食いしばりは歯を強く噛みしめることで、歯や歯ぐき、全身にまで影響を及ぼします。日中に自覚できる症状でもあるため、気づいた時に改善することが大切です。
食いしばりとは?
食いしばりはクレンチング症候群ともいわれます。歯ぎしりと混同されがちですが、両者の症状は違いがあります。上下の歯を強く噛みしめるのが食いしばりの行為で、音はありません。一方、歯ぎしりは、上下の歯をすり合わせることによってギリギリと音が出る行為で、グライディングともいわれます。
歯ぎしりは、睡眠中に発生して自覚症状がないケースがほとんどで、周りからの指摘で発覚することが多いです。
食いしばりは、日中に発生することが多く、歯ぎしりと比べて起きている時間にしていることが多いため、自覚しやすい点でも両者は異なります。
歯ぎしりは、睡眠中に発生して自覚症状がないケースがほとんどで、周りからの指摘で発覚することが多いです。
食いしばりは、日中に発生することが多く、歯ぎしりと比べて起きている時間にしていることが多いため、自覚しやすい点でも両者は異なります。
食いしばりの症状

食いしばりの症状は、口内は口の周囲から全身に影響するものまで多岐にわたります。食いしばりによって発生する症状をご紹介します。
口内や口の周囲に起きる症状
食いしばりによって、歯や歯ぐき、顎などにも影響があります。
歯が割れたり欠けたりする
歯自体が強い力によって欠けてしまったり、詰めものや被せものが割れてしまったりすることがあります。また、歯に継続的に力が加わると、歯の根元部分のエナメル質が薄いところから欠けてくるケースあります。
嚙み合わせの悪化する
歯に縦方向の強い力が加わり続けると、歯が移動してしまうことがあります。圧力によって、歯が歯ぐきの中にのめり込む状態になります。奥歯が圧力で下がると嚙み合わせのずれが起こり、前歯が前方に開いて嚙み合わせが悪くなります。
知覚過敏が起きる
歯が割れたり欠けたりしたことによってエナメル質の象牙質が露出すると、冷たいものがしみるなどの知覚過敏が発生することがあります。
むし歯になる
食いしばりによって歯にひびが入ったり割れたりすると、ひびからむし歯菌が侵入し、そこからむし歯になるおそれがあります。
顎関節症になる
食いしばりは顎関節症の原因の1つです。食いしばりによって顎に強い負担がかかると、顎の関節にある軟骨がずれたり変形したりして、顎関節症になる場合があります。
身体に起きる症状
食いしばりは、口の周囲だけでなく全身にも影響を及ぼします。
頭痛
食いしばりによって、顎を動かす筋肉の1つである側頭筋がこわばり、頭痛を引き起こすことがあります。
頭部の側面にある側頭筋は、顎関節の動きに関係しています。食いしばりによって、歯を噛みしめていると顎関節への負担が大きくなり、側頭筋がこわばって頭痛の原因となるのです。
頭部の側面にある側頭筋は、顎関節の動きに関係しています。食いしばりによって、歯を噛みしめていると顎関節への負担が大きくなり、側頭筋がこわばって頭痛の原因となるのです。
首や肩のこり
食いしばりは、側頭筋や咬筋などの筋肉を緊張させます。口周りの筋肉は、首や肩につながっているものが多く、首や肩のこりを引き起こす要因になります。
表情筋への影響
食いしばりによって口の周りの筋肉が緊張して固まり、表情筋に影響を及ぼすことがあります。ほうれい線が目立つようになるなど、見た目への影響もあります。
また、顔の周りの筋肉が発達しすぎてエラ張りの状態になり、顔が大きく見える場合もあります。
また、顔の周りの筋肉が発達しすぎてエラ張りの状態になり、顔が大きく見える場合もあります。
食いしばりの原因

食いしばりの原因は明確には解明されていませんが、主にストレスや緊張であるとされています。また、姿勢の影響もあるといわれています。
ストレスや緊張
食いしばりの原因の1つはストレスです。例えば、対人関係などのストレスがある場合や、緊張する場面に遭遇した時などが挙げられます。
過度なストレスや緊張がかかると、交感神経が優位になるため、口の周りの筋肉が緊張し、食いしばりの症状が起きやすくなります。逆に、歯を食いしばるとストレス緩和になるともいわれます。
過度なストレスや緊張がかかると、交感神経が優位になるため、口の周りの筋肉が緊張し、食いしばりの症状が起きやすくなります。逆に、歯を食いしばるとストレス緩和になるともいわれます。
物事に集中している
物事に集中している人は、無意識に歯を食いしばっている傾向があります。例えば、パソコンやスマートフォンの使用中、勉強や読書、車の運転など、集中や緊張している時などが挙げられます。
もし日中に歯を食いしばっていることに気づいたら、口を開け、口を閉じるための筋肉(咬筋)を緩めましょう。仕事中も、定期的に体を動かしてリラックスするように意識することも大切です。
