歯ぐきを押すと痛い原因は? 病気との関連についても解説【歯科医師監修】

歯ぐきを押すと痛い原因は? 病気との関連についても解説【歯科医師監修】

(2022年10月31日公開)
歯ぐきを押すと痛いものの、なにが原因なのかがわからなくて不安に感じている人は多いのではないでしょうか。この記事では、なぜ歯ぐきを押すと痛いのか、その原因について解説します。また、病気との関連性や、自宅でもできる痛みを緩和する方法、歯科医院を受診する目安などについても取り上げていきます。

               

歯ぐきを押すと痛い原因

歯ぐきを押すと痛い場合は、歯の根の部分に膿が溜まっているおそれがあります。膿は、むし歯を放置したり、被せ物の隙間から細菌が入り込んだりすることで溜まってしまいます。初期段階では自覚症状があまりなく、ある程度進行した段階で痛みを感じるようになる点が特徴です。膿によって痛みを感じている場合、自然治癒することはないため、治療する必要があります。膿を放置していると、顎の骨を溶かす、蓄膿症を起こすなど別のトラブルを引き起こすおそれがあります。

また、親知らずが原因で周囲の歯ぐきが痛くなることもあります。痛みがひどくなると口が開けなくなるおそれもあるため、注意が必要です。

ストレスが原因で歯ぐきが痛むこともある

歯ぐきの痛みはストレスが原因の場合もあります。ストレスが溜まっている、体が疲れているといった状態の時に、歯ぐきが痛んだり腫れたりしたことのある方もいるのではないでしょうか。
ストレスや体の疲れは、歯ぐきとは直接関係のないものですが、その影響が歯ぐきに現れることもあります。普段からストレスを溜めないようにして、定期的にストレス発散、疲労回復に努めることが大切です。

歯ぐきを押すと痛い場合は病気の可能性も

病気が原因で歯ぐきに痛みが発生している可能性もあります。ここでは、歯ぐきの痛みと関係のある病気について解説します。

歯周病

歯周病とは、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯ぐきの隙間に細菌が侵入して、歯ぐきに炎症が起こる病気のことです。歯周病は、口の中に歯垢が溜まっている状態が続くことで発症します。歯周病は歯を支える骨を溶かしてしまい、症状がひどくなると歯が抜ける恐れもあります。歯周病により骨が一度溶けてしまうと、元に戻ることはありません。

歯周病になった場合は、歯周基本治療を行います。これは、歯周病の原因となる歯石などの汚れを一つずつ取り除いていく治療です。また、歯周基本治療だけでは取り除けない場合は、外科治療を行うこともあります。

歯周病は歯垢が原因となって発症するため、予防するためにも毎日の歯磨きを丁寧に行うことが大切です。正しい歯磨きができていない人は少なくありません。そのため、歯磨きの方法に不安がある方は、一度歯科医院で磨き方を教えてもらうといいでしょう。どのような歯ブラシを選ぶのか、ブラシの硬さはどのくらいのものがいいのか、毛先を歯にどのように当てるのかなど、細かい部分まで教えてもらうことで、磨き残しを減らすことができます。

膿が溜まっている

膿が溜まることで歯ぐきに痛みを感じる場合もあります。膿はむし歯を放置していても溜まってしまいますが、特に多いのが、差し歯や被せ物が原因で膿が溜まるケースです。差し歯や被せ物は、歯の神経を取り除いた後に行う処置です。神経がない歯は、神経がある歯に比べると統計的に再感染が起こりやすく、膿が溜まりやすくなっています。感染が起こると歯ぐきに膿が溜まり、押すと痛いと感じるようになるという仕組みです。

膿が溜まっている場合、歯科医院を受診して中に溜まった膿を取り出して再び被せ物をする必要があります。放置しているとますます感染が進行して、治療期間や通院回数が増えてしまうため、早めに受診をしましょう。

できるだけ早く治療を受けたいものの、時間がなくてなかなか歯科医院に行けない人もいるでしょう。そのようなときは、以下のような応急処置を行ってみてください。

・口の中を綺麗にする
・痛み止めを服用する
・患部を冷やす

口の中が不衛生なままだと症状がさらに悪化して、痛みが強くなるおそれがあります。毎日歯磨きを行う、殺菌作用のあるうがい薬を使用するなどして、口の中を綺麗にしましょう。
また、痛みが強い場合は、バファリンやロキソニンなどの市販の痛み止めを服用することも1つの対処法です。
そのほかにも、患部が腫れていて熱を持っているようであれば、冷やすことで症状を和らげることができます。ただし、冷やしすぎてしまうと血行不良を引き起こすなどの逆効果になることもあるため、冷やしたタオルを頬の上から当てる程度にしましょう。

