暖房を使用していると頭痛が起こるのはなぜ?その症状「暖房病」かもしれません

暖房を使用していると頭痛が起こるのはなぜ?その症状「暖房病」かもしれません

(2023年10月30日公開)
暖房を使用しているときに、頭痛やめまい、吐き気などを感じたことはありませんか。それは暖房病が原因かもしれません。暖房病は、意識をしていなければ誰にでも起こる可能性があり、症状が出ると仕事や生活にも影響が出てしまうおそれがある上、健康上もリスクがあります。本記事では暖房病について細かな原因や対処法、病院を受診する目安や対策法について詳しく解説します。

               

暖房の使用で頭痛が起こるのはなぜ?

暖房を使用していると、なぜか頭痛がしたり、頭がぼーっとしたり、気分が悪くなったりした経験がある方も多いのではないでしょうか。その症状は「暖房病」かもしれません。暖房病は脱水症状が主な原因ですが、他にも原因となる要素があります。暖房病について詳しく解説していきます。

暖房病の症状とは?

暖房病とは、暖房が効いた部屋に長時間いるときに起こる不調の総称であり、正式な病名ではありません。不調の内容としては次のような症状が挙げられます。
  • 頭痛やめまい、頭重感
  • 肌や目、喉の乾燥
  • 吐き気
  • ほてり、のぼせ

暖房病の原因

暖房をつけるだけで起きることもある暖房病。その原因は一体どのようなことでしょうか。
原因は乾燥による脱水、空気の温まり方、一酸化炭素があげられます。詳しくみていきましょう。

原因1.室内の乾燥により脱水症状が起こっている

寒い季節はもともと空気が乾燥していますが、暖房を使用した室内は、さらに乾燥してしまいます。これは暖房を使用して空気の温度が上がることにより、飽和水蒸気量(一定の体積内に含むことができる水分量)が増えるためです。飽和水蒸気量が増えると、空気が取り込もうとする水分量が多くなるため、同じ水分量でも乾燥した状態となります。
また、灯油を使用するストーブやファンヒーターに比べて、エアコンを使用した場合の方がより乾燥することが知られています。灯油を使用する暖房の場合は、灯油の燃焼時に水分も発生するからです。
暖房にエアコンを使用している場合は、乾燥に伴う脱水に注意をする必要があります。

脱水のチェックポイント

脱水しているかは、次のチェックポイントを参考にしてください。
  • 喉が渇く
  • 舌が乾燥している
  • 皮膚をつまんだ後、3秒以上元に戻らない
  • 親指の爪の先を押して、赤みが戻るのに3秒以上かかる
  • 手足が冷たい
  • 原因不明の熱がある
  • 尿の色が濃い

原因2.部屋の温度差により頭部だけ過剰に温まっている

部屋を暖めるとき、エアコンやストーブを使用される方が多いのではないでしょうか。空気は部屋の中で温められると、上部へ溜まります。その結果、頭部付近は温かく、足元は寒いという温度差が生じます。頭部だけが過剰に温められると、脳の血管が広げられたり、その周囲の神経を刺激したりするため、頭痛、めまいといった暖房病の症状が出ます。
また、頭部が温まりすぎると自律神経も乱れるため、頭痛以外にも倦怠感や胃腸の不調など、さまざまな症状が生じることがあります。

原因3.一酸化炭素が発生している

ストーブや石油ファンヒーターの中でも、開放型暖房機器を利用している方の不調の原因は、一酸化炭素かもしれません。これらの暖房機器は、燃料を燃やすときに空気中の酸素を消費しその排気を室内に放出します。そのため、十分に換気をしていない環境では、室内の酸素濃度はだんだん減少していきます。室内の酸素が不足したまま燃焼させると、毒性の高い一酸化炭素が排出されます。一酸化炭素中毒になると、めまいや吐き気、頭痛が起こり、そのまま放置をすると死にいたることもあります。

暖房病の解消法

暖房を利用していて暖房病の症状が出てしまった場合、症状が強くなる前に対処をすることが大切です。ここでは、暖房病の解消法について解説します。

水分補給をおこない脱水症状を改善させる

室内の乾燥によって脱水症状が生じた場合は、すぐに水分補給をおこなうことが有効な改善方法です。喉の渇きを感じているときには、すでに軽度の脱水症状を起こしている可能性があります。すみやかに水分補給をしましょう。

