これって老化のサイン?「オーラルフレイル」と、今から始めたい予防策もご紹介【歯科医師監修】

これって老化のサイン?「オーラルフレイル」と、今から始めたい予防策もご紹介【歯科医師監修】

オーラルフレイルとは、口腔機能が低下している状態です。加齢が主な原因とされていることから、老化のサインと言われています。この記事では、オーラルフレイルの概要や心身に与える影響、予防法などをご紹介します。オーラルフレイルは健康寿命にもかかわるので、早めの予防が大切です。

               

オーラルフレイルとは?

オーラルフレイルは、オーラル(=口腔)とフレイル(=虚弱)を組み合わせた、近年注目されている言葉です。まずは、オーラルフレイルとはどんな状態なのか解説します。

フレイルは加齢などによる虚弱

オーラルフレイルについてみていく前に、まずはフレイルとは何か知っておきましょう。フレイル(=虚弱)は、加齢などにより心身機能の低下が見られる状態です。加齢による心身の変化に、精神的要因(認知機能の低下や抑うつなど)や、社会的要因(経済的困窮や社会交流の減少など)が加わることにより、フレイル状態になるとされています。
なお、フレイルは健康な状態と介護が必要な状態の中間的位置づけです。フレイルの状態が進行すると要介護になってしまう恐れがあります。

オーラルフレイルは口に表れる老化のサイン

オーラルフレイルはフレイルの1つで、口に表れる老化のサインです。ものを食べるには、噛む力と飲み込む力が必要です。しかし、加齢によって口まわりの筋力が低下し、歯の本数が減少していくと、噛む力と飲み込む力が弱くなりオーラルフレイル状態に陥ります。そうなると、食機能の低下や滑舌の衰えも表れます。
口は毎日使う器官であるため、機能が低下しにくいと考えられがちです。また、オーラルフレイルは少しずつ進行するため、気づきにくいという特徴があります。「飲み物を飲むとむせる」「滑舌が悪くなった」「食べ物をこぼすようになった」「硬いものが食べづらくなった」といった悩みがあれば、オーラルフレイルを疑ってみましょう。

オーラルフレイルの進行が心身に与える影響

オーラルフレイルの状態が進むと、身体や精神にも悪影響が出ます。オーラルフレイルの進行が心身に与える影響を具体的にみていきましょう。

身体的虚弱

口腔機能が低下すると、食べこぼしが多くなる、食べられるものが減る(硬いものを噛み砕けない)などの状態が続きます。そうなると、ものを食べづらくなって栄養状態が悪化する、もしくは身体全体の筋肉量が減って体力年齢が落ちるなど、健康寿命に影響を及ぼすこともあります。また、滑舌が悪くなるなど、話す機能も低下してしまいます。

精神的・社会的虚弱

身体的虚弱の進行は、精神的虚弱や社会的虚弱にもつながるので注意が必要です。食べる機能が低下することで食べ物への関心や欲求がなくなるなど、精神面にも影響が出ます。
そうなってしまうと外食への意欲が失われ、友人や家族との外出も億劫になります。家に閉じこもりがちになったり、孤立・孤食になったりと、社会性の面にも影響が出るでしょう。

オーラルフレイルのチェック方法

オーラルフレイルの状態に陥っているかどうかは、いくつかのチェック方法があります。チェックの結果にあわせて、必要であれば早めに歯科医院や口腔外科などを受診しましょう。

パタカチェックをする

パタカチェックを行うと、食べるために必要な機能が正常かどうかを調べられます。また、滑舌が衰えていないかもチェックできるので、ぜひ試してみてください。
【パタカチェック】
<やり方>
①「パ」「タ」「カ」の音をそれぞれ5秒間、または10秒間発音できた回数を測り、そこから1秒当たりの発音回数を算出
②1秒あたりの発音回数が6回未満であれば、口腔機能が低下していると判断される

<チェック内容>
「パ」→唇が適切に開閉するかチェックしている。捕食機能(口に入れた食べ物をこぼさないようにする唇の働き)の確認。
「タ」→舌の前方部分が正しく持ち上がるかチェックしている。咀嚼機能(食べ物を口の奥へ運ぶ舌の働き)の確認。
「カ」→舌の後方部分が正しく持ち上がるかチェックしている。嚥下機能(食べ物を食道へ送り出す筋肉の動き)の確認。

口の筋肉量を測定する

口まわりの筋肉量は、超音波検査で調べられます。食べ物を噛む時に使用する顎の筋肉「咬筋(こうきん)」のエコーを歯科医院などの医療機関で撮り、減少している場合はオーラルフレイル対策を行いましょう。

