若いのに総入れ歯の人はいる?目立ちにくい総入れ歯の種類も紹介

若いのに総入れ歯の人はいる?目立ちにくい総入れ歯の種類も紹介

(2023年8月31日公開)
若いのに総入れ歯を勧められると、「自分だけなのでは」と不安になる方もいるのではないでしょうか。40代で総入れ歯になる方も少なからずいらっしゃいますので、悩みをひとりで抱え込む必要はありません。大切なことは、少しでも前向きになれるよう、総入れ歯についての知識を学び、適切な治療に取り組んでいくことです。本記事では、目立ちにくい総入れ歯の種類についてもご紹介します。

               

若いのに総入れ歯の人はいる?

総入れ歯とは、歯が1本も残っていない方が使用する義歯(入れ歯)のことを指しています。総入れ歯は高齢になってから使用するものと考える方多いと思いますが、若い方でも総入れ歯を使用しているケースがあります。厚生労働省の調査によると、45~49歳のうち総入れ歯(全部床義歯装着者)の割合は0.7%と記録されています。
若くして入れ歯を使用する方は、総入れ歯になってしまって恥ずかしい、総入れ歯を使わざるを得ない現実がつらい、入れ歯を着けていることを人に知られたくない、といった悩みを抱えています。自分以外にも同じ悩みを抱えている方がいると知るだけでも、心持ちは変わるはずです。

若いのに総入れ歯になる原因

総入れ歯を使用することになった原因の多くは、歯周病やむし歯の放置、事故などによるものです。

重度の歯周病で歯を失った

現在では、歯を失う原因として一番多いものは歯周病といわれます。歯周病は、歯と歯ぐきの間にできた溝に細菌が繁殖し、歯の周囲に炎症が発生する病気です。健康な歯と歯ぐきの間に溝はありません。磨き残しがあると細菌が繁殖し、細菌が発生する毒素の影響で、歯ぐきに炎症が起こります。これが歯周病のはじまりです。初期の段階では自覚症状がほとんどなく、歯垢が歯磨きで取り除けないため石化してから気づくケースが多くあります。歯周病により歯ぐきの炎症が進んでいくと、次第に歯と歯ぐきの間に溝ができ、歯垢が溜まって歯周病がますます進行していきます。歯周病が重症化すると、歯を支える骨が破壊され、神経や血管にも細菌が感染します。支えを失った歯はそのまま抜け落ちてしまいます。

治療ができずむし歯が神経まで達してしまった

むし歯が重症化することで、総入れ歯になるケースもあります。むし歯は、菌が生成する酸が歯を溶かすことで症状として現れます。むし歯は一度でも治療をすると、再発の可能性が高くなります。そのため、いかに早くむし歯予防に取り組むかがカギとなります。
しかし、不可抗力な理由から歯科医院に行けなかったり、治療をせずに放置をしたりすることによりむし歯が重症化して神経にまで達してしまったら、抜歯をせざるを得なくなります。抜歯をせず歯を残す根管治療もありますが、むし歯菌を完全に除去することは難しく、総入れ歯との選択を迫られるおそれもあります。

事故の影響で歯を損傷した

日頃のケアをして歯周病やむし歯の予防をする方が増えていますが、不慮の事故で歯を損傷し、総入れ歯の治療を受ける方もいます。事故の場合は治療費を保険でまかなえる場合もあるため、審美性の高いインプラント治療の選択も可能な場合もあります。
ただし、前歯のインプラント治療の難易度は高く、施術自体の取り扱いがない歯科医院もあります。総入れ歯はインプラントのように外科手術がともなわない治療であるため、体力の消耗がなく多くの歯科医院で受けることができます。

若いのに総入れ歯にするメリット

元の歯を温存して抜けている部分を入れ歯や差し歯にするよりも、総入れ歯にする方がメリットの大きい場合があります。
たとえば、元々の歯よりも綺麗な見た目にできるメリットがあります。総入れ歯を使用することで噛み合わせを調整できるため、バランスのよい口元になります。また、部分入れ歯は残っている歯を活用して入れ歯を支えるため、残っている歯に負担が掛かり、かえって口内環境を悪くしてしまう場合もあります。
なお、保険対応の入れ歯の場合、部分入れ歯と総入れ歯で大きな価格差はありません。部分入れ歯の価格相場は10,000円前後、総入れ歯の価格相場は15,000円前後です。さらに、落として割れてしまっても、短期間で修理できる点が総入れ歯のメリットです。

総入れ歯の種類

総入れ歯は、大きく分けて保険適用のものとそうでないものがあります。総入れ歯は歯の部分(人工歯)と歯ぐきの部分(床(しょう))に分かれており、使われる材質により費用や使用感に違いが現れます。

レジン床義歯(保険の総入れ歯)

レジンとは、透明感があり艶やかな質感が特徴的なプラスチック樹脂です。入れ歯の床の部分がレジンで構成されており、保険が適用されるため制作費をおさえられます。レジン床義歯のメリットは、安価であるため費用の不安が大きくなく、万一落下などで破損しても作り直しがしやすい点です。
一方、人工的な見た目になってしまうことや慣れるまで噛みごたえに違和感のある点はデメリットです。費用は、上下の入れ歯をあわせても3万円以内での制作が可能です。

