうしんけいせつ)ブロック療法や炎症を抑えるレーザー治療による治療を行います。

親知らずが痛いときの対処法

抜歯前の親知らずが痛むと、集中力が低下することもあるでしょう。親知らずが痛いが今すぐに抜歯をする勇気はない方やすぐに歯科医院に受診できないという方は、以下の対処法を試してみましょう。

痛み止めの服用や患部を冷やすなどの応急処置

親知らずが痛むのなら、痛み止めの薬を服用しましょう。ドラッグストアでも、即効性の高い痛み止めが販売されており、親知らずの痛みを緩和するのに有効です。ただし、痛みが強いからといって、決められた容量以上の服用や連続した服用はしてはいけません。用法と用量をきちんと守りましょう。
冷却シートや濡れタオルで患部を冷やすのも処置として有効です。腫れを伴った痛みの場合、患部が炎症を起こしています。炎症は、患部を冷やすことで症状が緩和されるため、冷却シートや濡れタオルで患部を冷やしてあげましょう。ただ、氷などを直接患部にあてて冷やしてしまうと、血流が悪くなり逆効果になるので注意しましょう。

口内を清潔にする

親知らずの周辺に細菌が繁殖し、それに伴う炎症の発生で痛みを生じることがあります。そのため、ブラッシングやマウスウォッシュで口内を清潔に保つのは、痛みを緩和する処置として有効です。
ブラッシングをする際には、ブラシがやわらかめのものを使用しましょう。また、炎症を起こしている患部はデリケートなため、ゴシゴシと強くこすらないようにしましょう。痛みが大きくなり出血することもあるため、やさしくブラッシングしましょう。また、マウスウォッシュは抜歯直後だと刺激が強く痛みを生じるため、1週間ほど経過してから使用しましょう。

生活習慣を整える

生活習慣も見直してみましょう。もし、歯や歯ぐきに強い刺激を与えるような食事をしているのなら、そこから改善する必要があります。たとえば、辛いものや固いものを口にしないなどです。
十分な睡眠の時間を確保するのも大切です。体の抵抗力や免疫が低下していると、歯ぐきが腫れたり歯が痛んだりします。しっかりと睡眠をとり、免疫を高めましょう。また、適度な運動も免疫力を高めるのに有効です。激しすぎる運動は免疫を低下させる恐れがあるため、わずかに汗をかく程度の軽い運動を日々の生活に取り入れてみましょう。親知らずが痛いときの対処については、以下の記事でも詳しく解説しています。

親知らずを抜歯すべきかは医師に相談しましょう

親知らずを抜歯するべきかどうかは、親知らずや口腔内の状態によってさまざまです。真っすぐきれいに生えており、周りの歯に悪影響を及ぼしていなければ、無理に抜歯する必要はありません。反対に、斜めや横に生えていて歯周病やむし歯のリスクがある場合や痛みがある場合には抜歯を考えましょう。歯を抜くことは少なからずリスクも伴います。気になる場合は早めに歯科医師に相談することが大切です。

監修歯科医師:飯田智代先生

さくら歯科医院、飯田歯科医院勤務。2002年3月 東京歯科大学卒業。大平歯科医院、ひろ歯科医院、カテリーナデンタルオフィス分院長を経て、2011年4月にさくら歯科医院の院長に就任。2022年8月からは飯田歯科医院の理事長に就任し、現在はさくら歯科医院、飯田歯科医院へ非常勤で勤務している。

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