舌に赤いブツブツができるイチゴ舌は溶連菌感染症が原因。治し方や予防方法を解説【医師監修】

舌に赤いブツブツができるイチゴ舌は溶連菌感染症が原因。治し方や予防方法を解説【医師監修】

(2024年2月26日更新)
【医師監修】
イチゴ舌とは、表面に赤いブツブツができて腫れている状態の舌のことです。その原因の大半は、溶連菌感染症であることが多いです。溶連菌感染症は子供に多く見られる感染症のひとつですが、大人でも感染することがあります。この記事では、イチゴ舌の原因となる溶連菌感染症の概要と主な症状、治し方、予防法について解説します。また、イチゴ舌は川崎病の症状でもあるため、川崎病の概要についても解説します。

               
【SillHa.com編集部より】
イチゴ舌の原因となる溶連菌感染症の最新の流行情報は国立感染症研究所から発表される下記の感染症週報の情報をご覧ください。
・参考:厚生労働省/国立感染症研究所 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 定点あたり報告数

イチゴ舌とは

イチゴ舌とは、舌が真っ赤に腫れて表面にイチゴのような赤いブツブツができている状態のことです。イチゴ舌になるときは、はじめに舌の表面に白色の苔のようなもの(白苔)が発生します。その後、舌に赤いブツブツとしたものが生じ、イチゴのような見た目の舌になります。舌に痛みはあまり感じられませんが、違和感があることが多いです。また、イチゴ舌が見られる場合、発熱やのどの痛み、唇やリンパ腺の腫れなど、他の部位にも症状を伴うことが多いです。

イチゴ舌の主な原因:「溶連菌感染症」

イチゴ舌の症状がある場合、主な原因として考えられるのが溶連菌感染症です。ここでは溶連菌感染症の概要と主な症状、流行時期、治し方について解説します。

溶連菌感染症とは

溶連菌感染症とは、溶連菌(溶血性レンサ球菌)という細菌が喉に付着して、発熱や喉の痛みなどの症状を引き起こす病気です。溶連菌にはいくつか種類がありますが、流行することが多い「溶連菌」は「A群溶連菌」です。溶連菌感染症は、会話などで口や鼻から感染する「飛沫感染」と、感染者に直接触れたり、同じタオルや食器を使用したりすることで感染する「接触感染」で広がります。特に5~10歳ぐらいの子供に多く見られる感染症ですが、大人でも感染することがあるため注意しましょう。

主な症状

溶連菌に感染すると、2~5日程度の潜伏期間を経た後、突然の発熱、強い喉の痛み、倦怠感などの症状を訴えることが多いです。ただし、風邪と異なり、一般的に咳がみられないのが特徴です。また、喉の粘膜を咽頭粘膜と呼びますが、咽頭粘膜に非常に強い赤みが見られ、小さな点状の出血を伴うことがあります。さらに舌が赤く腫れてイチゴのようなブツブツ(イチゴ舌)が現れることも多いです。
感染している場合、診断キットによる検査や培養検査、血液検査などをして原因を突き止めます。診断キットによる検査は、溶連菌に感染をしているかどうかを簡易的に検査できます。綿棒で喉の奥をこすって採取した粘液を使って数分で調べられるため、多くの病院やクリニックではこの方法を用いて診察をおこないます。
イチゴ舌などの症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

流行時期

溶連菌は通年感染の恐れがありますが、その中でも11月~4月と6月~9月に感染が多くなります。特に11月~4月はインフルエンザと流行時期が重なるため判断がつきにくくなります。主な感染経路は飛沫感染と接触感染のため、感染予防には手洗いやマスクの着用が有効です。溶連菌と診断されたら、感染拡大の防止対策を徹底しましょう。

治し方

溶連菌感染症の治療はペニシリン系の抗菌薬と解熱鎮痛剤が中心となります。抗菌薬を服用して24時間経過すると感染力はなくなると考えられており、症状も1~2日で熱が下がり、数日で喉の痛みもやわらぎます。
ただし、症状がなくなっても処方された抗菌薬はきちんと飲み切るようにしてください。症状が軽くなったからと服用を途中でやめてしまうと溶連菌を完全に除菌できず、再発や合併症につながるおそれがあります。

溶連菌は大人でも感染する

溶連菌は子供だけでなく大人も感染します。特に子供が溶連菌に感染すると大人にも感染するリスクが高いです。大人の治療法も基本的には小児と変わらず、ペニシリン系抗菌薬であれば10日間ほど服用する必要があります。
適切な治療が行われないと、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症を引き起こすことがあるので注意が必要です。

イチゴ舌は溶連菌以外に「川崎病」が原因の可能性も

イチゴ舌が出る症状は溶連菌感染症だけではありません。川崎病が原因の場合もあります。では、川崎病とはどのような病気なのでしょうか。ここでは川崎病の概要と主な症状、治療方法について解説します。

