舌がしびれるのはなぜ?病気によるしびれや食べ物が原因の場合も【歯科医師監修】

舌がしびれるのはなぜ?病気によるしびれや食べ物が原因の場合も【歯科医師監修】

(2024年2月16日更新)
舌がしびれるような経験をしたことはありますか? 何かの飲食物が原因と考えがちですが、病気が原因となって舌のしびれを感じることもあるため、注意が必要です。
舌は、味を感じるだけでなく、食べ物を飲み込んだり発音をしたりするときにも大きな役割を果たしている器官です。日常的に使う器官のため、違和感があるときは原因を確認して適切に対処をしましょう。本記事では舌がしびれる原因やしびれた際の受診の目安について解説します。

               

舌がしびれる原因は?

舌は食事をしたり話したりするために大切ですが、普段の生活でもダメージを受ける機会が多く、トラブルが起きやすい部分です。舌のしびれは、飲食物中の成分だけでなく、病気やアレルギーなど、さまざまな原因で起き得ます。
まずは、病気を原因とする場合から解説していきます。

舌のしびれの原因となる病気

舌がしびれる病気は、舌に関連する神経に何らかの影響を及ぼすものが多いです。舌のしびれの原因となる病気について解説します。

三叉神経痛(さんさしんけいつう)・舌咽神経痛(ぜついんしんけいつう)

舌のしびれが起きる原因の一つは、脳や神経の病気です。三叉神経痛・舌咽神経痛はその主な病気です。

三叉神経痛では、片側の顔面に、針で刺されたような焼け付くような激痛が起きます。おでこ、頬、顎に突然発生して、数秒から30秒くらい強い痛みが続きます。

舌咽神経痛は、舌の付け根から喉に激しい痛みが発生します。舌咽神経が心臓の血流に関わる迷走神経の近くにあるため、まれに、一時的な心停止や失神を起こすこともあります。また、糖尿病の合併症のひとつである糖尿病神経障害と舌咽神経との関連も報告されています。このため、糖尿病で舌のしびれが起こる場合があります。

脳梗塞

脳梗塞は、脳の血管が閉塞することで血流が途絶えて、その先の脳細胞が死んでしまう病気です。三叉神経や舌咽神経をつかさどる脳幹部で梗塞が起きると、舌のしびれが生じます。舌の運動をつかさどる舌下神経にもダメージがあると、食べ物をたべたり飲み込んだりすることが難しくなる摂食嚥下障害が起きたりろれつが回らなくなったりするなど、舌の運動障害も起こります。

脳出血

動脈硬化や高血圧があると、脳の細い血管が破れて出血することがあります。出血した部位によって症状は異なりますが、舌のしびれの他、頭痛やめまい、嘔吐、嚥下障害、ろれつが回らない、手足が動かしにくい、ふらついて立てないなどの症状が現れることがあります。重症になると、意識の消失や呼吸停止など命にかかわります。

頭蓋骨や顔面骨の骨折・外傷

顔面や頭部に強い外力が加わったとき、頭蓋骨や顔面骨が骨折することがあります。その際に、三叉神経や舌咽神経にダメージがあると、舌がしびれます。しびれ以外にも、三叉神経にかかる場合は鼻の横の頬と顎など顔に激しい痛みが、舌咽神経にかかる場合は喉と舌の片側に激しい痛みが発生します。

帯状疱疹(たいじょうほうしん)

帯状疱疹は、水疱瘡(みずぼうそう)のウイルスによる病気です。水疱瘡は子どもの頃にほとんどの方が発症しますが、治癒した後も体内にウイルスが潜んでいます。このウイルスが、免疫力が低下したり体調が悪化したりすると活性化して、帯状疱疹を発症することがあります。帯状疱疹は神経の支配する領域に沿って発症します。このため、三叉神経の支配する口内にも水疱ができ、舌のピリピリとした痛みが発生します。重症化する場合もあります。発生する箇所はほとんどの場合、体の片側です。

