乳歯のむし歯はすぐ治療すべき! 放置で痛み・永久歯への影響も【歯科医師監修】

乳歯のむし歯はすぐ治療すべき! 放置で痛み・永久歯への影響も【歯科医師監修】

(2023年1月31日公開)
乳歯にできたむし歯を放置すると、痛みが激しくなったり、永久歯に影響を与えたりします。日頃から子どもの口内をチェックして、むし歯の疑いがある場合はすぐに歯科医院を受診しましょう。この記事では、乳歯の特徴や子どもの口内でチェックしておきたい箇所、治療法について解説します。

               

乳歯はむし歯になりやすい

乳歯は性質上、むし歯になりやすいため、日頃から予防に努めることが大切です。乳歯がむし歯になりやすい理由と、なりやすい時期や環境、乳歯のむし歯の進行速度について解説します。

乳歯がむし歯になりやすい理由

乳歯はエナメル質が薄いため、永久歯に比べてむし歯になりやすくなっています。しかも、小さな子どもは歯の痛みや違和感を訴えにくいため、発見や検査が遅れてしまうおそれもあります。
そのため、大人が気づいたときには、すでにむし歯が神経まで達して深刻な状態になっているケースもあります。歯磨きの際には磨き残しがないよう、しっかり磨いてください。

乳歯のむし歯はいつから? 特になりやすい時期・環境

乳歯は、生後19か月~31か月(1歳7か月~2歳7か月)までの時期にむし歯になりやすいといわれています。赤ちゃんの歯は生後6か月ほどで最初の乳歯が生え始め、2歳半頃までには奥歯の乳歯が生えてきます。その頃の食事は普通食になっているため、奥歯の溝や前歯の裏側に汚れが溜まりやすいことが原因の一つです。また、食器類の家族間での共用や、大人から子どもへの口移しをする環境下で子どもを育てた場合、大人のむし歯菌が子どもの口内に侵入することがあります。すると、乳歯がむし歯になる可能性が高くなるので注意してください。

乳歯のむし歯は進行速度も早い

乳歯はむし歯になりやすいだけでなく、むし歯になるスピードも速い傾向があります。むし歯の発症や進行を防ぐために、食後の歯磨きを徹底し、日頃から子どもの口の中をチェックしてあげることに加えて、歯科の定期検診に行くことが大切です。また、初期のむし歯になってしまった場合は「フッ化ジアンミン銀」と呼ばれる薬剤を塗ることで、むし歯の進行を抑えることができます。
<むし歯予防のために唾液の質をチェック>
効果的なむし歯予防には、口内の酸性度や緩衝能をチェックして唾液の質に合わせて対策をすることもおすすめです。むし歯菌は、食べたものを餌にして酸を作り、口内を酸性に傾かせます。すると、歯が溶かされて表面にあるエナメル質がダメージを受けます。その結果、歯に穴があいてむし歯へと進行するのです。むし歯を防ぐためには、緩衝能が高い状態にする必要があります。緩衝能とは唾液の働きで口内を酸性から中性へと戻す能力です。

<唾液の酸性度や緩衝能はシルハでチェックできます>
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チェックしておきたい乳歯のむし歯がよくできる箇所

乳歯には、むし歯ができやすい箇所があります。できやすい箇所は特にチェックをして、磨き残しがないように仕上げ磨きをするとよいでしょう。むし歯ができやすい部分を4箇所ご紹介します。

奥歯と奥歯の間

外からは見えにくい奥歯は、むし歯になりやすい箇所です。進行して穴があいた状態で発見されることもあります。とくに奥歯の溝や歯の間には汚れが溜まりやすいため、注意深く仕上げ磨きをしましょう。奥歯と奥歯の間は隙間が詰まっているため、汚れを取り除くためにフロスが必要になる場合もあります。

上の前歯と前歯の間

上顎に並ぶ前歯と前歯の間は、飲み物が原因でむし歯になりやすい箇所です。とくに哺乳瓶でミルクやジュースを与える期間が長くなると、むし歯になる可能性が高くなります。

奥歯の溝

奥歯の溝はむし歯菌がたまりやすい形状をしているため、むし歯になりやすい箇所です。また、歯ブラシが届きづらいため、磨き残しが原因でむし歯になることもあります。

乳歯と歯ぐきの間

歯と歯ぐきの境目は、仕上げ磨きの際に磨かれないことが多く、むし歯になりやすい箇所です。歯ぐきに歯ブラシが当たると子どもが痛がりますが、磨かずに放っておくことはしないようにしましょう。シリコン製や毛先の柔らかい歯ブラシを使って、歯ぐきへの刺激を弱めるのも効果的です。