こちらの処置は、あくまでも応急処置です。なるべく早く歯科医院を受診することをおすすめします。
また、口内を清潔に保つことは予防策にもなります。膿は細菌の侵入・感染によって溜まっていくため、普段から歯磨きをこまめに行い、口内環境を整えておくことが大切です。

歯のひび割れ

歯にひびが入っていることが原因で歯ぐきに痛みを感じる場合もあります。歯にひびが入っているケースは意外と多く、若い人でもひび割れていることは珍しくありません。
ひびは、膿が発生する場合と同様に、神経のない差し歯や被せ物をしている歯でよく起こります。これらの歯は神経がなく、血も通っていないため、血流を通して栄養を摂取することができず、歯の強度自体が低下しています。強度が落ちている状態で固いものを食べると簡単にひびが入ってしまい、ひびが入った状態でさらに食事をするため、痛みを感じます。

ひびが原因で歯ぐきを押すと痛い場合は、ひびがどこに入ったかによって治療法が変わります。例えば、ひびが歯の根の上部に少しだけ入っている場合は、補強材で固めて被せ物をする治療法が一般的です。
一方で、ひびが歯の根の深い部分に入っている場合は、歯を抜いた後、補強材で固めてから元に戻します。また、ひびが深すぎる場合は抜歯することもあります。

ひび割れを予防するには、まず歯の神経を取り除く事態にならないよう、普段から歯磨きを丁寧に行うなどむし歯対策をすることが大切です。また、歯ぎしりや食いしばりが原因でひびが入ることもあるため、マウスピースを使用するなどして対処しましょう。歯列矯正を行い噛み合わせをよくすることも予防となります。

むし歯

むし歯が進行することで、歯ぐきが痛むこともあります。また、すでに治療を終えているむし歯であっても、詰め物や被せ物の下で再発して、痛みを感じるケースも珍しくありません。むし歯になったときは、速やかに歯科医院で治療を受けるようにしましょう。
また、むし歯予防のためには、歯磨きを毎日行うことが大切です。食後には必ず歯を磨く、歯磨きと合わせてデンタルフロスや歯間ブラシを使って歯の間に食べ物が挟まらないようにするなど、こまめな取り組みの積み重ねがむし歯予防につながります。

智歯周囲炎

智歯周囲炎とは、親知らずの周囲の歯ぐきが炎症を起こした状態のことです。智歯周囲炎になると、奥歯の鈍痛や頬の腫れ、噛み合わせの違和感などが生じます。また、口が開けづらくなることもあります。

人の顎の形状によっては、親知らずがまっすぐに生えず、横向きや斜めに生えてくることがあります。そのような生え方をすると、隣の歯を押すような形になり、歯ぐきが痛むようになります。親知らずが横や斜めに生えていると、歯の清掃が難しくなります。歯垢が溜まり、そこから細菌が侵入して炎症を起こしてしまいます。

智歯周囲炎になった場合、症状が軽度であれば炎症を起こしている箇所の洗浄や、抗菌薬の使用で対処することが可能です。ただし、親知らずの生え方によっては、治療をしても再発するおそれがあるため、抜歯をすることもあります。

ちなみに、親知らずを抜歯することは、智歯周囲炎の予防策にもなります。抜歯することで汚れがたまりにくくなり、炎症を防ぐことができるためです。
抜歯は避けたいという場合は、ブラッシングの見直しを行ってみてください。親知らずの周囲に汚れが溜まるのは、親知らずの生える方向だけでなく、歯ブラシが親知らずに届いていないことにも理由があります。正しいブラッシング方法を学び、自分の歯にあった歯ブラシを選ぶことで、智歯周囲炎予防となります。

歯根膜炎

歯根膜炎は、歯の根元を覆う歯根膜や歯の骨が細菌に感染して炎症を起こす病気です。感染以外にも、転倒などの外的要因によって歯に強い力がかかることで発症することもあります。

歯根膜炎は、歯ぐきが腫れて、押すと痛みが生じます。また、歯が浮いているように感じる人もいます。痛みは比較的軽く、痛みが急激に強くなるようなことはありません。
歯根膜炎を放置していると、歯の根元の骨が破壊されて、歯ぐきが膿んで骨に穴が開くおそれがあります。また、歯根膜炎が原因となって、歯ぐきから全身の様々な部位にも影響が及び、リウマチ熱や急性腎炎などの病気につながるケースもあります。

