歯石取りは意味ない? 歯石取りの重要性やメリットを解説【歯科医師監修】

歯石取りは意味ない? 歯石取りの重要性やメリットを解説【歯科医師監修】

(2022年10月31日公開)
「歯石取りは意味がない」と考える人もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。歯石取りは、歯周病予防やむし歯予防、口臭対策など口腔内の健康を保つためにも重要なものです。この記事では、歯石取りの重要性やメリット・デメリットについて解説します。また、歯石取りの方法についても取り上げていきます。 

               

歯石取りが意味ないと言われる理由

「歯石を取っても歯周病予防にならない」
このようなお話を耳にして、歯石取りの必要性に疑問を感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
歯石自体は、害を与えるものではありません。

しかし、歯石は一度取り除いてもケアが不十分だと再び付着してしまいます。何度も繰り返して歯石取りに通う必要があるため、歯石を取っても意味がないと感じられるかもしれません。
歯石の状態によっては、歯石取りを複数回行なわなければならないこともあります。そのため、意味がないとは考えないまでも、手間に感じている方もいらっしゃると思います。

では、なぜ歯科医院では歯石取りを行なうのでしょうか。

歯石取りの重要性

歯石とは、歯垢が歯に付着した状態で放置されて、石のように固くなったものです。唾液に含まれるリン酸やカルシウムなどが沈着することで歯垢が固くなり、歯石へと変化します。歯垢の段階では歯磨きなどで取り除くことができますが、歯石になると基本的に自分では取り除けなくなります。

歯石は表面が凸凹になり、細菌が住み着きやすい形状となっています。そのため、細菌が繁殖しやすくなり、口臭や歯周病といった口腔のさまざまな病気を引き起こしてしまいます。口腔内の健康を維持するためにも、歯石取りは必要不可欠なものなのです。

歯石取りのメリット

歯石取りをすると、歯周病予防や口臭対策、むし歯予防などさまざまなメリットが得られます。ここでは、具体的なメリットについて解説します。

歯周病の予防になる

歯周病とは、細菌に感染することで発生する炎症性の疾患です。進行すると歯ぐきや歯を支える骨が溶けることもあります。歯石が溜まっていると歯の表面が凸凹になるため、そこに細菌が付着し、歯周病を発症したり悪化したりしてしまいます。
歯周病は口腔内の健康はもちろん、体全体の健康にも影響を与える疾患です。糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞、誤嚥性(ごえんせい)肺炎などにも関与しているとされています。

歯石を取り除いて表面の凸凹がなくなると、細菌が付着しにくくなるため、歯周病を予防できます。すでに歯周病を発症している場合でも、歯石を取り除けば症状のさらなる悪化を防げるでしょう。

口臭対策になる

歯石には細菌が付着しやすいため、歯石があると細菌がどんどん増えて行きます。細菌は硫化水素やメチルメルカプタンなどの毒素を排出しており、これらは卵や玉ねぎが腐ったような臭いと表現されます。つまり、歯石取りをしないままでいると、口臭がどんどん強くなってしまうのです。
口臭の原因は、歯石に潜んでいる細菌です。根本的な原因となっている歯石を取り除けば、口臭も抑えることができます。

むし歯になりにくい

歯石取りは予防歯科に含まれるものであり、予防歯科はむし歯予防にも貢献してくれます。歯石には細菌が付着しているため、むし歯につながる菌も少なくありません。つまり歯石を放置していると、むし歯になる可能性が高くなるということです。歯石を取り除くことができれば、むし歯のリスクを低減できます。

歯ぐきの出血予防

歯石が付着したままだと、歯ぐきの炎症がひどくなるため、歯ぐきから出血するようになります。炎症がひどいときには、歯ブラシで軽く磨いただけでも出血するケースもあります。出血が原因で歯石に色がつき、歯に沈着することもあるため、注意しなければなりません。
ただし、歯周病の症状によっては歯石取りをすることで出血する人もいます。これは、炎症により歯ぐきの粘膜が敏感になっているためです。歯石取りによる出血は、血液に含まれる細菌を出して炎症を抑えてくれるので、基本的には問題ありません。数日経てば炎症がおさまり、出血も止まります。

歯の着色汚れを落とす

歯石は、表面が凸凹になることで出血以外にもさまざまな汚れが付着しやすくなっています。そして汚れが原因となり歯が茶色く見えるなど、汚れがより目立ってしまうおそれもあります。
歯石取りはこの着色した部分も含めて除去してくれるため、歯の見た目もキレイになります。

歯石取りのデメリット

歯周病やむし歯の予防、口臭対策など、歯石取りは基本的にメリットばかりですが、デメリットも少なからず存在します。
例えば、歯石取りをすることで歯がしみる場合があります。これは、歯石がなくなることで、一時的に知覚過敏の症状が現れるためです。症状が長く続くようであれば、別途知覚過敏の処置を受ける必要があります。

また、重度の歯周病の方が歯石を取り除くと、歯がグラグラするおそれがあります。歯周病は、歯の骨を溶かすこともある疾患ですが、歯周病が重度である場合、歯石が歯との接着剤の役割を果たすことで歯を安定させています。その歯石を取り除いてしまうために、歯がグラグラするという仕組みです。この場合、歯を固定するための処置を受ける必要があります。
「歯がグラグラするなら歯石を残しておいたほうがいいのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、歯石を放置すると歯周病がさらに進行して、最悪の場合歯が抜けてしまうこともあるため、放置すべきではありません。

歯石は自分でも取れる?