乳歯のむし歯を治療しないのはNG! 放置のリスク

いずれ抜けるからといって、乳歯のむし歯を治療せずに放置すると、子どもの成長にとってマイナスになることも多いため注意したほうがよいでしょう。乳歯のむし歯を放置するリスクについて解説します。

偏食になりやすい

むし歯が原因で噛むと痛みを感じたり、噛みにくい状態になったりすると、子どもが硬い食べ物を避けるようになり、偏食になる可能性があります。

顎の発達が妨げられる

むし歯で物がうまく噛めなくなると、噛む回数が減少する可能性があります。それにより噛む力が低下し、顎の発育にも影響を及ぼすリスクがあります。

菌が繁殖しやすくなる

唾液には口内を洗い流し、菌の繁殖を抑制する効果がありますが、物を噛む回数が減少すると唾液の分泌量が少なくなります。むし歯をきっかけに噛む回数が減り、唾液量が減少すると、口内で菌が繁殖しやすくなり、むし歯などのトラブルを引き起こしやすくなります。

他の歯にもむし歯が広がる

むし歯を放置すると、むし歯の原因菌が増殖する可能性があります。増殖したむし歯菌が他の歯にも感染して、むし歯が広がるおそれがあります。

永久歯の歯並び・発育に影響が出る

むし歯が原因で乳歯が早期に失われると、永久歯が正常に発育するためのスペースが確保されなくなり、永久歯の歯並びが悪くなります。また乳歯のむし歯が進行して歯髄に達すると、乳歯の下にある永久歯の発育に悪影響を及ぼす可能性もあります。

乳歯のむし歯治療法

歯科医院では、むし歯の段階に合わせた治療が行われます。ここではむし歯の状態を5段階に分けて、治療法を解説します。

初期むし歯の治療

初期むし歯の段階では、多くの場合は歯を削らずに治療が行われます。その代わりに、歯を補強する目的でフッ素を塗布し、改善の方向に向かわせます。乳歯の初期むし歯は白く汚れて見えるのが特徴です。発見したら早めに歯科医院に相談するとよいでしょう。
食生活や歯磨きの仕方の見直しと並行しながら歯科医院で定期的にフッ素塗布を続けると、初期むし歯を元に戻せる可能性があります。

軽度のむし歯の治療

軽度のむし歯がある場合は、表面を軽く削る施術が施されます。その後、歯にレジンと呼ばれるプラスチックを詰めます。
乳歯は大人の歯に比べて軟らかいため、硬いレジンがはじかれて取れやすい傾向にあります。むし歯の治療が終わった後も、レジンの状態を定期的に歯科医院でチェックしてもらうことが大切です。

象牙質まで達したむし歯の治療

むし歯が象牙質に達した場合、歯を削ってレジンを詰める治療が行われます。場合によっては、歯の型を取って後日詰めることもあります。
象牙質はエナメル質のすぐ下の層にあり、内部には歯の神経が存在する部分です。そのため象牙質が露出すると、むし歯による痛みを感じる場合もあります。

神経まで達しひどく痛みのあるむし歯の治療

むし歯が神経まで到達した場合は、神経を取り除く必要があります。神経を取り除くと将来的に歯が黒ずんできたり、むし歯に気づきにくくなったりします。
神経がなくなると、将来に渡って子どもの歯に影響をあたえる可能性があります。そのため、子どもの神経が持つ高い再生力を考慮し、神経の一部を残す治療が行われることもあります。

根っこしか残っていない状態のむし歯の治療

乳歯のむし歯が大きくなり、根っこだけが残ってしまった場合、可能な限りこの部分を残すような治療法が検討されます。なぜなら、乳歯には永久歯が生えてくるためのスペースを確保する役割もあるからです。乳歯がなくなると、永久歯が下から生えづらくなり、ボコボコの歯並びになることがあります。
抜歯をした場合は、永久歯が生えるスペースを確保するための装置をつける必要があります。

乳歯のむし歯予防には歯科検診が大切

乳歯のむし歯を予防するためには、定期的に歯科医院を受診して予防治療を受けたり、ブラッシング指導を受けたりすることが大切です。乳歯のむし歯を予防するために歯科医院でできることをご紹介します。
日頃から健康的な乳歯を保つように心がけると、むし歯の予防につながります。乳歯のむし歯を発症させないためにできることを解説します。

定期的に歯科検診を受ける

歯科医院で定期検診を受け、むし歯の兆候がないか見てもらったり、日頃の歯磨きでは落としきれない汚れを落としてもらうようにしましょう。定期検診は当たり前という意識を持つことが大切です。

