歯ぐきにできる白い出っ張りの一種「骨隆起」についてや、骨隆起以外での原因について解説します。
(2024年7月20日更新)
歯ぐきに白い出っ張りのようなものができて、それが気になっている人もいるのではないでしょうか。それはもしかしたら骨隆起かもしれません。この記事では、骨隆起の概要や特徴、治療すべきかどうかなどについて解説します。また骨隆起と間違えやすいケースについても取り上げます。ぜひ参考にしてください。
歯ぐきに白い骨が飛び出る「骨隆起」
口の中で舌を動かした際にボコっとした硬いふくらみを感じた場合、骨隆起の可能性があります。ここでは、骨隆起の概要について解説します。
骨隆起とは
骨隆起とは、骨が異常に発育して盛り上がった状態で、口の中では主に歯ぐきや顎の内側に多く見られます。骨の隆起により歯肉が薄くなるため、白いこぶのように見えるのが特徴です。原因は歯ぎしりや食いしばりだと言われていますが、詳しくはまだわかっていません。
骨隆起の種類
・下顎隆起:下顎の歯の内側にできる骨隆起
・上顎隆起(口蓋隆起):上顎の歯の内側にできる骨隆起
・歯槽隆起:歯ぐきにできる骨隆起
上顎や下顎の内側、歯ぐきなど、骨隆起はさまざまな部位にできる可能性があると覚えておきましょう。
この歯ぐきの白い骨は骨隆起?特徴・見分け方
口の中に白いこぶ状のものができているからといって、必ずしも骨隆起とは限りません。ここでは、骨隆起の特徴や見分ける際のポイントについて解説します。
硬い出っ張りがある
骨隆起は、硬くて出っ張っているのが特徴です。骨隆起と間違えやすいものに腫瘍がありますが、腫瘍は軟らかいため触った時の感触が異なります。
実際に舌などで軽く触れてみて、もし硬いようであれば骨隆起の可能性が高いと言えるでしょう。
コブが大きくなる
原因が骨隆起の場合、最初は小さなふくらみ程度ですが、ゆっくりと次第に大きく成長していき、元に戻ることはありません。コブが少しずつ大きくなっているようであれば、骨隆起が疑われます。
触っても痛くないが硬いものが当たると痛いことも
骨隆起によるふくらみは骨そのものなので、触っても痛みを感じることはありません。ただし、骨の盛り上がった部分の粘膜が薄くなっているため、硬いものを食べるなどで強い力が加わった時は、痛むことがあります。ちなみに腫瘍の場合は、内部が炎症を起こした状態であり、軽く触れるだけでも痛みを感じます。
歯ぐきの白い骨が飛び出るのはなぜ?骨隆起の原因
骨隆起の原因は不明ですが、以下の要因が発症に関係していると考えられています。
遺伝
両親や祖父母などの家族に骨隆起がある場合、遺伝によって自身も骨隆起が起こる確率が高くなると言えるかもしれません。
歯ぎしりや食いしばり
歯ぎしりや食いしばりなどの強い力が顎に定期的にかかると、その力から顎を守ろうと骨が異常に発達し、骨隆起につながる可能性があると考えられます。歯ぎしりや食いしばりが癖になっている方は、マウスピースを着用するなどして改善に取り組みましょう。
歯ぐきの白い骨は除去できる?骨隆起の治療
ここでは、骨隆起治療の必要性の有無と、治療方法などについて解説します。口の中の骨隆起が気になっている人はぜひ参考にしてください。
骨隆起を治療した方がよいケース
骨隆起の原因は炎症や腫瘍などではないため、基本的には治療をする必要はありません。しかし、骨隆起が大きくなって舌が動かしにくくなり、会話や食事に支障をきたしている方は、治療をおすすめします。また、入れ歯を装着する際に骨隆起と接触して痛みが生じる場合も、治療を検討したほうがいいでしょう。
骨隆起の治療法
治療を進めるにあたり、まず診断を行い状況を把握します。その結果次第では、外科手術で切除することもあります。
手術の場合、麻酔を行ったうえで歯肉を切開して粘膜を剥離します。骨隆起が現れたら、虫歯を削る機械や骨ノミを使って切断します。その後、骨をヤスリで削って表面を調整し、粘膜を縫合して終了です。手術自体は比較的短時間で終わります。
