歯周病は治せる? 歯科で行う歯周病検査や詳しい治療内容も紹介【歯科医師監修】

歯周病は治せる? 歯科で行う歯周病検査や詳しい治療内容も紹介【歯科医師監修】

歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性の疾患です。本記事では歯周病になる原因、歯科で行われる歯周病検査や歯周病の治療内容、予防方法について紹介します。歯磨きの際に血が出る人や歯ぐきの腫れが気になる人、歯周病の検査や治療について知りたい人は、ぜひチェックしてくださいね。

               

歯周病の基礎知識

まずは歯周病の症状、原因を紹介します。また歯周病は治療可能かについても解説します。

歯周病とは

歯周病とは歯と歯ぐきの間に繁殖する細菌が原因で生じる、細菌性炎症による組織破壊のことを言います。歯周病は文字通り歯の周り組織の病気で、進行すると歯を支える骨が溶けていき、最終的には歯が抜けたり、全身の健康に影響を及ぼす可能性もあります。

2018年の全国抜歯原因調査によると、歯を失う原因で最も多かったのが「歯周病」(37%)で、以下「むし歯」(29%)、「破折」(18%)、「その他」(8%)、「埋伏歯」(5%)、「矯正」(2%)の順となっています。
歯周病は現代の歯喪失原因のトップであり、むし歯よりもリスクが高いのです。

歯周病の症状

歯周病は初期の段階では自覚症状がほとんどなく、痛みのないまま進行していきます。歯磨きのときに出血したり、歯ぐきが少し赤く腫れたりする初期の歯周病を歯肉炎と言います。歯肉炎が進行すると歯周炎(歯槽膿漏)となり、歯磨きの度に出血し、歯が浮くような感じになり、歯ぐきがむずむずすることもあります。

さらに中等度になると、歯が伸びたような気がしてきます。また、ものが噛みづらくなり、歯ぐきから膿が出て、口臭が強くなることも。重度になると歯がぐらぐらし、いつも膿が出て、口臭がひどく、ものも噛めなくなります。それからさらに進行すると歯が抜けてしまうのです。

歯周病になる原因

歯周病は歯垢(プラーク)が原因で発症します。この歯垢は食事の後の食べカスだと思われがちですが、実は、細菌の集合体で1グラムあたりに1000億個もの細菌が集まっているのです。不十分な歯磨きにより、歯周ポケットに溜まった歯垢は、やがて石灰化し歯石になり、さらに歯垢を蓄積させる足場となってしまいます。歯石は歯磨きでは落とせないため、歯科医院でクリーニングをしてもらう必要があります。

歯垢や歯石をそのままにしておくと、歯周ポケットが深くなり、歯周病が進行していきます。また歯に合っていない金属冠や修復物、歯ぎしり、喫煙、ストレス、糖尿病などの疾患、全身疲労なども歯周病を進行させる原因です。

歯周病は治療可能? 

一昔前までは、不治の病と呼ばれていた歯周病ですが、ここ数十年で治療が革新的に進歩しました。今ではかなり進行した歯周病の歯も保存することが可能です。自分の状態を検査できちんと確認し、治療を受けて良い状態をコントロールできれば、歯や歯ぐきの健康を維持できます。

歯科で行う歯周病検査の種類

歯磨きの際の出血や、口臭が気になる時は歯科医院を受診しましょう。ここでは歯周病検査について解説します。    

プロービング検査

プローピング検査とはプローブという針状の器具を使って、歯周ポケットの深さを測定する検査です。歯周ポケットの深さによって、歯周病の度合いがわかります。健康的な歯ぐきの場合は、歯ぐきの入口からポケットの底の部分までの深さが2~3㎜程度。歯周病を患うと4㎜以上になります。重度の歯周病になると6㎜を超えることもあります。

エックス線検査

歯周病は進行すると、歯を支える歯槽骨が溶けてしまいます。その歯槽骨の状態を調べるのに有効なのがエックス線検査です。エックス線検査をすると、歯槽骨の溶けてなくなった範囲や程度が正確にわかります。    

歯垢(プラーク)の付着検査

歯垢が多く付着していると歯周病になりやすいです。そのため歯周病検査では染色液を使って、歯垢の付着量をチェックします。染色液は歯垢を染めるため、歯垢の付着している部分がわかります。これは、皆さんの日々の清掃状態を表しており、どんなに歯周病を綺麗に治してもこの付着量が少なくならなければ再発を起こしてしまうのです。

その他の歯周病検査

歯周病検査には他にも、歯ぐきからの出血を調べる「出血検査」や歯ぐきの揺れを調べる「動揺度検査」、歯周病原菌の「細菌検査」などがあります。これらすべての検査を総合的に判断して皆さんの歯周病の状態を把握し、治療計画やメインテナンスプログラムを構築するのです。

歯周病治療の流れ

歯周病検査の結果に基づいて治療が開始されます。ここでは歯周病の基本的な治療内容や外科的治療、メインテナンスについて解説します。    

基本治療①歯磨き指導

まずは歯磨きの指導からです。実は、とても大事で治療後の再発にも関係するものであり、私たち歯周病専門医でも最も難しい治療です。正しい歯磨きをすることで、ぶよぶよで出血しやすい歯ぐきも炎症が治まり、その後引き締まっていきます。歯ぐきの中の歯石も見えやすくなり、次の歯石除去が効果的に行えるでしょう。

基本治療②歯石除去

歯石除去では歯ぐきの上や歯間にある歯石と、歯周ポケットの中にひそむ歯石を根こそぎ除去します。歯石を除去することで歯石内の細菌が減り、歯ぐきがより引き締まります。その歯石の付着具合により治療の回数や時間が大きく左右され、状態によっては週に1度の治療ペースで数ヵ月かかることもあります。

