(2022年9月6日更新)
歯ぐきの腫れをそのまま放置しておくと、病状が進行して出血や痛みを伴う場合があります。歯ぐきの腫れや出血が生じる原因はさまざまで、適切に対処することが大切です。この記事では歯ぐきの炎症と出血の原因、歯ぐきの腫れをひかせる方法、歯科医院での受診の目安について紹介します。
歯ぐきの腫れ・炎症の原因として考えられること
歯ぐきが腫れていたり、痛みがあったりする場合は、歯ぐきのどこかで炎症が起きていると考えられます。炎症が起こる理由はさまざまですが、まずは、その中でもよく見られる原因を見ていきましょう。
1. 食べカスや歯石に付着した細菌による炎症
食べカスや歯石に付いた細菌の繁殖により、炎症を起こすことがあります。歯磨きが不十分だと、ネバネバした歯垢で歯の表面が覆われます。歯垢には多くのむし歯菌や歯周病菌が住み着くため、炎症が起こりやすいです。また歯石は表面がザラザラしているので歯垢が溜まりやすく、細菌の住みかとなります。まだ軽度の炎症の場合、しっかりとしたブラッシングを数日間続けることで腫れは引いていきます。
2. 歯周病による炎症
食べカスや歯石に付着した細菌による炎症が慢性化することで、歯周病になります。歯周病には歯肉炎と歯周炎があり、歯ぐきだけに炎症が起きているのは歯肉炎、さらに進行して歯を支える土台の骨が溶けるのが歯周炎です。腫れている部分がやわらかい場合は、歯周病の可能性が考えられます。
3. 口内炎による炎症
口内炎は、口の中の粘膜やその周辺に起こる炎症のことです。頬の内側や唇だけでなく、歯ぐきに炎症が起きることもあります。口内炎の原因や種類はさまざまですが、よく見られるのは「アフタ性口内炎」。ストレスや栄養の偏りによるものや、舌や唇を噛んでできた傷に細菌が繁殖して、悪化するとことがあります。
歯ぐきの出血の原因として考えられること
歯周病の進行や間違ったセルフケアなど、歯ぐきから出血する原因はさまざまです。ここでは、歯ぐきの出血が起こる主な原因について見てみましょう。
1. 歯周病の進行による出血
歯ぐきから出血した場合は、歯周病の疑いがあります。歯周病は初期の自覚症状が少ない病気です。進行して歯ぐきが赤く腫れ、炎症がひどくなると、膿が出たり、出血したりします。ブラッシングしただけで出血するような場合は、歯周病が進んでいる可能性が高いです。
2. 間違ったブラッシングによる出血
自分の歯に合わない歯ブラシや歯間ブラシを使ったり、ブラッシング方法が間違っていたりすると、歯周病でなくても出血する場合があります。歯ぐきに炎症があるときに固い歯ブラシを使うと、出血して悪化することもあるので注意しましょう。歯の隙間よりも大きな歯間ブラシを無理に入れてブラッシングしたときにも、歯ぐきが傷つき出血しやすくなります。
3. 女性ホルモンの乱れによる出血
生理前や排卵直前は、女性ホルモンであるエストロゲンが増加します。すると、女性ホルモンを好む細菌が口内で活発になり、歯ぐきが腫れることがあります。また、思春期や妊娠中、更年期に女性ホルモンのバランスが乱れることで、歯周病にかかりやすくなります。炎症して腫れた歯ぐきをブラッシングで強く刺激したり、歯周病が悪化したりすることで出血しやすくなります。
4. 薬剤の副作用による出血
抗凝固薬や抗血小板薬を服用していると、歯周病で炎症を起こした歯ぐきから出血しやすくなります。これらの薬剤は血行を良くし血液をサラサラにするため、血が止まりにくくなることもあるようです。高血圧で降圧剤(カルシウム拮抗薬)を服用している場合、歯と歯の間の歯肉増殖が起こり、そこに細菌が停滞しやすく、歯周病が進行して出血しやすいと言われています。
5. 全身性疾患が原因の出血
むし歯や歯周病以外の全身疾患が原因で、歯ぐきからの出血が止まりにくいこともあります。血友病や急性白血病、突発性再生不良性貧血、ネフローゼ症候群などは、止血機能の低下が見られる病気です。歯ぐきが腫れていないのに出血が止まらない、傷の治りが遅い、鼻血や高熱、倦怠感などの症状も一緒に見られるなどの場合は、重大な病気が隠れている可能性もあるので、すぐに病院で検査することをおすすめします。実際、歯科の定期的な受診で見つかることもあるのでかかりつけ歯科医院で変化を観察してもらうことはとても大切なことですね。
歯科定期検診に行っているかどうかで、80歳になった時の歯の本数に差が出ると言われています。歯科定期検診のメリットなど詳しい情報はこちらの記事で解説しています。
歯ぐきの腫れや出血があるときに、まずすべきこと
歯ぐきの腫れや出血、痛みを伴うときは、なるべく早めに歯科医院を受診することが望ましいです。また、ブラッシングの仕方やケアグッズの見直しなど、次に紹介する対処法でも症状が改善する場合があります。