もし日中に歯を食いしばっていることに気づいたら、口を開け、口を閉じるための筋肉(咬筋)を緩めましょう。仕事中も、定期的に体を動かしてリラックスするように意識することも大切です。
姿勢が悪い
姿勢が悪い状態とは、顎が前に出ていることです。顎が前に突き出すようになると目線が上向きになり、上下の歯が接近またはくっつくようになるため、食いしばってしまうのです。
日中に食いしばりを防ぐには、下顎安静位を意識することが大切です。下顎安静位とは、安静にしている時の正しい顎の位置のことで、上下の歯の間に2~3㎜の隙間が空いた状態です。
下顎安静位を保つために、上の前歯の裏側に舌の先端が触れた正しい舌の位置を意識しましょう。
日中に食いしばりを防ぐには、下顎安静位を意識することが大切です。下顎安静位とは、安静にしている時の正しい顎の位置のことで、上下の歯の間に2~3㎜の隙間が空いた状態です。
下顎安静位を保つために、上の前歯の裏側に舌の先端が触れた正しい舌の位置を意識しましょう。
食いしばりの改善法
食いしばりを改善するにはいくつか方法があります。
咬筋・側頭筋のマッサージ
食いしばりによってこわばった筋肉をマッサージすることで、筋肉が緩んで頭痛や肩こりを軽減する効果が期待できます。
・咬筋のマッサージ
咬筋は、顎角と呼ばれるエラ部分から下方向の頬骨をつなぐ筋肉です。
ギュッと強く噛みしめた時に、耳の下のあたりが膨らむ場所に指2本ほどで触れ、円を描くようにゴリゴリと回しながらマッサージをします。
・側頭筋のマッサージ
側頭筋は、側頭部から下方向に位置する下顎骨筋の突起に向かってつながる筋肉です
こめかみのあたりに指をあてて、強く噛みしめてみると、膨らむ部分があります。その部分を咬筋のマッサージと同じように、指で円を描きながらゴリゴリとマッサージします。
どちらのマッサージも、位置がわからない時に噛みしめて確認してみてください。
・咬筋のマッサージ
咬筋は、顎角と呼ばれるエラ部分から下方向の頬骨をつなぐ筋肉です。
ギュッと強く噛みしめた時に、耳の下のあたりが膨らむ場所に指2本ほどで触れ、円を描くようにゴリゴリと回しながらマッサージをします。
・側頭筋のマッサージ
側頭筋は、側頭部から下方向に位置する下顎骨筋の突起に向かってつながる筋肉です
こめかみのあたりに指をあてて、強く噛みしめてみると、膨らむ部分があります。その部分を咬筋のマッサージと同じように、指で円を描きながらゴリゴリとマッサージします。
どちらのマッサージも、位置がわからない時に噛みしめて確認してみてください。
姿勢の改善
頬杖をつく姿勢は、顎の骨や顔の関節に負担がかかります。下顎にずれが生じやすく、嚙み合わせが悪くなり、食いしばりを助長させてしまう場合があります。横向きで寝る姿勢が長時間続くと、片方の顎に偏った力がかかってしまうため避けたほうがよいでしょう。
また、顎以外に首や肩にも負担をかけないように、適切な高さの枕を選ぶことも重要です。
正しい立ち姿勢とは、下顎がやや前方に移動し、奥の歯の上下に空間ができた状態です。この状態は奥で食いしばれなくなり、同時に背中や首が楽になります。
正しい立ち姿勢になるために、簡単なつま先立ちトレーニングがあります。
両手は壁に軽くささえて足全体でつま先立ちをします。これを3秒間キープしてから両足を下ろします。
足の親指を意識して立つことがポイントです。これを朝晩2回、1日15回くらい行いましょう。
また、顎以外に首や肩にも負担をかけないように、適切な高さの枕を選ぶことも重要です。
正しい立ち姿勢とは、下顎がやや前方に移動し、奥の歯の上下に空間ができた状態です。この状態は奥で食いしばれなくなり、同時に背中や首が楽になります。
正しい立ち姿勢になるために、簡単なつま先立ちトレーニングがあります。
両手は壁に軽くささえて足全体でつま先立ちをします。これを3秒間キープしてから両足を下ろします。
足の親指を意識して立つことがポイントです。これを朝晩2回、1日15回くらい行いましょう。
食いしばりの治療法

食いしばりの改善には、まず原因となっている日々の習慣を見直すことが大切です。しかし、なるべく早く治したいという方のために、食いしばりの治療にはいくつかありますので、代表的な2つの治療法と、それぞれの注意点を解説します。
マウスピース治療
マウスピースを歯に装着して寝ることで、歯にかかる負担が分散され、歯が折れたり欠けたりするのを防げます。マウスピースをつけると、歯と歯で直接圧力をかけることがなくなるため、歯や歯根への負担を減らせます。
またマウスピースは、本来の嚙み合わせになるように不具合を調整する役割もあるため、顎の関節にかかる負担も減らす効果が期待できます。
またマウスピースは、本来の嚙み合わせになるように不具合を調整する役割もあるため、顎の関節にかかる負担も減らす効果が期待できます。