基本治療③修復物の除去や噛み合わせ調整

歯石除去後は歯垢が付きにくい口内環境にすることが必要なため、不適合な修復物があれば除去して適合の良いものに変えることもあります。また噛み合わせも歯周病の進行には大事な要素となります。噛み合わせが悪いと一部の歯に過大な力がかかり、歯を支える歯槽骨が溶けやすくなります。歯周病が進行して、グラグラしている歯は、全体のバランスや他の歯への悪影響を考えて早期に抜歯することも必要です。

外科的治療

上記の基本治療を終えても深い歯周ポケットが残っている場合は、再発の危険性があるため、歯肉剥離搔爬術などの歯周外科を行うケースが多いです。歯周外科を行うと、歯の周りに付着した歯石を確実に除去でき、歯槽骨の形態を修正することが出来ます。また歯周ポケットが浅くなり、清掃しやすい口内に。全ての方に応用できるわけではありませんが、症例によっては再生療法と呼ばれる方法で、歯槽骨を再生することで歯周ポケットを浅くすることも可能となってきました。

メインテナンス

上記の治療が終了したら、安定した状態が続くようにメインテナンスを行います。メインテナンスとは健康的な口内を維持していくための定期的治療のこと。歯周病は再発の多い病気です。歯周病の治療後はその歯周病の進行具合や全身疾患の状態などにより1~3ヵ月ごとに定期検診を受けるのが望ましいでしょう。100人いれば100通りのメインテナンスプログラムが存在します。3ヵ月に一度定期検診に行っておけば絶対大丈夫なわけではありません、皆さんにあったメインテナンスプログラムを知って実践していきましょう。

歯周病の予防方法

歯周病を予防するには歯磨きで歯垢を取り除くことが大切です。また生活習慣の見直しも必要でしょう。最後に歯磨きのポイントや歯周病予防の生活習慣について解説します。    

磨きやすい歯ブラシを選ぶ

歯ブラシは隅々まで毛先が当たるように、奥歯に入れても痛くない形状のものを選びましょう。一概に小さな歯ブラシがいいという認識は間違いです。過度に小さなものは毛の本数が少なく清掃効率を下げるのでよくありません。

また、歯垢を効率的に落とすにはコシが強く柔らかい毛質のものがいいでしょう。硬い毛質のものを使う方が多いですが、波が海岸を削るのと同じで、歯や歯ぐきを傷付けてしまい、知覚過敏の原因になることもあるので注意が必要です。さらに毛先が開いてきた歯ブラシは、歯垢を落とす力が弱まります。見た目に変化がなくても、市販の歯ブラシなら1ヵ月に1度くらいの頻度で交換した方が良いです。

歯磨きでしっかり歯垢を落とす

歯周病を予防するには、歯と歯ぐきを傷つけないように歯垢を落とす必要があります。歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目、奥歯などの歯ブラシの届きにくいところを意識して磨いてください。歯垢は粘着力が強いため、1ヵ所につき10~20回ほど磨くのが理想とされています。1本1本丁寧に磨くことを心がけて、磨き残しがないようにするために磨く順番はいつも同じにするといいでしょう。
またできるだけ毎食後に、最低でも1日に1回は5分以上の時間をかけて歯磨きを行いましょう。特に就寝前はゆっくりと磨いてください。

歯磨きの補助アイテムを活用する

残念ながら歯ブラシだけではお口の中の歯垢はすべて除去できません。どんなに上手な人が歯磨きをしてもお口の中全体の65%くらいの歯垢しか取れません。残りの35%は、歯と歯の間に存在します。ですので、歯と歯の間の歯垢を取り除くために1日1回は歯間ブラシやデンタルフロスを使いましょう。

生活習慣を改める

疲労やストレス、喫煙習慣があると免疫機能が落ちて細菌感染のリスクが高まるため、歯周病予防には生活習慣の見直しも必要です。
まずはバランスが良くメリハリのある食生活を心がけてください。間食の取りすぎ、清涼飲料水・糖分の多い飲み物や炭酸水やお酢などの酸性の強い飲み物の頻回摂取はなるべく避けてください。体を休める時間を確保するために、十分な睡眠を心がけて規則正しい生活を送り、ストレスや疲労を溜めないようにしましょう。

また歯周病予防には、禁煙が望ましいです。たばこを吸うと口内の粘膜や歯ぐきがたばこに含まれるニコチンを吸収し、血管が収縮します。血液循環が悪くなると、酸素が十分に行き渡らなくなり、歯周ポケット内の細菌が繁殖して歯周病を引き起こす恐れがあります。

歯周病の症状を感じる前に早めに検査・治療を受けましょう

歯周病は確実に予防できます。正しい歯磨きのやり方を知り、歯周病の原因となる歯垢をしっかりと除去しましょう。歯周病をそのままにしておくと、歯が抜ける恐れがあります。歯磨き時の出血や歯ぐきの腫れは歯周病が進行しているサインです。できるだけ早めに歯科医院を受診してくださいね。

監修歯科医師:村上弘先生

福岡県福岡市早良区にある「むらかみひろし歯科医院」の院長。福岡歯科大学・大学院を修了、博士(歯学)を取得。専門は歯周病で日本歯周病学会認定歯周病専門医であり、福岡歯科大学臨床准教授として大学でも後進の指導を行っている。地域の皆さんに「ベストな治療」と「最適なメインテナンスプログラム」を提供し、笑顔で健康的な日常が過ごせるように診療を行う。従来の「削る」治療型の歯科医療ではなく「守る」メインテナンス型の歯科医療の普及に奔走している。
https://murakamihiroshi-dc.com/

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