筋・筋膜性疼痛症候群

筋・筋膜性疼痛症候群では筋肉が原因となって痛みやしびれを引き起こします。舌は主に筋肉でできています。そのため、筋・筋膜性疼痛症候群の発症にともない舌の痛みやしびれを感じることがあります。

舌がん

舌にできるがんです。舌の前方2/3や縁、裏側などにできます。がんが舌の近くを支配する神経を巻き込んで発生した場合、初期症状として舌のしびれが発生します。

舌痛症

舌がしびれたり痛みを感じたりする症状を有する病気に舌痛症があります。症状はあるのに、神経や舌の見た目に異常が見られないことが特徴です。
舌痛症についてはこちらの記事でまとめてあります。

口腔内乾燥症 (ドライマウス)

口腔内乾燥症(ドライマウス)で舌のしびれを感じることがあります。口内が乾燥することによって、口内の末梢神経に障害が起こるためです。
ドライマウスについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

その他の要因

舌のしびれの原因には、アレルギーによるものや、口内の衛生状態が関係するものなど、病気以外の要因もあります。病気以外の舌のしびれの要因もみていきましょう。

金属アレルギー

銀歯などの金属が材料に使われている詰め物で金属アレルギーを引き起こし、舌のしびれの原因となっていることがあります。舌のしびれ以外に、口内炎や舌炎、口唇炎や口角炎などの症状を伴うこともあります。
原因の金属イオンが血流にのって全身に回ると、口周りだけでなく、全身に発疹が出る場合もあります。

口内細菌の繁殖

歯磨きがうまくできていないなどの理由で口内が清潔に保たれていないと、細菌が繁殖して口内で炎症を引き起こします。この炎症に関わる物質が舌にも付着することで舌のしびれの原因になる場合があります。

亜鉛・鉄などの摂取不足

味を感じるための器官である味蕾(みらい)が生まれ変わるためには亜鉛が必要です。そのため、舌表面の味蕾を構成する細胞には本来、亜鉛が豊富にあります。亜鉛が不足すると、味蕾を構成する細胞が生まれ変われなくなります。この状態では味を感じにくく、舌がピリピリとしびれるような感覚が起こります。
また、鉄が不足すると鉄を必要とする赤血球が作られなくなり、鉄欠乏性貧血を発症します。鉄欠乏性貧血が続くと舌が炎症を起こし、しびれを感じるのです。  

舌の外傷

舌の傷もしびれの原因になります。熱い飲食物を口に含んだときの火傷、硬いものを食べたときや歯磨きによってできた傷があると、ピリピリとした痛みやしびれを感じることがあります。

ストレス

ストレスも舌のしびれを引き起こします。ストレス過多になると、自律神経を乱れさせ、舌痛症につながると考えられているからです。
また、ストレスは前述の三叉神経痛や舌咽神経痛の原因となる場合もあります。

舌がしびれる原因となる食べ物は

なにか飲食物を口にいれたとき、舌のしびれを感じたことのある方も多いのではないでしょうか。実際に、食べ物によって舌のしびれが引き起こされることがあります。続いて、舌のしびれの原因となる食べ物をご紹介します。

メロンやキュウリなどのウリ科の植物

メロン、 キュウリ、スイカ、ズッキーニ、カボチャ、ユウガオ、トウガンなどのウリ科の植物にはククルビタシンという苦味物質が含まれています。これを多量に摂取すると舌のしびれ以外にも、唇や口内のしびれ、嘔吐や下痢などの症状を引き起こします。苦味の強いウリ科の野菜は摂取しないようにしましょう。

パイナップル

パイナップルを食べて舌がピリピリしびれた経験がある方もいるのではないでしょうか。パイナップルにはブロメラインというタンパク質分解酵素が含まれています。この酵素が舌を保護しているタンパク質を分解してしまうことで、舌にピリピリとしたしびれを感じます。

タマネギ

タマネギには、硫化プロピルと呼ばれる辛み成分が含まれています。辛みは、舌の味蕾で感じる味覚ではなく、痛みを感じる神経で知覚しています。硫化プロピルを取りすぎると、痛みやしびれを感じます。