川崎病とは

川崎病は全身の血管に炎症を引き起こす病気です。1967年に医師の川崎 富作 先生が発見したため、この名前がついています。川崎病の原因はいまだにはっきりと分かっていません。川崎病は4歳以下の子供に好発しますが、ごくまれに大人でも発症します。また、男児の方が女児よりも約1.5倍かかりやすく、日本人をはじめ東アジア系の人種で多く発症しています。
川崎病には、5日以上続く39度以上の高熱、両目の充血、赤い発疹、唇の腫れやイチゴ舌、手足の指先の腫れ、首のリンパ節の腫れといった主要症状があります。この症状の内、5つ以上当てはまると川崎病と診断されます(ただし、条件がそろえば症状が4つ以下でも川崎病不全型と診断されます)。
川崎病は、重症化すると心臓の血管に炎症を起こすことがあります。それが進行して動脈瘤となると、心筋梗塞などを引き起こすおそれがあります。そのため、川崎病は早期の診断と治療が非常に重要です。

川崎病の治し方

川崎病は、原因がいまだ解明されていないため根本的な治療法はありません。しかしながら、症状が発生してから10日以内に治療をおこなうと、心臓の合併症のリスクが有意に低くなることが分かっています。そのため、川崎病と診断された場合、すぐに入院の指示が出されます。
治療は、血管の炎症を抑えるアスピリンを高用量で内服しつつ、免疫グロブリン製剤と呼ばれる薬を静脈内に点滴します。免疫グロブリンとは、血液の中に含まれるタンパク質の一種で病原体から体を守る働きがあり、免疫グロブリン製剤は血液内の免疫グロブリンを高純度に精製したもので献血の血液から作られています。
多くの場合、この治療法で熱が下がり、発症から8週間以内に心臓の血管に異常が見られなければ完全に回復します。

イチゴ舌が現れたらいつごろ病院に通うべき?

紹介したように子供の舌にイチゴのような赤いブツブツや発熱、のどの痛みなどがある場合には、溶連菌感染症や川崎病の可能性があります。速やかな治療が必要なため、イチゴ舌に気づいたらできるだけ早く病院を受診することが大切です。

自分でできる溶連菌感染症の予防法

イチゴ舌を引き起こす溶連菌感染症は飛沫感染や接触感染で広がるため、手洗いやマスクの着用などで予防できます。

手洗いを徹底する

感染症予防にはこまめかつ丁寧な手洗いが必須です。手を洗うときは石けんをよく泡立て、約30秒間しっかりとこすり洗いします。特に指先や指の間、親指、手首は洗い残しが多いため、ひとつひとつの部位を丁寧に洗いましょう。洗い終わったら流水でよくすすぎ、清潔なタオルで水分を拭き取ります。すでに家族や自分が感染している場合は、タオルを共有しないようにしましょう。手洗いは外から帰ったときはもちろん、調理の前後や食事前、せきや鼻をかんだ後、ペットとふれあった後など、こまめに行うことが大切です。また、手が洗えない場所ではアルコール消毒も有効です。

マスクを着用する

溶連菌の感染リスクはほぼ通年のため、常時マスクを着用するのは現実的ではありません。しかし、自分や家族が感染している場合には、マスクを着用しましょう。特に発熱や喉の痛みなどの症状がある場合は、必ずマスクを着用して感染拡大を防ぐことが大切です。マスクを着ける際は口と鼻をしっかりと覆い、隙間がないようにぴったりと装着します。外すときも表面を触らないようにしましょう。使い捨てマスクの場合にはビニール袋に入れてからゴミ箱に捨て、最後にきちんと手を洗いましょう。

家庭での感染に注意する

家族内で感染が疑われる場合は、可能であれば感染者と部屋を分けましょう。このとき感染者はなるべく部屋から出ず、トイレなどの共有スペースの利用も最小限に抑えることが大切です。そして、感染者の看病をする家族も感染するリスクが高まるため、なるべく1人に絞ることが重要です。室内では十分な換気をおこない、こまめな手洗いを心がけ、感染者はマスクを着用しましょう。また、感染者との寝具やタオルなどの共有を避け、ドアノブやトイレなど感染者が触れる部分は十分に消毒をしましょう。
特に溶連菌感染症は子供が発症しやすいため、感染者に兄弟姉妹がいる場合は、他の子供にもすでに感染している可能性があります。

大人でもかかる可能性があるイチゴ舌

イチゴ舌は大人よりも子供がかかりやすい溶連菌感染症や川崎病でよく見られる症状です。しかし、溶連菌感染症は、大人でも感染することがあるため、イチゴ舌とともに発熱やのどの痛みなどの症状が見られるときは、速やかに医療機関を受診しましょう。

監修医師:水野 泰孝 先生

グローバルヘルスケアクリニック 院長。
昭和大学医学部を卒業後、東京慈恵会医科大学大学院にて熱帯医学を専攻。タイやバングラデシュなど世界各国の大学病院・ナショナルセンターにおいて医療研究や診療に従事。
日本国内においても東京慈恵医科大学付属病院や東京医科大学病院にて感染症領域をはじめとした診療に務めるほか、国際協力機構や厚生労働省羽田空港検疫所に勤務した経歴も持つ。
日本小児科医会国際委員長、日本感染症学会評議員、日本熱帯医学会評議員など多くの学会にて要職に就き、日本専門医機構認定小児科専門医、日本小児科学会認定小児科指導医、日本感染症学会認定感染症専門医・指導医など、多くの認定資格を持つ。

グローバルヘルスケアクリニック ホームページ
https://www.ghc.tokyo/

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