水分補給のポイント

水分補給には経口補水液がおすすめです。水やお茶で水分補給をおこなうと喉の乾きは潤っても、脱水症状を抑えられません。脱水症状があるときは、水分と一緒に塩分(ナトリウム)なども一緒に失われており、体内の電解質のバランスが崩れてしまっています。経口補水液は、塩分やマグネシウムなどの必要な電解質をバランスよく含み、水分と電解質を早く体内に吸収できる飲み物として作られています。そのため脱水症状を改善するための水分補給として最適です。

換気をおこなう

燃料を燃焼させるタイプの暖房を、締め切った部屋で使用しつづけていると、毒性の強い一酸化炭素が発生します。頭痛やめまい、吐き気などの症状があらわれた場合には、室内を換気し暖房機器を停止させ、屋外など新鮮な空気のある場所へと移動しましょう。
また、エアコンなどの燃料を燃焼させるタイプではない暖房でも換気は必要です。エアコンの使用によって乾燥による脱水状態になっているケースもあります。水分補給に加えて換気をおこなうことで、乾燥した室内よりも湿度の高い外の空気を取り込み、乾燥を緩和させることができます。

足元を温め身体の温度を一定にする

頭を温め過ぎることにより、のぼせたり自律神経が乱れたりすることで暖房病の不調を感じる方もいます。
本来、人の血流は頭の方に流れやすくなっているため、足元が冷えやすくなっています。また、暖房機器は室内の空気を温めますが、温められた空気は室内の上の方へたまり、頭を温めます。
このため、足元を温めることを心掛けて身体の温度を一定にする「頭寒足熱」を意識的におこなうことが必要です。ホットカーペットや温かいマットを敷いたり、温かい靴下やブランケットを活用したりして、足元を温めるようにしましょう。

治らない場合は医療機関の受診を

燃料を使用するタイプの暖房を使用していて、上に挙げた対処を行なっても症状が解消されない場合は、すみやかに医療機関を受診しましょう。一酸化炭素中毒による症状が懸念されます。
また、エアコンなどを利用していた場合でも同様に、上にの対処をしても暖房病による不調が解消されない場合は、医療機関の受診が望ましいです。
一時的に痛みを抑えるためには、痛み止めの服用も有効です。急激な温度差によって起こっている頭痛は、市販の痛み止めが効く場合もあります。ただし、暖房病の原因を解消せずに痛み止めを服用するのはおすすめできません。あくまで一時的な対処として、原因に解消を心掛けましょう。

暖房病で病院を受診するべき目安は?

暖房病で脱水症状があらわれて、経口補水液などで水分補給をしても症状が改善できない場合には、病院の受診が必要です。また脱水症状が進行し意識がもうろうとしている方や、自力での水分補給が難しい高齢者や乳幼児の場合には、速やかに病院を受診しましょう。受診する診療科は内科、緊急の場合には、救急科を受診します。
一酸化炭素中毒が疑われる場合には、軽度であれば速やかに新鮮な空気を吸うことが適切な処置となりますが、中等度以上に進行すると錯乱やけいれんなどを起こしたり意識を失ったりし自力で動くことが難しくなります。症状が緩和しない場合や、呼びかけても反応がない場合にはすぐに救急車を要請する必要があります。
一酸化炭素中毒は症状が治まっても、数日~数週間後に再び中毒の影響が出るケースもあります。新鮮な空気を吸って症状が緩和された場合にも、かかりつけ医の受診をおすすめします。

暖房病にならないための対策

秋冬の寒くなった時期に快適に過ごすためには暖房は不可欠です。また、暖房を使用しなければ生活が困難になるだけでなく体調にも影響を及ぼしかねません。そのため、暖房を使用しながら、暖房病を予防する行動もおこなうことが大切です。ここでは、暖房を使用しても暖房病にならないようにする方法を具体的にまとめました。

