むし歯が進行すると脳にも影響が? 頭痛との関係性や原因・対処法を解説【歯科医師監修】

むし歯が進行すると脳にも影響が? 頭痛との関係性や原因・対処法を解説【歯科医師監修】

(2022年10月31日公開)
むし歯ができると頭痛が起こることがあります。また、むし歯の進行度合いによっては脳にまで影響することもあり、放っておくと最悪の場合、死に至るおそれもあります。この記事では、むし歯と頭痛の関係について詳しく解説します。さらに、むし歯が原因で発症する頭痛への対処法についてもご紹介します。

               

むし歯による頭痛は顔の神経が関係している?

むし歯によって起こる頭痛には、三叉神経(さんさしんけい)や歯髄炎(しずいえん)が関係していることが多いです。ここでは、むし歯で頭痛が起こるメカニズムを解説します。

三叉神経の影響で頭痛がする

三叉神経とは、顔の感覚を脳に伝える神経であり、脳幹から眼神経・上顎神経・下顎神経にまで繋がっていて顔全体に張り巡らされています。この神経は、痛みの原因部位と実際に痛む部位が異なる「関連痛」という症状を引き起こす場合があります。そのため、むし歯の影響が三叉神経に達すると、歯の痛みを頭の痛みと錯覚することがあります。
たとえば、上の歯がむし歯になり強い痛みが生じると、側頭部が痛むように感じるなどです。

むし歯が進行して歯髄炎になると頭痛がする

むし歯が進行すると歯髄炎になり、それに伴い頭痛がする場合があります。歯髄炎とは、むし歯原因菌が作る毒素や細菌自体が、歯の内部にある歯髄にまで達して炎症を起こしている状態です。歯髄には三叉神経も届いており、歯髄の炎症により強い痛みを感じたとき、脳にまで痛みを伝達して、頭痛などの症状が起こります。
むし歯の初期段階では、冷たいものが歯にあたったときに痛みを感じます。しかし、むし歯が進行して歯髄炎が悪化すると、何も刺激を与えていなくても自発的に痛みを感じて、場合によっては強い頭痛を伴います。歯科医院で治療を受けずに歯髄炎を放置していると抜歯に至るケースもあるため、注意しましょう。

むし歯が原因で発症する頭痛

むし歯が原因で発症する頭痛には、三叉神経や歯髄炎が関係するもののほかに、歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)や顎関節症(がくかんせつしょう)、筋緊張型頭痛(きんきんちょうがたずつう)、脳静脈血栓症(のうじょうみゃくけっせんしょう)、脳炎(のうえん)などもあります。それぞれについて解説します。

歯性上顎洞炎による頭痛

歯性上顎洞炎とは、上の奥歯にできたむし歯が原因で、鼻の周りにある上顎洞に感染症が発症した状態です。上顎洞で感染が起きると、炎症を生じて膿がたまります。その結果、奥歯の痛みとともに頭重感や片頭痛、目の痛み、鼻が詰まるなどの症状が起こります。

顎関節症による頭痛

顎関節症とは、顎の関節や物を噛むときに使う咀嚼筋(そしゃくきん)に痛みがでたり、口を開閉する際に雑音が発生したりする症状です。
顎関節症によって頭痛が発症する原因には、顎の痛みをかばうために片側のみで物を噛むことで、噛み合わせのバランスが崩れるなどが挙げられます。顎関節症が原因で頭痛が発症するときは、痛みがこめかみから始まり、後頭部や首、肩にまで広がることがあります。

筋緊張型頭痛

筋緊張型頭痛とは、筋肉の緊張によって生じる頭痛です。締め付けられるような痛みが特徴で、肩こりが原因で生じることもあります。
むし歯になって、痛む歯をかばうようにして片側だけで物を噛むことを繰り返すと、噛み合わせのバランスが崩れていきます。その結果、肩や首に負担がかかり、筋緊張型頭痛が起こります。

脳静脈血栓症による頭痛

静脈血栓症とは、脳の静脈に血の塊(血栓)ができて血管が詰まる症状です。脳の静脈に血が詰まることで、頭痛が生じる場合があります。静脈血栓症が悪化すると、脳梗塞や脳出血などにつながり、最悪の場合は死に至るおそれもあります。
むし歯や歯周病が進行すると、その原因菌が血管内に侵入して全身に広がる場合があります。この細菌が原因で血栓が作られて、その血栓が脳に詰まることで脳静脈血栓症を引き起こすことがあります。

脳炎による頭痛

脳炎は、白血球が脳内に侵入して炎症を起こすことで、脳が障害を受ける病気です。むし歯の原因菌が血管から脳内に侵入して、脳炎を発症する場合があります。
脳炎は、激しい頭痛と38℃以上の高熱をともなう疾患です。後頭部が痛くなったり、嘔吐したりする点が特徴です。ケースは稀ですが、むし歯や歯周病の進行により発症することがあります。

頭痛はむし歯以外の原因もある? 