マウスピース治療の注意点:逆効果になることもある
マウスピースは基本的に睡眠中の無意識の食いしばりを防止するために装着します。しかし、仕事中などストレスを感じた時に食いしばっている人は睡眠中以外にも装着するとよいとされています。
マウスピースにはいくつか種類がありますが、次のマウスピースを食いしばり用として使うと逆効果になることがあるため注意しましょう。
・市販のマウスピース
歯科医院ではなく自分で歯型をとるため、正しく歯型がとれないことも多くあります。結果、寝ている間に違和感から無意識に外してしまい、逆効果になるおそれがあります。
・スポーツ用のマウスピース
スポーツ用のマウスピースは、踏ん張ったり力んだりする場面で生じる瞬発的な食いしばりから歯を保護する役割があります。
しかし、ゴム製のやわらかいタイプが多く、すぐに削れて穴が開いてしまったり、やわらかいことで逆に食いしばりの力が強くなってしまったりすることがあるため逆効果です。
・歯列矯正用のマウスピース
食いしばり用とは異なり、薄さはわずか0.5mmしかありません。食いしばりから歯を守るには薄すぎて不適切です。
マウスピースにはいくつか種類がありますが、次のマウスピースを食いしばり用として使うと逆効果になることがあるため注意しましょう。
・市販のマウスピース
歯科医院ではなく自分で歯型をとるため、正しく歯型がとれないことも多くあります。結果、寝ている間に違和感から無意識に外してしまい、逆効果になるおそれがあります。
・スポーツ用のマウスピース
スポーツ用のマウスピースは、踏ん張ったり力んだりする場面で生じる瞬発的な食いしばりから歯を保護する役割があります。
しかし、ゴム製のやわらかいタイプが多く、すぐに削れて穴が開いてしまったり、やわらかいことで逆に食いしばりの力が強くなってしまったりすることがあるため逆効果です。
・歯列矯正用のマウスピース
食いしばり用とは異なり、薄さはわずか0.5mmしかありません。食いしばりから歯を守るには薄すぎて不適切です。
ボトックス治療
筋肉の緊張状態をやわらげ、こりを予防するためには、「ボトックス注射」というクリニックで受けられる治療法もあります。
ボトックス注射とは、ボツリヌス菌が作り出す筋肉の弛緩作用のある成分を、筋肉に注射する施術です。咬筋にボトックス注射をすると、咬筋へ過度な力が加わりにくくなり、食いしばりによって起きるエラ張り予防につながります 。
ボトックス注射の効果の持続期間は、一般的に3か月~半年程度といわれています。そのため、効果を持続させるには定期的に施術を受ける必要があります。
ボトックス注射とは、ボツリヌス菌が作り出す筋肉の弛緩作用のある成分を、筋肉に注射する施術です。咬筋にボトックス注射をすると、咬筋へ過度な力が加わりにくくなり、食いしばりによって起きるエラ張り予防につながります 。
ボトックス注射の効果の持続期間は、一般的に3か月~半年程度といわれています。そのため、効果を持続させるには定期的に施術を受ける必要があります。
ボトックス治療の注意点:保険診療外
食いしばりの改善目的でボトックス治療を歯科医院で受ける場合、原則費用は自費診療となり、全額自己負担であることを留意しておきましょう。
ただし、食いしばりによる歯の摩耗や顎関節症の痛みを改善するためのボトックス治療の場合、医療行為として認められ、医療費控除の対象となります。医療費控除の適用を受けるには、歯科医師による診断書や領収書などの書類が必要です。治療の必要性や内容を明記してもらい、確定申告で提出しましょう。
ただし、食いしばりによる歯の摩耗や顎関節症の痛みを改善するためのボトックス治療の場合、医療行為として認められ、医療費控除の対象となります。医療費控除の適用を受けるには、歯科医師による診断書や領収書などの書類が必要です。治療の必要性や内容を明記してもらい、確定申告で提出しましょう。
MFT療法
MFT(口腔筋機能療法)とは、口の周りの筋肉の機能を改善するためのトレーニングのことです。口周りの筋肉バランスを調整することで食いしばりに効果があるとされています。頬杖・口呼吸・舌癖などの悪習慣を改善することで、不正咬合を起こさない目的もあります。毎日継続して長期間行う必要があり、約2年は続けることを推奨されています。
食いしばりに気づいたら対策しましょう

食いしばりの原因は、日ごろのストレスや緊張などの精神的なものと、頬杖や睡眠中の姿勢などの身体的なものがあります。日中に発生することが多い食いしばりは自覚しやすいため、意識して対策することも可能です。
食いしばりの症状に思い当たる方は、今回ご紹介した方法を実践してみてはいかがでしょうか。
食いしばりの症状に思い当たる方は、今回ご紹介した方法を実践してみてはいかがでしょうか。