歯根膜炎は、病巣が小さい段階であれば、「根管充填」を行います。これは、歯の根の部分を消毒して細菌を取り除いたうえで歯髄を抜き、その後薬剤を詰めて防ぐという治療法です。
一方で痛みが強くて根管充填ができない場合は、湿布や抗生物質などの内服によって炎症を抑えて、痛みがおさまったら治療を行います。
なお、根管治療ができない場合は、抜歯して義歯やインプラントなどにすることもあります。

予防法は、やはり歯磨きをしっかり行うことです。歯根膜炎は、むし歯や歯周病が原因となっているケースもあるため、まずは歯磨きを丁寧に行い、むし歯や歯周病予防に取り組むことが大切です。また、歯ぎしりが原因で発症するケースもあるため、マウスピースを作成して歯ぎしり対策をすることも予防法になります。ストレスが原因で歯ぎしりをしているケースもあるため、定期的にストレスを発散することも効果的です。

歯ぐきの痛みを和らげる方法

歯ぐきを押すと痛む時には、さまざまな方法で痛みを和らげることができます。
例えば、患部を冷やすことで血行が抑制されるため、痛みが緩和されます。保冷剤や冷やしたタオルなどを患部にあてて冷やしてみてください。ただし、冷やしすぎるとかえって痛みが強くなることがあります。氷を口に含んで歯ぐきに直接当てることはしないようにしましょう。

また、辛い食べ物や酸っぱい食べ物、アルコールなど刺激の強い食べ物や飲み物を摂取すると、歯ぐきが痛むこともあるので、できるだけ避けましょう。キムチやカレーなど辛味の強い食べ物や、香辛料がたくさん使われているもの、みかんやレモンなどの柑橘類、グレープフルーツジュースなどは念のため食べないようにしましょう。

そのほかにも、市販の痛み止めを服用することで痛みを抑えることも可能です。ただし、病院で処方された薬を服用している方は、医師に相談したうえで服用してください。

歯ぐきの痛みを防ぐにはブラッシングが大切

このような原因に対しても、歯ぐきの痛みを防ぐためには、ブラッシングをしっかりと行うことが大切です。磨き残しのないように隅々まで歯を磨く、デンタルフロスや歯間ブラシを使って歯の隙間の汚れを落とすといったことが最大の予防策です。
また、歯を磨く際には合わせて歯ぐきの状態もチェックしておきましょう。「色が変わった」「少し磨いただけで血が出る」など、毎日チェックをすることで、歯ぐきの変化にも早く気づいて、その分早く治療が行えます。そうすることで、治るまでの時間も短縮できるでしょう。

歯科医院を受診する目安

痛みや違和感が少しでもある場合は、定期検診を兼ねて早めに歯科医院を受診することをおすすめします。歯周病などの自然に治ることのない病気もあるため、違和感を放置せずに、大きなトラブルにつながる前に診てもらいましょう。

歯ぐきに違和感を感じたら歯科医院を受診しよう

今回は、歯ぐきを押すと痛い原因と対処法、予防策などについて解説しました。歯ぐきを押すと痛いと感じる理由はさまざまです。膿が溜まっていたり、歯にひびが入っていたりすることが原因となることもあれば、差し歯や被せ物から細菌が侵入して炎症を起こして、痛みが生じることもあります。いずれの場合も、歯磨きを丁寧に行うことが予防策です。自分にあった歯ブラシを把握する、正しい歯磨きの方法を歯科医院でレクチャーしてもらうなど、セルフケアをより良くして口内環境を綺麗に保ちましょう。また、定期的に検診を受けて、口内環境の状態をチェックしておくこともおすすめです。

監修歯科医師:横山知芳先生

神奈川県横浜市にある横山歯科医院 院長。鶴見大学歯学部卒業。学生時代はラグビー部に所属しチームプレーを学んだことから、チーム医療での患者様のサポートをモットーとしている。歯科の最新の技術にアンテナを張り、勉強やトレーニングにも積極的に力を注いでいる。第87期JIADSペリオコース修了。皆川アカデミーインプラントコース修了。国際インプラント学会認定医(DGZI)。

横山歯科医院のホームページはこちら
http://www.yokoyamashikaiin.jp/

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