歯の神経を抜く理由は? 歯痛の原因となる歯髄炎や治療の手順を解説【歯科医師監修】

歯の神経を抜く理由は? 歯痛の原因となる歯髄炎や治療の手順を解説【歯科医師監修】

歯の神経には、歯の異常を知らせるだけでなく、歯の健康を保つ重要な役割があります。では、なぜ神経を抜く治療をするのでしょうか。この記事では、歯の神経が持つ役割や神経を抜く理由、治療の手順について解説します。また、歯の神経を抜いた後に見られる症状や治療の際に気を付けることについてもご紹介します。

               

歯の神経とは

歯の神経とは、歯の中にある歯髄(しずい)という組織のことを指します。歯の構造は、外側からエナメル質、象牙質(ぞうげしつ)、歯髄という順番で構成されています。歯髄には、神経の他に血管やリンパ管などが通っています。  

歯の神経の役割

歯の神経には、異常を知らせたり栄養分を運んだりする役割があります。次に、歯の神経の役割について詳しく見ていきましょう。

歯の異常を知らせる

歯に痛みを感じたり、しみたりするのは、歯の異常の情報が歯の神経を通して脳に刺激として伝わるためです。これにより、歯の異常に気づくことができます。

歯に水や栄養を与える

神経には、神経部分にある血管から歯に水分や栄養を運ぶ役割もあります。歯は、水分や栄養が不足するともろくなってしまいますが、歯の神経があることで水分や栄養が届けられて、食べ物を噛んでも歯が割れずに、丈夫な状態を維持することができます。

歯の自然な白さを保つ

歯の白さを保つことも神経の役割の1つです。歯の表面にあるエナメル質は半透明で、内側の象牙質の色が透けて見えています。歯の神経によって栄養が十分に運ばれることで、象牙質が健康になり、歯の自然な白さが保たれるのです。

歯の神経を抜く理由「歯髄炎」

治療で歯の神経を抜く理由は、歯髄炎のためです。ここでは、歯髄炎になる原因と、歯髄炎による影響について解説します。

歯髄炎になる原因

歯髄炎は、むし歯、知覚過敏、被せ物による刺激などが原因で発症します。
1.むし歯菌の感染
むし歯菌が歯髄に感染することで起こります。激しい痛みを伴う場合、歯の神経を抜くことがあります。

2.重度の知覚過敏
知覚過敏がひどい場合も歯髄炎の原因となります。
知覚過敏とは、歯ぎしりや食いしばりなどによって歯の表面のエナメル質がすり減り、内側の象牙質がむき出しになることで起こる症状です。
日常生活に影響が出るほどの重度の知覚過敏の場合は、神経を抜くことが検討されます。

3.被せ物による刺激
むし歯の治療で使用した被せ物が刺激となり、歯髄炎になるケースもあります。この場合も、歯の神経を抜くことがあります。
歯髄炎の原因となるむし歯や知覚過敏を予防するために、定期的に口内環境をチェックしましょう。唾液検査シルハでは、むし歯の活性度や、歯のエナメル質が溶けやすくなる酸性度の高さなどを知ることができます。
シルハの検査ができる医療機関は、こちらから確認できます。
知覚過敏については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

歯髄炎による影響

歯髄炎の初期段階では、食べ物がしみたり、噛んだ時に痛みを感じたりします。その状態が悪化してしまうと、何もしていない時でも痛むようになり、睡眠に支障をきたすこともあります。
歯髄炎を放置すると、歯髄が壊死してしまうことがあるので注意しましょう。初期段階であれば歯の神経を抜かずに治療することができますが、症状が悪化してしまった場合は、神経を抜いて歯の内部の洗浄や消毒をする必要があります。

むし歯で歯の神経を抜く「根管治療」の手順

歯の神経を抜く際には、細菌に感染した神経を取り除き、根管内の清掃と消毒をする「根管治療」を行います。次に、むし歯の「根管治療」と、その手順を解説します。

1. むし歯の除去

まずは、むし歯の除去を行います。局所麻酔をしてから治療を始めるのが一般的です。麻酔が効きにくい場合は、鎮静剤を服用して後日治療することもあります。目視・レントゲン、う蝕検知液などでむし歯の位置を確認した後に、むし歯になっている部分を丁寧に除去していきます。

