(2022年12月23日公開)
【歯科医師監修】
歯がムズムズすることはありませんか。なんとなく違和感はあるけど、むし歯のような痛みではないからと様子を見ることもありますよね。歯がムズムズする原因はいくつかあり、治療が必要なこともあります。また、自己判断で放置しておくと危険を伴うこともあります。本記事では歯がムズムズする原因と対処法・治療法について解説します。
歯がムズムズするのはなぜ? 原因別対処法
歯がムズムズする原因は、食べ物の食べカスなどが歯に詰まっているからではないかもしれません。
考えられる理由がいくつかあるため、原因や対処法を覚えておきましょう。
「むし歯」
むし歯が進行すると、歯の神経や歯ぐきなどの周辺組織にまで炎症を起こす場合があります。炎症が歯の神経にまで到達すると、歯がムズムズとうずくような感覚があります。また、むし歯の初期や軽度の場合でも、食べ物が詰まったりすると歯がムズムズするような感覚が生じます。
むし歯の治療は、軽度であれば比較的早く済みますが、進行している場合は神経の治療が必要なこともあります。早めに歯科医院を受診するようにしましょう。
「歯周病」
歯周病の初期症状として、歯がムズムズするといった症状を感じる方もいます。歯周病は、歯周病菌といわれる細菌が歯ぐきや歯槽骨(歯を支える顎骨)を傷めることで発症します。自覚症状が乏しく、進行していても気付かないケースが多いようです。歯周病が進行すると、歯槽骨が破壊されて歯を支えることができず、歯が抜け落ちてしまうこともあります。
歯周病の予防には、自宅での日常のケアが必要です。大切なのは食後の歯磨きですが、歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れを落としきることができません。そのためデンタルフロスを併用することをお勧めします。歯科医院で口内のクリーニングも行ってもらうことで、日常のケアでは取りきれない汚れや、歯ブラシでは取れない歯石を取り除くことが可能です。
「親知らずの腫れ」
親知らずの生え方に問題があると、むし歯や歯周病になるリスクが高くなります。また、親知らず周辺の歯ぐきが腫れている場合は細菌感染を起こしているおそれがあります。むし歯や歯周病になっていたり、細菌感染を起こしていたりすると、歯がムズムズする原因となることがあります。
親知らずの生え方に問題がある場合は、細菌による腫れを繰り返すことがあります。親知らずの周りが腫れている場合は早めに歯科医院を受診しましょう。まずは抗生物質で腫れを抑えてから、治療法の検討が行われます。
「歯ぎしりや食いしばり」
睡眠中に歯ぎしりをしていたり、普段から歯を食いしばっていたりすると、歯に過大な負担がかかってしまいます。そうすると歯周組織に炎症が起き、神経が麻痺することで歯にムズムズした感覚が起きることがあります。
対処法としては、まずは日頃の生活において歯を食いしばらないように注意するようにしましょう。睡眠中の歯ぎしりは自身で意識して止めることが難しいため、治療が必要です。歯科医院で専用のマウスピースを作成して睡眠時に装着すると、歯への負担を軽減することができます。これにより、歯ぎしりが原因で歯がムズムズしていた場合は違和感を改善することができます。また、歯ぎしりの防止にも役立ちます。
「被せものや詰め物の影響」
被せものや詰め物は、長い時間の経過により劣化します。そこからむし歯菌が入ってむし歯になると、歯がムズムズ感じることがあります。また被せものや詰め物に段差がある場合は、そこに残った食べ物がむし歯の原因になるだけでなく、歯ブラシやデンタルフロスが引っかかって歯ぐきに炎症を起こし、腫れを引き起こした場合も、ムズムズすることがあります。
被せものや詰め物の段差によるムズムズ感は、段差がないように被せ物などの作り替えを行ない、歯ぐきの腫れが引くことで解消できます。
「心理的要因」
歯とは直接的な関係がなくても、歯がムズムズする場合があります。これを非歯原性歯痛と言い、心理的要因もこれに含まれます。日頃からのストレスの蓄積が原因となり、痛みを感じることもあります。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、無意識のうちにバランスを取りながら生活をしています。しかしストレスなどにより自律神経が乱れると、交感神経が強く働くようになります。すると唾液の分泌が減ることで口の中の乾燥を引き起こし、口の粘膜が傷む結果、ムズムズと感じることがあります。
心因的な要因によるものであれば、ストレスを改善することが必要となってきます。規則正しい生活を送り、食事、睡眠、適度な運動を心がけてみましょう。また、趣味などを通して気分転換を図ってみるのも効果的です。
治療後・抜糸後に歯がムズムズするのは数日で治まることも
上記の原因とは別に、歯の治療後や抜糸後に麻酔の効果が切れると、歯がムズムズする場合があります。しかし、抜糸による一時的なものであれば徐々に改善が見られ、数日で治まることもあります。
治療から1週間が経過しても、症状が変わらない場合や強くなっている場合は、再度受診をしましょう。
歯がムズムズするときにやってはいけないこと
歯がムズムズするからといって、指や爪楊枝など先の尖ったもので触りすぎるのは避けましょう。特に炎症を起こしている場合は歯ぐきが傷つきやすく、細菌などが入り込んで症状が悪化しやすいため、かえって逆効果です。
うがいや歯ブラシ、デンタルフロスを使用し、口内を清潔に保ちましょう。歯ぐきに炎症がある場合は出血のリスクもあるため、力を入れすぎないように注意してください。
歯がムズムズするけど痛くない...放置しても平気?
これまで歯がムズムズする理由について解説しましたが、これらの症状で痛くない場合には、そのまま放置していても問題ないのでしょうか?
歯のムズムズの放置で歯が抜ける危険性
歯がムズムズする原因がむし歯や歯周病の場合は、放置してしまうと症状が進行し、歯ぐきや骨が菌に浸食されることがあります。歯がぐらぐらしてきたり、歯ぐきから出血がある場合は重症化している証拠です。最悪の場合は歯ぐきや骨が弱くなることで、歯を支える力がなくなり、抜けてしまうこともあります。
歯が抜けてしまうと元に戻すことができないため、放置はしないようにしましょう。
命を落とす可能性も
むし歯や親知らずなど、歯の細菌が原因となって死に至る症例があります。例えば、むし歯菌は、口内を経由して体に入り込み肺炎を引き起こすリスクがあり、血管内に入り込むと心臓にまで炎症が起きて心筋炎を引き起こすこともあります。
このような状態になると、命を落とす危険性もあるので、そうなる前に早めに受診することが大切です。
まとめ
歯がムズムズする原因は、非常にたくさんあります。症状として軽症から重症なものまでありますが、痛みを伴わないからと放置してしまうと、命にかかわることもあります。
歯がムズムズするといった症状が出ている場合は、原因に応じた治療が必要となってきます。早めに歯科医院を受診するようにしましょう。歯は普段からのケアが大切です。歯磨きをきちんと行い、むし歯を予防していきましょう。
監修歯科医師:飯田智代先生
さくら歯科医院、飯田歯科医院勤務。2002年3月 東京歯科大学卒業。大平歯科医院、ひろ歯科医院、カテリーナデンタルオフィス分院長を経て、2011年4月にさくら歯科医院の院長に就任。2022年8月からは飯田歯科医院の理事長に就任し、現在はさくら歯科医院、飯田歯科医院へ非常勤で勤務している。