この記では、歯が欠けたときどんな対処をした方が良いのか、痛みがなければ放置しても良いのかなどについて解説します。
歯が欠けたときに痛みがないと、そのままにしている人も多いようです。しかし、欠けた歯により、口内が傷つく恐れがあります。歯が欠けたときは、できるだけ早く病院を受診しましょう。
すぐ歯医者に行けないときに、した方がいい歯が欠けたときの応急処置と注意点、予防法、歯科医院での治療法などをご紹介します。
歯が欠けたときの応急処置と注意点
歯が欠けたときは、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。欠けた部分によっては、口内が傷ついたり、欠けた部分がむし歯になったりする恐れがあります。
しかし夜間や休日などで、すぐに受診できないこともありますよね。歯が欠けたときの応急処置と注意点をご紹介します。
歯が欠けて痛みがあるときの応急処置
夜間や休日で歯科医院を受診できない場合、外部からの衝撃などにより、歯が欠けて痛みがある場合は、鎮痛剤を服用してください。市販薬でも構いません。しかし鎮静剤の服用はあくまで応急処置なので、そのまま痛みがひいたとしても、なるべく早めに歯科医院を受診しましょう。
歯が欠けたときの注意点① 欠けた歯を保存する
欠けた歯が手元にあるときは、できるだけ保存しておくようにしましょう。外部からの衝撃などで歯が欠けた場合は、歯科医院で接着することが可能なケースもあります。
しかし保存方法を誤ると、細菌感染を起こして接着できないこともあります。欠けた歯を病院へ持って行く際の保存方法を解説します。
<具体的な保存方法>
欠けた歯は、薬局で販売されている歯の保存液に浸しましょう。薬局で保存液が見つからなければ、生理食塩水や牛乳に歯を浸してください。それらの用意も難しい場合は、濡れたティッシュペーパー等に包んで乾燥を防ぐようにしてください。
なお、歯の組織がなくなってしまう恐れがあるため、水道水で洗うことは厳禁です。
歯が欠けたときの注意点② 欠けた部分は触らない
欠けた部分はデリケートな状態なので、雑菌が入ると接着することができなくなってしまいます。欠けた部分が気になったとしても、できるだけ舌や指で触らないようにしましょう。雑菌の繁殖や、炎症のリスクを高めてしまう恐れがあります。
歯が欠けたときの注意点③ 痛みがなくても歯科医院を受診する
欠けた部分が小さかったり、痛みがなかったりする場合でも、歯科医院を受診しましょう。欠けた部分に食べかすや歯垢が溜まり、むし歯になりやすくなります。また、欠けた部分が口内を傷ける恐れもあります。
むし歯が原因で歯が欠けた場合は、むし歯の治療が必要です。歯ぎしりや噛み合わせによって歯が欠けた場合には、それらの原因を改善しないと他の歯も欠けてしまう恐れがあります。外部からの衝撃による歯の欠損では、痛みがなくても歯の根っこ部分にヒビが生じている恐れもあります。気づかずに放置していると細菌感染を引き起こし、最悪の場合、抜歯するケースもあるようです。
これらを防ぐためにも、歯が欠けたときは必ず歯科医院を受診してくださいね。
歯が欠けたときの歯科医院での治療
歯が欠けた部分の大きさにより、治療法は異なります。大きく破折した場合は、抜歯が検討されることもあります。歯が欠けたときの歯科医院での治療法をご紹介します。
欠けた部分が小さい場合はレジン充填で治療する
欠けた部分が小さい場合は、レジン充填という治療を行うのが一般的です。歯の欠けた部分にプラスチックの樹脂を入れて、光を当て固める治療法なので、歯を削らないことが多く削ったとしても小規模で済むことが多いです。なおレジン充填は保険が適用されます。
欠けた部分が中くらいの場合は、詰め物や被せ物で治療する
欠けた部分が中くらいのときは、詰め物や被せ物で治療をします。材質などによって保険適用と自由診療に分かれており、被せ物の種類を自分で選べる場合が多いです。歯が欠けた場所や、保険適用と自由診療での治療方法の違いは次の通りです。
<前歯の保険適用の場合>
金属のフレームに白い樹脂を盛った被せ物で治療します。
<奥歯の保険適用の場合>
奥歯の場合は、金属の詰め物で治療します。
<自由診療の場合>
セラミック冠(冠:クラウン、人工の被せ物)を用いて治療します。自由診療のため、保険適用より費用がかかります。
欠けた部分が大きい場合は、全体に冠を被せる治療をする
歯が大きく欠けてしまっても、神経が生きているなら全体に冠を被せて治療します。しかし神経に損傷が見られる場合は、歯の根の治療(根管治療)が必要です。歯の根の治療は、損傷具合により治療回数が異なります。歯の根を治療した後、土台を立てて、全体に被せ物をします。
