(2022年10月6日更新)
歯と歯の隙間や、歯ぐきとの境目にこびりついた白や黒のかたまり。歯磨きをしてもなかなか取れず、困っていませんか? その正体は、「歯石」です。歯石は、むし歯や歯周病を引き起こす細菌の温床です。見えやすい場所にできるだけでなく、歯ぐきの内側や前歯の裏側などにも付きやすく、歯科医院で除去する必要があります。このコラムでは、歯石とはどういうものなのか、よく聞く「歯垢」とどう違うのか、さらに自分で取ろうとする際のリスクなどを解説していきます。
歯石とは
歯石とは、唾液に含まれるリン酸とカルシウムが歯垢(プラーク)に沈着して石のように硬くなったもののことです。唾液の出口がある「上顎の奥歯外側」や「下顎の前歯内側」付近に付きやすくなっています。似た名称で歯垢というものもあります。
歯石と歯垢の違い
歯垢は、歯に付着した食べかすなどに菌が付いて繁殖し、かたまりになったものを指します。この歯垢が硬く石灰化したものが歯石です。個人差はありますが、およそ2日から2週間程度で歯垢から歯石へと変化します。歯垢の状態であれば、日常の歯磨きで取り除くことができますが、歯石になってしまうと歯磨きでは取り除けないため、歯科医院で除去してもらう必要があります。
歯石は2種類ある
歯石は、できる場所によって呼び名が異なり、「歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)」と「歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)」の2種類に分類されます。
歯肉縁上歯石は、歯肉より上にある白色もしくは黄色っぽい歯石のことです。唾液に含まれるリン酸とカルシウムが、歯垢と反応してつくられます。
歯肉縁下歯石は、歯周ポケットに面した歯根面に付着した黒色の歯石のことです。ミネラルが沈着することで、歯周ポケットの歯垢が石灰化して形成されます。
歯石を放置したときのリスク
歯石は、むし歯や歯周病を引き起こす細菌の温床です。また、他にもさまざまな口内トラブルを引き起こします。
溜まった歯石はむし歯や歯周病の原因になる
歯石の表面は、石のようにでこぼこした状態のため、細菌がより付着しやすく、繁殖しやすい状態になっています。歯石自体に病原性はないものの、歯石がある部分に細菌が溜まることによって、むし歯や歯周病などのリスクが高まります。むし歯や歯周病にならないためにも、歯石は早めに取り除きましょう。
歯石は口臭の原因にもつながる
歯石を放置していると、口臭の原因にもなります。歯石を除去しない限り、残念ながら口臭もなくなりません。そのため、歯石は歯科医院で定期的に除去してもらう必要があります。
プラークの増加(プラークリテンションファクター)
歯石を放置すると、プラークが歯に蓄積しやすくなります。歯石の表面はざらざらとしており、食べかすや細菌が付着しやすい状態となっているためです。
咀嚼(そしゃく)機能障害
歯石を放置することで、食べ物が細かくなるように噛んで飲み込む、咀嚼機能に障害が起こる場合があります。蓄積した歯石が歯の表面に覆いかぶさってしまい、噛み合わせが合わなくなっていくからです。
被せものの劣化
歯の被せものには寿命があり、時間が経過すれば劣化していきます。歯石が被せものに付着した状態で放置してしまうと、劣化の度合いを速めてしまうことにつながります。歯石が付着している状態は、細菌が繁殖しやすい環境にあるため、被せものの下に細菌が入り込んでしまうとむし歯になりやすく、外れてしまったり、劣化が早まってしまいます。
歯石を自分で取ろうとするのは危険?
