骨や歯の形成と血液凝固に関わる「ビタミンK」の詳細と、ビタミンKがしっかり摂れるレシピをご紹介します。
ビタミンKは丈夫な骨や歯を作るのに欠かせない働きがあります。ほかにも、血液の凝固にも関わり、特に新生児や乳幼児にとって大切な栄養素です。
この記事では、ビタミンKの特徴と働き、豊富な食べ物について解説します。また、ビタミンKをたっぷり摂れて、丈夫な歯と骨を作るのにぴったりの簡単レシピも紹介します。
ビタミンKの特徴
ビタミンKは脂溶性ビタミンのひとつです。天然のビタミンKは、主に下記の2種類があります。
- ビタミンK1(フィロキノン):植物性食品などに含まれる
- ビタミンK2(メナキノン):11種類あり、動物性食品に多い「メナキノン-4」と納豆菌が産生する「メナキノン-7」が代表的である
1日に必要なビタミンKの量は、これらをまとめた数字で示されています。
ビタミンKは血液凝固を促進する働きや、骨や歯の形成に関わる働きがあります。生きていく上で欠かせないのはもちろん、健康づくりにも重要な栄養素です。
ビタミンKに期待される効果・効能
ビタミンKは体内でどのような働きをしているのでしょうか。詳しく解説します。
血液凝固に関わる
ビタミンKは血液凝固に関わる作用があります。
血液が固まる際に必要なプロトロンビンなどが肝臓で作られる際に、ビタミンKが補酵素として働いているのです。ビタミンKが不足すると、出血した際に血が止まりづらくなってしまいます。
新生児はビタミンK欠乏による消化管出血や頭蓋内出血のリスクが高いため、予防としてビタミンK2シロップが投与されているのもこの働きが理由です。母乳はビタミンK含量が少ないことや腸管内でビタミンK産生が期待できないなどの理由により、新生児はビタミンK欠乏症が起こりやすいことが知られています。
丈夫な骨を維持する
ビタミンKは、骨の健康を守るために欠かせない栄養素です。ビタミンKは骨に存在するタンパク質である「オステオカルシン」を活性化して、カルシウムを骨に沈着させる働きがあります。
実際にビタミンK(メナキノン-4)は、骨粗しょう症の治療薬として使用されています。
口や歯の健康に関わる
ビタミンKは骨だけでなく、歯にカルシウムを沈着させて、丈夫にする働きもあります。
ほかにもビタミンKは、歯石がたまるのを防いだり、むし歯や歯周病を防いだりするのに役立つのではないかとして研究が進められています。
ビタミンKの1日の摂取量の目安
ビタミンKの1日の摂取量の目安は、下記の通りです。
▼ビタミンKの食事摂取基準(1日あたりの目安量)
年齢 |
男性 |
女性 |
1~2歳 |
50 µg |
60 µg |
3~5歳 |
60 µg |
70 µg |
6~7歳 |
80 µg |
90 µg |
8~9歳 |
90 µg |
110 µg |
10~11歳 |
110 µg |
140 µg |
12~14歳 |
140 µg |
170 µg |
15~17歳 |
160 µg |
150 µg |
18~29歳 |
150 µg |
150 µg |
30~49歳 |
150 µg |
150 µg |
50~64歳 |
150 µg |
150 µg |
65~74歳 |
150 µg |
150 µg |
75歳以上 |
150 µg |
150 µg |
妊婦 |
ー |
150 µg |
授乳婦 |
ー |
150 µg |
出典:厚生労働省「
日本人の食事摂取基準(2020年版)」
日本人の平均的な1日あたりのビタミンK摂取量は、20歳以上では男性258 µg、女性243 µgであり、充足しています。このことからもわかるように、ビタミンKは通常の食生活で不足することはほとんどないとされています。
どのような場合に不足しやすいのか、また、過不足の影響についてさらに詳しく見てみましょう。
ビタミンKが不足するとどうなる?
ビタミンKは、通常の食生活で欠乏症になるほど不足することはほぼありませんが、下記の場合は不足のリスクがあります。
- 長期間の抗生物質投与
- 慢性の胆道閉塞症
- 脂肪吸収不全 など
- 血液凝固が遅延する(鼻血、胃腸からの出血、月経過多、血尿、歯肉からの出血など)
- 骨粗しょう症や骨折のリスクとなる
また、先ほど伝えた通り、新生児や乳児も不足しやすく、新生児出血症や乳児ビタミンK欠乏症などのリスクもあります。
ビタミンKを過剰摂取するとどうなる?