歯周病や根管治療での取り残しなど、歯が関係して頭痛の原因となることはむし歯以外にもあります。それぞれについて解説します。

歯周病を発症している

歯周病とは、歯と歯ぐきの隙間にたまった歯垢や歯石などが原因で発症する感染症です。歯周病による歯ぐきの炎症が原因で頭痛になることがあります。また、症状が進行すると、歯ぐきが赤く腫れて出血を伴うことがあります。歯周病が重症化すると歯が抜け落ちてしまうこともあるため、注意が必要です。

根管治療での取り残し

根管治療とは、歯の神経を取って歯の根元にたまった膿を取り除き、消毒をする治療です。むし歯が重症化した場合におこないます。神経を取り除いた後は、患部に薬剤を入れて、詰め物でしっかりと塞ぎます。その上から被せ物をします。
根管治療後、1週間以上経過しても歯痛や頭痛が起こる場合は、処置が不十分だったことが考えられます。根管の形態は歯によって異なり、根管が曲がっていたり(湾曲)、すぼまっていたり(狭窄)している場合があります。また、根管はメインの根管のほか、「側枝(そくし)」と呼ばれる細かい根管に枝分かれしています。そのため、以下の原因でやむを得ず再び根管治療が必要になる場合があります。

(原因)
・ 根管の湾曲や狭窄、側枝が原因で汚れの取り残しがあった
・ 根管の湾曲や狭窄、側枝が原因で根管への薬剤の充填が不十分だった
・ 見落としによる未治療の根管があった
・ 根管への薬剤の充填が終了してから被せ物を入れるまでに長い期間が空いてしまったため、再び細菌感染した
・ 被せ物の適合が悪く、隙間から細菌感染した
・ 被せ物の横から新たなむし歯が発症して細菌感染した
・ 歯根が縦割れした

むし歯による頭痛への対処法

むし歯による頭痛は、どのようにして対処すればよいでしょうか。次に、むし歯が原因で生じる頭痛への対処法を紹介します。

頭痛薬や鎮痛剤を使用する

市販の頭痛薬や鎮痛剤を使用して、つらい頭痛を一時的に抑えることも手段の一つです。市販薬を購入する場合は、薬剤師に相談しましょう。しかし頭痛薬や鎮痛剤は一時的に痛みを止めるだけなので、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

アルコールや入浴を控える

頭痛が続く場合はアルコールを控えて、お風呂はシャワーなどで手軽に済ませましょう。アルコールを飲んだり、入浴したりすると、血行がよくなり頭痛が悪化するおそれがあります。

患部を冷やす

患部を冷やすと血行を抑えられて、頭痛が和らぐことがあります。タオルで包んだ氷袋や保冷剤などを利用して、痛みがある部分を冷やすとよいでしょう。氷を直接患部に当てると、冷えすぎてしまい頭痛が悪化するおそれもあるため、冷やしすぎに注意してください。

むし歯で頭痛がある場合に施される病院の治療

むし歯で頭痛がある場合、むし歯の治療や噛み合わせの治療が施されます。それぞれについて解説します。

むし歯の治療

むし歯が原因で頭痛が起こる場合は、まずはむし歯を治療することが大切です。頭痛を伴う場合は、むし歯が進行していることが予想されます。症状に合わせて、次のような治療が施されます。
・軽度(C0~C1)の場合は、むし歯を削って詰め物をする
・中等度(C2)の場合は、さらに神経を抜いて被せ物をする
・重度(C3~C4)の場合は、歯を抜く    

噛み合わせの治療

むし歯によって歯が欠けている状態で食事をすると、噛み合わせが悪くなります。また、むし歯の痛みを避けるために片側だけで噛むことで、顎のバランスが悪くなり、頭痛が起きる場合もあります。かみ合わせが原因で頭痛がする場合は、むし歯を治療したあとに、歯列を矯正したり、マウスピースを入れて歯の高さを調整したりします。

むし歯による頭痛のおそれがある場合はすぐに歯科医師に相談しよう

むし歯で頭痛が起こる場合は、むし歯が進行しているかもしれません。放っておくと、全身にも影響を与えて、まれに重い病気になるおそれもあるため注意が必要です。むし歯を悪化させないためにも、早めに歯科医師に相談しましょう。

監修歯科医師:重永基樹先生

東京都新宿区西落合の哲学堂デンタルクリニック院長。1999年に愛知大学院大学卒業。2002年に現在のクリニックを開業。「なるべく削らない・抜かない・神経をとらない」方針で治療を行っている。

哲学堂デンタルクリニックのホームページはこちら
http://tetsugakudo.com/

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