山椒などのスパイス

山椒や唐辛子、胡椒などのスパイスには、サンショオールという成分が含まれています。このサンショオールを摂取すると、辛味に加えてしびれを感じます。これは、サンショオールが舌の痛覚を刺激するため、そしてサンショオールに麻痺(局所麻酔)効果があるためです。

腐った食品

食品に本来含まれている成分だけでなく、腐った物を食べたときに舌がピリピリとすることがあります。
食品によっては、腐ったときに酸味を感じる成分を生成したり、炭酸ガスを生成したりすることがあります。これらを口にした場合に舌にしびれを感じることがあります。

ヒスタミンが多い食材

ヒスタミンを多く含む食品でも舌にしびれを感じます。
ヒスタミンはヒスチジンというアミノ酸の一種がヒスタミン産生菌によって分解されることで作り出されます。ヒスチジンはマグロ、カツオ、サンマ、ブリ、サバ、イワシ、カジキ、アジなどの赤身魚に多く含まれています。
これらの食品を常温に放置しているとヒスタミンが増加し、それらの食品を摂取することで、舌にピリピリとした痛みやしびれを感じることがあります。
ヒスタミンの多い食品を食べた場合、ヒスタミン中毒といわれる症状を起こすことがあります。ヒスタミン中毒では、食べてから1時間ほど後に、顔や口周りが赤くなったり、蕁麻疹が出たり、頭痛や吐き気、下痢などの症状が現れたりします。

フグによる食中毒

まれな事例ですが、フグによる食中毒でも舌にしびれを感じます。フグに含まれるテトロドトキシンは神経毒であり、神経の伝達を阻害して障害を起こします。フグによる食中毒では、まずは舌や唇にしびれが生じ、やがて指先にもしびれが生じます。

口腔アレルギー症候群が原因の場合も

普段は食べられる果物や生野菜でも、急にかゆみやしびれを感じた場合は口腔アレルギー症候群が原因かもしれません。
口腔アレルギー症候群についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、参考になさってください。

舌がしびれる場合の受診の目安は?

舌がしびれた場合、大きい病気が隠れている可能性もあります。そのため、舌がしびれたら病院に行くことをおすすめします。受診する診療科ですが、口内の病気が原因だと考えられる場合は皮膚科や歯科口腔外科、舌だけではなく全身にも症状が出ている場合はかかりつけ医や脳神経外科に相談してみましょう。

急いで受診が必要な場合

舌のしびれに加えて手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、顔の半分がさがっているなどの症状が出た場合は脳卒中の可能性もあり、早急な対応が求められます。直ちに119番に電話をして救急車を呼び、急いで診察を受けることが必要です。

近日中の受診が必要な場合

舌にしびれがあり、それが続いている、痛みがある、変色など見た目にも変化がある、食事の際に支障が出るといった場合も受診が必要です。そのまま放置をせず、近日中に医療機関を受診しましょう。

場合によっては受診が必要な場合

舌がしびれたものの短時間で治まったり、一度きりで繰り返し症状が出なかったりしたときは、急いで受診する必要はありません。ただし、気になるときは我慢せずに医療機関を受診しましょう。

まとめ 舌のしびれが続くときは早めの受診がおすすめ

舌のしびれの原因は、病気によるもの、アレルギーや傷によるもの、口内細菌によるもの、食事由来のものなど、数多くあります。舌がしびれることが続いたり、原因に心当たりがなかったりする場合は、たいしたことではないと放っておかずに医療機関で診察してもらうことをおすすめします。

監修歯科医師:重永 基樹 先生

東京都新宿区西落合の哲学堂デンタルクリニック院長。
1999年に愛知大学院大学卒業。2002年に現在のクリニックを開業。
「なるべく削らない・抜かない・神経をとらない」方針で治療を行っている。

哲学堂デンタルクリニックのホームページはこちら
http://tetsugakudo.com/

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