1. やわらかい歯ブラシに変える
歯ぐきの出血や腫れの原因が歯垢などによるもので、歯磨きで除去できれば、次第に症状は改善していきます。出血を避けるために、恐る恐る磨くのは逆効果です。いつもより毛先がやわらかい歯ブラシに変えて、丁寧にブラッシングしてください。
2. 刺激の少ない歯磨き剤に変える
歯ぐきに腫れや出血があるときは、歯磨き粉やマウスウォッシュは刺激の少ない物を使うようにしましょう。歯周病向けの薬用歯磨き剤や、研磨剤が配合されていないジェルタイプのものがおすすめです。アルコールが多く含まれるマウスウォッシュは、刺激が強く乾燥しやすいため、歯ぐきを保護する唾液が少なくなる可能性があるので注意しましょう。
3. 念入りに歯ぐきをマッサージする
歯磨きは歯垢を取り除くだけでなく、歯と歯ぐきの際の部分や、歯ぐきをマッサージして血液循環を改善する目的もあります。歯ブラシを縦に当てて歯周ポケットの歯垢をかき出したら、優しい力で歯ぐきの際の部分や歯ぐきをマッサージするように磨いてください。
すぐに症状が改善しなくても、焦らずに続けてください。食べカスや歯垢による一時的な炎症の場合、その部分をしっかり磨けば、数日間で症状が治まることもあります。1ヵ所につき20回以上を目安に磨くのがおすすめです。腫れや出血が落ち着いてきたら、デンタルフロスなどを使用して、さらに清掃効果を高めましょう。
歯ぐきマッサージのメリットや歯ブラシ以外での方法はこちらの記事で詳しく解説しています。
痛みが強いときや、症状が続くときにすべきこと
歯ぐきの腫れや出血には、強い痛みを伴うケースがあります。痛みが強いときや、症状が続く場合にするべきことをチェックしていきましょう。
1. 市販薬で症状を抑える
歯ぐきが腫れて痛みがひどい場合は、薬を使うと痛みが治まる場合があります。歯ぐきの腫れや炎症の緩和に効き目があるのは、ロキソニンやボルタレンなどの鎮痛剤です。内服薬の他に、歯ぐきに直接塗布する薬もあります。ただし、あくまで痛みを緩和するための応急処置で、原因は取れていませんのできちんとした治療が必要です。
2. 歯科医院で検査・治療をする
痛みが強い場合は、我慢をせずに、歯科医院を早めに受診してください。歯垢が石灰化して歯石になると、歯科医院で除去してもらうしか方法がありません。歯周病の進行の程度に合わせて、治療を受けることが重要です。
歯周病が疑われる場合の検査方法としては、歯周ポケットの深さや歯垢のチェックなどをする歯周検査、歯や歯ぐきの健康チェック、口内の清潔度が分かる唾液検査、歯周病菌感染の度合いや抵抗力を測定する血清抗体検査などがあります。
歯ぐきの腫れや出血があるときの受診目安
歯ぐきの腫れや出血は軽く考えられがちですが、なかには病気が隠れていることもあります。早めに歯科医院で受診した方が良いでしょう。歯ぐきの腫れが短時間でおさまり、症状を繰り返さないときでも、できる限り歯科医院で受診すると安心です。特に、歯ぐきの腫れだけでなく、痛みと出血を伴う場合、発熱がある場合などは、速やかに受診することをおすすめします。
唾液検査シルハで歯ぐきの健康をチェック
歯や歯ぐきの健康、口内の清潔度の検査におすすめなのが唾液検査シルハです。シルハは、水で口をすすぐだけで口内環境にかかわる6つの項目(むし歯菌・酸性度・緩衝能・白血球・タンパク質・アンモニア)をチェックできます。検査結果をもとに、日々のオーラルケアなどさまざまなアドバイスを受けることが可能です。
歯ぐきの出血や腫れには適切な対処をし、早めに歯科医院を受診しよう
歯ぐきの腫れや出血を予防するには、日々のケアで口内を清潔に保つことが大切です。また、歯科医院で定期的に歯石を除去したり、唾液検査を受けたりして、むし歯や歯周病予防をすることをおすすめします。歯ぐきの腫れや痛みがひどく、出血や発熱がある場合は、早めに歯科医院を受診し、治療を受けましょう。
監修歯科医師:村上弘先生
福岡県福岡市早良区にある「むらかみひろし歯科医院」の院長。福岡歯科大学・大学院を修了、博士(歯学)を取得。専門は歯周病で日本歯周病学会認定歯周病専門医であり、福岡歯科大学臨床准教授として大学でも後進の指導を行っている。地域の皆さんに「ベストな治療」と「最適なメインテナンスプログラム」を提供し、笑顔で健康的な日常が過ごせるように診療を行う。従来の「削る」治療型の歯科医療ではなく「守る」メインテナンス型の歯科医療の普及に奔走している。
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