室内でも足元が冷えないようにする

暖房の使用により天井と床で温度差が出てしまい、不調の原因となる場合があります。人の体は頭寒足熱で温めるのがよいため、足元が冷えないようにして全身を均等に温めることがポイントです。冷え対策の靴下やルームシューズを履いたり、ブランケットを足元に掛けたりして、足元も温めるようにしましょう。ラグやこたつ、ホットカーペットの使用もおすすめです。

室内の空気を循環させ温度を一定に保つ

暖房を使っていても足元が温まらないからといって、暖房を強めてしまうと、天井と床の温度差が助長されて暖房病のリスクを上げてしまうことになります。このようなときは、サーキュレーターや扇風機を併用して、室内の空気を循環させます。すると、部屋の温度が一定に保たれ、頭部だけ温まっている状態から足元も均等に温められ、暖房病の予防になります。さらに、暖房を効率的に使用することができるため、省エネにもつながります。

室内の湿度を一定に保つ

人が過ごすために快適な湿度は40~60 %ですが、暖房をつけることで湿度は大きく下がり、20 %台になるともいわれています。人は、発汗や排尿以外でも皮膚や呼気を通じて体内の水分を失っています。このような、日常生活のなかで意識せずに失われる水分を「不感蒸泄」といいます。健康な成人では、一日あたり約900 mlの水分が不感蒸泄で失われています。もし室内の湿度が低下していると、体が乾燥した空気に晒されるため、水分がより多く失われていきます。
不感蒸泄による水分の喪失を防ぐには、湿度を高めることがポイントです。濡れた洗濯物を干したり、加湿器を使用したりすることで、空気の乾燥を防ぎ、室内の湿度を一定に保ちましょう。

湿度の目安

前述しましたが、人が快適に過ごせる室内の湿度の目安は40~60 %です。また、40 %以下の湿度ではウイルスの飛沫が拡散しやすいことが知られています。秋冬の乾燥しやすい時期は適度に加湿を行うことが、乾燥防止だけでなくインフルエンザの予防にも役立ちます。ただし湿度70~80 %を超えるとカビが生えやすい環境になります。快適な湿度を維持するために、温湿度計測器などを設置して意識的に湿度を一定に保つようにしましょう。

水分補給を積極的におこなう

冬は多くの要因が重なり、脱水症状を起こしている場合があります。冬は暖房の使用で空気が乾燥し、不感蒸泄によって呼気や皮膚から蒸発する水分量が増えます。また夏場よりも汗をかく機会が少なく、喉の乾きを感じにくくなるため、水分の摂取量が減少します。体が冷えてしまうことやトイレが近くなることを心配して、水分の摂取を控えてしまう方もいらっしゃいます。このような要因が重なって気付かないうちに水分不足になっている状態を隠れ脱水といいます。
暖房病の不調や、深刻な脱水症状を防ぐためにも、冬場であっても積極的に水分補給を行う必要があります。こまめな水分補給で脱水を防止しましょう。2~3時間に1度程度は水分を摂るようにして、1日あたり1.5リットルを目安に飲むようにしましょう。また、冷たい飲み物より暖かい飲み物の方が体を温めることにもつながります。

定期的に換気をおこなう

換気をせず暖房機器を使用していると、室内の湿度が低下して乾燥したり、酸素濃度が低下して一酸化炭素が発生したりするリスクがあります。これらはどちらも頭痛やめまいなど暖房病の不調を引き起こします。暖房病を防ぐためにも、定期的な換気を行い室内の空気を新鮮なものに入れ替えましょう。換気は1時間に5分程度、1~2回行うのが目安です。一箇所の窓を開けるだけでは空気の入れ換えは難しいため、対角線上にある2箇所の窓を開けると空気が流れやすくなります。窓がひとつしかない場合には、部屋のドアを開けてサーキュレーターを窓に向けて稼働させるか、キッチンの換気扇を強に設定して稼働させると、空気の流れを作れます。

まとめ

暖房を使用しているときに頭痛やめまい、吐き気が起こる原因は、部屋の温度差によるもの、脱水症状、一酸化炭素の発生などさまざまな要因があげられます。喉の渇きを感じていなくても水分補給をして、体を均等に温めること、換気をすることが大切です。暖房病の症状が出てしまった場合、水分補給や換気をしても症状が治まらないときは病院で診察を受けましょう。

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