2. 歯の神経を取り除く

専用器具を使って、神経を取り除いていきます。奥歯の神経は複雑な構造になっているため、時間がかかってしまうこともあります。

3. 根管内を洗浄・消毒する

根管内を洗浄・消毒して殺菌します。根管内に細菌が残っていると、治療後に炎症を起こして再び激しい痛みを感じてしまう可能性があります。そのため、薬剤を使って丁寧に洗浄・消毒を行います。

4. 根管内を充填する

再び細菌に感染するのを防ぐため、根管内に薬剤を入れて、詰め物でしっかりと塞ぎます。詰め物は主にペースト状のセメントや、ガッターパーチャと言われるゴム状の樹脂を使用します。

5. 土台を入れて被せ物をする

噛む機能を回復するために、歯根部を補強する土台を入れて被せ物をします。重度のむし歯では、切削により歯質の多くを失っているケースが多いため、土台を入れてから被せ物を装着する必要があります。

歯の神経を抜いた後に見られる症状

さまざまな役割がある歯の神経を抜くと、歯の色や歯の寿命などに影響があります。また、神経を抜いたにもかかわらず痛みが生じてしまうこともあります。ここでは、歯の神経を抜いた後に見られる主な症状をご紹介します。

歯が変色する

神経を抜いた歯は、茶色から黒色に少しずつ変色していきます。歯に栄養が行き届かなくなり、内側の象牙質にあるコラーゲンが変色して、黒っぽく見えるようになるためです。

むし歯に気づきにくい

歯の神経を取ると痛みを感じなくなることから、むし歯に気づきにくいです。気づいた時には、重度のむし歯にまで進行している場合があります。

歯の寿命が短くなる

神経を抜いた歯は栄養が届かなくなり、もろくなります。その結果歯が割れやすくなるため、歯の寿命が短くなってしまいます。先述したように、むし歯などの歯の異常に気づきにくいことも要因の1つです。個人差はありますが、歯の生存期間は平均5~30年、寿命は通常より10年ほど短くなると言われています。

再び痛みが生じる

神経を抜いたにもかかわらず、以下のようなことが原因で再び痛みが起きる場合があります。
1.歯の根が割れている
神経を抜いた歯はもろくなっているため、歯の根の部分が割れて細菌が侵入し、炎症を起こすことがあります。

2.噛み合わせが合っていない
歯に偏った力がかかり歯の根の周囲が炎症を起こすことがあります。

3.神経が取り切れていない
歯の根の先端部分の細い神経が少し残ってしまうことも、再び痛みが生じる原因の1つです。

4.歯の根先で細菌感染をしている
詰め物による充填や洗浄・消毒が不十分だった場合、歯の根に細菌に感染し炎症を起こすことがあります。

歯の神経を抜く治療の際に気を付けること

歯の神経を抜いた後は、できるだけ歯を長持ちさせるために、治療の継続と定期検診が必要です。

計画通りに治療を続ける

根管治療は、洗浄や消毒をするために何度も治療に通う必要があります。治療の間隔が空きすぎたり、途中でやめたりすると、治りが悪くなってしまいます。また、痛みを感じなくても、細菌が根管内に再び感染して状態が悪化し、最終的には抜歯に至こともあります。抜歯に至るまで症状が悪化しないように、計画通りに治療を受けることが大切です。

定期的にメインテナンスを受ける

歯の神経を抜いた後は、むし歯などに気付きにくくなるため、定期的にメインテナンスを受けることが重要です。定期検診を受けることで、その他の口内の異常も早期に発見できます。
口内の健康を保つためにも、定期的に唾液検査をして口内環境をチェックしましょう。唾液検査シルハは、以下のように口内環境に関する6つの項目をチェックでき、むし歯・知覚過敏・歯周病などの予防に役立てることができます。
シルハを検査できる医療機関は、こちらから確認できます。

歯の神経を抜いた後も定期検診を受けよう

さまざまな役割をもつ歯の神経を抜くと、歯の寿命にも影響を与えます。そのため、日頃から定期検診を受けて口内環境をチェックすることをおすすめします。歯の神経を抜いた場合は、歯を長持ちさせるためにも、治療後もしっかりとメインテナンスを受けましょう。

監修歯科医師:小林 大 先生

神奈川県横浜市鶴見区にある「鶴見駅前Z(ゼータ)歯科・矯正歯科」院長。北海道大学歯学部卒業。臨床歯学にて博士号を取得。「最後まで責任を持つ医院」として、患者の生涯における体と口の健康を守る治療を提供している。

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