大きく破折した場合は、抜歯が検討される
たとえ大きく破損した場合でも、歯科医はできるだけ歯を抜かずに修復して歯を機能させる治療(保存治療)を検討します。しかし歯の土台となる組織まで大きく損傷している場合は、保存治療が難しく、抜歯になるケースが多いようです。抜歯した部分は、入れ歯やインプラント、両隣に歯がある場合はブリッジなどで治療されます。抜歯や抜歯後の治療は、歯科医とよく相談してくださいね。
歯が欠ける理由
歯が欠けてしまう原因としてむし歯や歯ぎしり、外部からの衝撃があげられます。
歯が欠ける理由①むし歯
歯は象牙質とエナメル質の2層で構成されています。むし歯が進行すると外側のエナメル質よりも先に、内側の象牙質が溶けます。象牙質が溶けた歯は、中がからっぽの空洞状態です。この状態の歯はとても脆く、食事の際に欠けてしまうことがあります。
歯が欠ける理由②酸蝕歯(さんしょくし)
酸蝕歯とは、酸によって歯のエナメル質が溶ける状態のことです。エナメル質が溶けると、歯が脆くなり、欠けやすくなります。柑橘類やお酢、ワイン、スポーツドリンクなどの酸性の飲食物を頻繁に摂取していると、口内が酸性に傾き、酸蝕歯(さんしょくし)になるリスクが高まるため、気を付けてくださいね。
歯が欠ける理由③歯ぎしり
歯ぎしりは歯に与えるダメージが大きく、体重の2~3倍ほどの負荷がかかると言われています。この負荷に耐え切れず、歯が欠けることがあります。
歯ぎしりをする原因や治療法などが知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。
歯が欠ける理由④噛み合わせのずれ
歯並びが悪く、上下の歯の噛み合わせがずれていると、一部の歯に咬合力が集中してしまいます。長期間にわたって過度な力が加わり続けると、歯が欠けたり、ヒビが入ったりする可能性があります。また、出っ歯の方は前歯をぶつける確率が高く、折れたり欠けたりしやすい噛み合わせです。噛み合わせが悪い場合は、歯列矯正などの根本的な治療も検討してみてくださいね。
歯が欠ける理由⑤外部からの衝撃
転倒やスポーツ時の接触、交通事故など、外部からの衝撃により、歯が欠けることがあります。そのような場合には、歯が欠けるだけでなく、舌や唇をケガしたり、歯が破折したりする場合もあります。
歯が欠けないようにする予防法
歯が欠けないようにするためにも、日頃からむし歯予防に努めましょう。また唾液検査をして、自分の口内環境を知れば、歯が欠けるのを防ぐことにつながります。最後に歯が欠けないようにする予防法をご紹介します。
定期的に歯科医院を受診する
定期的に歯科医院を受診して、むし歯や酸蝕歯になっていないか確認してもらうことが大事です。定期検診では、むし歯の原因となる歯垢や歯石(歯垢が石灰化したもの)を取り除いてもらえます。また、歯ぎしりや噛み合わせで気になることも気軽に相談できます。定期的に口内をチェックしてもらい、歯が欠けるのを予防しましょう。
唾液検査をして自分の口内環境を把握する
定期検診の際に、唾液検査シルハで口内環境を把握しましょう。シルハは10秒間ほど水で口をすすぐだけで行える唾液検査です。むし歯菌の活性度や、歯を溶かす酸の強さがわかる酸性度や酸に対する防御力の緩衝能、口内の炎症がわかる白血球、タンパク質の量、口内清潔度の指標であるアンモニアの6項目を検査・測定します。
唾液検査の結果から、むし歯のなりやすさや、口内の酸性度が分かります。酸性度が高い人は、酸蝕歯になりやすいため、柑橘類の果物やジュースを摂り過ぎていないか、生活習慣を見直してみてください。
シルハを導入している医療機関はこちらからチェックしてみてください。
応急処置で終わらせないで! できるだけ早く歯科医院を受診しよう
歯が欠けたときは、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。休日や夜間で受診できず、痛みがあるときは、市販薬の鎮静剤を服用することもできます。欠けた部分が小さくても、口内を傷つけたり、むし歯になるリスクを高めたりするので、必ず歯科医院を受診してくださいね。
監修歯科医師:小林 大 先生
神奈川県横浜市鶴見区にある「鶴見駅前Z(ゼータ)歯科・矯正歯科」院長。北海道大学歯学部卒業。臨床歯学にて博士号を取得。「最後まで責任を持つ医院」として、患者の生涯における体と口の健康を守る治療を提供している。