金属床義歯

入れ歯の床の部分に、チタンやゴールドなどの金属を使用したものが金属床義歯です。レジン床義歯に比べて耐久性があり、丁寧に手入れをすることで10年単位で使用をすることができます。金属製であるため強度を保ちながら薄く制作でき、使用時の違和感を軽減できるのが特徴です。
ただし、レジン床と違って保険適用外となり、費用が高額になります。金属アレルギーの方は、使用時に症状が出るおそれもあるため事前確認が必要です。使用感の快適さを得られる反面、金属床義歯の費用は上下で100万円以上かかります。金属を使用していますが、口をひらいた時に目立つことはありません。

シリコーン義歯

金属アレルギーなどで金属床義歯を使用できない場合、シリコーンを使用する選択肢もあります。シリコーンは薄くて柔らかい素材であるため、アレルギーの心配がいらず、自然な使用感を得られます。
保険適用外ではありますが、費用も上下顎で50万円からと金属床義歯に比べ負担をおさえられます。ただし、耐久性には劣るため、金属床義歯よりも劣化を感じるのが早くなります。素材に固さがないため、見た目は自然な仕上がりとなります。

インプラントオーバーデンチャー

入れ歯の強固な安定感と、自然な使用感の両方を実現できます。インプラントを歯ぐきに埋め込み、その上から入れ歯を装着します。歯ぐきにかぶせるだけでなく、金属軸で入れ歯を支えるため、安定感が増し、力強く噛めるようにもなります。
保険適用外のうえにインプラントの外科手術が必要なため、上下顎で200万円以上の費用がかかり、制作は半年前後の期間を要します。施術にはリスクが伴うため、体力が心配される方や持病のある方は、事前に歯科医師と相談します。

フルオーダーメイド義歯

もともと入れ歯は患者さん一人ひとりに合わせて制作されるオーダーメイドなものです。さらに近年、入れ歯制作の技術が進み、より患者さんの口内に合わせて制作ができるようになっています。その一つが、BPS(Biofunctional Prosthetic System:生体機能的補綴システム)デンチャーと呼ばれる入れ歯です。たとえば、通常の入れ歯では上下顎の型を別々に取りますが、BPSではより自然な噛み合わせを実現するために口を閉じた状態で型取りを行ないます。専門的な技能を有していることが認められたBPS公認の歯科技工士によって制作が行われます。保険適用ではないため、上下で40万円ほどの費用がかかりますが、見た目も使用感も、自然な歯に近い感覚を得られます。

若いうちに総入れ歯にならないための口内ケア方法

事故などの要素は避けられない点ではありますが、むし歯や歯周病の悪化による歯の喪失は、日常的な口内ケアで避けることができます。ここでは、一般的な予防法をご紹介します。

毎食後すぐに歯磨きをする

食後すぐに歯磨きをおこなうことが口内ケアの秘訣です。口内は食事をはじめてから速やかに酸性に傾いていきます。口内が酸性の状態が続くとむし歯ができやすくなるため、早めのアクションが大切です。
適切な歯磨きのタイミングについては、こちらの記事も参考にしてください。

ブラッシングは正しい方法で

食後すぐに歯磨きをしても、正しくブラッシングをしなければ、むし歯の原因となる歯垢は落としきれません。磨く角度や力加減、動かし方を意識して、歯垢を確実に取り除きましょう。
ブラッシングをする際の具体的な方法については、こちらの記事も合わせてご覧ください。

フッ素入りの歯磨き粉を使用する

フッ素入りの歯磨き粉は、むし歯予防の効果を高めます。ただし、市販の歯磨き粉はフッ素濃度1,500 ppmまでと定められています。より高濃度のものを使用するには、歯科医院の指導のもと、歯科専売品を利用するのがおすすめです。
歯磨き粉のフッ素についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

若いうちに総入れ歯にならないための基本的な習慣

入れ歯になるのを避けるには、日常的な口内ケアをしっかり行うだけでなく、口内トラブルになりにくい習慣を身につけることも大切です。この習慣を身に付けるのに特別な知識や技術は必要ありません。ここでは、口内トラブルを予防するためにおすすめの習慣をご紹介します。

間食は控える

口の中に食べ物がある状態が続くと、口内が酸性に傾きやすくなります。間食を控えることで、口内の環境を整えましょう。ついつい間食をしてしまう方は、食べる分を少しだけ取り出して皿に取り分けるようにするのがおすすめです。食べる分がなくなることで食べ過ぎを避けつつ、だらだらと長時間食べ続けてしまうことを防止できます。

食事はよく噛む

口内環境を整えるには、唾液の分泌が必要です。唾液をより多く分泌させるには、食事をよく噛むことが大切です。食べ物を口に入れたら必ず30回以上噛むようにしましょう。ただし、毎回意識して噛む回数を数えることは面倒に感じるかもしれません。そこで、よく噛むことを習慣化する方法として、食材を大きめにカットするのがおすすめです。食べ物を口の中で十分小さくするため、自然と噛む回数が多くなります。

定期的に歯科検診と歯石除去を行う

日常的なオーラルケアを丁寧にしていても、どうしても歯垢は取り除ききれないものです。そのような歯垢は徐々に歯石に変化し、ブラッシングでも取り除けない状態になってしまいます。そこで、定期的に歯科検診を受けて、歯石除去やブラッシング指導を受けるようにしましょう。通院が途切れないように、一度受診をしたら次回の予約も必ず取るようにするのがおすすめです。

まとめ

総入れ歯には、保険適用のものからフルオーダーメイド義歯までさまざまな種類があります。使用感や見た目の良さを高めるためには、それなりの費用もかかります。入れ歯についての正しい知識を身につけ、納得感の得られる選択をしましょう。

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