天然型であるビタミンK1とビタミンK2については、過剰症は知られておらず、耐容上限量は設定されていません。
人工的に作られるビタミンK3の過剰摂取については、溶血性出血、高ビリルビン血症などが知られています。しかし、日本では食品・医薬品ともに使用されていません。
ワルファリン(ワーファリン)服用中の方は過剰摂取に注意
ワルファリン(ワーファリン)という薬を服用中の方は、ビタミンKの過剰摂取に注意しましょう。
ワルファリンとは血液が固まったり、血栓ができたりするのを防ぐ薬です。ビタミンKの働きを抑えて作用を発揮するため、ビタミンKをたくさん摂ると、薬の作用を妨げてしまうのです。
特に、ビタミンK含有量が豊富な納豆、クロレラ、青汁は避ける必要があるとされています。服用中の方は、医師または薬剤師に相談してください。
ビタミンKが豊富な食べ物
ビタミンKは、主に植物性食品に豊富に含まれています。卵や肉などの動物性食品にも含まれますが、さほど多くはありません。
どのような食べ物なのか、含有量とともに詳しく見てみましょう。
モロヘイヤやほうれん草などの野菜
ビタミンKは野菜のなかでも、モロヘイヤやほうれん草などの色の濃い野菜に含まれています。
▼100 gあたりのビタミンK含有量
食品名 |
含有量 |
大葉 |
690 µg |
モロヘイヤ |
640 µg |
ほうれん草 |
270 µg |
春菊 |
250 µg |
ブロッコリー |
210 µg |
小松菜 |
210 µg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
色の濃い野菜は、ビタミンKだけでなくカルシウムも豊富なため、骨の健康づくりにも良いでしょう。
ビタミンKは脂溶性であり、油と一緒に摂ると吸収率が高まります。ビタミンKをムダなく摂りたい場合は、脂質を含む肉や魚などのメニューと組み合わせたり、油を使った調理法にしたりすると良いでしょう。
納豆や油揚げなどの大豆製品
ビタミンKが豊富な食べ物のなかでも、納豆は含有量がずば抜けて優れています。
▼100 gあたりのビタミンK含有量
食品名 |
含有量 |
納豆 |
870 µg |
油揚げ |
67 µg |
がんもどき |
43 µg |
きなこ |
27 µg |
厚揚げ |
26 µg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
納豆を毎日1パック食べるだけで、ビタミンKの1日に必要な目安量を充足できます。納豆はカルシウムも含むため、骨の健康づくりに毎日取り入れたい食べ物といえるでしょう。
わかめやひじきなどの海藻類
わかめやひじきなどの海藻類にも、ビタミンKが豊富に含まれています。
▼100 gあたりのビタミンK含有量
食品名 |
含有量 |
カットわかめ(乾) |
1600 µg |
ひじき(乾) |
580 µg |
焼きのり |
390 µg |
刻み昆布 |
91 µg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
海藻類にはカルシウムが豊富で、骨の健康づくりに役立つものばかりです。ほかにも食物繊維などの健康づくりに欠かせない栄養素も含むため、積極的に取り入れてみましょう。
鶏肉や鶏卵などの肉・卵
動物性食品に含まれるビタミンKの含有量は少ないのですが、なかでも鶏肉や鶏卵に含まれています。
▼100 gあたりのビタミンK含有量
食品名 |
含有量 |
鶏手羽先 |
45 µg |
鶏もも肉(皮付き) |
29 µg |
鶏ひき肉 |
26 µg |
鶏卵(全卵) |
12 µg |
出典:文部科学省「
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
上記の食べ物はビタミンKの含有量は少なめですが、ビタミンDの補給源となります。ビタミンDは植物性食品にはほとんど含まれておらず、動物性食品から摂る必要があります。ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるため、ビタミンKとあわせて丈夫な骨を作るために欠かせない栄養素です。
特に卵はさまざまな栄養素を豊富に含むため、意識的に取り入れるようにしましょう。
ビタミンKたっぷりで骨に良い「納豆のしいたけチーズ焼き」のレシピ
ビタミンKをたっぷり摂れ、骨と歯の健康づくりに良い「納豆のしいたけチーズ焼き」のレシピを紹介します。
ビタミンKが豊富な納豆は、そのまま食べる以外にも料理にアレンジできます。ビタミンDを含むしいたけと合わせれば、おつまみにもなるおかずに変身します。カルシウム豊富なチーズも組み合わせて、骨と歯に良い組み合わせにしました。
<材料>(2人分)調理時間:15分
- 生しいたけ:4枚
- 納豆:1パック
- 長ねぎ:1/4本
- 塩、こしょう:適量
- マヨネーズ:適量
- ピザ用チーズ:適量
- 小ねぎ:適量
<作り方>
- しいたけの軸、長ねぎをみじん切りにします。
- 納豆、付属のたれ、しいたけの軸、長ねぎ、塩、こしょうを混ぜます。
- 2をしいたけのカサの部分に詰め、マヨネーズをかけてピザ用チーズを載せます。
- オーブントースターで約10分焼きます。途中焦げそうになったらアルミホイルを被せます。器に盛り、小口切りにした小ねぎを散らします。
<ポイント>
お好みでからしや七味唐辛子をつけて食べると、大人の味わいになります。
しいたけはしっかりと加熱する必要があるため、アルミホイルを被せて十分に火を通しましょう。
ビタミンKとカルシウムで骨と歯の健康づくりを
骨や歯の健康づくりに欠かせない栄養素は、ビタミンKだけでなくカルシウムやビタミンDがあります。特にカルシウム、ビタミンDは不足しやすい栄養素です。ビタミンKとあわせて、意識して取り入れるようにしましょう。