近年では、歯科用器具が市販されていることもあり、個人で歯石取りができるようになりました。それでも、歯石取りは基本的に個人で行うべきではありません。なぜなら、自力での歯石取りは歯科医師や歯科衛生士にとっても難しいものであり、危険も伴うためです。

前歯など、鏡で確認できる箇所の歯石なら自分で取り除けるかもしれません。しかし、奥歯に付着している歯石は確認しにくく、自分で取り除こうとすると誤って口の中を傷つけるおそれがあります。また、歯石を取り残してしまうケースもあります。歯石が中途半端に残ってしまうと、さらに歯の表面が凸凹になるため、細菌や汚れが付着しやすい環境になります。

歯石取りは部分的に行えばいいというものではなく、全体を漏れなく取り除かなければなりません。基本的には、歯科医院で取ってもらいましょう。

歯科医院での歯石取りの流れ

歯科医院で歯石取りを行う場合、具体的には以下のような流れで行われます。

1.カウンセリング、問診
2.検査
3.歯石取り
4.再チェック

歯石取りを行う前に、まずは口内に異常がないかどうか、カウンセリングや問診を行います。歯や歯ぐきに痛みがある場合は、このタイミングで伝えておきましょう。

カウンセリングの後は口内の検査を行います。歯科医院によって検査内容は異なりますが、主に以下のようなことが行われます。

・レントゲン
・プロービング(歯周ポケットの深さを確認)
・かみ合わせや詰め物などのチェック
など

これらの検査は、歯周病の進行具合を確認するためのものです。検査が終わると、実際に歯石を取り除きます。詳しい歯石取りの方法は後ほど改めて解説しますが、スケーリングやルートプレーニングなどの手法を状況に合わせて行うケースが一般的です。歯石の付着がひどい場合は、手術をすることもあります。歯石を取り除いた後は、再発防止のため2〜3か月に1回程度のペースで歯科医院で再チェックを行ってもらうのがおすすめです。

歯石取りの方法

歯科医院の歯石取りは以下のような方法で行われます。

・スケーリング
・ルートプレーニング
・フラップ手術

スケーリングは、スケーラーという専用器具を用いて歯の表面に付着している歯石を取り除く方法です。
また、ルートプレーニングは、歯の表面の歯石除去に加えて、細菌感染を起こしているセメント質の部分も取り除き、表面をなめらかな状態にする方法です。表面をなめらかにすることで、歯肉の再付着を促して、歯垢がたまりにくい状況になります。
歯周病が進行していると、ルートプレーニングでは対応しきれないことがあります。このようなときに行うのが、フラップ手術です。フラップ手術は、器具が届かない根元に近い部分に付着した歯石を取り除く方法です。歯肉を切開したうえで、深層部に付着した歯石を見える状態にして歯石を取り除きます。切開により歯の根の部分を露出させるため、歯石を徹底的に除去できる点が特徴です。

スケーリング

スケーリングは、スケーラーという専用器具を用いて歯の表面に付着している歯石を取り除く方法です。

ルートプレーニング

ルートプレーニングは、歯の表面の歯石除去に加えて、細菌感染を起こしているセメント質の部分も取り除き表面をなめらかな状態にする方法です。表面をなめらかにすることで、歯肉の再付着を促し、歯垢がたまりにくい状況になります。

フラップ手術

歯周病が進行していると、ルートプレーニングでは対応しきれないことがあります。このようなときに行うのがフラップ手術です。フラップ手術では、器具が届かない根元に近い部分に付着した歯石を取り除く方法です。歯肉を切開したうえで、深層部に付着した歯石を見える状態にして歯石を取り除きます。切開により歯の根の部分を露出させるため、歯石を徹底的に除去できる点が特徴です。

歯石取りは保険適用で受けられる

歯石が溜まっている状態は、歯周病の初期段階である可能性があるため、健康保険が適用されるケースが一般的です。実際には、歯石によって歯肉から出血するなど、歯科医師から歯石除去が必要だと判断される必要があるため、まずは一度検査を受けてみることをおすすめします。

歯石取りを受ける前にやっておくべきこと

歯科医院で歯石取りを受ける場合でも、普段から歯磨きを丁寧に行うことは重要です。これは、歯石取りを行う際に歯肉が腫れていると痛みを伴うことがあるためです。痛みを少しでも減らすためにも、丁寧な歯磨きを心がけて、歯肉の腫れを抑えるようにしましょう。

また、歯磨きは歯石の予防になります。歯石になると歯磨きで取り除くことは難しいですが、歯石の前段階である歯垢は歯磨きで取り除くことが可能です。また、歯石を放置しているとそこにさらに歯垢や汚れが溜まっていくため、歯石取りの前にはしっかりと歯磨きをすることが大切だといえるでしょう。

こまめな歯磨きで歯石を予防しよう

今回は、歯石取りの重要性やメリット・デメリット、歯石取りの方法などについて解説しました。「歯石取りは意味がない」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、歯石取りは歯周病やむし歯の予防、口臭対策としても効果的なものです。歯石を放置していると、歯周病がひどくなり、他の病気を引き起こす可能性があります。また、歯石が溜まっていると、歯石をすべて除去するまでに何度も治療を受けなければなりません。歯石取りが必要になるまで放置しないように、こまめに歯磨きを行い、歯石が溜まらないように心がけましょう。

監修歯科医師:横山知芳先生

神奈川県横浜市にある横山歯科医院 院長。鶴見大学歯学部卒業。学生時代はラグビー部に所属しチームプレーを学んだことから、チーム医療での患者様のサポートをモットーとしている。歯科の最新の技術にアンテナを張り、勉強やトレーニングにも積極的に力を注いでいる。第87期JIADSペリオコース修了。皆川アカデミーインプラントコース修了。国際インプラント学会認定医(DGZI)。

横山歯科医院のホームページはこちら
http://www.yokoyamashikaiin.jp/

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