仕上げ磨きの指導を受ける

歯科医院で、年齢に応じた正しい歯の磨き方について指導を受けるとよいでしょう。正しい磨き方を実践できると、むし歯になるリスクを減らせます。
また子どもが10歳になるまでは、親が仕上げ磨きをすることが理想です。歯科医院では、効果的な仕上げ磨きをするためのブラッシング指導も受けられます。
子どもたち自身が正しい歯磨きの方法を学べるように、家族がサポートすることも大切でしょう。

フッ素やシーラントなどの予防治療を受ける

歯科医院を受診すると、フッ素とシーラントによる予防治療を受けられます。フッ素は歯垢中の細菌の活動を抑え、歯の再石灰化を促進する働きがあります。シーラントとは、プラスチックの薄い層で奥歯の溝をコーティングしてむし歯を予防する治療法です。

乳歯のむし歯予防のために家族でできること

乳歯のむし歯を予防するためには、家族全員でオーラルケアをしたり、生活習慣を工夫したりすることも効果的です。乳歯のむし歯を予防するために家族で実践できることをご紹介します。

むし歯はうつる! 家族全員でむし歯を予防する

子どものむし歯を防ぐためには、家族全員が口内を清潔に保つことが大切です。そのためには、家族全員で適切なセルフケアを実践するのがよいでしょう。また、家族の誰かにむし歯ができてしまったら、放置せずに早めに歯科医院で治療を受けることも大切です。

家族全員でオーラルケアを習慣化する

小さな子どもたちは家族の真似をして物事を覚えます。そのため、周りの家族がオーラルケアを習慣化していると、子どもたちも自然に習慣化しやすくなります。決まった時間に皆で一緒に実施することで、楽しみながら歯磨きの方法を学ぶことができるでしょう。

普段から適切に仕上げ磨きする

小さな子どもだけでは、すべての部位を磨けない場合もあるため、保護者が仕上げ磨きをしてあげるのがよいでしょう。奥歯の溝や前歯の磨き残しに注意しながら、むし歯の原因となる歯垢を除去することが大切です。歯科医院で仕上げ磨きの指導を受けて、効果的な磨き方を身に付けましょう。

おやつの時間・内容に注意する

おやつは甘いものばかりに偏らないようにして、30分以内に食べ終わるようにした方がよいでしょう。甘いものを長時間食べ続けると、唾液の自浄作用や再石灰化が酸の生成に追いつかず、むし歯になるリスクが高くなります。家族が食べているのを見ると子どもも食べたくなるため、家族で食べる時間を合わせることもおすすめです。

乳歯のむし歯に関するよくある疑問

ここでは、乳歯のむし歯に関するよくある疑問に回答します。

子どもの歯にある白い点はむし歯? 

歯に白い点がある場合は、初期むし歯である可能性が高いといえます。歯が部分的に黒ずんでいたり、茶色っぽくなったりしている場合もむし歯の可能性があるため、すぐに歯科医院を受診したほうがよいでしょう。

子どもの歯にある黒い点はむし歯? 

歯に黒い点がある場合は、むし歯のサインかもしれません。着色によって歯が茶色や黄色になることもありますが、歯の色の変化が気になる場合は歯科医師に相談した方がよいでしょう。

痛くないむし歯も治療すべき? 

痛みのないむし歯も治療すべきです。むし歯の初期段階であれば、歯を削らずに治療できます。
また、むし歯が進行して歯髄まで達すると神経が死んでしまい、痛みを感じないことがあります。この場合は治ったわけではないため、勘違いをしないように注意が必要です。

子どもが痛がって治療できないときは? 

子どもが痛がって治療できないときは、鎮痛剤や抗生剤のみ処方し後日来院してもらうケースがあります。また、子どもが怖がって治療ができない場合は、むし歯の進行を抑える「フッ化ジアンミン銀」と呼ばれる薬剤を塗って様子を見る場合もあります。しかし、これでも進行を完全には抑えられないため、子どもが歯科医院に慣れてきたときに、再度治療を検討するとよいでしょう。

まとめ 予防と早期発見で乳歯のむし歯予防

今回は乳歯のむし歯を予防する方法や歯科医院での治療法を紹介しました。乳歯はむし歯になりやすく進行も速いため、日頃から子どもの口内をチェックすることが大切です。むし歯の疑いのある歯を見つけた場合は、すぐに歯科医院に相談しましょう。
また子どもの口内環境を把握するためにも、シルハで唾液のチェックをしてみるのもおすすめです。シルハを導入している歯科医院は下のリンク先で検索できます。

監修歯科医師:飯田智代先生

さくら歯科医院、飯田歯科医院勤務。2002年3月 東京歯科大学卒業。大平歯科医院、ひろ歯科医院、カテリーナデンタルオフィス分院長を経て、2011年4月にさくら歯科医院の院長に就任。2022年8月からは飯田歯科医院の理事長に就任し、現在はさくら歯科医院、飯田歯科医院へ非常勤で勤務している。

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