歯周ポケットから歯周病の進行度がわかる! セルフチェックや改善方法も解説【歯科医師監修】

歯周ポケットから歯周病の進行度がわかる! セルフチェックや改善方法も解説【歯科医師監修】

(2022年10月31日公開)
歯ぐきに赤みを伴う腫れがあったり、歯磨きの際に歯ぐきから出血したりするなどの症状がある場合は、歯周病が疑われます。歯周病の診断に用いられるのが、歯周ポケット深さの検査です。歯周ポケットが深くなればなるほど、歯周病が進行しています。ここでは、歯周ポケットと歯周病との関係や、歯周病のセルフチェック、改善方法などについて詳しく解説します。

               

歯周ポケットとは

歯と歯ぐきの間にある溝を「歯肉溝」といいます。歯周ポケットは、歯垢(プラーク)や歯石に含まれる歯周病菌によって、歯ぐきに炎症が起きて深くなった歯肉溝のことです。歯周病菌による炎症が原因で歯周ポケットが深くなるため、その深さを計測することで歯周病の進行度がわかります。

歯周病とは、歯ぐきにのみ炎症が起きた状態の「歯肉炎」と、歯を支える歯槽骨にまで炎症が起きた「歯周炎」の総称です。歯肉炎を放置すると歯周炎へと進行します。

歯周ポケットの問題点

歯周ポケットが深くなればなるほど、歯周病が進行しやすくなります。これは、歯周ポケットの奥に入った歯垢を歯磨きで除去できなくなっていくためです。また、歯周病が進行すると歯槽骨と歯ぐきの両方が大きく減少して、やがて歯を支えられなくなります。そのため、歯周ポケットが深くなっていることがわかったら、なるべく早く治療を始めることが大切です。

歯周ポケットのチェック方法

歯科医院では、ポケット探針(プローブ)と呼ばれる器具で歯周ポケットの深さを計測します。歯周ポケットの深さは、自分ではチェックできません。しかし、歯ぐきの状態をセルフチェックすることで歯周病の疑いがないかどうかを確認することができます。次に挙げる項目があてはまる場合は、早めに歯科医院でチェックしてもらいましょう。
・歯ぐきが赤みを帯びて腫れている
・歯磨きのときに出血する
・冷たい飲み物を飲んだのときなどに歯がしみる
・歯が長くなったように見える
・ブラッシングのときに歯がグラグラする

歯周ポケットと歯周病の進行度


歯周ポケットを検査すると、歯肉炎・歯周病の有無や進行度がわかります。歯周ポケットと歯周病の進行度の関係や、判定基準について詳しく見ていきましょう。

健康な状態

健康な歯ぐきは、歯肉溝の深さが0.5~2 mm程度です。深くなっていないため、歯周ポケットはできていないと言えるでしょう。

軽度歯周炎

軽度歯周炎の歯周ポケットの深さは3~5 mm程度です。歯ぐきだけではなく歯槽骨にまで炎症が起きています。

中等度歯周炎

中等度歯周炎の歯周ポケットの深さは4~7 mm程度です。歯槽骨が2~4 mm程度破壊されています。軽度歯周炎と判断できる歯周ポケットの深さでも、歯槽骨がより大きく破壊されている場合は、中等度歯周炎と診断されるでしょう。

重度歯周炎

重度歯周炎の歯周ポケットの深さは、6 mm以上です。この場合、歯槽骨は8 mm程度破壊されています。中等度歯周炎よりも歯槽骨の破壊が進んでいるため、歯を支えられなくなり、抜歯を余儀なくされます。

歯周ポケットの改善方法

歯周ポケットの改善は、歯周病の改善と関係しています。歯周ポケットの改善方法について詳しく見ていきましょう。

歯磨き

歯周病を引き起こす歯周病菌は、歯垢や歯石の中に含まれています。歯垢は細菌自体と、細菌が出す粘りのある物質でできた固まりのことです。歯の表面だけではなく、歯と歯の間、歯肉溝などにも付着します。歯垢は歯磨きで除去できますが、磨き残した歯垢を放置すると、歯石と呼ばれる硬い物質に変化して、歯磨きでは除去できなくなるのです。