40代よりも前から取り組みたいオーラルフレイル予防

加齢により口腔機能が低下した状態であるオーラルフレイルは、高齢者の問題と思われがちです。しかし口の健康を考えるなら、オーラルフレイル状態になる前に対策しておく必要があります。そのため、40代よりも前からオーラルフレイル予防に取り組みましょう。オーラルフレイルの症状が出始める前に予防することで、健康寿命の延長につながります。

口内環境を整える

健やかな口内環境を保つためには、毎日の丁寧なお手入れが必要です。しっかりと歯を磨く、歯間ブラシを通すなどのケアを行い、歯周病や歯肉炎を予防しましょう。また、マウスウォッシュの使用も歯周病や歯肉炎予防になります。
その他、やわらかいものばかり食べていると噛む力が低下しやすいので、噛む力が衰えないよう、ある程度歯ごたえのあるものを食べるなど工夫してみてください。

定期的に歯科検診を受ける

しっかりとものが食べられる(噛める)歯を残すことも、オーラルフレイル予防になります。健康な歯を残すためには、定期的な歯科検診が重要です。定期的に受けることで、オーラルフレイルの兆候を早期に発見できる可能性が高まり、兆候があれば適切な治療を受けられます。
また、歯ぐきが痩せて義歯が合わなくなると、話しづらさや食べづらさにつながります。歯科検診の際に相談して、義歯を調整してもらうと良いでしょう。

筋肉のもとになる栄養素を積極的に摂る

筋肉のもとになる栄養素を積極的に摂取して、筋力低下を防ぎましょう。タンパク質は筋肉のもとになる栄養素で、肉、魚介、卵、乳製品、大豆製品に多く含まれます。また、タンパク質は吸収を促すビタミンB6や、ビタミンCと一緒に摂ることも重要です。
ビタミンB6は、魚(赤身)、鶏肉、レバー、バナナ、玄米などの食材に含まれ、タンパク質が筋肉に合成されるのをサポートします。ビタミンCは、ジャガイモ、小松菜、果物などの食材に含まれ、筋肉の強化をサポートします。

あいうべ体操を行う

あいうべ体操は、鼻呼吸を促す体操です。口呼吸を鼻呼吸に改善することで、さまざまな病気の原因治療になります。また、この体操では舌や口周りの筋肉を動かすため、オーラルフレイルの予防にもなります。その他、頬や顎のたるみを予防する効果も期待できるでしょう。
【あいうべ体操】
①「あー」の口の形をつくり、大きく開く
②「いー」の口の形をつくり、大きく横に広げる
③「うー」の口の形をつくり、唇を強く前に突き出す
④「ベー」と舌を出し、下に伸ばす
※①~④を1セットとし、1日30回を目安に行いましょう。
なお、唾液腺マッサージで口内乾燥を防ぐこともオーラルフレイル予防につながります。唾液腺マッサージについてはこちらの記事を参考にしてみてください。

唾液検査シルハで口の現状をチェックしよう

先述したように、オーラルフレイルを予防するためには、口内環境を整えておく必要があります。自分の口の現状を知り、口内環境を整えたいなら、唾液検査シルハがおすすめです。シルハは水で10秒間口をすすぐだけで、口内環境に関する下記の項目を検査できます。
〇歯の健康に関する項目
むし歯菌・酸性度・緩衝能
〇歯ぐきの健康に関する項目
白血球・タンパク質
〇口腔清潔度に関する項目
アンモニア
歯科医院を中心とした全国1,500以上の医療機関でシルハが受けられ、結果にあわせて歯科医にアドバイスをもらえます。歯科検診の際に、一緒に唾液検査をしてみてはいかがでしょうか。シルハを導入している医療機関は、こちらから検索できます。

早めのオーラルフレイル予防で健康寿命を延ばそう

口は食べることに直結している器官です。そのため、口の健康を維持し、栄養のある食事を摂ることが身体全体の健康にもつながります。元気に動ける身体があれば毎日が楽しいものになり、生活の質(QOL=クオリティ・オブ・ライフ)も向上するでしょう。健康寿命を延ばすため、早めのオーラルフレイル予防に取り組んでくださいね。

監修歯科医師:本荘 真也 先生

本荘歯科クリニック院長。日本大学歯学部卒業後、浅賀歯科医院(埼玉県越谷市)副院長を経て2020年10月本荘歯科クリニックを開院。
30年以上の歴史を持つ本荘歯科医院のあとを引き継ぐかたちで開院した同クリニックでは、赤ちゃんからお年寄りまで生涯にわたって通えるクリニックを目指す。全国でもまだ導入例の少ない歯科用機器や歯科技術も取り入れた診療を鳥取市内で行っている。

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