手術中は麻酔が効いていますが、骨ノミで叩く音や骨を削る音などが聞こえるため、怖さを感じることがあります。
骨隆起以外の可能性も・・・歯ぐきに白いものができる原因と対処法
歯ぐきにできる白いできものは骨隆起だけではありません。ここでは骨隆起以外の白いできものについて解説します。
口内炎
口内炎は、口の中の粘膜が炎症を起こした状態です。頬の内側や舌、唇の裏など、口内のさまざまな場所の粘膜にでき、痛んだり、食べ物などが触れるとしみたりするのが特徴です。
口内炎にはいくつかの種類がありますが、中でも一般的なのが「アフタ性口内炎」と呼ばれる白いできものです。生活習慣の乱れなどによる免疫力の低下のほか、口内の傷から細菌が感染することなどが、主な発症原因と考えられています。
原因が明らかな口内炎の場合、症状に合わせた治療を行います。しかしアフタ性口内炎のように不特定な原因で起こるケースでは、うがい薬やステロイド軟膏の処方により、1-2週間程度で完治します。しかし長引く場合はほかの病気が関与していることもあるので、そのまま放置せずに耳鼻咽喉科を受診してください。
フィステル
根尖性歯周炎という、歯の根の先端で起きる炎症が原因で歯肉の中に膿が溜まると、歯ぐきに隠れた歯の根元部位(歯根)近くの歯肉に、おできの様な白い部分ができます。これをフィステルと言います。表面には膿を出すための穴があいているため、押すと膿が出て来ることもあります。
むし歯や歯周病などのほか、治療した歯から細菌が入ることでも発症するケースが多いようです。主な治療法として神経治療や歯根の切除が行われますが、これらの治療が難しい場合は抜歯することもあります。
白板症
白板症とは、口の中の粘膜が肥厚して白く見える疾患です。歯ぐきや舌、頬の内側にある上皮と呼ばれる粘膜の細胞の数が増えて膨らみ、その下にある毛細血管が見えなくなることで白く見えます。白板症は汚れではないため、白い部分をこすっても取り除くことはできません。見た目は、つるんと平らなものが多いですが、中にはシワが寄った様なものや凸凹と盛り上がったものもあります。健康な粘膜との境界がはっきりしていることが特徴です。
発症の原因はわかっていませんが、飲酒や喫煙、刺激の強い飲食物の摂取のほか、むし歯、差し歯、義歯など外部からの刺激が関係していると考えられています。そのため、これらの要因を排除することが最善の対処法と言えます。
また、痛みなどの症状を伴うケースが少ないため、治療は基本的には経過観察となります。ただし、白板症のうち約10%はがん化すると言われています。また舌がんに進行する前に約18%の方に白板症が見られたとの統計もあることから、症状が現れた場合は歯科医院を受診することをおすすめします。
口腔がん
口の中の白いできものは口腔がんのおそれもあります。口腔がんは、部位によって歯肉がん、舌がん、口腔底がんなどに分類されます。初期段階では歯ぐきや舌の盛り上がり、しこりなどが現れますが、特に痛みを伴わないため、なかなか気づきにくいことが多いようです。特に、口内炎がなかなか治らないというケースは口腔がんが疑われることもあるため、早急に受診するようにしてください。
まとめ
今回は、歯ぐきにできる骨隆起について解説しました。舌や指で触るとゴツゴツと硬いものを感じるかもしれませんが、日常生活に支障をきたさない限りは特に治療は必要ありません。しかし、歯ぐきのできものにはさまざまな原因が考えられるため、一度歯科医院を受診しましょう。早期発見、早期治療が基本です。
監修歯科医師:飯田智代先生
さくら歯科医院、飯田歯科医院勤務。2002年3月 東京歯科大学卒業。大平歯科医院、ひろ歯科医院、カテリーナデンタルオフィス分院長を経て、2011年4月にさくら歯科医院の院長に就任。2022年8月からは飯田歯科医院の理事長に就任し、現在はさくら歯科医院、飯田歯科医院へ非常勤で勤務している。