歯石を作らないためにも、正しい歯磨きを毎日続けることが大切です。
歯肉炎の段階であれば、正しい歯磨きを続けることで改善が期待できます。まずは、歯科医院で適切なブラッシング指導をうけて、ご自身の歯にあった歯ブラシ及び補助器具(フロス、歯間ブラシ)の種類などを確認してもらいましょう。
歯肉炎や軽度の歯周炎であれば、病状に応じて歯肉の上、浅いポケット周囲の歯石を超音波機器などを使って取り除くことで、原因物質の除去ができます。中等度以上の歯周炎に関しては、麻酔を使用して処置を行うこともあります。その後に、歯肉の改善状況を確認して、経過観察か外科的処置に移行するかどうかの判断を行います。

しかしながら、きちんと歯が磨けているつもりでも、すみずみまで磨けていないケースが多いため、定期的に歯科医院で歯磨き指導を受ける必要があります。

歯や歯周ポケットのクリーニング

歯科医院で受けられる歯や歯周ポケットのクリーニングで、磨き残しにより溜まった歯垢や歯石を除去できます。どれだけ丁寧に磨いていても磨き残しは出てしまうため、定期的にクリーニングを受けることが大切です。歯科医院の歯・歯周ポケットのクリーニングには、「スケーリング」と「ルートプレーニング」があります。

スケーリングは、スケーラーという器具で歯肉の縁の上や歯周ポケット内に付着した歯垢・歯石を除去する処置です。スケーリングでは改善が見られなかったり、歯周ポケットの奥深くに歯垢・歯石が溜まっていたりする場合は、ルートプレーニングを行います。

ルートプレーニングは、キュレットという器具で、歯周ポケットの奥深くにある歯垢・歯石、細菌に感染したセメント質を取り除く処置です。ルートプレーニングは、歯肉の付着を促して、歯根の表面をなめらかにすることを目的としています。

噛み合わせの調整

噛み合わせが悪い場合、部分的に強い力がかかることで歯槽骨の破壊が進みやすくなります。また、歯と歯が重なっていたり、歯と歯の間にすき間ができていたりすると、歯ブラシがすみずみにまで届きません。そのため、歯周病の治療効率の向上や予防の一環として、噛み合わせの調整をおこなうこともあります。

歯肉剥離掻爬術(しにくはくりそうはじゅつ)

歯肉剥離掻爬術は「フラップ手術」とも呼ばれており、歯の根の部分や歯槽骨に付着した歯石を除去する手術です。スケーリングやルートプレーニングでは除去できない箇所に付着した歯石を除去できます。

歯や歯槽骨を覆う歯肉を切開して、歯の根の部分に付着した歯石を直接目で見ながら取り除きます。その後、歯肉を元通りに縫合すれば完了です。術後1週間程度で抜糸して、その後に歯周ポケットの改善がみられるようになります。

遊離歯肉移植術(ゆうりしにくいしょくじゅつ)

遊離歯肉移植術とは、歯周病の影響で退縮した歯肉に、上顎の口蓋から切り取った歯肉を移植する手術です。外側の上皮ごと移植するため、移植したところと周りの歯肉に色の差が出る場合があります。

結合組織移植術(けつごうそしきいしょくじゅつ)

結合組織移植術とは、遊離歯肉移植術と同じく、歯肉が退縮しているところに他の箇所の歯肉を移植する手術です。遊離歯肉移植術が上皮ごと移植するのに対して、結合組織移植術は上顎の口蓋の内側にある結合組織を、歯肉の上皮組織と骨膜の間に移植します。上皮は移植しないため、周りの歯ぐきと色の差が出ることがありません。

日々の歯磨きと歯のクリーニングを継続しよう

歯周ポケットからは、歯周病の進行度がわかります。日々の丁寧な歯磨きに加えて、歯科医院で定期的に歯のクリーニングを受けることで、歯周ポケットが深くなるトラブルを予防できるでしょう。歯周病は、早期発見・早期治療が重要です。なるべく早く見つけて治療の負担を抑えるためにも、定期的に歯科医院に通うことが大切です。

監修歯科医師:吉竹啓介先生

東京都中央区京橋駅直結の「京橋 銀座みらい歯科」院長。
2010年神奈川歯科大学 卒業。2014年に医療法人社団港成会 理事に就任し、同年にせたがや歯科室を開設。2020年に京橋 銀座みらい歯科を開設し、翌年移転・名称変更。現在は京橋 銀座みらい歯科として東京スクエアガーデン2Fで診療を行っている。

京橋 銀座みらい歯科のホームページはこちら
https://www.miraishika-ginzain.tokyo/

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