「わざわざ歯医者に行かずに、自分で取れないの?」と思う方もいるかもしれません。結論としては、自分で専門の器具を使用して取り除くこともできますが、決しておすすめできる方法ではありません。
歯石を除去するには、「スケーラー」と呼ばれる、先端がかぎ状に加工された器具を使用します。スケーラーは、通販サイトや日用品売り場で購入することが可能ですが、歯や歯ぐきを痛めてしまったり、目に見えない歯石を除去し切れなかったりするなど、自分で取り除くにはリスクが非常に高いです。自分で歯石を取ろうとする場合の主なリスクを紹介します。
歯や歯ぐきを痛めてしまう
歯の裏側や奥歯は、自分では確認しづらい箇所です。無理にスケーラーで歯石を取り除こうとすると、歯ぐきを傷付けてしまい、出血したり、歯ぐきの位置を下げてしまったりする原因になります。
きちんと除去できない歯石は、再度歯石になりやすい
歯石はきちんと除去できていなければ、取り残された歯石に歯垢が付着して、再び大きくなりやすいです。自分で中途半端に取り除いても、すぐに元に戻ってしまうことが多いです。
表面上では見えない黒い歯石は取れない
歯周ポケットの中にある黒い歯石は、通常だと自分で確認することができません。しかし、この縁下歯石が取り除くことができなければ、むし歯や歯周病の進行を止めることはできません。そのため、自分で歯石を取っても、むし歯などのリスクは軽減できないでしょう。
歯石除去は半年に1回が目安
歯石は、一度取り除いても繰り返し付着してしまうものです。歯磨きがきちんとできていなければ、数週間で再び付着することもあります。まずは歯科衛生士に今の自分に必要なメンテナンス頻度を相談した上で、最終的に半年に1回を目安に行いましょう。
なお、歯科医院での歯石除去には保険が適応されます。初診費用や検査、レントゲン費用を含めて、平均3,500円程度です。近年、口内環境が悪くなる前に防ぐ「予防歯科」が注目され、2020年の診療報酬改定で保険適用になりました。
セルフケアに力を入れている方でも、歯石ができていないことの確認や、現在の口内の健康状態を知るために、歯科医院での定期検診を受けるのがおすすめです。
歯科医院でできる予防については、こちらの記事で紹介しています。
歯石を防ぐためのホームケア
歯石を防ぐために、まずは自分でできることがあります。ここでは、普段からできるケア方法や注意点を紹介します。
食事後はすぐに歯磨きをする
細菌は、口内に残った食べかすや口の粘膜からはがれた細胞、歯肉から滲み出る浸出液をエサにして増殖します。歯磨きは口内環境を清潔に保つための基本なので、食後はできるだけ早く歯磨きをすることが大切です。
デンタルフロスやマウスウォッシュを併用する
歯磨きだけでは、歯ブラシが届きにくい歯と歯の間に磨き残しが出る場合もあります。より口内環境を清潔に保つためには、デンタルフロスや歯間ブラシ、マウスウォッシュの併用がおすすめです(1日1回が目安)。
マウスウォッシュは液体なので、歯ブラシやデンタルフロスなどが届きにくい部分にも入り込めます。殺菌作用のあるものを使用すると、より口内を清潔にケアできますよ。
糖分摂取を控える
歯石の元となるのは歯垢ですが、むし歯になるかどうかは糖分をエサとするミュータンス菌がカギを握っています。
ミュータンス菌は糖分を分解する過程でネバネバした物質(グルカン)をつくり、歯の表面に付着します。そして、粘着性のあるグルカンに細菌が付着して成長することで歯垢になります。
また、ミュータンス菌は歯垢中で糖分を分解して、酸をつくります。この酸により、歯の表面のカルシウムが溶け出して、むし歯ができるのです。このように、糖分はさまざまな口内トラブルの原因にもなりがちなので、糖分摂取はできるだけ控えて、甘いものを食べた後はいつもより念入りに歯磨きをおこない、歯石ができるのを予防しましょう。
歯石を取り除き、健康な口内環境を実現しよう
歯石を放置すれば、むし歯や歯周病などの口内環境のトラブルにつながるため、しっかりとしたケアが必要です。歯石になる前に正しく歯磨きして、歯垢を取り除いてください。もしも歯石になってしまっているのであれば、歯科医院で除去してもらい、健康的な口内環境を目指しましょう。
歯石予防にもおすすめの唾液検査「シルハ」
歯石ケアにもおすすめなのが、口内環境の健康のチェックです。シルハとは、お水で口をすすぐだけで口内環境に関する6つの項目が測定できる唾液検査です。むし歯の原因となる細菌の活性度などがわかるので、自分の口に合わせた対策が取れます。それだけでなく、口臭や歯ぐきの炎症などの口内トラブル防止にもつながるので、ストレスのない口内環境づくりをサポートしてくれますよ。
シルハは全国の医療機関等で検査できます。シルハで検査ができるところはこちらをチェックしてみてくださいね。
測定項目 |
わかること |
むし歯菌 |
むし歯の元となるむし歯原因菌の活性度 |
酸性度 |
歯を溶かしてしまう酸の強さ |
緩衝能 |
酸性になった口の中を中性に戻す力の強さ |
白血球 |
菌の繁殖などにより生じた炎症の度合い |
タンパク質 |
出血などの口のトラブルや細菌の繁殖 |
アンモニア |
口内の清潔度 |